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競-165

昨夜の戦いから明けた翌日の昼過ぎ。
美希と祈里は、二人で桃園家に向かっていた。
今日の用向きは桃園家、蒼乃家、山吹家の三家合同のクリスマスパーティ。
その前準備の手伝いである。

「今回はせつなにとって初めてのクリスマスだから、楽しいパーティにしないとね!」

ということで、料理も部屋の飾りつけからパーティの演出に到るまで
全てラブのプロデュースによるものになった。
勿論、美希と祈里に泣きついて手伝って貰う事を折込済みではあるが。

「……で、せつなを主役にするのはいいけど、
 あの子が手伝いとか一切やらずにじっと待ってるのって、無理だと思うんだけど」

美希がふと漏らした言葉に、祈里が同意する。

「せつなちゃん、真面目だからね。私も手伝うってきっと言い出すと思う。
 ……ラブちゃん、そこまでちゃんと考えてるのかな?」
「考えてないと思うわ。せつなを喜ばせようとか、楽しませようとか、
 そっちにばっかり意識が向いてるんじゃないの」
「そうよね、じゃあせつなちゃんの方は私達でフォローしてあげないと」

そんな会話をしている内に桃園家の前に到着した二人。
早速呼び鈴を鳴らし、声を上げる。

キンコーン

「「こんにちは~」」

……
…………
………………

返事の代わりに返ってきたのは、沈黙。

「あれ?」

首を傾げた祈里が、もう一度呼び鈴に手を掛ける。

キンコーン、キンコ~ン

……
…………
………………
……………………
…………………………

やはり返事が無い。
いつもならラブが、ばーんとドアを開けて元気良く出迎えるか、
それとは対照的にゆっくりと、静かにドアを開けるせつなが、
来てくれた事への嬉しさを笑顔の形にして出迎えてくれるか、
そのどちらかになる筈なのだが、今日に限ってはそのどちらでも無い。




「留守なのかな?」
「まさか、約束しているんだからそれは無いでしょ」

祈里の疑問に、否定で答える美希。
それにしても、誰も出てこないのはどういうわけか。

(まさか、本当にまだ寝てるんじゃないでしょうね)

ラブはともかくとして、せつなまで、
いや、でもあの娘もああ見えてちょっと抜けてる事もあるし。
だったら起こしてあげないと。
ついでに寝過ごした罰ってことで、
一緒に仲良く寝ている二人の寝顔でも写メに撮っておいて
後でからかってあげようかしら、
そんなことを考えながら、美希がドアノブに手を伸ばそうとした瞬間。

ガチャリ。

「いやー、ゴメンゴメン」

ノブが回される音と共にドアが開くと、ラブが姿を現したのだった。

「二人とも、待たせてごめんね~まあ上がって上がって」

言いながら扉をいっぱいに開くと、
どうぞどうぞ、と手で招く仕草をするラブ。

「……ラブちゃん、何かあったの?」
「え?」
「だってほら、すごい汗」

祈里が指差した先。
ラブの額に大粒の汗が浮かんでいる。
しかし、その割には呼吸は乱れていないし、上気した顔をしているわけではない。

(冷や汗……?)

その事実が意味するところを美希は思う。
そういえば、さっきからラブの笑顔が何かぎこちないような……。

「あ、えっと、これはちょっとね、
 困った事になっているようななっていないような……」

言いながら頭をボリボリと掻くラブ。




「「……?」」

意味が分らず困惑する美希と祈里。
そこに飛んでくる、声。

「すみません、やっぱり私が出て行くのは、ちょっと」
「まあそう言わないで、折角娘の友達が来たんですから是非挨拶してください」

聞こえてくる会話が、二人の困惑を更に大きいものにする。

「せつなちゃんと……あゆみおばさま?」
「なんでどっちも、敬語なの……?」
「あははははは、まあすぐにわかるから」
「「?」」

ラブが笑ってごまかしているので、まったくワケが分らない。
首を傾げる二人の前に、答えが自分から現れた。

「あ、美希ちゃん、祈里ちゃん、いらっしゃい」

ラブの母、あゆみである。
いつもなら穏やかな笑みを湛えて美希達を出迎えてくれる彼女の顔に
今日、浮かんでいるのは満面の笑み。

「あゆみおばさま、何か良い事でもあったんですか?」

普段と様子が違うあゆみに、代表して美希が尋ねる。

「ふふ、わかるかしら。実はね……今年のクリスマスパーティ、
 せっちゃんが加わったのも勿論だけど、なんとね、凄いゲストが来てくれたのよ!」
「ゲスト?誰ですか?」
「この町にいる人なら、誰でも知っている人よ」

