◆


 古い記憶だ。
 この声を、機械に吹き込む。

「わたしは良い子でいなくちゃ」

 古い記憶だ。
 この声を、機械に吹き込む。

「わたしは良い子だから」

 ■い記憶だ。
 この声を、機械に吹き込む。

「■■■は良い子なの」

 ■■■■だ。
 この■を、機■に吹き■む。

「■■■は■い子」


 ◆


 16時、彼岸の学び舎。
 教室はにわかに騒々しい。
 ぎゅ、ぎゅ、と上履きが地面を鳴らす音があちらこちらで鳴り響く。
 他愛のない談笑。意味のないトートロジー。
 願いのない人形たちがルーティンに則り、活動を始める。
 退屈な役割(ロール)だ。救いのないほど冷たい空気を吸い込み、吐き出す。
 大きなため息だった。しかしてため息に気を留める者は誰もなく、一人大きく伸びをする。

「……ダメね」

 腐るような思いを抱えたまま、ヒメカミは腰を上げる。
 桃色の髪をさらりと流す姿はいかにも優等生然していた。
 慣れた所作だ。捨てたはずの所作だった。
 扉を開けて教室を後にする。
 久方ぶりに着る制服は、記憶以上にとっても窮屈で、息苦しい。
 それでもなんだか着崩すことは躊躇われ、喉元まできっちり絞められたリボンをゆっくりとなぞる。
 良い子たれ。誰かが無意識の裏で囁いた。
 無性に気が逸る。早く行こう。

「…………」

 正門をくぐる。
 日常と非日常のあわい。
 以前何かから得た知識だと、扉や橋とはそうしたあわいを切り替えるメタファーなのだそうだ。
 どうでもよい。けれどもしかり。
 学び舎の敷地外を出れば、優等生・『姫上綾乃』はいなくなる。
 くだらない役割(ロール)。必要ない立場(ポジション)。意味のない行動(アクション)。
 良い子だなんて、唾棄すべきものだ。

 ――じゃあ、そんなの捨てればよい。
 仮面が囁く。うるさい。

 沈黙。風音。足音。
 自然的な貼付のただ中においては、思考を整理するのに丁度よい。
 手元の端末には『怪盗お願いチャンネル』とポップなフォントが躍る。

「渋谷区か」

 やるべきこと。為すべきこと。
 一度目を通しこと内容を再確認し、改めて目的地を設定する。
 地獄に垂らした蜘蛛の糸、その悉くを切り捨てる。




 ◆


 地獄特別法3288条2項"更生プログラム"『ヨミガエリ』。
 将来、罪を犯す性質を持ちながらも実行に移ることもなく死んだ犯罪因子・『半罪人』を更生し、蘇らせるカリキュラム。
 悪い子を良い子へ。良い子であれば、生き返らせよう。
 教鞭を振るう『先生』の元、言うことも聞かない者たちもいずれは誇らしい良い子へ。
 なんて素敵な法案でしょう! 世の中が良い子であふれて素敵になります。

 でもでも、約3年前、法案の可決に至るまでには色々な試行錯誤がありました。
 何せ人の命にも関わる大きな決断です。それはもう『委員会』の中で揉めに揉めました。

 ヒメカミは試行錯誤に巻き込まれた一人であり、被験者です。
 彼女は死後、地獄に落ちました。
 深い深い奈落の底へ、落ちてきました。
 良い子たれ。
 良い子あるべし。
 良い子でなくては意味がない。
 そんな価値観に準じ、その通り生きてきたヒメカミにとって、思いもよらない事態でした。
 なぜ彼女は地獄へ落されたのでしょう。
 それはね。
 『先生』とともに悪い子を良い子へ導く『良い子』――すなわち『騎士』様を取り入れようと、実験の礎に選ばれたからでした!


