その男を初めて見た時に、彼が抱いた印象は、『枯れている』、だった。

 多分、そのイメージを他人に話した時、聞いた人間は鼻で笑うだろう。何処がだよ、とでも言い加えるかも知れない。
無理もない。外見だけを見れば、枯れているどころか、1000年生きてなお大地のエネルギーを吸って、太く逞しく生き続ける大樹その物としか。
思えないような、立派な魁偉を誇る大男であったからだ。

「結局の所、男の格ってものの大部分は、身体なのよね」

 言葉を発した男は、革張りのソファに足を組んで座りながら、分厚い雑誌のようなものを眺めていた。
声音は、所謂『オネエ』のそれであった。偏見と差別に溢れる言い方をするなら、オカマだ。
低い地声を無理くり、女のそれに寄せて高くしている事が一瞬で理解出来る程度には、男の声をしていた。

 手に持っている本を見てみると、それはどうやら衣類品のカタログであるらしい。それも、中流層がよく利用するような、名の知れたアパレル企業の商品のものではない。
ブランド物。それも、その企業が擁する者の中でも、特に名の知れ、名声と地位とを約束されて久しい、世界的なデザイナーの特注モデルを。
主として紹介しているようであるらしかった。

「……何を言いたいんだい? アンタ」

 低く、渋い声だった。好みのタイプな女も多かろう。

 察する所此処は、それなり以上の社会的ステータスを持った来賓者の為の、応接室であろう。
絨毯は、家具の量販店に売っているような、庶民の手に届く範囲のそれではない。20畳はあろうかと言う広さのこの応接室一面に敷かれた、ペルシア絨毯である。
名産で知られるペルシア絨毯だが、これにもまた格(グレード)がある。ピンからキリまである訳だが、この部屋のものは間違いなく、ピンの方。
この部屋の面積相応に敷く事が出来かつ、これだけのグレードのモノともなれば、値段にして数百万は下るまい。

 そんな篦棒な物が敷かれた部屋の真ん中。
これまた、我こそは特注品であると言う事を雄弁に物語る、曇り一つないクリスタルガラスの応接テーブルを挟むように、本革の黒いソファが設置されていた。
その片方には、脚組む男。そして、テーブルを挟んだ向かい側に、渋い声の持ち主が。

 ――枯れている?
何かの間違いだろう。体格を指してそう表現したと言うのなら、節穴どころの話ではない。盲目を疑うレベルだ。

 2m近い、いや、ともすれば超えているかも知れない程、背丈の高い大男だ。
これだけの身長でありながら、痩せ細っている、と言う事はまるでなく。寧ろ、常人以上の、筋肉の厚みと幅の持ち主であった。
ボディビルダーのような、他人に見せる為に大きく鍛えた筋肉と、現代の軍隊に従事する軍人のような、持久力と機動力を重視した機能的な筋肉とでは、外から見た筋肉の付き方がまるで異なる。
この大男の場合は、後者。機能的な筋肉の究極系とも言える物だった。
贅肉はない、脂肪も最低限。細身かと言われればくどいようだが断じて否。
男の長躯から考えられる、機動力と関節の可動を損なわない、その限界ギリギリの筋肉量。それを攻めた鍛え方だった。

 その鍛え上げられた筋肉を見て、余人が思い描くイメージは、戦士。
但し、古代ローマのグラディエーターだったり、古代ギリシアのスパルタ兵だったり、イスラーム王朝のマムルークだったりだとか。
そう言う類の戦士ではない。
武道家だ。剣や槍と言った物を振るって戦うのではなく、鍛え上げた己の身体1つで相手を捩じ伏せ打ち倒す、格闘家の趣が、その男には強かった。

「高くて凝ったデザインの『おべべ』を着たって、男の格に与える影響って、マイナス方面には無限大だけど、プラス方面には……そうねぇ、良くて2割。現実的な数値としては、1割ってところじゃない?」

「アンタ、ファッションデザイナーなのにそんな事言っちゃって良いのかい?」

「んふ、好きな仕事ではあるけど、だからこそ、見えてくる現実もあるってコト」

 ジッと、大男の姿を眺める彼は、大男とはまるで逆のイメージを見る者に抱かせる人物だった。
細身である。しかもこの上、背丈もある。目の前の大男程じゃないが、こちらも、190cmはあろうかと言う長身である。
細い上に背も高いとは言ったが、栄養失調に伴う不健康な痩せ方をしている訳ではない。明白な目的意識を持って、今の身体まで絞った。見る者が見れば、そう言う印象を受けるであろう。

