ラブside <桃園家キッチン>
「上手くいくかな、ブッキー?」
あたし達はとある計画を実行しようとしていた。
「どうだろう、せつなちゃんはともかく美希ちゃんは一筋縄ではいかないかも。」
そうなんだよね、問題は美希たんだ。
「やっぱり、そうだよね。でも絶対似合うしおもしろいと思うんだけどなぁ。」
奥の手を使ってでも美希たんには絶対あれを着てもらうんだから!
「確かに普通にパーティするよりは面白そうだね……二人にはちょっと悪いけど…。」
「いいじゃん、最近あの二人あたしたちに内緒でコソコソ何かしてるみたいだし、お互い様だよ。」
「ラブちゃん……。それもそうだね、でもあの二人……気になるね。」
「……うん。」
やっぱりブッキーも気になるよね。
あたしも美希たんとせつなのことが気になる。
せつなはブッキーのことが…
美希たんはあたしのことが…
だからあの二人に限ってないとは思うけど……
『ハァ。』
「……とにかく、あたし…ううん、あたし達にこ~んな思いをさせるんだから、これくらいやってもバチはあたらないよ!」
「う、うん。」
「じゃあ、二人が買い出しから帰ってきたら、計画スタートだよ、ブッキー。」
『ただいま~。』
あ、帰ってきた。
「美希たんはあたしの部屋に連れていくから、ブッキーはせつなをお願いね。」
「うん、わかった。」
ブッキーに声をかけあたし達は二人を迎えに行った。
「おかえり、美希たん、せつな。」
「おかえりなさい。」
美希side <ラブの部屋>
「ちょっとラブ!なによそれ!」
あたしは、それを指差した。
「まあまあ、ほらちょっとしたサプライズってことで。」
「だからってなんであたしなのよ!」
「いやほら、あたしだと意外性がないというか……。」
「ね、お願い美希たん。」
「いーや!」
「お願いっ!」
「……でも。」
あたしはあるものを見て躊躇する。ラブの頼みとはいえこれは…。
「む~、こうなったら…。」
ギュッ
えっ。
ラブがあたしの腕にしがみ付いてきた。
「…その……今度……あたしのこと好きにしていいからさ。」
「えっ。」
上目づかいプラス腕にあたるあるものの感触。
……。
……。
はっ……いやいやここで負けるな蒼乃美希。ここで負けてはダメよ!
ギュッ~
「ね、お願い。」
ううっ。
「っ、……はぁ、仕方ないわね。」
負けた。
「やったー、ありがとう美希たん。」
「そのかわり絶対笑わないでよ!」
「わかってるって。」
ほんとかしら……。
そう思いながらあたしはラブに渡された衣装に着替え始めた。
ブッキーside <せつなの部屋>
「いーや!」
ラブちゃんの部屋から美希ちゃんの声が聞こえてくる。
「あの声美希よね?どうしたのかしら?」
「どうしたんだろうね。」
やっぱり無理だったのかな。
「ところで祈里話って?」
「実はせつなちゃんにお願いがあるんだけど……パッションに変身してくれないかな?」
「え?今ここで?」
「うん。」
「…どして?」
「えっと、その、とにかく…お願い!」
「…わかったわ。」
「チェインジ・プリキュア・ビートアープ。」
「真っ赤なハートは幸せの証!うれたてフレッシュ、キュアパッション!」
「……これでいいの?」
せつなちゃんは素直にパッションに変身してくれた。
「うん。ありがとう。それから……ちょっとだけ屈んでくれないかな。」
今のままじゃちょっと頭にのせにくい。
「これでいい?」
「うん。」
わたしは後ろ手に隠していた帽子をパッションの頭の上にのせる。
ポン
「帽子?」
「それからこれも持って。」
「これを?いったい何する気なの?」
「えっとまだ秘密。」
パッションは言われた通り渡された白い袋を手に持つ。
……。
どうしよう、凄く似合ってる……想像していたとはいえこれは……。
「……っ。」
「どうしたの祈里?」
…笑っちゃダメ
「な、何でもないよ、せつなちゃん…っ。」
「じゃあラブちゃんの部屋に戻ろっか……っっ。」
「えっ!このままで?」
わたしは聞こえないふりをしてせつなちゃんの手をとりラブちゃんの部屋へと連れていく。
コンコン
「ラブちゃ~ん、こっちは終わったよ~。」
せつなside
ガチャ
「ブッキー。こっちも終わったよ。」
ドアが開いた。
中から出てきたラブが私を見ている。
「……っ。」
もう祈里といいラブといい一体なんなのよ。
とにかく部屋に入る。
そして目に映ったものは
「……み、美希?」
そこにはトナカイの衣装を着た美希がいた。ご丁寧に角までつけて。
「せ、せつな?」
いったいなぜそんな恰好を…。
「み『お願い何も聞かないで。』
「わ、わかったわ。」
以前にもこんなやり取りがあったような。
『……。』
なんと声をかければいいか分からすお互いに無言。
「わはっ、もうダメ。あはは。」
「ちょっとラブちゃん笑っちゃだめだよ…ぷっ。」
「そう言うブッキーだって笑ってるじゃん、あはははは。」
ラブ?祈里?どうして笑ってるの?
「あはは、パッション、ほんとにサンタクロースみたい。」
「ぷぷっ。」
サンタクロース?