 ◆


 『怪盗お願いチャンネル』。
 世に蔓延る悪事を厭う、無辜なる者たちが救いを求めて手を伸ばす居場所。
 3月の上旬、自然発生的に開設された謎のチャンネルには、いつしか『声』が集まるようになっていた。
 木偶と称しても問題ない、我の薄いこの世界の住民が主張を上げるのか。
 疑問に思うこともあったけれど、彼のものが『無辜の怪物』と知ってからは深く考えないようにした。
 契約したサーヴァントの特性(スキル)は、民衆の期待をおのずと煽るものだ。
 勝手に英雄視され、勝手に怪物だと忌み嫌われる。それでも求めに応じざるを得ない悪癖。
 その手の苦しみ自体には理解がある方だと自認している。そっとしておこう。

「この辺りのはずだけど――」

 目的地。渋谷区。
 現代カルチャーの中心地――から少し外れた薄暗い路地裏に歩み寄る。
 生ゴミの腐った異臭、錆びた鉄材の赤褐色、退廃的なビビットカラーに染まったグラフィティ。
 カリカチュアされる反社会的な景観の中、不釣り合いなほど健康的な二人一組の影があった。
 『怪盗お願いチャンネル』に寄せられた投稿の通りの風体、彼らが世を荒らす悪人だ。

「嬢ちゃんたちかい。俺たちに『予告状』なんてものを送ったものは」

 へらへらと薄笑いを浮かべる片割れの男は、汚物をつまむようにして赤と黒をにじませた紙切れを揺らす。
 コラージュで彩られた文面に曰く、『あなたの心を頂戴する(TAKE YouR hEaRT)』。
 思わず笑ってしまいそうなほど愚直な『予告状』だ。
 確かに紙切れには覚えがある。我が呼び声に応えたサーヴァントからの挑発だ。

「――そう、真名隠蔽の原則を無視した頭の悪い挑戦状、受け取ってくれたのね」
「『怪盗』というと、『アサシン』あたりか。はん、種が分かればどうということはない」

 男は雑に丸めた『予告状』を懐に仕舞うと、
 右隣に配する剣士――事前情報の通り最優の級位『セイバー』のサーヴァントへ目配せする。
 男の言葉は決して慢心でないことは、対峙しているヒメカミ自身が痛感していた。
 真正面から戦って、勝てるビジョンがあるのだろうか。ましてや今のヒメカミの傍らには、サーヴァントの気配もない!

「セイバー、やるぞ」

 セイバーが構える。
 下段の構えに似た仕草だ。
 握られるは光り輝く長剣、聖剣の類。十中八九、セイバーの『宝具』。
 さぞ高名な剣士なのだろう。――いや、その表現は正しくない。
 かの聖騎士がヒメカミでさえも名前を知るほどの誉れ高い騎士であることは裏が取れている。
 古めかしいプレートアーマーに包まれた全身から放たれる威圧は、なるほど聖なる力に恥じない恐ろしさだ。
 並の暗殺者――『アサシン』であれば、気配遮断を絶ったが最後、影にいながら首を刎ねられていると確信できる。



 ヒメカミは静かに息を飲んで。
 男を見据える。
 いつしか、男の顔付が精悍な戦士のそれへと変貌していた。

「悪いが嬢ちゃん、俺たちは負けるわけにはいかないんでね」
「……どうして?」
「決まっている。現世でやり残した宿題を終わらせるんだよ。――嫁が泣いてるんだ」

 じり……。
 男の願いに応えんと、セイバーの足摺が耳朶を打つ。
 風にも負けそうなほど、ささやかな音。けれど間違いなく斬首へのカウントダウンだ。
 ヒメカミも腰に刷いたレイピアを掲げ、これからに備える。

「ふうん、あなた、ご立派なのね」

 それでもヒメカミは男――聖杯戦争の『葬者』が一人をねめつける。
 セイバーを一顧だにしない視線、勝負を前にしてあまりにも不用心な構え。
 セイバーの繰り出す剣舞は疾風怒濤のごとし。音を認識するよりも先に、ヒメカミの柔肉を両断するに違いない。
 分かり切っている――分かったうえで、ヒメカミは『次』に備える。

