【前回のお話=前スレ249~253】
幼稚園での職場体験学習の1日目を終えたラブとせつな。
そこでは2日目にある事をするのが恒例となっており、
せつなは先程初めてそれについて知らされた。
一方、ラブはメールで美希と祈里に会う約束をしていて・・・
ピルルル・・・ピルルル・・・
ラブのリンクルンがメールの受信音を発している。
受信メールをチェックしたラブは、すぐに返信メールを打って送信した。
「美希たんとブッキー、公園に着いたって。」
「そう。私たちももうすぐ着くから、それほど待たせることもなさそうね。」
私たちは待ち合わせ場所の四つ葉町公園に着いた。
公園の中に入り、しばらく歩いていると私たちを呼ぶ声が聞こえる。
声のする方を見ると、美希とブッキーがベンチに座って手を振っていた。
すぐさま二人のもとへ駆け寄る。
「お待たせー!美希たん、ブッキー!」
「ラブ、職場体験お疲れ様。幼稚園で何かやらかさなかった?」
「アハハ・・・。まあ何とか無事に終わったけど。」
「せつなちゃん、幼稚園どうだった?」
「ええ、とてもいい所ね。明日も楽しみだわ。」
「そうそう、今日はお土産があるんだよ!」
ラブはバッグから何枚もの紙を取り出し、美希とブッキーに渡した。
それらは今日、幼稚園児が描いた絵のコピーだった。
「この絵もらっていいの?ありがとう、ラブちゃん。」
「あら、アタシはベリーとアタシの2枚あるのね。」
「美希、こっちの絵はあなたのファンの子が描いたのよ。」
「アタシのファン・・・?」
「すごいね美希ちゃん、小さい子にも人気あるんだね!」
「ま・・・まあね。完璧を目指すアタシとしては、あらゆる年齢層から愛されないとね。」
「美希たん、ブッキー。あたしたちも絵を描いたんだよー。」
ラブは更にバッグから絵を2枚取り出し、2人に見せた。
「えーっと、ラブちゃんがせつなちゃんを描いて、せつなちゃんがラブちゃんを描いたのね。」
「せつな、あなた絵の才能もあったのね。短時間でこれだけ描けるなんて。」
「ありがとう、美希。それで、これを見たラブがね・・・。」
「ねえ、せつな。話すと長くなるからそろそろ本題に・・・。」
「そうね、今日はラブからあなたたちに頼みがあるんだったわね。」
まあ、いずれは今日の幼稚園での出来事を二人に伝えるけどね。
そうとは知らないラブは、一呼吸おいてから口を開いた。
「あたしたち明日、幼稚園で芸を発表するんだけど・・・。」
「上手く出来る自信がないから、今から見てもらいたいんです。お願いします!」
拝むように手を合わせ、頭を垂れるラブ。
それを見てポカーンとする美希とブッキー。
しばらくすると、何か思い出したかのように二人の表情が変わった。
「芸って・・・そういえばアタシたちが幼稚園の頃にもあったわね。」
「わたしたちの時は、手品とかサッカーのリフティングを見せてくれたわ。」
「それで、ラブ。あなたたちは何を発表するの?」
「あたしたちが出来ることといったら、やっぱり・・・。」
「もしかして、ダンスなの?ラブちゃん。」
「ピンポーン!ブッキー、よく分かったね。」
私たちが発表する芸に、ダンスを選んだラブ。
しかし、今の私たちのダンスのレベルはまだまだ上手いとはいえない。
ダンスレッスンでもミユキさんに注意されてばかりで、4人そろって1曲フルにノーミスで踊り切った事はこれまで1度もないのに。
「とにかく、ラブたちが明日みんなの前で恥をかかないように協力するわ。」
「ラブちゃん、せつなちゃん。クローバーの仲間として、わたしも力を貸すわ。」
「ありがとう、美希たん、ブッキー。お礼はカオルちゃんのドーナツでね!」
「そうと決まったら、レッスンを始めましょ。美希、ブッキー、お願いね。」
私たちは公園内のダンス練習場に移動した。
