一人今だにあたしに、えっちに何を求めているのかわからない人がいる。
高級マンションの一室。あたしはソファーに座っている。
向かいのソファーには清純派で売り出している人気女優。優雅に珈琲を飲んでいた彼女は挨拶のように軽く、とうてい日常会話ではでてこない言葉を口にした。
美希の自慰が見たい、と。
あたしはいつものようにゆっくり服を脱ぐ。彼女は自分のパーカーを脱ぐと残りは下着だけになったあたしに渡した。これを羽織ってしろということだ。
彼女はなぜかいつも自分の身につけているものを一つあたしにつけさせた。
「いいよ。はじめて」
―――――
「ねぇ、あなたは満足するの?」
あたしはけだるさの残る体を隠そうともせずそう聞いた。
「私は美希が満足してる顔を見るだけで気持ちいいけど」
あたしには理解できないな。
彼女は隣に座るとあたしの髪を優しくといた。
「そういえば、トリニティのミユキちゃんからダンスを教わってるそうね」
「うん。どうかした?」
「彼女、女の子好きだよ。私の趣味じゃないけど。ちょっとよくない噂もあるから気をつけなさい」
「え?」
ミユキさんが?あたしは彼女に詳しく聞こうとしたがよくは知らないと言われてしまった。
あたしが彼女の胸に手を伸ばそうとしたらパチンと軽くはたかれた。
「人に触られるの好きじゃないの」
「よく女優できるね」
「演技はできるから」
変わってる。
「触らないでね。大人しくしてて」
彼女は自らも服を脱ぎ、あたしにまたがった。お互いの秘所が重なり合い卑猥な音が鳴った。
ほんとにあたしを見てるだけでもいいらしい。彼女はあたしと同じくらい濡れていた。
3時間ですごい金額だ。家に帰りお金を、隠してある箱にいれる。使いもしないのにたまっていく。箱は満たされていくのに反比例して、あたしの心は隙間が増えるようだった。
ダンス練習日。ラブとブッキーがささいなことで衝突してしまった。しまいにはミユキさんに散々注意され休憩中に二人とも別々にどこかへ行ってしまった。
少しだけ違和感を覚えた。ミユキさんの怒り方が公平じゃない気がして。
おろおろとしてるせつなの手を掴んでベンチへ向かう。少しほっとこうと思った。シフォンが遊び相手が戻ってきたと思って目を輝かせている。
自販機からミネラルウォーターとスポーツドリンクを買ってせつなの元へもどる。
スポーツドリンクを渡して隣に座った。
「ありがとう。あのさ……」 「今はそっとしとくしかないよ」
せつなが目をふせたので、そっけなく言ってしまった自分を反省して、せつなに話しかけた。
「青春だから」
「どういう意味?」
甘酸っぱいのさーと言ってせつなにもたれ掛かった。
シフォンがあたしとせつなの周りをふよふよ飛んでいる。ちょっと気が散るのでシフォンをつかまえ、ジャージを少し開けてシフォンの体をいれた。顔と手だけだした状態。シフォンは少しふて腐れたみたいだ。ぶーっと唸っている。
「うひゃあ」
情けない声をあげてあたしは飛び起きた。炭酸飲料の缶をあたしの首にラブが押し当てていた。
「ははー、美希たん変な声」 「ばかラブ」
「あのさ、あたしは平気だからブッキーの話聞いてあげて」
ころころと笑っていたのに真剣な顔になってあたしに言った。シフォンがはしゃぎだす。あたしは立ち上がってジャージを脱いだ。シフォンをタルトに渡して、ジャージをラブに投げた。
「暑いから持ってて」
~side(S)~
走っていく美希をラブは見つめていた。
「仲直りできそう?」
「どうかなー」
ラブは先ほどまで美希がいた場所に座る。ケンカしたとは思えないぐらい清々しい表情をしている。
少ししてどこかに消えていたミユキさんも戻ってきた。
「せつな、大好き」
「うん」
私もラブが好き。美希とブッキーも友達として好き。だから早く二人が仲直りできたらいいな。
