4-565

最近せつなに元気がないのよね…。
『ラブと喧嘩でもした?』
アタシは何となく心配で、せつなにメールしてみたんだけれど。
その夜は、いくら待ってても返信は来なかった。

翌日、アタシは学校帰りに偶然見てしまった。
ラブとブッキーがキスしてるところを。
なるほど。せつなの元気のない理由って、これだったのね。

ラブは、昔からブッキーを可愛いがっていたし、ブッキーはいつもラブのお尻を追いかけてたっけ。

一時期、アタシに熱を上げていた時もあったけれど、今思えばあれは、ラブを忘れるためにアタシに逃げていたのね。

ラブはきっと、ブッキーを愛してる自分にも気づいてしまったんだろう。
それは確かにずるい行為だと思う。
でも何となくわかる気がする。
アタシも小さい頃、ふたりの可愛い幼なじみを同じくらい愛していたから。

けれど、今頃きっとせつなは、何処かで泣いてるんじゃないかしら…

こういう時、アタシの勘はとても良く当たるから不思議。
思ったとおり、いつものあの丘に、せつなはいた。

アタシは何も言わず、せつなの隣に腰かける。
せつなはアタシに気づいたけれど、何も言わず、瞳に涙をいっぱいに溜めて、アタシを見上げた。

何も話さないのに、せつなのくちびるはアタシに語りかける。
今だけ全部忘れたいの。忘れさせて。
美希なら忘れさせてくれるでしょ…

最初にメールした時、アタシは慰めるつもりだった。
けれど今はもう、この少女のことしか考えられなくなっている。

可憐に匂い立つ花に誘われる蝶のように、アタシはせつなに引き込まれ、ほのかに開いたくちびるをついばんだ。

くちづけた刹那、閉じた瞳からこぼれた涙を、アタシは次のキスで拭う。

アタシの胸の中で、青い炎のような思いが、静かに燃えはじめていた。


4-645物語は終わらない...
最終更新:2009年10月03日 20:43