 確かに、よく見ると伺える。
厳しい環境に身を置き、血の小便を流すような壮絶な鍛錬で己の身体を苛め、磨き抜いた、その精髄が。
痩せているのではない。凄まじいパフォーマンスを発揮する筋肉を、圧縮させただけである。
大男のそれと比べてしまえば、痩せぎすの子供にしか見えない程に体格が違うが、彼の身体もまた、人間の身体の可能性、その極限の一つ。
機能性の面の到達点の形、とも言えるそれであった。

「身も蓋もない話だけれど、身体つきもよくって、オーラも一丁前なら、何着ても格好が担保されるのよね。残酷な話だけれど、芋には何着せても芋よ」

 ジッと、目の前の男を見つめる。
トレンチコートに袖を通し、眼差しが見えない程黒くて濃いサングラスをつけた大男の姿を。

 ――召喚された、アーチャーのサーヴァントの姿を。

「ねぇアーチャー、服とか興味はないの?」

「ないね。さりとて、全裸で過ごせば良いと言う程、非常識でもない。変に思われないようでかつ、隠したい所を隠せりゃ良い」

「飾らないわねぇ。ストイックな子は好みだけど、試した事がない物を試してみるのも一種の修行よ? あなたが優れた武道家なのは解るけれど、美味しい物を食べたり、今日着る服に迷ってみたり、女を口説くのに精を出すのも、それもまた『道』だと思うの」

 そう口にする男の服装は、成程、言うだけの事はある。
中々の伊達者であった。身に付けている服は、世に知られているアパレル会社の既製品ではないのだろう。
何ならば、著名なデザイナーを幾人も抱える、高級ブランドの品でもないのだろう。
完全受注のオーダーメイド。自分に合うように作り上げた特注品の類を纏っているようであった。或いは、自らの手で作り上げた衣服を、身に付けているのか。

「どう? 私が誂えてあげようかしら、あなたの服。自分のサーヴァントには対価を取らないわよぉ?」

「いらないよ。オレが本気で戦うと、いつも破けて布切れになるからねェ。これだと、丹精込めて作ったアンタに申し訳なくなる」

「あらお優しい。見かけは怖くても、紳士的で助かるわぁ」

「紳士的、ね……」

 アーチャーが口元を歪ませて、自嘲気味に笑う。

「そう言う物とは遠い性格をしててね。無慈悲に何人も殺して来たよ」

 「そうさな――」

「アンタと同じ穴の狢みたいなもんだ、マスター」

「……ンッフフフ」

 マスターの男は笑う。
笑うだけだ。その笑みには何も含みがなかった。含みを持たせない技術を、会得しているからである。

「学がないオレでもねぇ。アンタの名前が『スカンジナビア・ペペロンチーノ』なんて名前じゃない事は解るさ。誰にだって、偽名だって解る名前だ」

「アナタのようないい男になら、ぺぺって砕けた呼び名で言われても悪い気はしないわね。そう呼んでくれても良いのよ?」

 ペペロンチーノ。
生前に所属していた組織の面々から、ぺぺの名前で呼ばれて親しまれていた男は、アーチャーの重圧感溢れる言葉に対し、平然とした顔でそう返した。

「オレと縁が結ばれるような人間だ、どうしようもない破綻者だろうと思ってたが……見立ては間違いじゃなかったな。何人殺して来たんだ?」

 息をするのも苦労する程の、重厚感のある沈黙が、場を支配する。
口を開いて、適当な言葉を1文字、口にするだけでも、大量のカロリーを消費してしまいそうな、その緘黙の中で。
最初に言葉を開いたのは、ぺぺの方であった。

「一々覚えてられない程殺して来たから、外道って言われるのよね」

 肩を竦めるぺぺ。
ふざけてそう言うリアクションを取ったのではない。それ以外に自分の宿痾を表現する事が、出来ないからだ。

「アナタにとって、殺した人間の数は勲章かしら? アーチャー」

「結果だよ。数を誇るのは、中身のない奴のする事だ」

「ほーんと、ストイックな男ね」

「――オレはな、マスター」

 低い声で、アーチャー。

「初めてアンタの姿を見た時、感心したよ。純粋な人間ながら、よく練り上げたもんだと。人間で辞めないでいながら、よくそこまで至れたな」

「……」

「それだけじゃない。アンタは才能もあるんだろう。常人が一生涯をかけても、手に入れられるか解らない、希少な技をいくつも会得している天才だ」

「そこまで買われると、嬉しくて泣いちゃいそうよ」

 よよよ、と泣く演技を、披露して見せるぺぺ。

「オレはねェ、マスター。武道家としてはどうしようもないはみ出し者だよ。下衆な仕事も随分引き受けてきた。癪に障る奴の仕事も遂行してきたね。依頼人を逆に、殺した事もあるよ」