「わ、私が?」
「それに美希たんのトナカイも似合ってて……あはははは。」
ラブが豪快に笑う。
「…ぷぷっ。」
祈里は背中を向けている……でも肩が小刻みに揺れている…。
これは明らかに笑ってるわね。
二人の笑いはなかなか収まりそうにもない…。
「あはははは。」
「ぷぷっ。」
しかし、……これは…
いくらなんでも笑いじゃない?
二人とも笑いすぎよ…そう言おうとした。
でも…
「…二人とも笑いすぎよ!」
私の気持ちを代弁するかのように、美希が叫んだ。
「だって美希たん、…あはは。」
ラブったら、まだ笑ってる…
「少しくらいなら我慢できたけど、流石に笑いすぎよ二人とも。……いいわ、二人にも同じ目に合ってもらいましょうか。」
『えっ。』
美希の言葉に驚く二人。
「…ブルン。」
「キィー」
「ま、まさか。」
「そのまさかよ。」
ブルンか…なるほどね。
「…ブッキー!」
「うん。」
「逃げろ~!」
二人がドアに向かおうとしていた。
逃げる気ね。
「…アカルン。」
ヒュン
『えっ。』
私はドアの前に瞬間移動し逃げ道をふさぐ。
「自業自得よ。」
腕を組みにっこりと笑う。
『そんな~。』
二人ともあんなに笑ったんだもの、当然よ。
「ナイスせつな。それじゃあ覚悟しなさいラブ、ブッキー……えいっ。」
ラブと祈里が光に包まれる。
そして現れたのは……
「美希たん、どうして、あたしトナカイなの!」
真っ赤なお鼻のトナカイラブ。
そして
「美希ちゃ~ん、…これは…恥ずかしいよ。」
赤い衣装を着た祈里…しかしスカートがかなり短い。
以前美希に見せてもらった雑誌に載っていたミニスカサンタという格好だ。
「似合ってるわよ、二人とも。ふふ。」
あぁ、美希の顔がものすごく輝いている…楽しそう。
「美希たん!」
美希を呼ぶラブの声は明らかに不服そうだった。
「あらラブ、あたしとお揃いじゃ嫌?」
「そんなことないけど…でもこの鼻は?美希たんにはないよね!」
ラブは自分の鼻についている赤い鼻を指す。
たしかに美希の鼻にはなく、ラブの鼻には真っ赤な鼻が付いている。
「あぁ、それはオマケ。」
「そんなオマケいらないよ、美希たん!」
「まあまあ、そういわずにありがたく貰っときなさいよ。」
まぁ、あれだけ笑えばそれぐらいの仕返しはあってもいいかもね。
「美希ちゃん!」
今度は祈里が美希に話しかけてきた。
恥ずかしいのかスカートの裾を引っ張っている。
「あら、どうしたのブッキー。」
「……これスカート短いよ。」
確かに短いけどパインの時とあまり変わらないような気がするのだけれど…
「あら、そう?いいじゃないミニスカサンタ、似合ってるわよ。」
そう答える美希。
確かに似合ってる…凄くかわいいわ。
「ねぇ美希ちゃん、…どうしてラブちゃんはトナカイなのにわたしはこの衣装なの?」
確かに二人ともトナカイでもよさそうなのに祈里がミニスカサンタなのはなぜだろう?
「それはね。」
なんなのかしら?
「それは…何?美希ちゃん。」
「……せつなの趣味。」
そう、私のしゅ……って
「美希!!」
「冗談よ、じょ~だん。ふふっ。」
「どうしてその衣装なのかというと、ブッキーはトナカイの衣装だと喜びそうなんだもの。」
「…確かに。」
「でしょ、でもそれだと面白くないじゃない。だったらその衣装かな~って思ってね。可愛いわよブッキー。せつなもそう思うでしょ?」
「えぇ。」
私は頷いた。
「凄く可愛いわ。」
「え、あ、ありが…とう。」
祈里にむかってそう言うと祈里の顔がますます赤くなってしまった。
「まぁ暫くはその格好でいてもらうからね~二人とも。」
『え~っ!!』
二人そろって不満の声を漏らす。
「あら、文句なら聞かないわよ。さっきあたし達のことをさんざん笑ってたのはどこのだれでしたっけ?」
『そ、それは…。』
「ん?」
『ご、ごめなさ~い。』
「ぷっ。」
三人のやりとりを見て私は堪え切れずふき出してしまった。
「ふふふ。」
「も~せつなったら笑わないでよ~。」
「せつなちゃん!!」
「だって、ふふっ。」
「ぷっ、あはは。」
私につられて美希も笑う。
「も~美希たんまで……あはっ。」
「ふふ。」
ラブも祈里も。
笑い声が…笑顔が広がる。
四人でいるとほんの些細なことでもこんなにも楽しい。
……皆といると凄く「幸せ」。
サンタクロースは子供達にプレゼントを配るんだとラブは教えてくれた。
さっきラブは私の姿を見てサンタクロースだと言ったわよね。
でもそれは違うわ。
だってラブ、美希、そして祈里、あなた達がサンタクロースだもの。
皆が私のサンタクロース。
皆が私に「幸せ」というプレゼントを運んでくれた。
皆が沢山プレゼントを運んでくれたから…今、私は笑っている。
皆が一緒だから今、私は「幸せ」なの。
たぶんこれからもずっとそうなのだろう。
でも……貰ってばかりじゃ不公平よね。
だから私も……
私も皆に「幸せ」をプレゼントできるよう……、「幸せ」を運べるよう……これからも精一杯頑張るわ!
最終更新:2009年12月24日 01:38