東京の街の外。
死霊とシャドウサーヴァントがひしめく荒廃した街並み。
まさに魔窟。生命など微塵もない冥界と呼ぶに相応しい死の大地。
人のいない荒廃した瓦礫の上に、一人の少女が立っていた。
気だるげな眼差しと、胸元に目玉の奇妙な飾りをつけた少女が瓦礫を踏みしめる。
少女の周囲には死霊、シャドウサーヴァントが複数徘徊しており、そのうちの数体が牙を剥く。
槍兵の影が少女へめがけて刺突を行うも、少女は地面を蹴ると同時に空へと舞う。
空を舞い、そのまま地面に着地することはない。浮いたまま距離を取る。
重力に縛られないかのようにふわふわと空中を漂い、死霊の攻撃も続けざまに避けていく。
近づいてきた死霊に対して手から弾幕を放ち、地面へと押し戻す。
「意志はない、か……遠出してこの結果とは。まあ、予想通りではあるけれど。」
周囲の死霊たちを一瞥すると、
此処まで足を運んで得たのは何もないと言う結果だけ。
文字通りの無駄足にため息を吐き、更に少女は空へと舞う。
「とんだ無駄足ね。撤退するわ、ランサー。」
空を舞うと、同じように空を飛び交う一つの影が着地する。
着地の衝撃だけで周囲の死霊やシャドウサーヴァントが怯む。
相手は少女の倍以上はあるであろう体格を持った、赤茶けた鎧を纏った存在。
鎧を纏った姿は武者と言うよりは、例えるならロボットと言っても差し支えないだろう。
たすき掛けされた数珠が印象的な巨躯はその場にいるだけでも強烈な威圧感を放つ。
迫る影をその手に持つドリルが如き槍を振るい、薙ぎ払って吹き飛ばす。
その隙に、背中からバーニアのようなものを噴き出してその巨躯は空を舞う。
空を飛び交う巨漢の肩に少女が座ると、その場から去り二人は東京の街へと戻っていく。
「念のため東京の外も確認してみたけど、やはり私の知る冥界とは違うみたいね。
これも予想してたことではあるから、別に大して落ち込みもしないけれど。」
人気のない夜の公園。
そこに少女と機兵が如きサーヴァントは降り立つ。
地面に着地すると、同じく少女はランサーから降りて公園のアスファルトを踏みしめ、
先ほどまで乗っていた自分のサーヴァントと向き合う。
「それと、恐らくでしょうけど外……ああ、この舞台の外の意味よ。
仮に果てまで行ったところで、多分出られそうにないでしょうね。
果てが見えず、敵となる死霊達も無数にいる……聖杯戦争をする以外の選択肢はないみたい。」
遠くまでは見えなかったが、
態々あれだけ危険地帯を用意している以上、
会場の外と言うものには脱出は困難を極めるのは予想できることだ。
「『先ほど何をしていたのですか?』……ああ、言ってなかったかしら。
私、霊とも話せるのよ。動物や怨霊であってもね。人が多い場所は得意じゃないけど。」
その世界で彼女は霊との交流が多かった。
故に死霊を前にしても恐怖も嫌悪も感じない。
彼女にとっては隣人、そういったレベルの存在になる。
「でもダメね。あれらは此処でのペット達と同じで明確な自我が存在しない。
死霊達は意志もなければ遺志もなかった。あれも作られた存在でしょうね。
いわば役割を与えられただけの人形のような存在、と言ったところよ。」
彼女はその力を使ってこの世界を調査していた。
だからこの世界がどこまで贋物かを理解している。
見知った家族はいるが立場、環境全てが元の世界とは別物だ。
「となれば、純粋な意思疎通ができるのは同じマスターかサーヴァントのみでしょう。
言い換えればマスターやサーヴァントを探すのには苦労はしない、と言うことでもあるけど。」
住人、もといNPCは心こそ読めるが、
そこにあるのは機械的な行動だけに留まる。
故にマスターを探すとなると、簡単に見つけられる強みがある。
他者からすれば心を読む能力を見抜くのは、そう簡単ではないのだから。
もっとも、その胸の飾りが目立つので一長一短とも言えるのだが。
「退場したマスター達の残留思念が読み取れるか確認したいけど、
貴方はそういう必要のない犠牲は望まないのは知っているわ。
なるべくだけど『そういう手段』は取らないつもりだから安心して。」
此処まで少女は一人で饒舌に語り続ける。
拝聴する者はただ一人、己のサーヴァントのみ。
それを鎧の男は黙って聞き届けていた。
こうみえて会話が成り立ってないのに会話は成立している。
異様な光景ではあるが、彼女にとってありふれた光景だ。
何故なら、彼女にとって相手の言葉は必要がない故に。
───少女の名前は古明地さとり。
心を読む程度の能力を持つ、さとり妖怪。
故に相手が言葉を発することなく相手の意志を理解できる。
だから相手は喋る必要がない。さとり妖怪としての性のようなものだ。
心を読まずしてさとり妖怪に非ず。故に彼女は独り相手の心を読み語り続ける。
意思疎通は行っている。しかし端から見ればひとり芝居のような行為で。
「……それにしても珍しいわね。私の能力を知っても嫌悪感を抱かないなんて。」
さとりはこの能力を誇りに思ってはいるが、
周りからすれば余計な感情を露呈してしまう能力でもある。
故に旧地獄では嫌うものも多く、聖杯戦争でもやりづらい能力だろう。
そう簡単には協力関係が結べない。無論、自分のサーヴァントともだ。
しかし、ランサーはそれを特に嫌悪することなく受け入れていた。
「貴方の言葉……と言っても心ね。それには裏がないから?」
心を読むことでわかる。彼は純粋で生真面目な性格なのだと。
地霊殿にいたペットを思い出す。人と動物を比べるのは少し憚られることだが。
いや、目の前にいる彼は果たして人なのかと疑念を抱くところもあると言えばある。