「私も殺して見るかしら?」

 ニンマリと笑みを浮かべて、ぺぺが言った。
自分に齎されるかも知れない結末について、毛程の恐れも抱いてない。肝の据わった笑みでもあった。

「アンタは生かしておいた方が面白そうだね。……依頼人に対して、こう言う評価を抱いた人間はアンタで2人目だよ」

「あらぁ? その1人目って、どんな人なのかしら」

「ギャンブラーでね。稼いだ金の全てを平気で博打に注ぎ込む奴だったよ。必要とあらば、自分の命だって」

「長生きしなさそうねぇ」

「しなかったよ」

 その依頼人が……左京と言う男が死んだ瞬間を目の当たりにした訳ではないが。
自分の敗北を目の当たりにして、作業は、己が命運が断絶された事を全て受け入れ、自らの命を絶ったであろう事は。
短い付き合いながらも、アーチャーは理解していた。堕ちた先は、地獄以外にありはすまい。

「良かったわぁ。今回のサーヴァントも、当たりで何より」

 ぺぺがややあって、弾んだ声でそんな事を言った。

「なんだい。アンタ、聖杯戦争って奴の経験者だったのか?」

「変則的な形ではあるけれどもね。引いたサーヴァントには恵まれるのが、数少ない自慢なのよ」

 「――そう」

「何やっても上手くいかない星巡りの私に許された、数少ない良因」

 浮かべていた笑みが、自嘲気味のそれに変じる。

「アナタの言ってた、そのギャンブラーっていうの、多分破綻者でろくでなし、どうしようもない悪人なのでしょう?」

「全くその通りだね」

「私もそんな人間」

 ガラステーブルの上に、今まで手にしていたカタログを放り、ぺぺは続ける。

「ほんっとうに救いようのない悪人って、地獄からすらも拒否されるみたい!! 笑っちゃうわー!! ローンの返済とか滞った事ないのに、いつの間にかブラックリストに入れられてたみたい、マジウケるー!!」

 途轍もなくオーバーに笑いながら、ぺぺは言った。
普段の端正な顔立ちが、そう言う『芸』を思わせる程に歪んだものだから、アーチャーのサーヴァントは、少しだけ驚いた。

「あんまりにも嫌われ過ぎて、衆生を御導き下さる御釈迦様すら、蜘蛛の糸を垂らすのを面倒臭がってるの!! なぁにこれぇそんな私って臭いのかしらー!? お風呂毎日入ってるんだけどー!!」

 1人でキャーキャーと盛り上がるぺぺを、アーチャーは、静かに眺めていた。
サングラスの奥で、如何なる瞳をしているのか。それを窺わせない。古木のように静かに佇んでいた。
数秒ほど経過した辺りだろうか。己の愚かさにでも呆れ果てたような、そんな、自嘲気味な笑みを浮かべて、ペペは、静かに語り始めた。

「アーチャー。アナタ、輪廻って信じる?」

「信じる……と言うより、オレのいた世界では実在する概念だった。普通の人間は知らない事柄だったがね」

「輪廻転生っていうのは、仏教の世界じゃ苦しい事。悲しみと苦しみが絶え間なく続く現実の世界に生まれ落ち続ける事。その、輪廻の輪から外れ、苦しみと無縁の世界に飛び立つ事を、悟りを啓くと言うの」

 そこまで言うと、ぺぺは少しの間、沈黙した。5秒程の、事だった。

「でもね、悟りを啓こうとも、煩悩を108つ抱いていようとも。輪廻が打ち切りになる人間、と言うのがいるの」

「そんな事が解るのかい?」

「普通は、解らないのよ。さっきアナタが言った、常人が一生努力しても手に入れられるかも疑わしい技術で、理解しちゃっただけ」

 「私達の流派では、漏尽通なんて言うのよ」、とぺぺは付け加える。
お前それは……、とアーチャーが溢す。彼の記憶が確かなら、仏教における超常的な6つの神通力の1つではないか。
この神通力を得んが為に、仏僧や修験者は、峻険な山岳・山嶺の中に身を置き、修業を永年積むのである。ぺぺは、その6つの神通力の中でも、最上位の力を使えると言うのか?