ちょっとイタズラっぽい笑みを浮かべると、わざと遠まわしな言い方をするあゆみ。

(知っている人っていうと……やっぱりミユキさん?)
(トリニティ全員とか?)
(もしかして……カオルちゃん?)
(アニマル古田さんとかじゃないよね)
(それは幾らなんでもないでしょ)
(うーん、誰だろ?)




相談しながら考えを巡らせる美希と祈里。
普通に考えればトリニティが妥当。
にしては、ラブの態度が腑に落ちない。
さっきから困った表情のまま頭を掻き続けているラブ。
幾らダンスレッスンで頻繁に顔を合わせているとはいえ、
憧れのトリニティが来てくれるならもっと嬉しそうにしても良い筈だ。
そんな風に二人が考え込んでしまったのを見て、あゆみは苦笑。

「ごめんなさいね、ちょっと意地悪な言い方して。
 折角来て貰ったのだから、二人ともまずはあがってもらわないとね
 ……じゃあすみません、ちょっとこっちに来て貰えます?」
「えっ……あの、本当に私は……きゃっ!」

あゆみの呼びかけに、遠慮がちな返事をする声。
その声の主が、強引に手を引かれたことでその姿を見せる。

「……」
「……」

現れたゲストを見て、言葉を失う美希と祈里。
目が点になる、とはまさにこのことではないか、そんな思いが二人の頭を掠める。

「あ、あの……は、はじめまして……」

そこにいたのは、体の前で組んだ手を所在無さげに動かしつつ、
非常にばつの悪そうな表情で、視線を彷徨わせながら俯いている一人の少女。

―知っているも何も、紹介された彼女達が一番良く知っている―

赤と黒の二色に彩られたドレスにも似た特徴的な衣装、
腰までの長さのウェーブのかかったピンク色の髪の毛、
そして、羽飾りのついたハートが左右に配置されたティアラという格好の
四葉町を守る四人の戦士の内の一人、キュアパッションが、そこにいた。



どどどどどどどどどどどどどどどど。

美希の行動は迅速だった。
ラブとパッションの腕をそれぞれ両の手に捕らえると、
そのまま玄関のすぐ前にある階段を疾走。
二階奥のラブの部屋に二人を放り込むと、後ろ手に扉を閉める。

「な・に・を・し・て・い・る・の・よ・
あ・な・た・た・ち・はーーーーーーーーーーーっ!」

そして、興奮と共に一気にまくし立てる。

「どうどう、美希タン、まずは落ち着こう」
「これが落ち着いていられますかってば!
 なんでせつな、パッションの姿でおばさまと一緒にいるのよ!
 ハッ……まさか、正体ばれたってことじゃないでしょうね!
 どうなの、ラブ!!」
「いやー、これには深い事情がありまして……」
「だからその事情って何よ!」
「美希ちゃん、落ち着いて」

ラブに詰め寄ろうとしている美希を後から追いかけてきた祈里がなだめる。

「私が説明するわ」

そこに掛けられる声。
ラブ、美希、祈里の三人はその声の主―キュアパッションの方を振り向く。

「まあ、深い事情っていうか……事故なんだけどね」

言いつつ一つ、溜息を吐き、やれやれといった表情を作る。
そのままラブのベッドに腰掛けると、三人にも周囲に座るように促す。

「昨日の夜―正確に言うなら今朝ね。その時の話なのよ」



今日の午前三時過ぎの事である。
家の中の住人が全て寝静まり、沈黙で満たされた桃園家。
その二階、ラブの部屋に一瞬ひときわ赤い光が満ちる。

「ふ~、やっと帰って来れたね」

その光が消えた時、部屋の中に立っていたのは
キュアピーチとキュアパッション、二人のプリキュアだった。
深夜の公園での戦闘が終わり、ベリーとパインを送り届けた後で
たった今、アカルンの力で家に帰ってきたのである。

