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【前回のお話=前スレ381~384】
幼稚園で職場体験学習中のラブとせつな。
園児たちの絵の発表タイムで、ごく一般的なヒーロー・ヒロインに混じって、
カオルちゃん、モデルとしての美希、そしてプリキュアの4人の絵が描かれていた。
午前の活動も終わり、場面はお昼ご飯へ。



手を洗い、教室へ戻った私たちは先生に指定されたテーブルへ向かった。
園児たちは既に着席していて、私とラブが向かい合わせになるように席を空けてくれてあった。
私たちは席に着き、荷物の中からお弁当を取り出した。


「うわー、ラブおねえちゃんのおべんとうばこ、おっきいね!」

「ラブはよく食べるからね、って今日は一段と弁当箱大きいわね。」

「へへっ。早起きして、あたしが作ったからね。今日は特別だよ。」

「じゃあ、この私のお弁当も?」

「もっちろん!せつなのために作ったからね、期待してて。」


「それではみなさん、手を合わせて下さい。いただきます。」

「いただきます!」


先生とみんなのあいさつで、お昼ご飯が始まった。
私たちと同じテーブルの園児たちは、次々に弁当箱のふたを開けた。


「うわー、みんなカワイイお弁当だねー。」

「ねえ、ラブ。お弁当にもお絵かきしてるのね。」

「これはね、キャラ弁っていうんだよ。」

「そうなの。見た目がいいと美味しく食べられるのかしら?」

「せつな、あたしたちも食べよっ。」

「ええ。いただくわ。」



ラブは自分の大きな弁当箱の上半分を持ち上げた。
二段重ねの下の段には、おかずがたくさん詰まっている。
そして上の段のふたを開けると中にはオムライス。何やらその上に緑色の物を使って絵が描かれている。


「ラブ、それは何なの?」

「あー、これはほうれん草のペーストで作ったクローバーだよ。」


よく見ると大きな四つ葉のクローバーが1つと、その茎が長い曲線を描いている。
さらに小さな四つ葉のクローバーが4つ、曲線に沿って散りばめられている。


「ラブ、ずいぶん凝ったわね。美味しそうよ。」

「うん、お母さんほうれん草苦手だから、あたしにしか作れないんだよね。」
「せつなのお弁当も開けてみてよ。」


私はラブに促されて、弁当箱のふたを開けた。


「・・・・・・!」


そのお弁当のご飯の上には卵そぼろが敷き詰められていて、さらにピンク色の粉のような物で大きなハートマークが描かれている。
ピンクのハートの下には先程のほうれん草ペーストで『ラブ☆せつな』の文字が。

(※ ☆=ハートマーク)

ツッコミ所は色々あるけれど、とりあえず食材から聞いてみる事にした。


「ねえ、ラブ。このピンク色の物、初めて見るわ。一体何なの?」

「ああ、それは桜でんぶだよ。お魚をほぐしたものに甘く味付けして色を付けてあるんだよ。」

「ふーん。私が食べられないものじゃなさそうね。」
「それにしても、このお弁当のデザインはラブが考えたの?」

「いやー、好きな人にはハートマークのお弁当を作ってあげると喜ばれるって。けっこう昔からあるみたいだよ。」


これも日本の伝統美なんだと解釈して、ようやく私たち二人は昼食を始めた。
私のお弁当のハートマークに使われている桜でんぶは、甘くて美味しかった。
それ以上にラブの愛情が込められているせいか、本当に一口一口じんわりくる味だった。


「せつな、どう?美味しい?」

「ええ、とても美味しいわ。また、料理の腕を上げたわね。」

「でしょー。せつなのために早起きして作ったかいがあったよ。」

「ふふ、ありがとう。ラブ。」

「せつな、私のお弁当、あーんして食べさせてあげよっか?」

「えっ、ラブ、そんな・・・。」


その時、周りの園児たちが食事の手を止めてこちらをじっと見ているのに気付いた。


「やだ、ラブ。恥ずかしいわ。」

「わはー、何か二人の世界に入っちゃってたね。」


その後、ラブが園児たちに話し掛けるなどして何とかその場を盛り上げて、お昼ご飯の時間は終了した。


「ごちそうさまー。あー、美味しかったー。」

「ごちそうさま。美味しかったわ、ラブの作ったお弁当。」

「ありがとっ。せつなー、あたし美希たんとブッキーにメールしてくるから。」


ラブはそう言うと、教室から出て行った。多分、この後会う約束でもしているのだろう。


「お待たせー。美希たんもブッキーも放課後OKだって!いつもの公園で待ち合わせだってさ!」

「そう。でも何で急に会う約束なんかしたの?」

「ふふっ、それは後で分かるから!」

(後でって、ラブ、一体何を考えているのかしら・・・。)



幼稚園は午後のスケジュールが始まった。
お昼寝の時間では、教室内に布団を敷いて園児たちと一緒に昼寝をした。
中には添い寝をしてほしいという子もいて、私とラブで一緒に寝てあげた。


「ねーんねこ、ねーんねこ・・・ムニャムニャ。」

「ラブ、疲れたのね。お弁当作りで早起きしたから。」


その次の自由活動の時間では、園児たちと一緒に外で遊んだり教室内で絵本を読んだりした。
そして、先生から園児たちにおやつが配られ、帰りの時間となった。


「今日は、ラブお姉ちゃんとせつなお姉ちゃんと一緒に遊んだりしましたね。」
「みなさん、二人にお礼の言葉を言いましょうね。さん、はい!」

「ありがとー ございました!!」

「みんな、今日はありがとう。楽しかったよ。明日もよろしくね!」

「みなさんと一緒に遊べて、とても楽しかったわ。また明日。」


その後、さようならのあいさつをしてお迎えの来た園児たちは次々に帰っていった。


「ラブさん、せつなさん、今日は一日ありがとう。お疲れ様でした。」

「お疲れ様です!久しぶりの幼稚園、楽しかったです。」

「子供たちに触れ合えて、いい勉強になりました。」

「ところでラブさん。この幼稚園での職場体験学習の恒例のアレって聞いてるわよね?」

「はい、聞いています。せつなと組むことになったけど、きっと上手くやってみせます。」

「そう。じゃあ楽しみだわ、頑張ってね。」


私たちは他のクラスの女子生徒と合流し、先生方にあいさつをしてそこで解散となった。


「あー、終わった終わった!せつな、公園に行くよ。」

「ねえ、ラブ。さっき先生の言ってた“アレ”って何なの?」

「あれ、せつな?プリントに書いてあったじゃない。2日目の最後の所に。」



私はバッグから職場体験学習のプリントを取り出し、日程表を見直してみた。
2日目の終わりの方に、何やら小さく文字が書き加えてある。


「ラブ、これがそうなの?」

「うん、そうそう。大丈夫だよ!せつななら出来るって。」

「本当に?・・・私に出来るの?」

「本当だよ。だからこれから、美希たんとブッキーに会いに行くんだよ。」
「さ、早く行こっ!二人とも待ってるよ。」


美希とブッキーに会える楽しみと、これから始まる“アレ”に関する不安が入り混じった気持ちの中、私はラブと一緒に公園へ向かって行った。


~つづく~


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最終更新:2009年10月26日 22:11