「人が思う程に、大それた力じゃないのよ。自分の輪廻が、ここで終わる事を悟らせるだけの力。……諦念を、抱かせる事しか出来ない、とんだネタバレ能力って訳」

 目を瞑り、瞑想を行い、己が心の深奥へと潜って行く。
目を瞑ったその段階からして、そこは既に、無明の闇。文字通り、光源1つそこにはない。
消え掛けのマッチを思わせるか弱い明かりも、光苔を思わせるか細い光も。何もない。ただ暗黒、ひたすらに暗渠。本当の黒だけの世界だった。
そんな筈はない。何か光る物がある筈だ、何か雑多な物とぶつかるに違いないと、その暗黒の中を潜って見ても、何もないのである。
何かあって欲しい、潜る道中で地獄の鬼と出会しても構わない、いっそ潜り切った先にある物が業火燃え盛る地獄であっても納得する。

 何もない。
潜っても潜っても、視界は開けぬ。当初の暗黒のまま。
何かに当たる、ぶつかる訳でもなし。更に深い所を潜るのに要した力、その力の分だけ、抵抗なく更に深みに沈んで行く。
そこに、ぺぺの瞑想を阻み、誘惑をしようとする、悪魔も羅刹も魔羅もいない。 
修行する者が、輪廻に囚われているから。生まれ変わる生き物だと知っているから、彼らも誘惑して来るのだ。
次がないと解っている人間に付き合う程、彼らも暇ではないと言う事だった。

 ――妙漣寺鴉郎は、諸仏も悪魔も見放した、終わった人間であると言う事だった。

「マスター。アンタは、聖杯とか言う奴に、願う事はないのか? 次の命が続くようにと、願わないのか?」

「ないのよぅ」

 ぺぺは即答した。

「未練がないと言えば嘘になるけど、死んだ方が良い命だって言う自覚もあるの」

「馬鹿だねェ、アンタ」

 アーチャーが呆れ果てたような声音でそう言った。

「それだけの強さを得ていながら、何で自由に生きないかね? 何でもっと、高みを目指さないかねェ」

 アーチャーから見たぺぺと言う男は、達している人間だった。
技術も身体能力も、磨きに磨かれ、極限の域あると言っても過言ではない程だ。
その力に対してぺぺは、何にも誇りも持っていない。その力を磨き、更に上を目指そうと言う気概も感じられない。
そう言う生き方では、駄目だ。ぺぺはもう、光に満ちた世界を歩けない程、業を重ねた人間である事をアーチャーは見抜いている。
常に、戦いと殺しが付き纏う世界を歩まねばならなくなったのだ。そんな世界で、ぺぺのように、欲もない、向上心もないでは、無惨な死が待ち受けるだけなのだ。

「武道家にとって最も恐ろしいのは、衰えだ。昔は当たり前のように出来ていた技が、上手く行かなくなる。一工夫凝らすか、少し手を抜かなければ決まらなくなる。この恐怖が、遠からん内にやってくる。それがどれ程恐ろしいか、アンタに解るか?」

「……」

「こうしてサーヴァントとして招かれた以上、オレも死んでしまった訳だが……死んでいるよりは、生きている方が楽しいクチでね。蘇った暁には、もっと強くなって――」

「ウソ、下手ねぇ」

 ぺぺがそう水を差した瞬間、アーチャーの言葉が止まった。

「私の持ってる神通力って、漏尽だけじゃないの。他心通も使えるって言えば、伝わるかしら?」

「……ズルいねェ。そう言う情報は早く伝えなよ」

 アーチャーはその言葉で理解したらしい。
要するにぺぺは、他人の心を読める、正真正銘の読心術を、使えると言っているに等しい事柄だからだ。

「……ウフフ、とは言ってもね。他心の方は、隠してる事を覗き見れちゃうから、私も使う事はそんなにないの。覗き魔みたいで、やらしーじゃない? だから、アナタにだって使ってないわぁ」

 「でも」

「そんなの使わなくても解るのよ。アナタが本当は、死ぬ事を望んでいる悲しい人だってこと」

「……」

「武道家としての心が、枯れてる人なんだってこと」

 ぺぺが初めて、アーチャーを召喚し、その姿を目の当たりにした時。
真っ先に思った事は、人間ではない、と言う事だった。これは、アーチャーの感性だったり、放つ気風のようなものが、人間を逸脱しているとか言う事ではなく。
真実、彼が人間以外の存在。妖怪だったりだとか、鬼だったりとかと、近似していると言う事を、理解してしまったのだ。

「人間の煩悩は108つ、だなんて言うけれど、実際はそれを1万倍したって足りない事ぐらい、よおく理解してるの」

「……」

「逆に、私の方から聞きたいわね」

 ジッと、アーチャーの目を見た。
サングラスで瞳を隠していようが関係ない。それでもぺぺは、凝視した。

「それだけの力を得ていて、何で自由になろうともせず、死を求めようとするのかしら? アーチャー……ミスター、『戸愚呂』」

 ぺぺの目から見て、アーチャーは……戸愚呂は、枯れていた。
身体から漲る、戦慄を隠せない程膨大な力とは裏腹に、彼の気迫と思想は、世を倦んだ、自殺寸前の人間のそれと何ら変わりがなかったのだ。
死に場所を求めて、戦う。そんな類の英雄など珍しくない。たが、戸愚呂の病理はもっと根深い。
彼は恐らく、否定されたがっている。自分の事を。自分の邁進する、理想という奴を、止められたがっている。