「はああ~今日の戦いはしんどかったね~」
「私も、流石にクタクタ……」

途端にその場に座り込む二人。
本来なら、すぐにでも変身を解いて元の姿に戻るべきなのだが、
今はそれすらも億劫だといわんばかりに脱力した状態で、床に身を預けている。
それでも土足だけよくないからと、ハイヒールを脱いだパッションが、
ピーチにもブーツを脱ぐように促す。
その言葉に従ってブーツを脱ぐピーチ。
パッションはそれを受け取ると、自分のハイヒールと一緒にベランダに置く。

「ね、せつな……」
「うん……」

二人で並んでベッドの上に腰掛けると壁にもたれかかる。
やがて、どちらからとも無くお互いに寄り添い、肩を寄せ合う。

「せつな、大丈夫?さっきのところ、本当に痛くない?」
「大丈夫よ。プリキュアになっている間のことだもの、もう痕も残ってないわ」
「本当に本当?」
「本当に本当だってば。ラブ、いつからそんなに心配性になったの?」

からかうような口調で言葉を返すパッション。
しかし、更に続けようとした言葉は途中で止めた。
パッションに向けられたピーチの表情が、真剣だったから。

「うん、心配性にもなるよ。だってせつなの事だもの」
「……」
「せつなは、あたしの一番大切な人。せつなと一緒にいることが、私の幸せだから。
 でもその幸せは、ちょっと油断すると簡単にあたしの手から逃げ出しちゃうんだって、
 ……そのことをこの間、嫌というほど思い知らされたから」




それは、せつなが一人でラビリンスの占い館に乗り込んだ時の事。
朝起きて、せつながいなくなっていることに気づいた時の不安。
サウラーとウエスターにせつなを捕らえた事を教えられた時の焦燥。
せつながノーザの言葉に心を折られ、プリキュアである事を
諦めそうになっていた事を直感的に感じ取り、
ラブ自身の心を塗りつぶそうとする絶望を必死で押さえ込みながら叫び、
せつなの心を呼び戻した、ラブにとっても辛く、苦しい記憶。

「でも、あの時は私が勝手に……!」
「ううん、せつなは悪くない。
 悪いのは、せつなの決意を気づいてあげられなかったあたし。
 タルトはちゃんと気づいてたっていうのにね……」

だから、とピーチはその手をパッションの手に重ねると、ギュッと握り締める。

「あたし、もうこの手を離さないようにする。
 勿論、こうやっていつでも繋いでるわけにはいかないけどね。
 それでも、本当に手を繋いでいなくても、
 私達はいつも一緒だって感じていられるようになりたい。
 ……もう二度と、あんな思いはしなくて済むように、そんな風になりたいよ。
 だから、その為に頑張ろうって決めたんだ」
「……」
「あ、せつな、流石にちょっと引いちゃった?
 あたしってばちょっと執着心強すぎ?
 えーと、じゃあ今の無し!忘れて忘れて。
 ラブさんそんな事全然思ってませーん!」

開いた右手を頭の後ろに当て、照れ隠しのポーズ取るとあはは、と笑うピーチ。
しかし、握ったパッションの手を離そうとはしていない。
そしてその手に伝わってくる、わずかな体の震え。
それは、今でも彼女の心に影を射す、不安と恐れの感情。

(……こっちが本音なのね)

それを感じ取ったパッションは顔を崩して柔らかな笑みを作ると、
握られた手を自分からも握り返す。




「わ……せつな?」
「私も、同じだから」
「え?」
「私も、ラブと同じ……いつも一緒だって感じていたいから。
 だから、手を離さないことを一緒に頑張りましょ」
「……!」

