人の夢を守ろうとした。
大きな夢を、戦友と共に歩んでいきたいと思った。

だけど戦友達は皆戦いの中で消えていった。

守るものを守ることもできず孤独に死んでいった男。
夢を失い道を違え、最後の瞬間だけは通じ合ったかもしれない男。

それでも大きな理想のために戦って。

全てが終わって自分の最期の時が近づいた時に、この手の中に何が残ったのだろうか。

死が目前に迫って夢や希望、自分を覆っていた鍍金が剥がれた時。

自分の中に残っていたのは死を恐れる心だけだった。




「あっつ…」

テーブルの上に置かれたコーヒーに口をつけて叫ぶ。
湯気の上がる温度の飲み物は、猫舌の男が口に入れるには熱すぎた。

「口に合わなかったか。
 すまない、豆を磨り潰して湯を入れて抽出する。それだけの工程だが、所詮は人間の調理法を真似ただけのものでしかなかったようだ」
「いや、味は問題ねえよ。ただ、熱いのがダメなだけだ」

息を吹きかけながら珈琲を啜る。
味が分かる方ではないが、熱いことを除けば決して悪いものではない。

「…乾巧だ」

思い返すのは、この場所に呼ばれる前。
人間とオルフェノクの未来をかけた様々な戦いが終わり、たまに現れる人を襲うオルフェノクを倒しつつ、クリーニング屋として働く日々を送っている中で。
オルフェノクとなった体が限界を迎えていることに気付いて、働いていた西洋洗濯舗菊池から一人立ち去り。
とある川岸で、限界を迎え灰となっていく体を見つめながら目を閉じて。

気がついたらこの場所にいた。

聖杯戦争。サーヴァント。願い。
色々と聞いた気はしたが、どれほど内容が理解できたか。

それでも分かったことはある。

また、死に損ねたのだと。



「私はセイバー。剣を武器とするサーヴァント。
 真名は―――」
「いや、言わなくていい。知ってたら何かの拍子に呼んでしまいそうだからな」
「なら、こう名乗らせてほしい。
 ”妖精騎士ガウェイン”。生前に呼ばれた騎士としての名だ。こちらであれば問題はない」

そう言って、横に立つ女の姿を見る。
自分の体よりも一回り大きい巨体。その体は銀色の鎧で覆われている。
その身から感じられる覇気は、女だと思えるようなものではなかった。
もし彼女の敵意がこちらを向けば、抵抗もままならず殺される。そんな直感があった。

「そう怯えなくてもいい。
 今の私はお前のサーヴァント――主従関係にある存在だ。
 剣になりこそすれ、剣を突き立てようとは思わない」
「別に怖がっちゃいねえよ」

そんなことを考えたのが読まれたように言われた言葉を慌てて否定する。
少しだけ気恥ずかしいところがあっただけだ。



「早速だがマスター、これから主従としての付き合いとなっていくが。
 その上でマスターについて色々と知っておかねばならないことがある」
「……」
「マスターは、この戦いに何を願う?」

戦いへの願い。
生き残って得られる聖杯に対し、何を願うのかが問われている。


「願いってよ、何でも叶うものなのか?」
「ああ。死者を生き返らせたい、過去をやり直したい。
 どのような願いも叶うものだ、と聞いている」

一瞬だけ、頭の中にチラついた顔が見えて。

「ねえよ。何も」

それをすぐに振り払った。

「ただ、死ぬのが怖い。それだけだった」

手のひらを見る。この場に来る前の最後の記憶の中にあったように灰となっていく体はなかった。
綺麗な状態のままだ。

「ならばマスターの願いは生きたいということで正しいか?」
「…いや、何か違うな。
 生きたいって言うよりは、ただ、死にたくない」

何が違うのかは自分でも分からない。
だがそういう方が、今の自分には合っているようにも感じた。

「なるほど。いいだろう。
 私の願いは、騎士として弱き者を守るためにこの剣を振るうこと。
 マスターが死にたくないと願うのであれば、その命を守り抜くために戦おう」

そう宣言するセイバー、妖精騎士ガウェイン。
セイバーの顔を見る。
何故だろうか。
そう口にする彼女の顔がどこかに影と虚無をまとっているように感じられ。
どこか、かつて失った仲間たちのそれと、重なるように感じられた。


そんな感情を拭い去るように飲みかけの珈琲に口をつける。
冷めたそれはすんなりと喉を通っていった。





まだこの形が保てていた時に見た最期の記憶。
それは自分が収めるマンチェスターで、妖精達が人間を殺戮する光景。

――なにって、領主さまのマネゴトさ!
――毎日とっても楽しそう!ボクらもマネをしただけさ!

――バーゲストは食べちゃった!屋敷の奥で食べちゃった!


妖精たちの行動は、かつての自分の罪が撒いたもの。自分の責任。
だから、責任を取らなければならなかった。

妖精を牙で食らう感覚を覚えている。
妖精を爪で斬り裂いた感覚を覚えている。

そして。
まだかろうじて息のあった人間を踏み潰した感覚も覚えている。


獣の厄災と成り果てた体に、もう自我はなかった。

ほんの僅かに記憶に映っている、全てを滅ぼす怪物と化した自分を討ち滅ぼした円卓の騎士の姿。
それはかつて話に聞いた、憧れの騎士の姿そのものだった。
怪物となった自分を円卓の騎士が倒してくれるのであれば、これ以上の最期はないだろう。