「正直なのは嫌いじゃないわ。でも、騙されないことね。
私は妖怪……人をだまくらかす危険な存在かもしれないわよ。
こうして貴方と仲良くしているのはふりで、本当はあくどい願いを持っているのかも。」
「!?」
ランサーの赤い目が光り出し、機械のような音を発する。
端から聞けば何の音か判断つかないが、それが彼にとっての発言の類だ。
「冗談よ。そういうところが貴方らしいのかもしれないけど。」
今の問答で本当に純粋で真面目なのだと分かる。
恐らく、この外見ながら人に愛されてきたのだろう。
威圧感溢れる外見なのに、どこか愛嬌を感じさせるその性格は。
「それにしても、偽りの冥界で殺し合いとは思わなかったわ。
妖怪としてはその手の血生臭いことは、そう珍しくもないのだけど。」
聖杯戦争。万能の願望器。さとりとしては特別興味はない。
今の生活は充実しているし、妹の目も無理に開こうとも思わない。
幻想郷も今のバランスを変えたい、と言った大願も持ち合わせておらず。
ただひとえに帰る。それ以外特別な願いは持っていなかった。
「貴方はどう? 聖杯は……必要ないみたいね。
それもそうか。主は天下人になって時代を築いた。
今更聖杯に縋ってまで願うものなんて、ないでしょう。」
「……!!」
「『他のマスターを含め元の世界へ返す』……随分大きく出るわね。
天下人を支えた貴方だからこその大願、とでも言うべきかしら。
何よりも困難な道を選ぶのはいいけれど、最悪は覚悟してもらうわよ。
私は別に聖人君子と言うわけではないのだから。」
温厚な人物ではあるが、さとりは人を襲うことを楽しいと思うこともある。
結局のところ彼女は妖怪だ。人をそこまで尊重するほど人がいいわけではない。
とは言え、願いのない彼女にとっての一つの指標ともなりうることではあるが。
「さて、そろそろ帰るとしましょう。
……考えれば貴方、どうやって家に入れればいいのかしら。」
どうしたものかと悩みながら、ランサーを霊体化させてさとりは帰路につく。
偽りの東京と言う名の冥界を、旧灼熱地獄の管理者が往く。
【CLASS】
ランサー
【真名】
本多忠勝@戦国BASARA
【ステータス】
筋力:A 耐久:A 敏捷:B 魔力:D 幸運:C 宝具:C
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力除けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
戦闘続行:B
戦闘を続行する能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負っても戦闘が可能。
戦国最強:A+
いかなる武器を以てしても傷を負わないと言われた、忠勝の頑強さがスキルになったもの。
耐久のパラメータをランクアップさせ、攻撃を受けた際の被ダメージを減少させる。
また低ランクの飛び道具に関しては受け付けないどころか、そのまま弾き返してしまう。
但し日本出身の人物が彼を見た場合、高確率で真名が判明するデメリットを持つ。
形態:B+
忠勝には様々な形態を持つ。
支援兵器(所謂ファンネル)で自動攻撃する援護形態、
背中から砲台を出し放つ砲撃形態、(所謂バーニアで)空を飛ぶ飛行形態など様々な兵装を持つ。
電磁フィールドを展開する電磁形態中は砲台がプラズマ砲になるなど変化もある。
【宝具】
『秀でし忠、本多忠勝』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:4 最大捕捉:100
背中から車輪のようなものを展開し、周囲に多数の落雷を起こす。
シンプルな分見切られやすく、範囲も広いわけではない。
だが本人の頑強さを合わせればごり押しで決めることも難しくはない。
【weapon】
どうみてもドリルだが槍。
勿論回転するのでドリルとしての運用も可能。
【人物背景】
戦国最強と恐れられた、徳川家康にとっての第一の絆。
生真面目で実直な一方騙されやすい純粋、或いは天然な面もある。
【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争に巻き込まれた参加者の帰還。
【マスターへの態度】
……!!
【マスター】
古明地さとり@東方Project
【マスターとしての願い】
帰れればそれでいい。まあ、平和的に解決できないなら聖杯使うでも。
【能力・技能】
心を読む程度の能力
胸についてるサードアイを通じて相手の心を読むことができる。
また相手のトラウマを思い起こさせ、それを再現して攻撃する能力を持つ。
さとりが所持してない道具や、使用者の固有の能力を用いたものでも再現ができる。
怨霊や残留思念も読むことができるが、残留思念が多い場所に長時間留まると体調を崩すことも。
他には弾幕、飛翔なども可能だが本人は割と体力がない。
サーヴァントの攻撃を再現した場合、それがサーヴァントに通用するかは不明。
【人物背景】
幻想郷の地底の土地、旧地獄の灼熱地獄を管理するさとり妖怪。
大人しく物腰柔らかな人物ではある一方で、図太い神経を持っており結構ポジティブ。
能力で心を読むが勝手にそのまま口にする為会話が別の意味で成立しなかったりする。
そういったこともあって旧地獄では嫌われることも多いが、本人は能力を誇っている。
【方針】
暫くはこの東京を調べていく。
あまり意味はないと思うけど。
【サーヴァントへの態度】
純粋でいい子。それだけに優勝狙いは少しやりづらい。
最終更新:2024年05月06日 10:10