<祈里の部屋>
「え~っと、ハンカチにお薬、それからキャンディーにチョコレート、ミントのガム、後は…。」
今わたしは明日の準備をしている。
明日は何があるかというと……
~♪~♪~
「あ、メール…ラブちゃんからだ。」
『やほ~ブッキー。明日せつなと遊園地に行くんだよね。
せつな遊園地初めてだからすっごく楽しみにしてたよ。
シフォン達のことは、今回あたし達にまかせて、ブッキー達は初デートめーいっぱい楽しんできなよ(^^)v
それじゃあおやすみ~』
「『ありがとう。ラブちゃんも美希ちゃんとお買い物楽しんできてね。おやすみなさい。』っと、送信。」
そう、明日はせつなちゃんと二人で出かけることになっているのだ。
いままでも二人で出かけることはあったけれど、それは告白前。
告白後は初めて。
「ふふ……初デートかぁ。」
そう思いながら私はベットに入り目を閉じた。
<公園>
予定よりも早く目が覚めたので来てみたけど……さすがに早く来すぎたかな。
そう思いながらわたしは公園の時計を見る。
待ち合わせは10時、
でも時計の針は9時30分を指している。
「祈里。」
声が聞こえた。聞き間違えるはずもない、この声は…。
「せつなちゃん。」
「早いわね祈里。」
「せつなちゃんこそ。」
せつなちゃんのことだから遅れてくることはないだろうと思っていたけど、
こんなに早く来るなんて……ってわたしも人のこと言えないか。
「もしかして待たせちゃった?」
「ううん、全然。さっき来たところだから。」
「そう、よかった。」
それを聞いて安心したのか、せつなちゃんは胸に手を当てそっと息をついた。
待ち合わせは10時だからそんなに気にすることないのに…でもそんなところもせつなちゃんらしい。
ん?あれは…。
「ねぇ、せつなちゃん?」
「ん?」
「それってもしかして、この前電話で話してた…。」
わたしはせつなちゃんの左腕にある赤いブレスレットを指さした。
「ええ、お母さんに……あゆみお母さんに貰ったブレスレットよ。」
せつなちゃんとっても嬉しそう。…かわいいな。
「ふふ。」
「祈里?」
「あぁごめんなさい、ただすっごく嬉しそうな顔しててかわいいな~って思って。」
「…っ。」
あっ照れてる。
「ふふ、かわいい。」
「…もう、祈里ったら。」
「さて…それじゃあちょっと早いけど行きましょうか、せつなちゃん。」
「そうね。」
「今日は遊園地って所に行くのよね。雑誌やテレビでは見たけど実際に行くのは初めてよ。すごく楽しみ。」
ふふ、本当に楽しみなんだ、わたしもだけど…。
「せつなちゃん、一緒にめーいっぱい楽しもうね。」
「ええ。」
<遊園地>
「へぇ~凄い人ね。」
せつなちゃんは人の多さに驚いているようだ。
「休日だからね。」
ぎゅっ。
「祈里?」
わたしはせつなちゃんの手を握った。
なんとなくこうしたかったから…。
「嫌?」
「…いいえ、そんなことないわ。」
ぎゅっ。
「楽しみましょうね。」
せつなちゃんはそう言って握り返してくれた。
最初はわたしのリクエストでメリーゴーランドに乗った。
次はせつなちゃんのリクエストでお化け屋敷へ。
その後も交代でリクエストしていって
ゴーカート、ティーカップ、バイキングに乗った。
さて、次はせつなちゃんの番だ。
「次はせつなちゃんの番だよ、どこに行く?」
「そうねぇ、…祈里、私あれに乗ってみたいわ。」
「どれ?」
「あれ。」
せつなちゃんが指差す先には
「ジェットコースター?」
「ええ。」
ガタンガタン。
ジェットコースターは苦手ではないのだけれど、…これは高すぎるかも。
今乗っているジェットコースターは最近新しくできたようで、
以前ラブちゃんや大輔君達と来た時に乗ったものよりさらに高いところから落ちるようだ。
……さすがにこれはちょっと怖いかもしれない。
ぎゅっと目をつぶる。
ガタンガタン。
「祈里。」
隣から声がした。
そちらを見るとせつなちゃんが手を差し伸べてくれていた。
わたしはその手をつかんだ。
ぎゅっ
せつなちゃんはしっかりと握り返してくれた。
怖いけど、少しだけ安心した。
ガタンガタン、ガタッ。
頂上のようだ。
ガタ、ガタガタ、ガタガタガタガタ、ゴォォォォォォォ――――――――。
――――――――
「大丈夫、祈里?」
「大丈夫だよ。せつなちゃん。」
怖かったけど……楽しかった。
「そう、ならいいんだけど。じゃあ次はどこに行きましょうか?」
「せつなちゃん、わたしここに行きたい。」
私は案内図を指差す。
ここだけは外せない。
それは……
『動物ふれあい広場』
「ほら見て見てせつなちゃん、かわいい~。」
「ねえ祈里、その子達はなんて名前の犬なの?」
「えっと、この子はウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアっていうの。
それからあそこにいるのがチワワ、ラブラドール、ダックスフント、ポメラニアン、パピヨン、それから――――」
パシャッ。
「わっ、びっくりした。」
どうやら携帯で写真を撮られたようだ。
「あっ、ごめんなさい。祈里すっごく良い顔してたから、つい。」
「ついって……」
少し呆れつつも、そういうせつなちゃんの顔はとってもやさしい顔をしていたので
わたしはそれ以上なにも言わず、暫く動物たちと遊んでいた。
――――――――
「はぁ、さすがに疲れたね。」
「そうね、沢山歩いて、いろいろ乗ったものね。それじゃあ少し休憩しましょうか。」
「ねぇせつなちゃん、最後にあれ乗ろうね。」
観覧車を指さしながら言う。
「たしかあれって観覧車っていうのよね、最後でいいの?