「とても、ほかの参加者を蹴落としているとは思えないくらい」

 ならば、何に備えるか。

「でもね」

 決まっている。

「悪い子は地獄に落ちなきゃいけないの」

 『今この瞬間』を見据えて、『葬者(マスター)』の命を奪うために!
 ヒメカミの深奥から練り上げられる闇の魔力。剣先に込められた拘束(バインド)の呪い。
 自然、足に力が入る。
 勢いに任せ、踏み込む。

 ヒメカミの動きから遅れて刹那。
 セイバーが地を蹴る。
 縮地もかくや、一歩の間合いがあまりにも常識から逸脱している。
 音を置き去りにした白閃の軌跡はヒメカミの首筋へと伸び、――――!

「なっ――――!」

 しかし。
 軌跡は途絶え。
 届くことなく。
 セイバーの霊核もろとも消滅した。
 たちどころに霧散する霊影を目に留めながらも、男の次善の行動は速かった。
 指に嵌めた宝石を煌めかせ、冷徹に狙い、魔力を込め。射殺す!

「ガンド――――ぐ、あ、あああ!」

 まともに魔力を装填されていない咄嗟の一撃は動作もなく無情に弾かれ、
 お返しとばかりに闇の力を纏ったヒメカミの刺突が、男の胸を貫く。
 取り返しのつかない痛恨の一撃(クリティカル)。
 いかに男の決断が優れようと、すでに次を見越していたヒメカミの予測に軍配が上がった。
 いや、これも正確な言い回しではないだろう。

「痛くしてごめんなさい。また地獄で会いましょう」

 セイバーの『真名』、ひいてはその『人となり』が割れた時点で勝負は着いていた。
 頽れ、もはや起死回生もままならない敗者にヒメカミは止めを差す。
 悲鳴もなく絶命した男を確認していれば。

「手向けは終わりか、マスター」
「ええ。行きましょう、アサシン――いいえ、『バーサーカー』と呼んだ方がいいのかな」

 ヒメカミの傍らで影が伸びる。
 『認知世界(パレス)』から帰還した道化が静かに嗤う。
 その手に『オタカラ』は握られていなかった。




 ◆


「有名税っていうのかしら。名が知れているというのも考え物よね」

 『イセカイナビ』を通して、改めて先ほど相対した二人組の敗退を再認識する。
 かのセイバーの歪んだ心の居城『パレス』は崩壊し、道しるべを失った。
 これに勝る結果報告もなかなかあるまい。

「バーサーカーもお疲れ様」
「造作もない」

 種を明かせば、なんてこともない。
 奇しくも敗退したマスターの言葉の通り、事はシンプルだ。起こった出来事を整理すれば一言で片が付く。
 ヒメカミのサーヴァント・バーサーカーの『宝具』がセイバーを闇討ちせしめた。
 それだけのことだ。

 ――”我は影、虚ろなる我”

 時に。
 人々の心象に眠る『認知世界』――限られたものだけに門戸を開く、秘密の花園を踏み荒らす英霊なぞ、数えるほどしかいない。
 中でも『ジョーカー』と呼ばれるトリックスターは一角を担うに相応しい。
 己が正義に殉じ、悪を許さず民衆を翻弄する一等星。
 曰く、『ワイルド』。世界を変革する力を持つ、大怪盗。
 ミクロな視座に立てば、ヒメカミが引き当てた英霊とはまさにジョーカーその人だ。

 ――”契約だ。怒りを叫べ。嘆きを唄え。我が名を呼べ。望まれるように、呼び声に応じよう”

 だが、実際のところ。
 傍らに配すこの英霊を『ジョーカー』と呼ぶには憚られる。
 この霊基の根幹にあるものは、もっと、そう、大雑把だ。
 己が正義を謳いながらも、その実、民衆に翻弄される道聴塗説の成れの果て。
 換言するに、このサーヴァントの正体は、『ジョーカー』の別側面。