掛けられた言葉に、一瞬目を見開くピーチ。
しかし、すぐにその顔が喜びの笑みで包まれる。

「……うん、一緒だよね。一緒に幸せ、ゲットしようね!」

そして二人は笑顔で向き合うと、静かに笑いあうのだった。





「……で、これのどこが事故なわけ?」
「あ……ごめんなさい、本題はこの次なの」
「延々とノロケ話聞かされるからアタシどうしようかと思ったわ」
「あう……」
「美希ちゃん、最後までちゃんと聞いてあげよ?」
「ノロケって、ねえ。美希タンとブッキーだって、
いつもあたし達の前で散々ちゅっちゅちゅっちゅしてるじゃん」
「……なっ」
「ラブちゃんも話の腰、折らないの」
「ブッキー……貴方全然動じないのね」





窓から差し込む光の眩しさをまぶたの裏に感じて、せつなは目を覚ました。

「ん……」

眩しさの次に感じた感覚は、肩にのし掛かる人一人分の重さ。

「ラブ……?」

目を瞬かせて、掛かってくる重さの正体を見定めようとする。
そこにいたのは、キュアピーチに変身したままで
せつなの肩に頭を預けて眠っているラブだった。

(あれ……?)

その格好を疑問に思い、自身の姿を確認するせつな。
そして、自分の着ているものが赤と黒の衣―キュアパッションのものだと理解する。

(そっか……私達、あのまま寝ちゃったんだ)

互いに身を寄せ合って話をしている内に、
いつのまにか意識を手放してしまっていたらしい。
今は一枚の毛布に包まっているが、これだってどちらがいつの間に掛けたものなのか。

(それにしても、変身したまま寝ちゃうなんて……)

自分が起きる前にあゆみや圭太郎がこの部屋に来たらどうするのか。
幾ら深夜に戦っていたからといっても、ちょっと無警戒が過ぎるんじゃないか。
私達ちょっとだらしないかしら、と苦笑するパッション。
でも、まあいいか、とも思う。

(ピーチとパッションの姿で、こうしているの、初めてだし……)

戦いの中でしか姿を現すことの出来ないもう一人の自分。
その格好でピーチの温もりを近くに感じ取っている。
大分この世界に馴染んできたパッションが、久しぶりに感じることが出来る新しい経験。

(これはこれで、ちょっとした幸せかも)

そう思い、このささやかな幸せを感じ取るパッション。
しかし、その小さな幸せは、一つの声によって破られた。




「ラーブー、せっちゃーん、いつまで寝てるの?そろそろ起きなさーい!」

あゆみの声。
同時に聞こえてくる、階段を上る音。

「!」

反射的に時計を見る。
長針と短針が指し示す角度は、午前11時。

(嘘……もうこんな時間?!)

「お昼には美希ちゃん達が来るんでしょー?二人とも起きて身支度しないとー」

動揺する声に追い討ちを掛けるのは、先程より近くから聞こえるあゆみの声。

「わっ!マズイわ……ラブ、起きて起きて!!」

慌てて自分に寄りかかっていたピーチを引き剥がすと、
得意の瞬発力を活かした前後運動で一気に揺さぶる。

「うわわわわわわわわ……」

急に頭をシェイクされる感覚に襲われるピーチ。
ちなみにプリキュア同士だったから問題ないが、
一般人相手だったらちょっとした惨劇がオプションで付いてくることが
確定な効果を発揮している。

「あわわわわわ……せ、せつな、何、一体どうしたの?まさかラビリンス?!」

頭に掛かるGで意識を覚醒させたものの、状況が理解出来ないピーチ。

「お母さんが二階に上がって来てるの、早く変身を解かないと!」
「うわ、マジ?それはヤバいね、せつな、変身解くよ!」

いちいち号令を掛けなくてもよさそうなものだが、
そこはリーダーの習慣とも言うべきか。
ピーチは腰につけたリンクルンに手を伸ばすと変身解除の操作を行う。
瞬間、体全体が桃色の光につつまれ、
変身前のピンクのパジャマにコートを着込んだ、公園に駆けつけた時のラブの姿に戻る。