もうそろそろ日が暮れてきたから休憩した後すぐに乗った方がいいんじゃないかしら?」
「ううん、最後でいいの、きっときれいだから。」
「?」
「ふふっ。」
「変な祈里。まあいいわ。」
「さて、私なにか飲み物買ってくるわね。……えっとここからだと少し遠いわね。」
せつなちゃんは案内図を見て呟く。
「あっ、せつなちゃんわたしも行くよ。」
「大丈夫、祈里は休んでて…足痛いんでしょ?」
…気づいてたんだ。
「…少し。」
「じゃあ待ってて、この後もまだまだ歩きまわるんでしょ?だったら少しの間だけでも休めておかないと…ね?」
「……そうだね、それじゃあここで待ってるね。」
「ええ。」
ドォーン
「きゃっ。」
急に地面が揺れた。
「何?」
せつなちゃんも驚いている。
「ソレワターセ?…いや、あれは…ナケワメーケ!!」
ナケワメーケということはラビリンスの仕業!!
「きゃー。」
「怪物だ。」
「逃げろぉ!」
人々がの叫び声が聞こえる。
「祈里、変身よ!」
「うん」
『チェインジ・プリキュア・ビートアープ。』
「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ、キュアパイン!」
「真っ赤なハートは幸せの証!うれたてフレッシュ、キュアパッション!」
「そこまでよラビリンス!」
「あらわれたなプリキュア!それにイース!」
「ウエスター!」
「インフィニティはどこだ!」
「言うわけないでしょ。」
「なら力ずくで言わせるまでだ。ナケワメーケ行け!」
「来るわよパイン。」
パッションの声に私は身構える。
パッションと息をあわせる。
『ダブル・プリキュア・キーーック!!』
ナケワメーケにダブル・プリキュア・キックをお見舞いする。
その後も連続で攻撃を与える。
「あっ!」
パッションが何かに気がついたのか声をあげた。
「パッションどうしたの?」
「観覧車の中にまだ人が…!」
「えっ。」
わたしの目では見えない。
「…ここで抑えるしかないわね。はぁぁぁっ!!」」
パッションはそう言ったけど、それじゃあダメだ!
あの中にいる人達はきっと怖くて怖くて堪らないだろうから…
「……パッション、アカルンを使って観覧車に乗ってる人達を避難させて!」
「でも、パインが一人に!」
「大丈夫だよ。はぁっ!!」
「ナ~ケワメ~ケ~」
ナケワメーケの攻撃が緩む。
「パッション!今のうちに、早く安全な所に連れて行ってあげて。」
「パイン……。」
「きっと中の人達すごく怖いと思うから……。」
「…わかったわ。……終わったらすぐに戻ってくるから!」
ヒュン。
パッションが消えた。
「イース?ちっ、まあいいナケワメーケ、そいつを先に片付けろ!」
「ナーケワメーケ!」
「はぁ!」
「やあっ!」
パンチにキック。
少しずつではあるが、確実にナケワメーケにダメージを与えている。
とにかくパッションが戻ってくるまで時間を稼がなければ。
「えぇい、ナケワメーケ相手は一人だぞ、とっととプリキュアを倒せ!
くそぅ、ソレワターセなら確実に勝てるのに。…ん?あれは?
ふっ、おいナケワメーケ!そいつは後だ、あいつを捕まえろ!!」
「えっ?」
あいつ?誰?
ラビリンスの視線の先を見る。
「!」
女の子だ。
どうして女の子が?