ならば。
何故私はこの場所に呼ばれたのだろう。
何故妖精騎士としての姿で顕現してしまったのだろう。

いっそ災厄・バーゲストとして呼ばれればよかった。
暴れ狂うだけの獣であれば、こんなに苦しむ心を持つことはなかった。

妖精達を殺した感触を。巻き込んだ人間たちの悲鳴を。
この手で喰らった愛した人たちのことを。
思い出すことはなかっただろうに。

これはかつての願いをやり直せということなのか。
あるいはその罪を心に背負って戦えということなのか。

分からない。
だがもし望むことが許されるのであれば。

この戦いにおいては、厄災ではなく騎士として戦いたい。
あの罪を心の奥に覆い隠して、妖精騎士ガウェインとして。
いや、もしこの名を名乗る資格もないのであれば、ただの一人の騎士として、本懐を遂げたい。

それが、ただ一つの願い。




【CLASS】セイバー
【真名】妖精騎士ガウェイン(バーゲスト)@Fate/Grand Order
【ステータス】
筋力B+ 耐久A 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具B+
【属性】混沌・善
【クラススキル】
対魔力:C
セイバーのクラススキル。魔術に対する抵抗力。
どのようなクラスであっても、妖精騎士は高い『対魔力』スキルを保有している。

狂化:A+
本来はバーサーカーのクラススキル。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
精神に異常は見られない■■■■■だが、定期的に■■を■■しなければならない。
衝動に襲われた後、速やかに解決しなければ発狂、見境なく殺戮を繰り返すバーサーカーとなる。

妖精騎士:A
妖精の守護者として選ばれた加護を表したスキル。
対人・対文明に特化した自己強化であるが、他の『妖精騎士』達への攻撃行為はタブーと定められており、妖精騎士を殺めた妖精騎士は自己崩壊する。

【保有スキル】
ワイルドルール(A)
自然界の法則を守り、その恩恵に与るもの。
弱肉強食を旨とし、種として脆弱な人間は支配されて当然だと断言する。
自らの角が変じた妖精剣ガラティーンで相手を噛み砕き捕食して能力を奪う事が出来る。

聖者の数字(B)
汎人類史の英霊、ガウェインから転写されたスキル。
日の当たる午前中において、その基本能力(ステータス)が大幅に増大する。
バーゲスト自身は夜間の活動の方が得意なので、あまり相性は良くない。

ファウル・ウェーザー(A)
コーンウォールに伝わる、一夜にして大聖堂を作り上げた妖精の力を表すスキル。
味方陣営を守る強力な妖精領域を展開可能となる。



【宝具】
捕食する日輪の角(ブラックドッグ・ガラティーン)
ランク:A
種別:対軍宝具
レンジ:1~100
最大捕捉:100人

自身の剣であり燃え盛る角でもある「ガラティーン」を用いての巨大な一撃を放つ。
バーゲストの額に生えている角は自身の霊基成長を抑制する触覚であり、これを引き抜くとバーゲストの理性は死に、残った本能が肉体を駆動させる。
角を引き抜いたバーゲストは「先祖返り」を起こし、黒い炎をまとって妖精体を拡大させ、ガラティーンを相手の陣営に叩き降ろす。
振り下ろされたガラティーンによって地面から燃え立つ炎は敵陣をかみ砕いて捕食する牙のように見える。

【weapon】
妖精剣ガラティーン
噛み砕いた相手を捕食し、バーゲストの力に変えることができる。

ブラックドッグ
バーゲストの眷属。
モースの王の呪いより生まれた妖精を食らう妖精。


【人物背景】
凶兆の妖犬、「バーゲスト」
妖精國においては、人間に限りなく近い姿をもって誕生した黒犬『獣の厄災』。
迫害を受けながらもそれに負けることなく騎士に憧れ努力を続け、妖精騎士ガウェインの名を受けることとなった。

なお妖精國でのことは覚えているが、カルデアのサーヴァントとしての記憶は持っていない様子。


【サーヴァントとしての願い】
生前の行いもあり、かける願いは持っていない。
ただ、騎士として有ることができればいい。

【マスターへの態度】
弱き者なので騎士として守る。それだけでいいと思っている。






【マスター】
乾巧@仮面ライダー555 パラダイス・リゲインド

【マスターとしての願い】
無い。とにかく今は生きていたい。


【能力・技能】
ウルフオルフェノク
狼の特性を備えたオルフェノク(人間から進化した形態)への変身が可能。
最高時速300kmと狼さながらの俊敏な動きと高いジャンプ力を誇り、全身から生えた剣のような鋭い突起で敵を斬りつける。
身体中の鋭い突起を伸ばして相手に突き刺し、使徒再生(人間の心臓に突き刺すことで適合者をオルフェノクに、そうでないものを灰化させ死に至らしめる)を行うことができる。
生半可な銃火器の攻撃にも耐え、高所から飛び降りても命に別状はないなど耐久力も人間のものを超えている。

なお、参戦時期の関係でファイズギア、ファイズギアNEXTが現在手元にないためファイズへの変身は不可。


【人物背景】
幼少期、事故により一度死にオルフェノクへと覚醒した。
その後は夢もなく全国を回っていたが、ある出会いを境に仮面ライダー555として人を襲うオルフェノクと戦うこととなる。
友や仲間、多くのものを失いながらも人間のために戦い、オルフェノクの王の打倒も成し遂げるも、体の崩壊が進み寿命を感じ取ったことで一人静かに姿を消した。

パラダイス・リゲインドにて体が灰となる直前、スマートブレインに保護される前より参戦。



【方針】
分からない。
とにかく死にたくない。


【サーヴァントへの態度】
何か隠していることがあるようにも見えるが、悪いやつではないと思うので信じてみる。
ただどこかその雰囲気に木場勇治や長田結花のような、かつて失った仲間たちに似たようなものを感じている。

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最終更新:2024年05月11日 11:32