「おやすみなさい、ラブ」
部屋に戻りカーテンを閉める。電気を消す。
訪れる静かな暗闇。
かつては私の心の象徴だった闇も、今は、こんなに優しく温かい。
ラブが選んでくれたパジャマと枕。
おかあさんが干してくれたんだろう。布団がぽかぽか温かく良い匂いがする。
愛情に満ちた部屋。調度品の一つ一つが語りかけてくる。
――幸せになりなさい――って。
名も無き少女時代、ただ震えて泣き叫ぶばかりの毎日。
私はここにいるわ。
誰か気がついて! 誰か私を――私を見て!
ただ抱きしめて欲しかった。必要だと言って欲しかった。
ひとりきりで生きていくには、私の心は――弱すぎた。
どうしても必要なのに、手に入らないのなら、憎むしかないじゃい。
悲しくて、苦しくて、辛いのなら、考えるのをやめるしかないじゃない。
「我が名はイース! ラビリンス総統メビウス様が僕」
不安を忠誠に、寂しさを憎しみに変えて戦い続けた日々。
信じていた。いつか、きっと、お前が必要だって、そう言ってもらえると信じていた。
結局与えられたのは、凄まじい苦痛と、苦悩と、孤独なままの死。
アカルンがくれた新しい命と、そして知る本当の絶望。
何も持っていなかった私が、唯一持っていたもの。持っていたはずだったもの。
無垢な心と、人を愛する資格。それすら失ってしまったこと。
あるはずのない希望の光。その先にあなたが居た。
生きる資格も、優しくされる資格もない私に、溢れるばかりの愛情や喜びを与えてくれた。
ラブ、あなたが好き。
あなたに出会えてよかった。
とても感謝してるの。そして、愛しているわ。
「せつな、いいね?」
「ええ、もう大丈夫よ。何があっても後悔はしないから」
緊張した面持ちで話す私に微笑みかける。そんなに固くならなくてもいいよ。寂しさをまた一
つ埋めるだけだからって。
恥ずかしさに震えている、薄明かりに照らされたラブの裸身。
引き締まって張りがあって、生命力に満ち溢れていて。そして、美しかった。
ラブも怖いんだ。恥ずかしいんだ。そして不安なんだ。
本当に、こんなことをしていいのかって。
ラブの覚悟を感じる。
分かち合うつもりなんだ。私の寂しさも苦しみも。自分がこれから掴んでいく喜びも幸せも何
もかも。
一緒に生きていこうって。一緒に幸せを掴もうって。これはそのための儀式。
「せつな。綺麗だよ」
自分の容姿に興味を持ったことなんて無かった。でも今は感謝しよう。ラブにそう言ってもら
える姿に生まれたことに。
優しさと思いやりに満ちた眼差しで見つめられる。体から力が抜け、ラブの体に吸い寄せられ
る。
ラブの瞳が迫ってくる。均整の取れた美しい顔。ラブの匂いは太陽の香り。
おかしいわね、太陽に匂いなんてない、でもそう感じるの。
唇が触れ合う。それだけで体に電流が走る。
何度目かのキス。そこから伝わる想い。
愛してる――愛してる――大好きだよ――いっしょに幸せになろうねって。
ラブの舌が唇を割って入ってくる。そっと差し出した私の舌と絡み合う。繋がっていく。
二人の想いが溶けていく。
夢中になって求め合った。何かに急かされるように。足りない、足りない、まだ足りないのっ
て。
互いの肌を頬でなぞる。滑らかさを確かめる。匂いに浸る。体温を感じあう。
指で、舌で、敏感な部分を刺激しあう。
「せつな。心臓の音、すごく激しくなってる。ドクン、ドクンって」
「ラブだってよ。ずっとこうして聞いていたいくらいに」
ラブの唇が私の胸の先を捉えた。吸って、歯で軽く転がして、もう片胸をつまんだり、爪で軽
く引っかいたりした。
「うっくっ、つぅぅ――――あっ、あっ、んん~~くぅぅ」
行き場の無い快楽が蓄積し、切なさと共に苦しみに変わる。その手前でラブは動きを止める。
荒れる呼吸を静めながら、今度は私が責める。同じように。優しく、奏でるように。
「あっ、いぃ、せつなっ、そこっ、うっ、あっ、あ、あっ」
