重なる声を、すぐに届けにゆくから。
♪
それは悪魔的な空間であった。
畳敷、六畳半。決して広くはない、しかし少女ひとりが生きるには十分なスペース。
戸棚の上に山と詰まれた同じ絵柄のA4写真や、押し入れの中から覗く和室に不釣り合いな音楽ガジェット等々、いくらか変わった点だってあるが。
しかし少なくとも21世紀初頭に生きる女子のそれとして見れば、ある程度は日常染みた、普通の部屋だ。癖のない作りの家の一室に、住人がある程度の個性を付けた、そんな何処にでもある部屋。
そして、そんな何処にでもある部屋だからこそ、その異常性、日常から踏み出た歪さは極大の不協和音となって見るモノに怯懦の念を抱かせる。
この場合、それは屹立する長身の骸骨だった。
それが、この場における歪みであり、異常性であり、そしてあってはならない恐怖であった。
身の丈は二メートルを超える長身。部屋の高さが追い付かず、僅かに首を傾げて、少女を見下ろすような角度になっているのが恐怖を煽る。身を包むのはおどろおどろしさに似合わぬ目に痛い色彩の衣装で、エネルギッシュなスタイルは死の象徴たる身体にまるで似合わない。極めつけは毛根などない筈の頭蓋骨の上に収まっているアフロヘアーで、鬘にしか思えないそれはどこか滑稽さを与える筈のイメージに反して一層不気味さを引き立てている。
そんな存在に見下ろされている少女は、固まったように動かない。
それもそうだ。只人ならばこの異常性、ただ怯えることしかできないだろう。己の居室という空間に突如として這い出た異常。事実、五分前にはこの部屋どころかこの世界そのものに存在しなかった筈の異物が目の前に表れたのだから、そうなるのも無理はないというものだ。
ただじっと目を伏せて、夢だと信じ込むようにぶつぶつと呟きながら、それでも視線だけは離さずに骸骨から離さない。
まるで、それが動き出すと知ってしまっているかのように。動き出すからこそ、その瞬間を見逃してはならないと知っているかのように。
「……畏れながら」
「あっ……」
――そして、『それ』は口を開いた。
しわがれた老人のような声は成程骸骨の不気味さとよく噛み合い、如何にもこの状況が悪魔的なそれであることを主張する。
対する少女はといえば、恐れ縮こまったように顔を伏せたまま答える。心無しかその存在自体が萎んだようにも見え、長身の骸骨との見た目の差はみるみる開いていくようにすら感じられる。
「貴女がワタシのマスターということで、よろしいでしょうか」
マスター――主人。
それはある意味で意外な言葉。つまりはこの骸骨を呼び込んだ主人は、この怯えている少女の側であるという。
なるほど、例えば清純な少女であれば、その血を生贄に悪魔を召喚するというのもまた古今東西に存在する儀の一つ。
「あっ……あっはい……」
しかし、それはこの状況においてはあまりにも滑稽。
場の主導権は明らかに骸骨が握っている。少女は怯えて縮こまるばかりで、
有り体にいえば、失敗といったところだろうか。召喚は失敗し、本来あるべきだった主従は逆転した。
そして、悪魔との契約が失敗したのなら、その結果もまたやはり一つ。
「では不躾ですが、マスター」
「え、あっ、なっ、なんでしょう………」
すなわち、その報酬を貪り尽くされるという、あまりにもありきたりな結末。
そして、その骸骨もまた。
おどろおどろしいその外見のままに、欲望に正直な性質のままに、その欲求を、口走った。
「──パンツ見せてもらってもよろしいでしょうか?」
「あっはいこんな無価値なものでいいならいくらでも…」
ぺらり。
そしてマスターと呼ばれた少女は、特に何も躊躇することなくパンツを見せていた。
女子高生の部屋で、住人である女子高生が、アフロを被った骸骨に、パンツを見せていた。
「ふむ―――――」
果たして。
恐怖の象徴であったはずの骸骨は。
女子高生のパンツを、ゆっくり、しかしその虚ろな目の中にしっかりと刻み込んで。
心無しか、頬を染めているようだった。
「まあワタシ…………染める頬ないんですけど―――――!!!ヨホホホホホホホホホ!!!」