少し沈黙が続いた後ラブが美希のジャージを見つめ口を開いた。
「これってさ美希たんなりの気遣いなんだよね。昔からさ、どっちかが淋しい思いしそうなときは自分の物渡すの。ちゃんと後でくるからねってことで」
「美希らしいね」
私は大事にされてるラブがちょっとだけ羨ましくなった。
「そのミネラルウォーターもねー」
「えっ?」
言われて気づいた。私の上のポケットには美希の飲みかけのペットボトルが入っていたのだ。
「美希らしい」
もう一度心からそう思った。
「いいわねー青春」
「ミユキさんも若いですよー」
「ラブちゃん達といるのは楽しいわ」
ミユキさんはラブの頭をぽんぽんと笑って叩いていた。
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やっと追いついた。
「ブッキー」
「美希ちゃん?」
振り返ったブッキーは目を赤くしていた。とりあえず涙をTシャツの袖で拭ってあげるとブッキーは文句を言ってきた。
「……こういう時は手で拭ってくれるんじゃないの。せめてハンカチ」
「ハンカチ持ってないし、手だと拭いきれない。鼻はかまないでよ」
あたしが笑いながら言うと、かまないよとブッキーは苦笑した。
「ラブちゃん怒ってる?」
「ラブが行けっていったから大丈夫じゃない?」
そっかぁとブッキーは視線をあげた。ラブとブッキー。
あたしとラブの場合だと『衝突』して言い合いになって疲れて仲直り。これもケンカかぁ。
あたしとブッキーは……ケンカしたことあったっけ?
ブッキーは美希ちゃんが言うことが正しい、危ない雰囲気になるといつもそんなことを言ってたっけ?
あたしはその言葉に納得いかない気持ちで一人で腹を立てていたと思う。ケンカしたいわけじゃない。気持ちがちゃんと伝わらないことが悔しかった。
この時あたしは、あたしに対するブッキーの態度は、ラブとは性格が違うからそんなものなのかなと思っていた。
「仲直りできそう?」
気づくとあたしはブッキーを抱きしめていた。うんってブッキーが小さくつぶやいた
ブッキーにTシャツを濡らされながら、あたしはこの間のせつなを思い出して微笑んだ。
ブッキーを、皆をちゃんと支えてあげなきゃって思った。
ブッキーを見送ってラブ達にメールを送ると、家にいるらしいので行くことにした。
「お疲れ様」
ラブの家にあと50メートルというところでせつなが待っていた。
「ラブと二人の方が話しやすいかと思って」
「ジャージを取りに行くだけ。大丈夫みたい」
そうと言ってせつなからペットボトルを渡された。
「いらないとは言わないでよ。寂しくなるから」
「モデルは一日沢山水を飲みます」
あたしの言葉にせつなはふふっと笑った。
「一緒に帰ろっか」
「美希は皆のお姉さんみたいね」
「妹たちの心配ごとがつきなくて」
あたしが苦笑して言うとせつながたたっとあたしの前に来て
「だったら私が美希の心配はするから」
そう言った。
あたしがせつなだけラブやブッキーと接し方が違う理由がなんとなくわかった。こうやって彼女は対等に立つから。ラブやブッキーとは違う安心感をもたらしてくれるから。
「若い地球人の女の子は夜の挨拶ににゃーって言うんだよ。言ってみて」
「あの時みたいに騙されないわよ」
地球人がカエルを猫のような感覚で扱うと嘘をついたとき、せつなは嬉しそうに一匹のウシガエルを捕まえて、あたしの家に来た。可愛いいでしょうと。
あたしは絶叫してカエルを雨の降る外へ帰し、ずぶ濡れのせつなを家へ招き入れた。
「カエルより可愛いいものが見れたわ」
「いつか仕返ししてやるから」 「恩返しがいい」
二人で笑いながら夕日の沈む中を歩いた。
最終更新:2010年11月25日 23:55