アットウィキロゴ

競-403

「はい、おとうさん、これっ」


特に手をかけたチョコレートを渡した後、じゃれつくように圭太郎に甘えるラブ。
ある日を境に、ラブ、いや桃園家の家族の言葉や表情や仕草は大げさなものになっていた。

――まるで足りない何かを埋めようとするかのように


窓辺に座って部屋を見渡した。

「こんなに広かったかなあ」

少し前まで、シフォンが居て、タルトが居て。


(らぁぶぅ)

(あぁ、シフォン、それさわったらあかんて!)


「シフォンとタルトにもチョコレートあげたかったな」

あ、でもスイーツ王国だもん。いっぱい周りにお菓子あるもんね。


毎日、せつなと遅くまでずっとこの部屋でお話してたっけ。


(ねぇ、ラブ、そろそろ寝ないと明日起きられないわよ)


「せつなはどうしてるかな」

せつな、あたし元気だよ。

毎日とっても楽しいんだ。

今日はね、バレンタインデーって日なんだよ。
大好きな人にチョコレートをあげて想いを伝えるの。

由美に、美希たんは……会えなくて。ブッキーに、カオルちゃんに、
ミユキさんに……も会えなくて。おとうさんにさっきあげてきたんだ。

本当はね、せつなにあげたかったんだ。一番心がこもった大きいの。
さっきね、せつなの部屋に置いてきたんだよ。
おっきく、せつな大好きって書いてあるの。

大丈夫、あたしは寂しくないよ。


「おやすみ、せつな」


畳のベッドに横になる。その時、鏡台が光を放ちだした。

――えっ

何かが出てくる。


赤い包装紙に包まれた小さな箱。
赤いチューリップみたいな形の見たことのない鉢植え。

――これって

となりの部屋に走った。

やっぱり……無い。あたしが置いたチョコレート。

せつな? せつななの? せつなだよねっ!?

「せつな、どこっ! せつな! せつな」


居ない。ベランダにもどこにも。

部屋に戻って包みを開けてみた。

「私も大好きよ。ラブ」

ただ、それだけが書かれていた。

涙が溢れてくる……

やっぱり、せつなだったんだね。


――赤いチューリップの花言葉 それは「愛の告白」――


ありがとう、せつな。きっと、すぐに、また会えるよね。




競-486はせつな視点で
最終更新:2010年02月16日 23:45