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避2-117

 クリスマスが終わり、久々に皆で集まったドーナツカフェ。

 時折、美希とラブは視線を絡め、見つめ合い、頬を赤らめる。
 微笑み合い、じゃれあい、肩を寄せ合う。
 当然のように隣り合わせに座ったテーブルの下では、お互い膝小僧をくっつけ、こっそり手を繋いでいた。

「せつなちゃん……美希ちゃんとラブちゃんって、何だか……」

「ブッキーも気づいた?」

「だって、あまりにも……」

「……そうよねえ?」

 せつなと祈里には、どう見ても美希とラブの2人が恋人同士に思えてしまう。
 公然といちゃついているのだから、当然と言えば当然の結果だった。

 いつの間に、そうなったんだろう。全然知らなかった。祈里は考える。
 最近になって、2人が想い合っていることに、祈里は密かに気づいていた。
 しかし、2人がこんなにも早く幼なじみという壁を乗り越えていたなんて。
 2人がそこまでの関係に致っていることは、祈里の予想を遥かに越えたことだったのだ。

 少し前までの祈里なら、幼い頃からの気心の知れる3人の中で、1人だけおいてきぼりにされたような気持ちになり、寂しさや悲しさを覚えたことだろう。
 しかし、今の祈里は違う。クリスマスの出来事をきっかけに気づいた、せつなへの特別な感情が、祈里を変えていた。
 祈里は今、美希とラブの関係を、悲しむのではなく、羨んでいた。

 いいなー、美希ちゃんとラブちゃん……。
 それにしても、いつの間に?あっ!もしかして、クリスマスの晩に……?きっとそうだったんだ。
 わたしもいつか、せつなちゃんとあんな風に……。
 だけど、せつなちゃんはどう思ってるんだろう。ラブちゃんが取られたような気持ちになって、寂しがっていないかしら。
 あっ!わたしったら、一番大事なこと忘れてた。
 せつなちゃんには好きな人がいるかどうかってこと。もしもいるなら、それは誰なのかっていうこと。
 やっぱりラブちゃんかな。それとも……美希ちゃん?
 どっちにしろ、せつなちゃんが、美希ちゃんかラブちゃんを想ってるのなら、この状況はかなりツライはずよね……。

「あの……せつなちゃんはどう思う?」

「ん?何を?」

「何って……美希ちゃんとラブちゃんのことよ」

「ああ。まったく、よくやるわよ。見てられないわ。ブッキーもそう思うでしょ?」

「う、うん……そうだね」

 せつなの呆気ない返事に、祈里は次の言葉が出せないでいた。
 せつなが好きなのは、ラブでも美希でもないようだ。
 もしかしたら、他に好きな人がいるのかも知れない。
 祈里は何の気無しに、せつなが知らない誰かと肩を並べて歩いているシーンを想像してみる。
 だが、ただそれだけのことなのに、軽い眩暈に襲われそうになる。

 知らなかった。わたしって、こんなに嫉妬深いコだったんだ……。
 けど、それだけわたしは、せつなちゃんが好きっていうことなのかな。

 今度は、せつなの隣を歩く人物を、自分に置き換えて想像してみる。
 ラブと美希がしているように、見つめ合い、視線を絡めるせつなと自分を思い描き、祈里は頬を赤らめた。

「なあにブッキー、顔が赤いわよ?」

「な!何でもないよ!」

「ヘンなブッキー」

 せつなは笑う。祈里を見て笑ってくれる。
 今はまだ、これでいい。この関係が心地いい。
 たわいもないことで笑い合えるポジション。
 友達同士であることに、物足りなくなる時もあるけれど、今はこれでいいのだ。
 真冬とはいえ、昼下がりの優しい陽射しの中で、祈里は確かに幸せに包まれていた。

 せつなはまだ、誰のものでもない。



み-113
最終更新:2010年06月22日 23:24