3-746

「暑さ寒さもお彼岸までっていうけど、
イヤー今日は、涼しいを通り越して、寒いくらいだよ。」

「そうね、今日はちょっと肌寒いわね。」

あたしとせつなは、いつもお風呂上がりに
ベランダに出て、おしゃべりしてる。


あたしは、あたしの話にうんうんとうなずくせつなの横顔や、
あいづちを打ってくれる少し低い声が大好きで、
ついつい長話をしてしまう。

でも、あたしとせつなは学校が同じで、登下校も一緒。
しかも、ダンス練習も一緒となれば、 あたしがせつなのことで知らない事、
せつながあたしのことで知らない事を見つけることの方が難しい。


あたしの話は、せつなだって知っていることがほとんどなのに、
それでも、嫌がりもせず、むしろ喜んで聞いてくれるのが嬉しい。


今日も話に熱が入りすぎたらしい。


気がつくと、せつなの肩は震えていた。


「もう部屋にもどろう」
そう言ってあたしは、せつなの右肩に右手を置き、肩を抱くようにすると、
せつなはあたしの右手に自分の左手を重ね、首をふるふると横に振る。

「ど、どうしたの?」
あたしは慌てて顔を覗き込むと、 あたしの肩口に顔をうずめ…


「も……、すこしこのままで…」
せつなが囁く。



寄り添う二人を見つめるのは、中天にかかる今宵の満月のみだった。



4-60同じ刻を感じて
最終更新:2009年09月27日 08:14