「アナタ程の強さの男を指して、枯れている、なんて物言いは失礼よね。でも、実際のところは、どうなのかしら? アナタにとってこの聖杯戦争って奴は、不服?」

「呼ばれた以上は戦うさ」

 沈黙を保っていた戸愚呂だったが、ややあって、重苦しく言葉を紡ぎ始めた。

「妖怪を相手にするような生業をしてりゃ、いつかはどこかでぶち当たる事だった。負けて、仲間を殺されるなんてな」

 修行の日々を送っていた所に、強大な力を持った妖怪がやって来て、同門の仲間を殺し尽くし、去って行く。
それが、レアケースなのかどうかと問われれば、戸愚呂は、否と答える。珍しい事ではないからだ。
それどころか、いつか未来の時点で、起こり得る事だとすら思っていた。妖怪の多くは、人を喰う。
そんな存在と渡り合う為の拳法を学んでいれば、必ずや、直面したであろう事態だった。

「オレは多分、覚悟も危機感もなかったんだろう。オレの時に限って、そんな事が起こる筈がないと、思っていたに違いない」

「……」

「当然のように、皆殺されたよ。当たり前だとすら今は思う。そんな甘い覚悟で振るわれる拳じゃ、誰だって打ち倒せないからな」

 生き残った同門の1人は、あの時の力では誰が戦っても同じだ、どうする事も出来なかったと。
戸愚呂の敗北をフォロー、カバーしたが、当の戸愚呂には、そんな言葉、何の慰めにもならなかった。慰められても、屠られ、殺された仲間は、帰ってこないのだから。

「そんな、甘くて、弱くて、情けない自分が嫌だったから、オレは強さを追い求めて、仇を殺して。……人間以上の物になりたかったから、人の身体を捨てた」

 「そうして、な」

「人間を捨てて妖怪になって、絶頂期の身体能力が死なない限りずっと続く身体になって、オレは悟ったよ。今度は、オレの番になっちまったんだって」

 口角をクッと吊り上げて、戸愚呂は語る。

「今度は、オレが。憎まれて、倒される番だとな」

 妖怪の身体になって尚、戸愚呂は、武道家であり続けようとした。
だが、武道家であり続ける為には最早、戸愚呂の身体は人間の規範を逸脱してしまっていた。
拳を振るう。相手の身体が比喩抜きに、陶器の様に砕け散る。蹴りを見舞う。直撃すれば相手の身体は粉々になり、避けたとしても、生じた風圧で全身の骨が砕ける。
そんな生き物に、戸愚呂はなってしまった。武道家としての戦いの流儀、それに則るには余りにも、戸愚呂の強さは化物のそれになってしまっていた。
これではもう、人を喰わないだけで、残虐無比な妖怪と自分は変わりない。それはつまり、戸愚呂と言う男は、憎しみを以ていつか誰かに殺される側に、回ってしまったと言う事なのだ。

「それで、良かった」

 ニヒルで、寂寞とした笑みを浮かべ、戸愚呂は続ける。

「仇については最早恨みはない。オレは、あの事があったから、直向きに、純粋に、愚かしく。強さを追求する事が出来た。吹っ切れる、いい機会だったよ。感謝しても良いくらいだ」

「……アナタが、妖怪に身を転じさせた事について、私からとやかく言える事はないわ。魔王になってでも、天狗に堕ちてでも。強さと力を求める者がいる事を、私は知っているから」

 人間にとって、力と言う果実が、どれ程魅力的な物に映るのか。ペペはその身を以てよく知っている。
その身を齧る為ならば、悠久の時の中で、幾千幾万もの屍体をうず高く積み重ね、手を伸ばそうとする事もまた、骨身に染みて理解しているのだ。

「でも、アナタが倒されようとしているのは、武道家としての定めだから、だけじゃない。きっとアナタは、後悔してた」

「……そんな物を抱いてちゃ、良いパンチは打てないねェ」

「ウソは、よしなさいな。アナタは――」

「アンタは、自分の過去の非道を後悔しているのかい?」

 今度は、ペペの方が、閉口する番だった。
彼は、自分の為す殺しについて、罪であると思う事を、当の昔に放棄した人間だった。
すまなかった、許してくれと。形だけでも、謝意を抱く事すらもうやめている。そのような生き方を、一切飾らず言うのならば、次のようになる。ロクデナシだ。