どたどた。
「今度はどうしたのおねえ――キャーーーーーーー!ガイコツーーーーーーー!」
「何、ガイコツですってふたり!?お母さん、知り合いの霊媒師さんに声かけてくるわね!?」
「大丈夫かい母さん!?って、えぇ!?!?本当に骸骨!?!?ひとりが親し気に骸骨を部屋に呼べるようになったのかい!?!?」
「ヨホホホホホホホホホホ!!!!45度!」
「おもしろーい」
「えっ、えっあっ……そうだねふたり」
閑話休題。
「いやはや、盛り上がってしまって申し訳ありませんマスター!!ワタシ、サーヴァントとしてこの世界に三度目の生を受けるなどとは思っていなかったものですから!!思わず胸が高まってしまい!!」
「あっはい……」
改めて。
外見からは想像できないくらいに気さくなその骸骨が、茶(母親がひとまず置いておいてくれた)を啜りながら告げた。
緑色の液体がどこに吸われていくのかも分からぬまま、少女――後藤ひとりは、完全に怯えて固まり、何もできぬまま目を逸らし続けていた。
「えっ?高まる胸、どこにもないだろって?テキビシーーーッ!!!ヨホホホホホホ!!!」
「あっえっあっそうですね……はは……」
というのも。さっきからジョークのキレが良すぎるのである、この骸骨。
カラカラコロコロ。骨が擦れ合うような音と共に、甲高い声で冗句を言ってはセルフツッコミで笑ってくる。こっちが反応できない――滑っているわけではなく、どう反応すればいいかわからないだけだが――ことすら気に留めず、とどまることなく言葉を回す。
陽気さ、気楽さ、軽妙さ。本来なら陰の存在の筈の骸骨が出すにはあまりにも明るすぎる雰囲気。それは、所謂陰の者、孤独を好むタイプの人間には存在するだけで身を焼かれるようなもので。
つまり、恐怖ではなく。
後藤ひとりという、ドが頭に付く程のコミュ障が怯えている状態だった。
「えっ?剥ける皮ないだろって?正論ーーーー!!ヨホホホホホホホ!!!」
すごいテンションが高かった。
それはもう、常に笑っているのではないかと言わんばかりに。こちらが話さないでいたとしてもセルフでボケては突っ込む永久機関。
立ち居振る舞い自体は(骸骨だけど)どこか紳士的なものを思わせるものであり、明らかに陽の当たる場所に居るべきではないビジュアルも含めて、わたしのような陰キャにも優しい存在なのだろうかと思ったのに。
(ダメだ!ついていけない!ガイコツなんてブラックで陰でホラーに出てきそうな要素の塊なのに、私より遥かにパリピだ!!!!)
それもそのはず。相手は、『大海賊の船員(クルー)』である。
数多の海を越え、困難を踏破し、太陽の神が如く笑いながら世界を股にかけた大海賊。嵐の航海者。ワイルドハントの果てを行くもの。その脇を固め、航海を彩った名だたる戦士のうちの一角。
つまるところ――コミュ症な訳がない。笑い笑われ怒られ蹴られ、コミュニケーションの一環として平然と暴力が飛び交いつつも、鉄火場では何一つ衒いなく背中を預けられる唯一無二の関係性。
そんな陰キャからしたら信じられないくらいのさっぱりとした関係性を持った荒く猛々しい人々の群れに、わたしのような人間を放り込んでみたらどうなるか。答えは予想するまでもない。
『ぼっちちゃーん、次の航海に連れて行く音楽家の人見つけたからぼっちちゃんとはここまでだね!』
『ぼっち、船降りな』
『後藤さん、心配しないで!海賊やめても音楽で食べていけばいいの!まずはグランドラインにある”カーニバルの町”サン・ファルドからイソスタ映え海列車沿線ツアーに出発よ~~~~~!!!』
(つまり――超体育会系コミュニティ!わたしなんかが入ったらハリケーンが吹いた瞬間にそのまま放り投げられる!海に出て五秒で藻屑の仲間入りだ!……あっそれはなんかいいかも)
そう、わたしは偉大なる航路(グランドライン)の雑魚!海賊には日々の糧として釣られては食べられ海王類の餌として食物連鎖の一番下で命を散らすだけの存在なんだ!海のコックに味を品定めされたら、「まあ食えなくはねえがな、食材にも質ってモンがあるだろ」と嫌々使われる程度の食材!!