「『あなたの心を頂戴する(TAKE YouR hEaRT)』――心の怪盗団より」

 本当、ばかみたい。
 呆れたように、読み上げる。
 バーサーカー、同時にアサシンの霊基を持つ二重召喚のサーヴァント。
 ヒメカミが契約したサーヴァントの『真名』とはまさに、『心の怪盗団』、『ザ・ファントム』などと称された義賊である。
 バーサーカーの持つ『宝具』――『パレス』を暴き出す力をもって、セイバーは切り捨てられた。

「こんな手、今後はあんまり期待できないかな」

 セイバー、その『真名』宛に送られた書状。
 なるたけ証拠を残すまいと、男の懐から抜き取ったくちゃくちゃの予告状。
 魔力で生成されているゆえ、時間が経てば消えるろうが、改めて見るに、なんともまあ、子供じみている。
 こんな始末、この先余程通用しないだろう。
 そも『宝具』を使用したくても、都合よくは回るまい。
 此度もしかり。『心の怪盗団』の悪評が広まっていれば、致命的な対策を講じられていたはずだ。
 トリックスターの花形ならばいざ知らず、己が正義に悖る代行人に為せる手妻などたかが知れている。

「なんて、わたしにはお似合いかも」

 先の路地裏から離れて数キロ。
 自動販売機で買った、甘いジュースを呷る。
 なんだか悪い子みたいで、甘美な心地が――あんまりしないや。
 無駄に冷たいジュースを飲み干し、ゴミ箱へ捨てる。
 帰路につく。帰ろう。
 ずっと一本道をすたすたと。頬を撫でる風は、変わらずに冷たい。

「”マスター”」
「”どうしたの?”」
「”一人片したが、このままで良いのか”」

 霊体化したままの念話。 
 元の気質か、アサシンと比してバーサーカーの色味の濃いゆえか、彼の言葉と思考は端的だ。
 ただ、今回は思い当たる節がある。
 主従契約ののち取り交わされた規約の話。方針の確認。
 かのバーサーカーの真価は『認知世界』に潜り込むそのものではない――。

「……」

 かつてバーサーカーが如いたという世直し。
 悪党の『成敗』と、『改心』。
 その二つに一つ。
 匙は、マスターたるヒメカミに託されている。

 一拍。
 呼吸を置いて。
 それでも心地は変わらなくて。
 あの時も先ほどと同じことを言った。
 ならば、もう一度繰り返すまで。

「”悪い子は、地獄に堕ちなきゃいけないの”」

 わたしも含めてね。
 ヒメカミは嘲る様に吐き捨てる。
 やはり道化は、静かに息を整えて。

「”そうだな”」

 と。
 かつて耳にした声を代弁するように、バーサーカーは嗤うのだった。




 ◆


 地獄特別法3288条2項/"更生プログラム"『ヨミガ/エリ』。
 将来、罪を犯す性/質を持ちながらも実行に移/ることもなく死んだ犯罪因子・『半/罪人』を更生し、蘇らせるカリキュラム。
 悪い子を良い子/へ。良い子であれば、生き/返らせよう。
 教鞭を振るう/『先生』の元、言うことも/聞かない者たちもいずれは立派/な良い子へ。
 なんて素敵/な法案でしょう! 世の中/が良い子であふれて素敵になり/ます。

 ――ばかげている。

 どうして、どうしてなの。
 悪い子は、おとなしく地獄にいればいい。
 わたしはもう良い子ではいられない。
 悪い子は、 地獄の底まで沈めましょう。
 みんなみんな、死んじゃえばいい!