精一杯膨らんだラブの小さな突起。唇で引っ張り、舌で嬲り、指で弾く。その都度、ラブの体
はしなり、仰け反り、悶える。
ラブの体はラブのもの。本来はラブが意識し、動かすもの。
今は私が動かしている。私の意志がラブの中に入りこんでいる。互いの意識が交じり合い、結
び合い、一つになる。
私の体はラブのもの。ラブの体は私のもの。
もっと繋がりたい。もっとくっつきたい。溶け合って一つになりたい。二度と寂しさなんて感
じないくらいに。
知識なんて無い。テクニックなんてあるはずもない。
でも互いに同じ年の女の子。感じた場所をすぐに相手の体に返す。伝え合う。
喘ぎ声が漏れる。体に眠る本能が呼び起こされる。夢中になって感じた。感じさせた。
もっと、もっとって。
空気は冷えているのに、体はどんどん熱を帯びる。その熱を奪い合うかのように激しく求め合
った。
まるで――そう。まるで、どっちが相手のことをより好きか――競い合っているみたいに。
ラブの真剣な視線に、一瞬我に返る。
「ねえ、せつな。あれから――自分で――した?」
「えっ、ええっ――――。そんなこと、しないわ」
この前教えてもらったこと。それは……自分ですること。
女の子の体は、刺激を繰り返すほどに敏感になっていく。感じやすくなって、昇り詰めやすく
なるんだってこと。
でも、私はできなかった。自分の中の何かを汚してしまうような気がして。裏切ってしまうよ
うな気がして……。
私の体はラブのもの。だから、ラブだけが自由にしていいんだって。
「しょうがないな、せつなってば」
「ごめんなさい……」
怒られてしゅんとなる。また迷惑をかけてしまったのかもしれない。一緒に感じようって約束
したのに。
「大丈夫だよ。だけど、荒療治するよ?」
「うっ、うん、頑張るわ」
ラブの体が私の体を滑るように下がっていく。ベッドから落ちるんじゃないかってくらいに。
「何をするの?」
「せつなの、大事なところにキスをするんだよ」
「えっ、嫌っ、ダメよっ! それはダメ、嫌っ、汚いもの!」
ラブが構わず舌をすべらせる。下腹部からあそこに向けて。
嫌悪感と恐怖感で気が変になりそうになる。
嫌っ――嫌っ!――やめてっ!
私がっ――私がラブを汚しちゃう!
おへそから走った舌は、私の大事な部分を避けるようにふとももに下りていく。そこだって、
濡れていたはずだ……。
再び上がり、焦らすように、また下りていく。
羞恥で顔が、意識が真っ赤に染まる。頭を、体を振って懸命に逃げようとする。
ダメッ、やめてっ、それだけはダメッ。抵抗したい気持ちと、しちゃいけない義務感。
意識の葛藤とは裏腹に、期待を込めて秘部は蜜を溢れさせ、まだかまだかと待ち構える。
ついにラブが動いた。割れ目の下の部分から、溢れる蜜を吸い取るように動く。
丁寧に丁寧に舐めていく。
『つぅぅ――むぅぅ――いやっ! あっ、あっ、あん、あん、あん』
「柔らかいね、せつな。こんなに……柔らかいんだね、女の子のここって」
優しく、丁寧に、だけど容赦なく私を責める。指でぴっちり閉じたつぼみを開き、舌を差し入
れてくる。
与えられる快楽だけでも壮絶なのに、私のあそこがラブの口を汚している。そう考えると、罪
悪感が更に私を苦しめる。
「もうっ、もういいっ、やめて、ラブ。もういいの、もういいからっ」
私の嘆きに反応するように、さらにラブは激しく舌を動かした。割れ目の上に到達して包皮を
めくり、核を舐めた。
上から下に。あるいは押し込むように。咥えるように。
全身に何かが走る。今まで感じてきた電流のような、そんな生優しいものじゃなくて。
真っ白な閃光。あるいは槍のような、巨大な何かが私を串刺しにする。
まぶたの裏が眩い光にあてられたかのようにチカチカする。
もう何をしているのか、何をうめいているのかも認識できない。
全身を溶かされて舐められてるような気がした。快楽と呼ぶには激しすぎる衝撃。