「聞いてください、『弱い私は死に方も選べない』……」
「えェ~~~~~!!??暗い~~~~~!!!!」
「聞いてください、『弱い私は死に方も選べない』……」
「えェ~~~~~!!??暗い~~~~~!!!!」
じゃぁん、とギターを掻きならせば、その音に負けないくらいの声量で乗っかってくる。パーソナルスペースを踏み越えることにまったく躊躇がない。怖い。どういう人種、いやどういう霊種なのだろう。
もしかしてわたしは、サーヴァントとかいうものではなく、外界にいるという死霊を呼んでしまったのかもしれない。確かに、考えてみればわたしが英霊なんてものを呼び出せるはずがない。わたしはこれからこの人に取り殺されて、そのまま冥界にポイってされて、じめじめとした死後の世界でお母さんお父さんふたりジミヘンに謝りながら石を積み続ける未来を過ごすんだ。
「しかし、フム……」
そんなマイナス思考に追いやられているわたしを、ふと骸骨が覗き込んできた。
びくりとして身を引く私に構わず、骸骨はすっとその細い骨の先端で私のギターを指差した。
「マスターも、音楽を?」
それは、やたらと明るかった骸骨が唐突に見せた、礼儀正しい姿。
その姿に動揺して、わたしは慌てた声で唐突に早口で説明をしてしまう。
「あっえっとその……これは独学でやってただけで、でも最近バンド入れてもらってて、結束バンドっていうんですけど、虹夏ちゃんたちに、あっ――」
明らかに焦っている、人に聞かせる気が感じられないような早口。わかっているのにやめられない、コミュ障そのもののような喋り方。
それでも、骸骨は、それまでの騒がしさを潜めてそんな言葉をしっかりと聞いてくれている。その表情までは察することができないが、存在しない瞳がまっすぐに見つめているような気がする。
「……でっでも」
その瞳に負けて、私は少し目を逸らしてしまう。どこか後ろ暗さを感じて。
「わ、わたしギターだけは自信ありますけど、それでもそれ以外は全然だめで、みんなと合わせるのも最近ようやく慣れてきたくらいで」
抱えている問題が、コンプレックスが、気付けば漏れ出てしまっていた。
ギターヒーローと後藤ひとり。その境界。一人では上手くても、誰かと合わせるのは全然駄目で、変われないままの私のこと。
「まっまだ実力も全然で、大槻さんとかわたしより全然上手いしメンバーとも上手くやれてて」
バンドが始まってからは、様々な人に会うようになって。同じ才を持ちながら研鑽を続けている人の凄さに直面したり、あるいは心無い言葉で仲間を否定される時もあったり、全力が出せないままのわたしでは、今のみんなでは、届かない舞台を目の前にして悔しい想いをすることもあったり。
コミュ症も、実力も、まだまだ、全然で。人付き合いが苦手のまま、ギターヒーローにも追いつけないまま、結束バンドの後藤ひとりにはできないことが多すぎて。
「だっだから何だって話ですよね、すいませんこんなわたしみたいなミジンコ以下の自分語りを聞かせてしまって――」
「マスター」
……どこか、自信に満ちたような声で。
アサシンは、わたしの声を遮りながら、もう一度立ち上がり構えを取った。
その肩からは、どこから取り出したのかギターがぶら下げられていて。固い骨の指先が、何かを確かめるように弦を揺らす。
「少々、耳を拝借――――」
瞬間。
骨と弦が掻き鳴らした音色は、それだけでは音でしかない。ただの波形、空気を伝う文様が耳を揺らすだけ。
だが、その音楽は、耳を震わせる波形は、確実にわたしの「核」を震わせる。
ガン、と頭を殴られたかと思えば、次の瞬間には腹の底が重く痺れる。足が指の先まで動かなくなったかと思えば、指が、手が、勝手にリズムとビートを追って小さく震えてしまう。
不定形な体がまるで剥がれ落ちるように削れて、しかし、その都度に復活するように再生をする。肌が、肉体が、その音楽によってかたちを歪めてしまうくらいに、激しい音楽。
まるで、そう――タマシイの形そのものを、直接揺れらしているような。
