(22)
トントン……トントン……
さっきから一定の感覚で静かな部屋に音が響く。
こういうものは一度気にしてしまったら耳から離れてくれない。
それをあらわすように、私の手元のページはなかなかめくられない。
「美希ちゃん、指」
「あ、ごめん」
やはり無意識だったらしい。
ようやく部屋に静寂が戻る。
「難しい問題に当たった?」
「うーん」
「癖だよね。悩むと指打つの」
「ブッキー、教えて」
「いや」
笑顔でばっさりと断る。
文句を言ってるが無視して本に目を戻す。
休日の午後にいきなり宿題を持ち込んで私の部屋でやりだした人物に気を使う必要はないと思う。
「この部屋だとやる気が増すのよね」
「人の部屋を勉強部屋扱いしないでよ」
「あー、もうだめ。集中力が切れちゃった」
美希ちゃんはペンを机に放りなげるとクッションを抱きしめ、床に寝転がった。
「ブッキー、外行こう」
「私はやることあるもん」
「読書でしょ?中断して買い物にでも行こう」
意外と美希ちゃんは強引なところがある。
普段はすましてる分、私たちに対して本人は気づいてないだろうけどわがままに甘えたい部分があるのかもしれない。
「美希ちゃんが何でうちに来たか教えてくれたらいいよ」
「え?暇だったから」
「淋しかったんでしょ?」
「なんのこと……」
「せつなちゃん学校の用事で今日忙しいもんね」
「もー、最近なんでつっかかってくるのよ」
ふわりとクッションが宙を舞う。私の手元にやってきたクッションを恨めしげに美希ちゃんが見る。
「付き合っちゃえばいいのに」
「いや、それは……」
「ちゅーはしてるのに?」
「なんで知ってるの!?」
アカルンを使って不法侵入をして、嬉しそうに私に語った彼女の顔は今だに覚えている。
「ブッキーは昔はもう少し可愛い性格してたのに……そうでもなかったわね」
「そんな私が好きだったもんね」
「もー」
「今でも好きだったりして」
「そんなこと……」
椅子から降りて彼女のスラリと長い脚の上に跨がる。
不敵な笑みで近づくと、びくりと身体を震わせた。
「キスしてみる?」
「ちょっと!」
抵抗する身体を押さえ付け、優しく頬を撫でると小動物のように目を潤ませた。
「ダメ……だってば」
「黙ってればばれないよ」
グロスがのっている唇を指で触れればぷるんとした感触が返ってきた。
指を離した時にねっとりと纏い付くグロスがいやらしい。
少しずつ距離をなくしていき、お互いの吐息が感じられるほど近づくと美希ちゃんが目を閉じた。
それを確認した私は最後の距離をなくして――――
ゴンッ
「いったあああぁい」
思いっきり頭突きをした。
私のおでこもひりひりしてるけど様子を見るに、美希ちゃんの方がもっと痛いと思う。
「浮気者」
「なんかごめんなさい……」
「せつなちゃんとはまだ付き合わない理由、なんとなくわかった気がする」
「ブッキーのことがまだ好きとかそういうんじゃ」
「やっぱり好きだったんだ」
「あー!」
彼女の新たな一面を見た気がする。完璧主義者で自信家な彼女の。
「優柔不断」
「返す言葉もございません」
「私は美希ちゃんをそういう風には見ないからね」
「…………うん。そうして。友達がいい」
美希ちゃんなりにけじめをつけるまでは付き合わないんだと思う。
こんな調子だと暫くは無理っぽいね。どんまいせつなちゃん。
「ところで、ブッキーはやっぱりラブのことが」
「ねぇ、携帯のこのキー押すとせつなちゃんに電話が繋がって家に呼んじゃえるんだよね。もう用事済んだだろうし」
「重ね重ね申し訳ありませんでした」