「はぁ~危なかった~、ねえ、せつな?」

安堵の言葉を口にしながら、隣の少女に顔を向けるラブ。
しかし。




「せつな?」
「え……どして?」

彼女は、キュアパッションの姿のままだった。

「せつな、どうしたの?早くしないとマズイよ」
「う、うん、わかってる」

ラブに促されて、パッションはリンクルンをキャリーから取り出すと
何度も変身解除の動作を繰り返す。
それでも、その姿はパッションのまま。

「……嘘、戻れない……」

その事実を認識すると、青い顔で呟く。

「ええっ!どういうこと?」
「わからない、わからないけど、戻れないの!」
「えーーーーーっ!どどどどどどどうしようせつな!」
「と、とりあえずお母さんに見つかるとマズイから
 アカルンでどこか他の場所に……」

言いながらベッドから降りると、アカルンを手に取るパッション。

「待って、せつな、靴、靴!」
「ああっ!」

ラブの指摘でハイヒールを脱いだままだと言うことを思い出す。
大急ぎでベランダに向かおうとするが、
当然、そこには―部屋とベランダの間には―隔てる窓があるわけで。

「ふぎゅっ!」

ドンという衝撃音と共に、窓ガラスに激突、
そのまま、窓ガラスに沿ってずるずるとすべり落ちる。

「……せ、せつな?」

あゆみの接近と変身解除出来ないという二つの状況。
それによってパニック状態になった為なのか、
普段見せた事もない慌てたパッションの姿に言葉を失うラブ。
そこに―。

ガチャリ

「全くもう、さっきから声掛けてるんだから返事くらいしなさい、二人とも」

ドアを開けて、ラブの部屋に入って来るあゆみ。
それが、タイムオーバーの無情の宣告だった。



「……と、こんなことがあったの」

一通り話終えたパッションは、もう一度一つ、溜息を付く。

「リンクルンの故障ってこと?」

美希の問いかけに頷くパッション。

「あの後、試してみたんだけど……パッションハープとアカルンは普通に使えたわ。
 でも、変身の解除だけがどうしても出来なくて……」
「何か心当たりはあるの?」
「もしかして……昨日のミサイル?」

今度は美希と祈里が立て続けに投げかけてくる疑問。
それに対して口を開いたのはラブだった。

「うん、あたしもせつなも原因って言ったらそれくらいじゃないかって思ってる。
 ……でね、今、タルトとシフォンに長老の所に相談しに行って貰ってるんだ」
「……ああ、それで」

いつもならこの部屋でせわしなく騒いで、動き回っている二人の妖精の姿。
それが見えない事を気に掛けていた祈里が、納得する。

「で、あゆみおばさまの方はどうなの?」

もう一つの懸念。
今現在この家の中にいて、唯一プリキュアについての秘密を共有していない存在。
ラブの母、あゆみ。
しかし、先程の応対を見る限り、パッションの事を受け入れていたようではあるが。

「あー……それについてはねー……」

再び頭を掻く仕草を見せながら、困った表情をするラブ。
そこにパッションが言葉を繋げる。

「お母さん、プリキュアのファンなんですって」
「「ファン?」」

耳にした言葉に、思わず顔を見合わせる美希と祈里。

「いや~、娘のあたしも知らなかったんだけどね……
 お母さん、週刊四つ葉のプリキュア特集、毎回スクラップにして
 保管してるくらい、プリキュアの事好きなんだって」

(……千香ちゃんみたいね)
(私もそれ思った)



「……で、そんなわけなんで、パッションが部屋にいた事にも
 驚くより先に感激しちゃって……
 それで、是非クリスマスパーティーにも
 出てくださいって流れになっちゃって」
「私も最初は断って退散した方が良いと思ったんだけど、
 お母さん、すっごく嬉しそうな顔してるからなんだか断りきれなくて……」
「そういうわけだから、美希タン、ブッキー、ちょっと大変だと思うけど、
 せつなが元に戻れるようになるまで、今日のパーティーでいろいろと
フォローしてあげてくれないかな?」
「私からもお願い。正体がばれないように精一杯頑張るから、
 このままパーティをやらせて欲しいの」