 悪い子のために、わたしが苦しまなきゃいけない理由はなに?
 だから、『システム』もろとも、みんなを破壊すると決めたのだ。

 もう少しだった。
 最後、見かけたあの七人とアルバイトの『先生』。
 彼らとともに、藻屑と消えるはずだったのに。
 なんの間違えで、地獄から地獄へ渡り歩く羽目になっているのだろう。


 聖杯戦争。
 願望を賭けた生存競争。

 救い、あるいは罰があるとするならば。
 きっと、この『聖杯戦争』は『ヨミガエリ』とは何かが決定的に違う。
 理解する。
 ここにいる人たちは、本質的に悪い子ばかりではない。
 『半罪人』とは異なる善良なる人々もいることだろう。

 それでも。
 ――その願いが如何に尊かろうと、
 ――その思いが如何に正しかろうと。
 他者を踏み台にする儀式の成就を、わたしは認めるわけにはいかない。


 悪い子は、みんな地獄に落ちるべきなのよ。


【CLASS】
バーサーカー (二重召喚/アサシン)

【真名】
ザ・ファントム(心の怪盗団)@ペルソナ5

【ステータス】(クラス補正込)
筋力 D 耐久 D 敏捷 B 魔力 C 幸運 E 宝具 A

【属性】
混沌・狂・地

【クラススキル】
狂化:D
 バーサーカーのクラススキル。
 筋力と耐久のパラメーターをアップさせるが、言語能力が単純になり、複雑な思考を長時間続けることが困難になる。
 始まりは己の正義だった。
 やがて正義は暴走する。罪への天罰。裁きの鉄槌。求められるは代行者。
 世俗に飲まれた正義に自己はなく、ならば仮面の下で何が嗤う。

気配遮断:B+
 アサシンのクラススキル。自身の気配を消す能力。
 仮面を探れど尻尾は掴めず、その正体は闇の中。
 人知れず彼らは仇を為す。
 身を潜めれ(カバーす)ればあら不思議! 姿は影に包まれるのさ!

【保有スキル】
二重召喚:B
 ダブルサモン。二つのクラス別スキルを同時に保有する事が可能となる。
 極一部のサーヴァントのみが持つ希少特性。
 心の怪盗団の場合は、上記の通りバーサーカーとアサシン、両方のクラス別スキルを獲得した状態で現界している。

無辜の怪物:C
 本人の意思や姿とは関係なく、風評によって真相をねじ曲げられたもの深度を指す。
 心の怪盗団とは、かつて日本中を席巻したという英霊。
 世にはびこる悪事を告発する義賊として持て囃されたが、いずれ汚名を浴びることとなった。
 人の心をすり替える悪魔であり、人を殺める凶悪犯。一方、彼のものに信仰、あるいは救いを求める者もある。
 姿なき正義。すなわちそれは、民衆を映す鏡。望む望まれずとも注目を集める、悪しき全盛期の名残。

反逆の相:E
 腐った世界に抗うならず者の総称。
 その炎途絶えたとき、仮面は闇へと溶けるだろう。
 ジョーカーとしての真名で召喚された場合は高ランクで所有しているが、現状はEランク相当になっている。

御使いの蝶:D
 トリックスター、またの呼び名をワイルド。定めに抗い、変革を望む者。
 善と悪。創造と破壊。再生と終焉。相反する自己――すなわち数多のペルソナを持ち得る力。
 ジョーカーとしての真名で召喚された場合は高ランクで所有しているが、現状はDランク相当になっている。
 ――貴方は、囚われ……。予め運命を閉ざされた『運命の囚われ』。


【宝具】
『あなたの心を頂戴する(TAKE YouR hEaRT)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10

 心の怪盗団の本懐。認知世界に潜り込み、歪んだ心の象徴――オタカラを頂戴する。
 オタカラを盗られたものは改心され、オタカラあるいはシャドウその人を壊されたものは死に至る。
 予告状をご覧の皆様におかれましては、どうぞ罪を暴かれなされ。

 主に3つの効果を持つ。
 1.彼や彼が共犯者と者に『イセカイナビ』の権限を与える。
 2.条件が揃えば、歪んだ心の持ち主の『パレス』に乗り込める。
 3.予告状を出し、心の在り様を意識させた後『オタカラ』を頂戴する。

 『オタカラ』を芽吹かすほどの強い自意識を持つものであれば、住民・マスター・サーヴァントを問わず『パレス』は現れ、頂戴できるだろう。
 一般に、霊基を確立するにあたり、余計な情報がオミット・デチューンされるサーヴァントのほうがパレスの攻略そのものは容易とされる。
 自発的に魔力を消費するのは『イセカイナビ』を起動させる時のみで、『パレス』の維持などは相手に依存する。