頭がおかしくなり自分が壊れてしまう気がした。
突然、上空に放り出されたような感覚に襲われる。次の瞬間には奈落の底に落下していく。
巨大な快楽の嵐の通過に、体が狂ったように痙攣し、あそこはビクンビクンと勝手に動いてい
る。
「どうだった?」
ほんの一瞬だけど、意識を失っていたのかもしれない。気がついたら心配そうに私を見つめる
ラブがいた。
「今のがね、イクってことだよ。ごめんね、無理させちゃって。びっくりしたよね」
優しくラブが私を抱き寄せてくる。私の髪を、頭を撫でてくれる。
「今夜はもう、このくらいにしておく?」
ラブの瞳に吸い込まれそうになる。優しい目。私の幸せへの願いに満ち溢れていた。
それに安心して、やっと状況が理解できた。
ラブは、イッたことのない私のために、あんなことをしてくれたんだ。
一緒に感じようって約束したのに。
「大丈夫よ、ラブ。まだ頑張れるわ。今度は一緒に、そう約束したもの」
「うん、そうだね、そうだったよね」
力の入らない体に鞭を打ってラブを愛でた。敏感になった肌がこすれあうだけで喘ぎ声がこぼ
れる。
そしてラブが動いた! 自分のあそこを私のあそこにくっつけるようにして位置を合わせる。
お互いにまだほとんど生えてもいない。濡れてやわらかくなった剥き出しの粘膜がこすれあう。
胸の先が互いにぶつかり合い、倒しあい、固く尖る。
ひだがひだを割り、複雑な形の秘肉が刺激しあい、想像を絶する快楽を生み出した。
「うぅ、くぅぅ、いぃ、くぅ。ラブぅ、ダメっ、もうダメッ!」
「せつなっ、あん、あっ、あん、あっ、あっ、うぅ~~~~!」
何も考えられない。ただ迫り来る快楽に身を任せる。ただ一つ確かなこと、それは私がラブの
腕の中に居ること。
体が震える、自分の意志と関わらず。
来る! 快楽の槍に全身を突き上げられ、投げ出され、突き落とされる。
ハァ――ハァ――ハァ――ハァ
荒い呼吸が、静まり返った部屋に響き渡る。
でも、落ちた先にはラブがいた。いつだって側に居てくれる。私の――大好きな人。
ラブの体も震えていた。痙攣していた。お互いの震えを抑えるかのように、力の入らない体で
抱きしめあった。
「どう……だった、せつな。良かった?」
「馬鹿――――もう、疲れたわよ」
二人で笑いあった。そして、初めて肌を合わせた時のように、全身を寄せあって寝ることにし
た。
心地よい疲れと充実感。愛しい人の火照った体に包まれた、これまでの人生で最も幸せな眠り
だった。
「おはよう、せつなっ!」
「おはよう、ラブ」
手を繋いで登校した。肩や頬を寄せ合うことが多くなった。見つめあう時間が増えた。
これまでと少しだけ違った毎日の訪れ。
「どうしたのラブ、せつな。なんだか様子がおかしいわよ」
「いつも本当に仲が良いよね、うらやましくなっちゃう」
美希やブッキーにもからかわれた。本当のことはもちろん内緒だけど。
「ねえ、ラブ。私たちって恋人同士になったってことかしら?」
「そうだね。でも、せつなの思うように考えてくれたらいいんだよ」
「私の思うように?」
「愛し合ったと思ってくれてもいいし、いけない遊びだったと思ってもいいんだよ。
あたしの、あたしたちの想いを伝えあっただけ。せつなは何も失ってないんだからね!」
なら、私の答えは一つしかない。真っ直ぐ見つめて、言葉をつむいだ。
「私はラブが好き。愛してるわ。ずっと一緒に居たいの」
「あたしもせつなが好き。せつながいいんだ。もちろんずっと一緒だよ」
ラブの最高の笑顔を心に刻みながら思った。
私はもう寂しくない。
愛している。愛してくれる人がいる。
手を取りあって、生きて行きたいと思える人がいる。
本当にずっと――いっしょに居られたらいいのにね。
先のことはわからない。だから、今を精一杯生きよう。そして愛していこう。
私は心の中でそう誓った。
最終更新:2010年07月07日 22:51