言い終えると、二人で一緒に頭を下げるラブとパッション。

「「……」」

顔を見合わせる美希と祈里。
しかし、次の瞬間には二人とも笑顔を浮かべる。

「もっちろん、OKよ!」
「私もOK。喜んで協力させて欲しいな」

その言葉を聞いて、こちらも笑顔になるラブとパッション。

「やったーーっ!」
「ありがとう、二人とも」

口にするのは、歓喜の言葉と感謝の言葉。

「お礼を言われるようなことじゃないわよ。元々そのつもりだったし」
「え?」
「今日のパーティーはね、最初からせつなちゃんが主役になる予定だったって事」
「そうなの?」
「あーっ、美希タン、ブッキー、それバラしちゃダメ!」

彼女なりに用意していた今日のサプライズ。
それをあっさりバラされた事を抗議するラブ。
しかし美希も祈里も取り合わずに、言葉を続ける。




「何言ってるの、こんな状況になったんじゃもう隠しても仕方ないでしょ」
「そうそう、こうなっちゃったら、むしろ最初からせつなちゃんには
 お客様として振舞って貰った方がいいと思うな」
「う~、そうなのかな~」
「私は……パーティーが成功してくれるならそれでいいわ」
「決まりね、じゃあいい?
 まず、パッションはあくまで今日、突然来たお客様ってことだから。
 私達はお互いに初対面ってこと。OK?」
「わかったわ」

美希の言葉に頷く三人。

「次に、せつなの事だけど……ラブ、おばさまには何て?」
「パーティーの買い物で出かけてるって事にしてある」
「さっき『せつなから』電話を入れておいたから、そっちは大丈夫」
「そこは完璧ね、じゃあ次」

ラブとパッションの返事を確認すると、話を進める美希。

「リンクルンのことはタルト任せね」
「何か分ったら、
 シフォンの力でリンクルンにメールを送ってくれる事になってるわ」
「そう、そっちは状況待ちってことね。じゃあ最後にラブ、貴方だけど」
「へ?あたし?」
「そう、一番問題なのは貴方なのよ。
 なんかの拍子に『せつな』って呼んじゃいそうだし」
「ええ~、そんなことないよ。あたしそこまで間抜けじゃないし、ね、せつな」
「……」
「……」
「……」

場を沈黙が支配する。

「……ほら」
「……ごめんなさい」

ガックリとうなだれるラブ。

「……とにかく、私もブッキーも出来るだけカバーするけど、気をつけなさい」
「はぁ~い」

やらかしてしかった後だけに、今度は素直に返事をするラブ。
そこに、階下からあゆみの声が飛んでくる。




「ラブ~?美希ちゃん、祈里ちゃん、パッションさ~ん、何をしてるの~?
 お茶にするからみんな、降りてらっしゃ~い」

その言葉が合図とばかりに、四人は顔を見合わせる。

「よし、じゃあ今から作戦開始だからね。みんな上手くやって、
 クリスマスパーティー、成功させるわよ。
 ……っていうことでラブ、後、お願い」
「え?あたし?」
「元々今回のパーティのプロデュースはラブがやってたわけだし。
 それに、最後に締めるのはやっぱりラブじゃないとね、アタシ達の場合」
「うん、私もそう思う。ラブちゃんが号令掛けてくれないと始まった気がしないかな」
「ラブ、お願い」

三者三様に、ラブを頼みとする言葉。
いつだってそうだ。
この四人をまとめて、引っ張っていくのはラブだから。
そしてそれは、本人が一番良くわかっているから。

「オッケー!そういうことなら、このラブさんに任せなさい!」

言葉と共にドンと胸を叩くと、美希、祈里、パッション、
三人の顔をゆっくりと見回す。
そして大きく息を吸い込み、一拍置くと、想いと共に言葉を吐き出す。

「よーし、じゃあ今からクリスマスパーティを成功させて、
 みんなで幸せ、ゲットするよ!
 ……せつな、絶対楽しいクリスマスにしようね!」
「オッケー、完璧なパーティー、やってみせるわよ!」
「私、上手くいくって信じてる!」
「ラブ……私も精一杯頑張るわ!」

ラブの宣言に続く、三人の言葉。
こうして今年の、桃園家クリスマスパーティの一大プロジェクトは開始されたのだった。

―その中に、若干の波乱を含みながら―


<続く>


競-253
最終更新:2010年01月18日 01:13