SIDEROSの音楽、廣井きくりの音楽、TVで見たアーティストの音楽。後藤ひとりがこれまで聞いていたそれらは、間違いなく熟練のそれだ。凡百の人間の心を確かに揺らし、人を魅了する魅力に満ちあふれている。
だが、今この小さな四畳半で奏でられるその音楽は、かつて世界を『世界のスター』の音。
動画で見たことしかない、アリーナや武道館を揺らすアーティストと同じ質の。聞く人すべてを魅了し、一体どころか群衆そのものをひとつの奔流にすらしてしまうような、とんでもない『力』を持つ、そんな音。
「音楽は、力です。いつもいつも、何かに立ち向うための勇気をくれる!」
そんな音楽をいとも容易いかのように奏でながら、陽気なガイコツは高らかに歌う。
彼が紛れもなく英霊である、ということを、遅れ馳せながら改めて認識する。彼の宝具、魂を震わせる音。それは間違いなく一世を風靡した音楽家の才であり、同時に世界最悪の大海賊の航路を明るく彩る一味の一角。麦わらの一味・音楽家、ソウルキング・ブルックという存在。それが奏でる、文字通り魂を震わせる音楽。
ほんの一分にも満たない僅かな演奏で、その力を十二分に伝えてくるだけの凄みが、彼の演奏にはあった。
「そして、マスター。失礼ながら、ワタクシこの身長でして。そちらの写真も拝見させていただきました」
「え……そ、その」
そして、演奏を終えた彼は、数秒前まで言を震わせていたその指で部屋の一角を指さした。
指し示したのは、わたしがいつかみんなと初めて撮影した写真。わたしにとっての宝物。わたしが初めて友達と撮った、部屋中に貼ってしまうくらいに嬉しかった、あの一枚。
今も大量に積み重なっているそれを見て、どこか深く、深く思うように、彼は一言わたしに聞いた。
「――仲間、ですか」
「あっ………は、はい」
反射で、力強く答えてしまった。
それは全く偽る必要のない、必要のないと思いたいことだから。こんなわたしのことを待って、一緒に結束バンドでいてくれると言ってくれた人たちだから。
みんなで、四人で、結束バンド。たった一人でギターヒーローとちやほやされるんじゃなくて、四人で、音楽を奏でていたい。
それが、後藤ひとりの本音。この冥界の底で、本来ならここで朽ちていくのがお似合いだと言ってしまうような人間が、分不相応にも願ってしまったこと。
「ヨホホホホ!それは結構!仲間は希望ですよ、マスター!」
それを聞いて、ガイコツはとても、とてもうれしそうに笑う。筋肉がなく、表情もない筈のその顔が、破顔しているようにも見える。
自分ごとのように喜ぶその様があまりにも嬉しそうで、意外なものだったから、わたしは少しの間、彼に目を奪われてしまう。
そんなわたしの内心を知ってか知らずか、彼もまた、その骨身に刻んでいる想いを語り始める。
「恥ずかしながら、ワタシも昔一人ぼっちでして!永遠に閉ざされた暗い霧の中で、概ね50年程!!」
「えっ」
急に明かされたガイコツの真実に、思わず瞠目してしまった。
ぼっち歴が長すぎる。自分が押し入れの中に50年、いや引きこもろうと思えば引きこもれるだろうけどわたしの人生の3倍も引きこもったりしたらどうなっちゃうの?50年も経ったらうちの両親もたぶん大往生、ふたりに孫すらできてたって不思議じゃないくらいの未来!それなのに一人だけ押し入れに閉じ籠もってアルコールによる現実逃避を繰り返す私…体を壊してる!?いや、むしろその時の私ってアラフィフとか飛び越えてもう70代直前!!想定されるのはむしろ孤独死!腐敗してガスを垂れ流す腐った死体!
『おかーさーん。あの部屋、なにかへん……?』
『ここなーにー?』
『あっ……だ、ダメよさんにん!その襖を開けちゃ――』
親の死後我が家を相続したふたりとその家族、子供たちは決して開けてはいけないと言われていた二階の和室の襖を興味本位で開けてしまう!その奥で待ち受けているのは、数多の楽器と時代遅れのオーディオ機器に囲まれながら誰にも見つからずミイラと化した私………っっ!!!
