第一章 黒い雷帝と銀翔龍
「チィ…逃がした……」
「あの速度じゃ俺でも追い付けないぜディオ。これからどうするんだ?」
信じられないだろうが、この会話は上空の遥か高くで行われていた…銀のリオレウスの上に乗っている黒い装備と巨大な剣を担ぐ青年…この二人の会話なのだ…何故リオレウスが人を自分の背中に乗せているのか…人間と飛竜が何故会話出来るのか…全てが謎だ
「黒い麒麟の事もあるが、あの風翔龍…しかも亜種なんだろ?…ソル」
ソルとは銀リオレウスの事だろう…
「そうだな、俺も信じられないが…そうなるんだよな…」
「また、敵が増えたな…しかたがない…一度ヴェルトに行く。だからお前は近くの森に隠れてくれ…すぐ戻る…」
「あいよ!!」
そう言うとソルは近くの森にゆっくり着地した。着地したソルから跳び降りたディオはヴェルトへと続く道を歩いて行った
「……相変わらずな城塞だな…こんな所に住んでいる奴らの気が知れない」
どうやら、彼はヴェルトの街に着いたらしい。そして街を囲むような城塞を見ながら気にいらなさそうな顔をしている。確かにこの城塞は心地よいとは言えない…嫌がる人が居るのも当然と言えば当然なのだ
「敵は予想より強い…そして厄介な力を持つ、そんな奴らにアイテム無しで挑むのは無謀だ…」
アイテムを揃える事を目的としてディオはヴェルトに来たのだろう。そうでなければ好きじゃない街に入る理由がない…少し捜すのに手間取ったのかアイテムを売っている店に行き、回復薬、砥石、携帯食料を大量に買い込みさらに焼肉セットまで買ったらしい。ここまで揃えば長期戦にも耐えられる
「さて、後は用はないだろう…」
そう言って立ち去ろうとするディオを店の店員が呼び止めた
「お客さん~随分な量を買うんですね…こんなに買うのはあの人以来だな…」
「あの人?」
ディオは店員がちらっと言った言葉に思わず聞き返した
「いや~三日前の話しなんですが、あなたと同じくらいの歳で黒いコートを来た人が今あなたが買ったくらいの量のアイテムを買って行ったんです。それでつい…邪魔をしてすみません」
その言葉にどこか引っ掛かるところでもあるのだろうか、ディオの脳裏にはある男の姿が過ぎる
「(まさか、クローシスじゃないよな…?もし、ここにいたとしたら…)」
「お、お客さん?」
店員の青年は浮かない顔をしながら考え込んでいるディオを心配そうに見ている…それに気付いたディオは慌てながら返事をした
「あ、すみません…今の話しが気になってしまって…」
「あぁ、そうでしたか。確かその人は女性と一緒に馬車に乗って行きましたよ。場所は…多分ですがシュレイド王国跡地かと…」
その行き先にディオは驚いた…
なぜなら、そこは魔界の入口とも呼ばれる場所であると同時にミラボレアスの伝説が根強く残る場所だったからだ…今なおその伝説を信じる者いるが、大半がお伽話だと思っている
「そんな無謀な奴らがいるなんて…わかりました、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ」
足早に立ち去るディオを見ながら店員は黒いコートの青年と何か似たものを感じながらも仕事があるためそんな事ばかり考えてはいられない…すぐに仕事に戻った
「まさか……本当にクローシスが…いや、あいつが女と共に行動するなど…」
シュレイド王国跡地に向かったとされる青年と女性の事でディオは頭がいっぱいのようだ…その事を考えながらもふと、横の広場に目を向けた…なんと偶然にもそこには彼のかつて共に戦った友人達が居たのだ…そして、この二人の出会いによって彼の旅は更なる展開を見せる事になるだろう…
最終更新:2013年02月28日 03:10