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つい最近まで大型台風なんて騒いでたのもどこ吹く風。
すっかり秋めいて来た10月半ばのある日のこと。

前日の通り雨で急に冷え込んだのか、
タオルケットにくるまってベッドに寝ているラブの口からも
くちゅん、とくしゃみが出るくらいに今夜は寒い。

「うう~お母さんの言うとおり毛布出しとけばよかったよ~」

TVに夢中で話半分にあゆみの話を聞いていたことを今更後悔しても後の祭り、
今更押し入れの奥にしまってある毛布を取り出す気にもなれず、
とりあえずタオルケットを必要以上に巻きつけることでこの場をしのごうとする。

「ラブ」

そんな彼女に掛けられる声。
見上げるとそこにいるのは、パジャマ姿のせつながいた。

「せつな?どうしたの、こんな時簡に?」
「あのね、私も毛布出し忘れちゃって……。
 今日は寒いから、一緒に寝てもいい?」

そう言って指で頬を掻きながら、
えへ、と照れ笑いを浮かべる彼女の右手に握られてるのはラブとお揃いのタオルケット。
それを見たラブはあはっと笑顔を浮かべ、せつなを招き入れる。

「ん、おいで、あたしも寒かったからちょー大歓迎ってとこだよ!」
「うん、それじゃ……お邪魔します」

せつながラブの隣で横になると、
持ち寄ったタオルケットを互いの体に撒きつけて、寄り添う。

「わはーっ……」
「あったかいわね……」

お互いの体温で暖を取リ合う二人。

「ぽかぽかするね~」
「……ぽかぽか?なんだか可愛い言葉ね?」
「こんな風に、暖かくて気持ちの良いことをそう言うんだよ」
「そうなの……確かに暖かいし、気持ち良いわ。
 うん、わたしもぽかぽかする……これでいいの?」
「そうそう、よく出来ました」
「ふふ……ラブったら、じゃあ、このまま朝までぽかぽかしましょ」
「おっけーっ!二人で幸せゲットしよ!」

笑い会う二人。
体中の触れたところから生まれた熱が全身に広がって
さっきまでの寒いのが嘘のよう。
秋の夜でも、二人の間はきっと春模様。

そして同じ頃、せつなの部屋。
机の上ですやすやと眠るシフォンと、
その横で寝そべりつつもまだ起きているタルトがそこにいた。

「全く、パッションはんもつくづくけなげなお人やな~」

タルトの視線の先にあるもの。
それはベッドの上にきちんと折りたたまれている毛布。
夕食後にあゆみに言われた後すぐに、せつなが押入れから出したものだった。


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最終更新:2009年10月25日 09:15