『――ケッソクバンドサイコー、イエー、ニジカチャン、リョウセンパイ、キタチャン、イクゾー…アァ、ホントウニ逝ッチャウナンテ…………………ァ、ァ、ァァァァァァァァァァァァァ嫌ァァァァァァァァ!!!!!!」
「ヨホホホホホホホホホ!!!そうでしょう!!!ワタシも正直二度と!体験したくございません!」
ジャァァァ~~ン、とギターの音を一つ。何が面白いのか、あまりにも重く苦しい過去を
「けれど、彼らは」
しかし、感じ入るように彼は歌う。
交わるはずのなかった航路で交差してくれた人々のこと。暗い夜を過去にしてくれた人々のこと。新しい夢を見せてくれた仲間のこと。
それが、なぜか重なる。
「私の姿を受け入れ、あまりにも当然のようにガイコツを仲間にしてくれた」
──バラバラな個性が集まって、ひとつの音楽になって。それが結束バンドの個性になるんだよ。
他の人間とは異なる私を受け入れてくれた言葉と。
重なる。
「再び返り咲く為に、もう一度集まって、共に進むことを約束してくれた」
──バンドって、第二の家族じゃない!
仲間として受け入れて、そして、何よりも強い絆で結び合えると思えたことと。
重なる。
「ワタシの夢――もう半ば諦めていた、仲間との再会」
──だから、これからもいっぱい見せてね。ぼっちちゃんのロック──
託された、夢のことと。
重なる。
「ワタシに、そんな夢の果てへと続く道の続きをくれた!」
──ぼっち・ざ・ろっくを!
わたしの描いた、夜の夢を越えた先にある、眩しい夢みたいな現実の朝の虹と。
「奇しくもこのワタクシ、友人を置き去りにして…50年!………帰りたかった!共に死んだ仲間の音を!生きた証を伝えるために!」
高らかに、高らかに。込められた万感の感謝、そして再び信頼し合える友と出会えた喜びを全力で示すように。
「その夢を繋いでくれる、仲間に出会えたから!!仲間と共に、愛した仲間の約束を叶えるための航海へと漕ぎ出せた!!!」
そして、また再び、いつか誓った約束を、果たす機会を得たために。
その夢を叶え、もう二度と見ることのないと思っていた、最後に遺してきた仲間ともう一度再会し、確かに「帰った」と伝えるために。
「マスター!!あなたが仲間の下へ帰るというのなら──陽の当たる世界で、友と再会したいと願うのなら!!」
だから、アサシンは、ソウルキングは、陽気に騒々しく歌い誓う。
冥府そのもののようなこの領域から。陽の光届かぬ冥界の奥地から。
「クラス・アサシン!!!”海賊王の音楽家”!!!このソウルキング・ブルック、その名に懸けて、日の当たる世界へと貴女を送り届けて見せましょう!!!ヨホホホホホ!!!!!」
必ず、あなたを、待っている仲間の元へ送り届けてみせようと。
我等が船長が、その夢を共に叶えようと、だから来いと、仲間になれと、たったの一言でそう誓い、私に笑ってくれたように。
――果たして。
どくりどくりと。音楽に揺らされた心臓が、うるさいくらいに鳴り響く。
魂を揺らす、鼓動のおと。ドントットットと揺れるビートに、ぴったり合わせて弦が震える。からだが弾けるような感覚に引っ張られて、わたしの肉体が震えて動く。
浮遊感?浮動感?違う、そんなものではない。わたしも、わたしの音楽も、この獣のような衝動も、今わたしを突き動かすものは、そんな名前で縛られない。
陰気で、暗くて、それでもと歌ってみたかっただけのわたしは、今こんなにも――夜を超えて、雨を晴らして、太陽の下でまた生きてみたいと、青い春の空の下で踏みとどまっていたいと思えてしまっている。
夜が明ける頃に。みんなにまた、会いたいと、思ってしまっている。
「あっ──はい!」
叫ぶ。
夢の果てに向けて。
あるいは、待っている、かけがえのない友に向けて。
♪
──もうちょっとだけ待ってて、──!