「……そりゃあ、人間だった頃はねェ。仲間の死にも、自分の弱さにも、後悔はしてたさ。だが、仇を討ち、妖怪になり、何十年も生き続けてれば、忘れるように生きるのが普通だろう?」

「そう言う、ものかしら?」

「アンタだって、そう生きた筈だ」

「……否定は、しないわ」

 認めた。どうしようもない、事実だったからだ。
だが戸愚呂は思い違いをしていた。殺してから暫くの間、ぺぺが、後悔を抱いていたと思っていた。彼は、御山の同胞を皆殺しにしたその瞬間から、彼らについて引き摺る事を、止めていたのだ。

「アーチャー。アナタが身体も、心も。強いと言う事は、改めてよく解ったわ」

「嬉しいねェ。有象無象は兎も角、アンタに認められるのは、素直に嬉しいよ」

「そんなアナタだから、私は気になるの。アナタは、誰に、敗れたの?」

 戸愚呂の笑みが、消える。口が、真一文字に結ばれた。

「アナタを倒した相手は、アナタが望む、理想の相手だったの?」

「ああ」

 戸愚呂は、即答した。迷いも何もない、肯定の言葉。

「オレを倒した時には、中学生のガキだった」

「……」

「最後まで、誰一人殺させないで、守り通して勝ち残ったよ。ソイツにオレは強さでも負けて、しかも昔のオレに出来なかった事も成し遂げられた。凄い奴だろう?」

「ええ」

 戸愚呂が、余りにも我が事の様に、自分を倒した相手の事を褒める物だから、ぺぺは思わず、笑みを零してしまった。

「だが、オレの強さに憧れたと言っていた。まだまだ伸びるガキなのに、オレなんかを越える山だと思っていた」

 クッと、笑う戸愚呂。手のかかる、弟か何かを見るような笑い方だった。

「しょうがないから、必死に、下衆な悪役を演じてやったよ。オレみたいな男になれば終わるんだと。成長も止まるんだと。心と魂に、刻ませてやったんだ」

 沈黙の時間が、2人の間に流れた。
目を瞑り、話を聞いていたペペ。更に、10と数秒程の時間が流れ。ゆっくりと、ぺぺは瞼を開いて、言葉を紡いで行く。

「アーチャー。サングラス、外す事出来る?」

「……」

 言葉を受け、戸愚呂は、固まった。
しかし、何でもない頼み事だったからか、激しく否定する事もせず、ゆっくりと、サングラスを彼は外した。
露わになった戸愚呂の目を見て、ぺぺは、微笑んだ。

「……目は、口程に物を言うわねぇ。アナタの目、とても穏やかよ」

 その言葉を聞いて、戸愚呂はすかさずサングラスを掛けなおした。

「言われるのが嫌だから、濃いサングラスを付けてるんだけどなァ……」

 人間を越えた、異次元の性能の身体。これが、妖怪由来の筋肉であるからと言うのは、ぺぺも解った。
しかし、人から鬼に転じ、妖(あやかし)に変じ、魔生に変化し天狗に堕ちた者達に出会った時、ペぺは、目を見るのだ。
そこで、まだ引き返せるのか、手遅れなのか。彼は、判別出来る。脳に一番近く、脳が伝える感情を一番早くに伝える感覚器である眼球は、嘘を吐けないからだった。

 ペペの、思った通りだった。
戸愚呂はやはり、嘘の下手な『人間』だった。自身を打倒した若き霊界探偵――浦飯幽助の事を話す時の戸愚呂の目は。とても、穏健な光を宿していた。
肉体の全て、骨の1本、筋繊維の1筋、神経や血管1束から、身体のあらゆる臓器が妖怪に変じても。目だ。その目だけは、人間である事を、望んだのかも知れない。

「本当に非道な人間は、自分を倒した相手の心配もしないし、誇らしく話さないのよ」

「次は、気を付けるよ」

「そのままのアナタの方が、私はいいわ」

 そう言うとペペは立ち上がり、自分が座っているソファの後ろに設置された、日本酒のセラーまで近付いた。入っている物はどれも、かなりの銘柄のものである。

「呑める?」

「武道家だから、酒を断っててねェ。そうして避けてる内に、本当に呑めなくなったよ」

「それじゃ、バナナジュースね。昔取った杵柄でね、バナナ使った料理は上手いのよー!! シェイクして新鮮な物を振舞ってあげるわー!!」

 強烈な笑顔を浮かべながら、戸愚呂に向かってウィンクを投げかけ、その場を後にするペペ。
部屋に1人、取り残された戸愚呂は、ふぅ、と一息吐く。窓から見える、冥府の夜空を見上げながら、戸愚呂は、静かに零した。