ほんとに泣きそうな目をするので、私から電話をかけるのは止めておいた。
流石に今日、今すぐ会うのは気が引けるのだろう。
「でも美希ちゃん、多分二人は
私の言葉の途中で部屋が赤く光る。
ああ、やっぱり。
「ブッキー、お邪魔しまーす」
「美希とブッキーにお土産も買ってきたの」
「ようこそ」
私は怯える美希ちゃんを尻目に満面の笑みで二人を迎え入れた。
(23)
「美希抱っこぉ」
「嫌ー………じゃない。おいで」
「やったあ。最近なんか優しいね」
「いろいろ反省したり……」
「?」
「もー、なんだっていいでしょ」
「私のこと好き?」
「………それなりに」
「じゃあちゅーして」
「えっと、恋人じゃないしそれはさ……あの」
「寝てる時擦り寄ったらちゅーしてくれるよ」
「えっ、あたしそんなことしてるの」
「うん」
「あたしやばくない?」
(24)
「美希ちゃんが欲求不満らしいよ」
「美希たんブッキーんちの病院で一度診てあげたら?」
「うちは獣医だよ」
「欲求不満ならある意味ケモノでしょ」
「ああ、確かに。ラブちゃんとせつなちゃん気をつけないとね」
「ブッキーもね」
「ミユキさんにも知らせに行こうか」
「黙って聞いてれば!あたしはどんだけ飢えてるのよ!!」
「美希の欲望は全部私にぶつけて!」
「頭いたー……」
(25)
「うさぴょん一緒に寝ようね」
(小声)「ラブさぁ、トイマジンの一件からうさぴょん大好きね」(小声)「一日五回は話しかけてるの」
(小声)「………………」
「え、なにブッキー妬いてるの?」
「なっ、そんなことないもん」
「美希たん、ブッキー!うさぴょんが眠れないって」
「「ごめんなさい」」
(小声)「ちょっと危ない域じゃない?せつな耳かして。ごにょごにょ……」
(小声)「わかった」
「ラブ」
「なぁに?せつな」
「一緒に寝てい?」
「ええ、そりゃもちろん。ああ、でもそしたらうさぴょんが、でも、せつなと一つの布団で、でもでも」
「うわっ、ラブ悶えてる。せつなとうさぴょんが並んだ」
「うさぴょん凄いね」
「うさぴょんになりたい?」
「そんなことないもん!」
(26)
「ラブの作ったハンバーグってほんと美味しい」
「えっへへ、せつなに褒められるとすっごい嬉しい」
「ラブはいい奥さんになると思う。でも、ラブがもし結婚しちゃったら淋しいわ」
「えっ、それってもしかして」
「ラブのハンバーグは毎日でも食べたいのに!」
「ハンバーグの心配だけ!?」
「もちろん、肉じゃがもカレーも卵かけご飯も……」
「もういいよ」
「なんで落ち込んでるのかよくわからないけど、私が一番淋しいのはラブがいなくなることよ」
「ほんと?」
「当たり前じゃない!」
「せつなー」
「私はラブの温もりが一番落ち着くわよ」
「もうぎゅーってしてあげる」
「あはは、ラブったら。だから私が美希と結婚してもラブのハンバーグ食べたい」
「結局ハンバーグ!てかツッコムとこ有りすぎ!」
「どうしたの?泣かないでラブ」
「ぐすっ、それでもあたしはせつなが大好きだから」
~おまけ~
簡単な設定資料(美希視点)
自分大好き。無駄なことには一切労力を使いたくない。
一番まともよ。
せつな大好き。想いが届かなくても不屈の精神で復活を繰り返す。
友達想いで実は結構常識人。
メルヘンな一面があるの。
サド。魔王。
多分ラブが好きなんだと思う。
ラブには激甘。あたしには激辛。
意外と不器用。
天然ばか。盗撮未遂8回、あたしの私物持ち出し26回、不法侵入50回以上、ラブメール測定不能etc...。
だけど憎めない。可愛い・・のよね。
最終更新:2011年03月28日 23:34