【クラス】アサシン
【真名】”ソウルキング”・ブルック
【パラメーター】
筋力:D 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:A 宝具:B
【クラススキル】
気配遮断:B(EX)
サーヴァントとしての気配を断つ能力。隠密行動に適している。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
アサシンの場合、通常時はB相当で推移しているが、後述する宝具発動時はEX相当となり、魂の認識能力に長けていなければ捕捉自体が不可能になる。
【保有スキル】
『麦わら海賊団』:A
大海賊時代にて成り上がり、四皇として名を馳せた大海賊の船員が一人。
船長が持つ嵐の航海者スキルをCランク相当で発動できる他、同スキルの保持者が存在する場合すべてのステータスに1ランク相当のバフがかかり、当スキルと同ランク相当の戦闘続行スキルが発動する。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
剣侠・ハナウタ:B
アサシンが生前――ここでいう生前とは、サーヴァントになる前の中でも彼が骸骨と化すまでを指す――に名乗っていたもう一つの異名。
彼の技名は
彼が剣士として持つ技量はこのスキルに内包されており、身軽さも併せて主に速度・技術を重視した独特の攻撃性能を持っている。宝具にある冥府の冷気を兼用することも可能。
【宝具】
『ソウル・キング』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~20 最大補足:1~10000
ヨミヨミの実、と呼ばれる悪魔の実の能力。あるいは、音楽の腕と共にその能力を磨き上げた彼の結実。
本来は「一度死んだ後蘇る」だけの能力だが、その蘇生において肉体が骸骨になるまで魂の形で彷徨った経験から、アサシンは己の本質、存在の核が魂であると認識した。
これにより、骸骨としての躯体から魂を離脱させ、単独での移動が可能。いわば霊核がそのまま移動しているようなものであり、かつこの霊核は物理破壊が不可能である。彼の骨身が破壊されようと、霊核/魂が生きている限りはそちらも自然に治癒していく。また、魂での
加えて、全てを凍てつかせる冥府の冷気を召喚することも可能。剣技に纏わせることによって、斬りつけたものをその場に凍らせ留め置くことも可能。
更に、彼が元々培っていた音楽――人間の感性に直に訴えることができる技術と合わさり、彼は「魂を震わせる演奏」が可能となった。
これは耐性のないものにとって上級の精神汚染、またはカリスマに匹敵し、耐性がある相手にも対魔力を無視した「音楽あるいは聴覚に反応する精神」のみを参照し、睡眠、高揚など様々な精神感応効果を及ぼす。
【weapon】
『魂の喪剣(ソウル・ソリッド)』
彼が普段より所持している、杖に偽装した仕込み剣。彼がガイコツとなるより前から愛用していたものが、手長族の改良により更に強靭になったもの。
先述の宝具により黄泉の冷気を纏うようになるほか、元より居合の達人なのもあり、並大抵の海賊であれば技量も相俟って一刀の下に斬り伏せる。
【人物背景】
ルンバー海賊団元船長にして、”四皇”麦わらのルフィ率いる麦わらの一味の音楽家。
ガイコツとなる前は先代の船長を引き継いで自ら海賊団を率い、光の差さない濃い霧の海で命を落とした。
その後、生前食べていた悪魔の実の効果により白骨死体となって復活するも、偶然遭遇した
【サーヴァントとしての願い】
友の、仲間の下へと帰る少女を、太陽の下へ送り届ける。
【マスター】
後藤ひとり@ぼっち・ざ・ろっく!
【マスターとしての願い】
結束バンドのみんなのところに帰る。
【能力・技能】
動画サイトで投稿を行っているギタリスト。継続的に投稿し技量を磨き続けてきたことから、プロにも比類し得るテクニックを持っており、はやりの曲を取り入れるスタイルも含めて一定の再生数を誇っている。
ただし、ずっとソロでの練習をしてきた都合上他人と合わせることが致命的に苦手。技術も独学による非常に癖が強いものであり、見る人が見れば一発で共通点を見抜かれる。
【人物背景】
幼い頃より誰かと交わるのが苦手だった、有り体に言えばコミュ症でぼっちの少女。自意識過剰で、承認欲求も過大な所があるなど、人付き合いは根本的に不得意な性格。
陰キャでも音楽をやれば人気になってちやほやされる、という理由でギターを始め、三年の研鑽と動画投稿により技量は向上した……ものの、生来の性質もあって孤独は克服しないままだった。
諦めかけていたところ、ひとりの少女に手を引かれ、バンドグループ「結束バンド」のメンバーとなったことで、彼女の孤独はほんの少し薄れ始めた。
余談だが、感情の揺れ動き……あるいは魂の躍動によって時々形態が変化することがある。おそらく人間ではない。
【方針】
みんなのところに帰るために、頑張る。…いやでもやっぱり無理ですごめんなさい!!!!!!!!!!!!!!!!!
最終更新:2024年05月05日 15:58