「死んでも話す事が、お前の弟子の話とは」

 オレも焼きが回ったな、と小さく呟く。その後で、サングラスを、掛けなおした。

「オレの事を忘れろってお前に言ったのに、オレは全然お前を忘れられんなァ。……幻海」

 霊界とも魔界とも違う、冥界の空に浮かぶ月の光は、サングラス越しに見ても、人間の世界に浮かぶ月と、何ら変わりないような気がして、戸愚呂にはならない。

 夜の、11時半ば。
世田谷に建てられた、ぺぺが経営するファッションデザイン事務所での、事であった。

.



【クラス】

アーチャー

【真名】

戸愚呂(弟)@幽☆遊☆白書

【ステータス】

筋力A+ 耐久A++ 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具C

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:C+
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
妖怪としての地を剥き出しにする事で、相手の生命力を吸収する生態が付与され、この時吸収される魔力量次第では、現界の日数は伸び得る。

【保有スキル】

霊光波動拳:A-
心技体を磨き上げた肉体と、人であれば宿っている霊力を駆使し、纏わせ、放出して戦う極めて高度な技術を必要とする武術体系。
習得のランクは最高峰で、Aランクで漸く、使いこなせると言っても過言ではないランク。アーチャーは嘗てこの流派における最高峰の拳士であったが、復讐の道に堕ち、妖怪としての生を望んだ事から、ランクにマイナス補正が掛かっている。

天性の肉体(妖):A
後天的、かつ、邪法と思しき手法によって、アーチャーは妖怪としての肉体と性質を得ている。
筋力・耐久・敏捷の値が常にワンランク上昇している状態としてカウントされ、更には、腕や脚をもがれようとも瞬時に再生される程の、強力な自己再生能力をも保有する。

怪力:A
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

■■■■:■
隠蔽されている。このスキルをアーチャー及び、マスターが閲覧する事は出来ない。

【宝具】

『爆肉鋼体』
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:- 最大補足:-
アーチャーが有する、妖怪としてのただ一つの能力であり特性。
彼が妖怪として保有する能力と言うのは実の所それ程特別な物ではなく、己の筋肉を操作し、戦闘に適した筋力・耐久力・敏捷性を得る、と言う程度のもの。
つまりは、人間を超越した、妖怪としての身体的特性と能力を、更に強めるだけ、と言う物に過ぎない。
たったそれだけだが、アーチャーの場合はその上がり幅がとても大きい。アーチャーはパーセンテージ刻みで己の筋肉量を操作する。
サーヴァントとの戦闘に堪え得ると判断している80%の出力ともなると、身体から発散される妖気を浴びるだけで、下手な使い魔や人間が消滅してしまう物となる。
拳がからぶった時に生じる風圧だけで、クレーターを作り上げる程の威力の一撃は、三騎士レベルのサーヴァントであっても、直撃すれば死が見えるレベル。
これだけのパワーを誇りながら、アーチャーは、極まった武術の冴えをその力を乗せて発揮してくるので、隙が全く無い。
100%の力ともなると、肌の色が灰色に近い色に変化し、身体つきの方も最早、筋肉で出来た鎧を纏った大男、と言う風な、異形の様相に変化する。
この段階になると無分別かつ手あたり次第、周りから生命力や魔力を吸収するようになる。それだけ、魔力の消費が激しいからである。
身体能力の方も異常とも言うべきものになり、指を軽く弾くだけで、対物ライフルのような威力の指弾が放たれるようになり、相手にとっても非常に脅威。
勿論、近接戦闘についても言うまでもなく強力な値となり、こうなると、耐久力に自信がある、宝具級の鎧を纏っている、と言うレベルであっても、その上から致命傷、即死級の一撃を叩き込めるようになる。

 単純にして、強力、絶大。
純粋かつ圧倒的なパワーこそは、武術の鍛錬を越える。そうと信じたアーチャーの信仰と理念の結晶とも言える宝具である。

【weapon】

【人物背景】

罪の意識を捨てきれず、その生涯を、苦悶と絶望と言う拷問の中で生きねばならなかった男。不器用で、馬鹿な男。

【サーヴァントとしての願い】

武道家として呼ばれたのなら、答えは、1つだろう?




.