「まさか、逃げ遅れたの?」
「うえ~ん、おかあさ~ん。」
「ナケワメーケそいつを狙え!」
「うわぁーん。」
「あぶない!!」
「っ…うう。」
女の子を庇ったため、まともに攻撃を受けてしまった。
「ぷりきゅあ…」
女の子は目に涙をためている。
「大丈夫だから、今のうちに逃げて、…早く!」
「いまだ、捕えろナケワメーケ!」
「きゃあっ。…早く…早く逃げて!」
「う、うん。」
女の子は走って行った。
「ふふ、形勢逆転というやつだな。さぁ、インフィニティの居場所を教えてもらおうか。」
「……。」
「ふん……ナケワメーケ、そのまま締めつけろ。」
「くっ。」
「いつまで耐えられるかな?」
「…っ…うぅ。」
「……ナケワメーケ、そいつをあれに叩きつけろ!」
ブン。
「きゃあぁぁぁ。」
私は何かに叩きつけられた。
起き上がろうとしても、全身を強く打って身体に力がはいらない。
「うぅっ…。」
ギュウ
!
しまった、またナケワメーケに……。
「くっ。」
地面から足が離れる。
「わはは、どうだ、その状態では何もできまい。」
下の方からラビリンスの声が聞こえる。
「良い眺めだぞプリキュア、はっはっはっ。」
くっ…。
「吹き荒れよ!幸せの嵐!…プリキュア・ハピネス・ハリケーン!!」
「何!」
「ナ~ケワメ~ケ~、シュワシュワ~。」
一瞬だった。
わたしもラビリンスもなにが起こったのか分からなかった。
「えっ、きゃあ。」
ナケワメーケが消滅したため、わたしの身体は落下する。
さっきまでのダメージのせいで身体が動かない。
わたしは衝撃にそなえた。
……
………
あれ?
衝撃がやってこない。
そのかわりに、背中と膝裏に温もりを感じた。
目を開けるとそこにはパッションがいた。
「ウ・エ・ス・タ・ァ・ァ~!!!」
「ひぃっ。イ、イース。」
いつもよりもさらに低いパッションの声にラビリンスの人がひるむ。
実はわたしもちょっと怖かった。
そのなんともいえない威圧感に押されたのか
「くそ~、覚えてろよイース!」
と捨て台詞を吐いてラビリンスの人は去って行った。
「……大丈夫パイン?」
「う、うん。」
「……ふう。」
「パッション?」
「…遅くなってごめんなさい。」
あっ、いつものパッションだ。
「ううん、気にしないで、ちゃんと来てくれたんだもの。」
「……。」
「パッション?」
「無事で…よかった。」
「……ごめんね。」
「どうしてパインが謝るの?」
「ん?ほら、心配かけちゃったから。
それに、わたしがナケワメーケを食い止められなかったせいで観覧車…壊れちゃったでしょ。
楽しみにしていたお客さん達も乗れなくなちゃったし。」
「心配するのは当たり前よ。観覧車に関しては……あなただけの所為ではないわ、私も来るのが遅れてしまったから。
だから謝る必要なんてないわ。」
「でも……。」
「でも?」
「……約束。…約束守れなかった。観覧車一緒に乗ろうって約束したのに。」
「……パイン。」
「パイン。」
「何?」
「目、閉じて。」
「え、どうして?」
「ど~しても。」
わたしは言われたとおり目を閉じた。
「…ちょっとしっかり掴まってて。」
「えっ。」
そういうとアカルンを使用したのか、あの独特な浮遊感に襲われた。
ヒュン
カッ。
ヒールの音が響いた。いったいどこに移動したのだろうか。
「目、開けても良いわよ。」
言われて目を開けた。
「わぁ~。」
目の前に広がっていたもの、それはライトアップされた街並みであった。
「…ここってもしかして。」
「そ、観覧車。」
パッションが移動した場所は、観覧車…の上、それも一番高いところだった。
「これで約束を破ったことにはならないわ。…乗るの意味が少し違うけど、そこは目をつぶって。」
「パッション…ありがとう。」
「どういたいまして。」
「…綺麗ね。」
しばらくしてパッションが呟いた。
「でしょ、ライトアップされてて綺麗なの…これを一緒に見たかったの。」
「なるほど、だから最後に乗ろうって言ってたのね。」
「うん。」
その後しばらくは二人とも無言で街並みを眺めていた。
ふと、わたしはあることに気がついた。それは……。
「ねぇパッション、もう大丈夫だから、その、そろそろ下ろしてくれないかな、重いでしょ?」
「……。」
「パッション?」
「……そうね。」
「…そこは嘘でも『平気よ』とか『重くない』って言って欲しいな。」
「ふふ。」
絶対わかってて言ってる。
「も~、下ろしてよ~!」
「ふふっ。ダ~メ。」
もう、意地悪なんだから。でもそんなところも……。
わたしはパッションの首に両腕をまわした。
「ねぇ、パッション。」
「なに?」
わたしはパッションを見つめた。
目が合う。紅くて綺麗な瞳に吸い込まれそうだ。
パッションの顔が近づいてくる、わたしは目を閉じる。
そして自分の唇に柔らかい唇が触れるのを感じた。
幸せが胸いっぱいにひろがる。
また来ようね……せつなちゃん。
【終】ブッキーside
最終更新:2009年12月26日 20:45