『集合的無意識、すなわち世界(メメントス)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-99 最大捕捉:1500万

 怪盗団は認知世界を暗躍せし。
 逆説的に、怪盗団のあるべきは認知世界と言えるだろう。

 ザ・ファントムを中心としたレンジ内を集合的無意識の認知世界――すなわち『メメントス』へと変貌させる。
 大半は良くも悪くも自我の薄い住民の無意識のため、内部の外観は会場のそれとほぼほぼ等しく、一般的なシャドウも徘徊していない。
 状況によっては内部構造は変化することもあるだろうが、現状だと魔力の探知に長けていなければ迷い込んだとして気付かないレベル。
 また、『オタカラの芽』をもつシャドウの周りは空間に歪みが生じる。シャドウを通して本体の改心か殺害かが可能。
 もっとも、4月まで生き残るほど強い願望を持つ者の『オタカラの芽』は既に花を咲かせているだろう。


【weapon】
 主にナイフ、ハンドガン、ワイヤー等 ジョーカーが使用する武具。
 ならびにペルソナ能力。

【人物背景】
 正義に則り、色欲の淫行を暴露した。
 正義に基づき、虚飾の欺瞞を告発した。
 正義に傾き、暴食の悪事を摘発した。
 正義に流され、強欲の横暴に鉄槌を下した。
 正義に則り、傲慢の陣頭を打ち破った。
 そして、民衆の願いたる『聖杯』を破砕した後、活動を止めた。
 ――とされる。
 真偽のほどは定かでなく、実際として心の怪盗団が何だったのかは不明のまま。
 不明のまま、民衆は『心の怪盗団』という娯楽を捨てたともいえるのだけれど。
 一説によれば、再度世間を賑やかした『改心事件』などにも関りがあるとか、ないとか。

 ジョーカーの『主人格』よりも『心の怪盗団』としての側面が大きく反映された霊基。
 まことしやかに囁かれる風聞の果て。民衆の玩具。
 基本的な人格、姿格好や能力は顔の割れた/街頭スクリーンに映し出された経緯を持つ心の怪盗団リーダー、ジョーカーと同様。
 真名が真名のため、何かの事情によっては状態が変質する可能性を有する。

【サーヴァントとしての願い】
 悪事なき世を頂戴する。

【マスターへの態度】
 死がたむろする冥界に民衆の声はなく、眼前に群がるは自我なき傀儡。
 今目の前で窮しているマスターの願いを聞き届けよう。


【マスター】
 姫上 綾乃(ヒメカミ)@クリミナルガールズINVITATION

【マスターとしての願い】
 悪い子には地獄を。

【能力・技能】
 『騎士』候補としての特権――多少の攻撃に対する耐性(バリア)を有する。
 少なくとも、マスター・サーヴァント以外からの攻撃は意味がないだろう。
 現在は主にストーリーボス時の技能が使用可能。
 外観のクリミナル化はされない。

【人物背景】
 地獄特別法3288条2項"更生プログラム"『ヨミガエリ』。
 将来、罪を犯すであろう性質を持ちながらも若くして死んだ犯罪因子・『半罪人』を更生し、蘇らせるカリキュラム。
 ――その試験運用の際、彼女は良い子でありながら地獄に堕ち、『ヨミガエリ』に参加することとなる。
 『先生』とともに悪い子を矯正する『騎士』として。
 しかし、ついぞ責任が果たされることはなく、彼女は地獄を呪うのだった。

 なんて。
 ただの『良い子』なら地獄になんて落ちないよ?

【方針】
 『ヨミガエリ』とは抜本的に違うシステムであることは理解している。
 蘇ることに執着はない――どころか、厭っている。
 だが、彼女は悪い子を呪わずにはいられなかった。

【サーヴァントへの態度】
 改心だなんてくだらない。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2024年05月06日 21:38