ダンスの曲目は今練習中の「H@ppy Together!!!」に決めた。
私たち4人のリンクルンの動画フォルダにはその曲のレッスンビデオが納められている。
美希とブッキーがビデオをチェックしながら、ラブと私のダンスを指導する。
時々、制服のままで実際に踊って手本を示す美希とブッキー。
それに応え、私たちも精一杯のパフォーマンスを二人に見せる。
「ハアハア・・・こんなにビデオを再生してたら、もうリンクルンの電池が切れちゃうよ。」
「あっ、電池の事なら心配しないで。わたし、手回し充電器持っているから。」
「さすがはブッキー、用意がいいわね。ほら、ラブ!レッスンを続けるわよ。」
「ラブ、もう少しで1曲フルに踊れるところなんだから頑張りましょう。」
ダンスレッスンは夕暮れまで続いた。
美希はミユキさんばりの厳しさで、私たちをコーチする。
ブッキーは何度も充電器を回し、リンクルンに電力を与える。
何十回も同じ曲でダンスを繰り返し、そして・・・
「んあああー。疲れたぁー!もう踊れませーん!」
「ラブ、よく頑張ったわね。やっと1曲通しで踊り切れたわ。」
「うーん。完璧とはいかないけど、何とかサマになるレベルにはなったわね。」
「充電器を回しすぎて手が痛いよー。でもダンスが上手くなって良かった!」
「さあ、ドーナツを食べに・・・って、カオルちゃん帰っちゃったよ、もう。」
「しょうがないわね、ドーナツはまた今度おごってもらうわ。」
公園の電灯が点くほど、辺りはすっかり暗くなってきた。
そろそろ帰らないと家族が心配するからと、私たちはここで解散となった。
「バイバーイ、美希たん、ブッキー。また今度ねー。」
「美希、ブッキー、二人とも今日は付き合ってくれてありがとう。」
「これだけ練習したんだから、明日はちゃんとやりなさいよ。」
「ラブちゃんたちの明日の発表が上手くいくって、わたし、信じてる!」
美希とブッキーと別れ、私たちはようやく家に着いた。
家の灯りは既に点いており、先にお母さんがパートから帰宅したようだ。
「ただいまー、あー疲れた。」
「ラブ、遅かったじゃない。ご飯出来てるわよ。」
「うん。でも今日は先にシャワー浴びさせて。」
ラブは靴を脱ぐと、一目散に浴室へ駆けていった。
「せつなちゃん、ラブに何があったの?」
「ええ、今日は特別なダンスレッスンがあったから。」
「お弁当作りで早起きして、その上ダンスの練習・・・」
「いくら若いからってもっと自分の体を大事にしてほしいわ。」
「でも、ラブって本当に他人のために頑張ったり尽くしたりする子なんですね。」
「そうねえ。一体誰に似たのかしら?」
その後、私もシャワーを浴びていつもより遅い夕ご飯を取った。
ラブは今日一日の出来事をお母さんに話している。
お絵かきのこと。お弁当のこと。そして、ダンスレッスンのこと。
それに対して、ラブと私に褒めたり注意したりするお母さん。
こうして楽しい時間は過ぎ、もう寝る時間となった。
「せつな、今日はゴメンね。芸の発表の事を忘れてたあたしが悪かったよ。」
「そうね、大輔君の野球の試合を見に行く約束を忘れてたくらいだから・・・」
「まだ、何かあるとは思っていたけど。」
「ううっ、せつな・・・。」
「ごめんなさい、でもこの夏は私のために色々頑張ってくれたのよね、ラブ。」
「そうそう、大変だったんだよ。だから許してよね、せつな。」
まあ、今回は大目に見てあげるわ。
ラブにおやすみのあいさつを告げ、自分の部屋のベッドにもぐる。
明日はダンスの発表か・・・その前には何があるんだろう。
でも、知らない方が楽しみがあるって事もあるし、今日は疲れたのでそのまま寝ることにした。
おやすみなさい・・・。
~つづく~
最終更新:2009年11月22日 08:21