 ――でも。

「……私がアナタを見て、枯れていると思ったのは。アナタが死にたいと思ったからだけじゃないのよ」

 自分の会社の給湯室、バナナを数本とヨーグルト、レモン果汁を絞った物をミキサーに入れ、攪拌させながらぺぺは静かに口にする。
戸愚呂は、枯れている。初見でそうと思ったのは間違いない。だがそれは、彼の性格が、体格と装いからは想像も出来ない程に、虚無的だったからじゃない。

「何でアナタ……私と同じで……」

 先が、ないのだろうか。
サーヴァントであるのだから。既に現世での役割を終え、過去の住人となったのだから。先が見えないのは、当たり前の事であるが。
もっとそれ以前の問題だ。漏尽通で見た戸愚呂の未来は、何もなかった。ペペと……妙漣寺鴉郎と同じ。
人間の身体を捨てた時からなのだろうか? それとも、彼が語らなかった何処かの時間軸以降からか? 兎に角、ぺぺには、戸愚呂の未来が、見えなかったのである。

「……魂の主従なのかも知れないわね」

 フッと、ぺぺは笑う。
冥府に堕ちてもついてくる、己の宿命。それに対する、自嘲の笑みであった。

.



【クラス】

〈エクストラクラス〉プリズナー

【真名】

戸愚呂(弟)@幽☆遊☆白書

【ステータス】

筋力A+ 耐久A++ 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具EX

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

対魔力:C

単独行動:C+

【保有スキル】

霊光波動拳:A-

天性の肉体(妖):A

怪力:A

果てなき罪の道:EX
死して尚、転生して尚続く、贖罪の道。それを歩み続ける者。
どれだけ償えば報われるのか。償い終えたその先に、その人物が想定する救いや滅び、報いはあるのか。それは、誰にも、彼らにも解らない。
このスキルを持つ者は、未だに贖罪の期間、受刑期間が終わっていない事を証明する。このスキルを持つと言う事は、『贖罪と償い』を強制的に終わらせる何らかの願望器、
及び超自然的・形而上学的な『力』に触れる事は出来ない。具体的には、それらと接触する事を、運命や因果律が拒否する。言ってしまうと、個人に対して働く悪意ある抑止力。
当企画に於いてはそのまま、聖杯への接触が、プリズナーの刑期を強制的に終わらせる超常的な力と判断されており、その接触可能性が高まれば高まる程、プリズナーのファンブル率は急激に増大していく事になる。このスキルはプリズナー及びそのマスター、他の参加者からすらも知覚されない。

【宝具】

『爆肉鋼体』
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:- 最大補足:-

『輪廻断絶・冥獄界』
ランク:EX 種別:罰 レンジ:- 最大補足:-
現在のプリズナーと言うサーヴァント、そしてその魂を縛る宝具。そもそも、宝具としてカウントして良いのかすら解らない代物
この宝具は如何なる看破スキル・宝具を用いてもステータスとして認識する事が出来ず、プリズナーのマスターはもとより、プリズナー自身ですらも、この宝具の存在を認識出来ない。
英霊の座、或いはそれに類する情報のプールから、情報をピックアップ、抽出し、これを現世ないし特定ロケーションに召喚させる。
それが英霊召喚の基本的なメカニズムだが、プリズナーは他のサーヴァントと、此度の聖杯戦争の参戦の出自が全く異なっている。
プリズナーに限り、今回の聖杯戦争は『冥獄界』が与える、『あらゆる苦痛を一万年かけて一万回与えると言う贖罪の一環』となっている。
つまりプリズナーは英霊の座或いはそれに類するシステムからの召喚なのではなく、『冥獄界と言う世界その物の意思』によってこの世界に現れている。

 プリズナーはサーヴァント同士の戦いにこそ勝つ可能性はあれど、聖杯と言うアイテムが冥獄界の贖罪を終わらせる可能性があると言う性質上、
『この宝具が存在する限り絶対に聖杯には到達出来ず、何処かで必ず敗れ去る』。脱落者の数が多くなればなるほど。生き残っている日数がしぶとい程、急激にファンブル率が高くなる。

 地獄と言う世界が罪人に贖罪を強いている、と言う関係がそのまま宝具となったものであり、その贖罪を中途で終わらせる可能性があるものへの到達を、この宝具は許さない。
プリズナーがこの宝具の存在を認識――即ち、此度の聖杯戦争が、冥獄界が用意した苦痛の一つだと知る瞬間は、自らが滅ぶその時しか存在しない。

【weapon】

【人物背景】

やがて滅ぶ事が決まっている者。1億年の刑期の内、彼が今何年目を迎えたのか。それも男は、知る事は出来ない

【サーヴァントとしての願い】

 ――――――――――――――――

【マスターへの態度】

生前にも様々な依頼人の頼みを聞いて来たが、その中でも一番まともかも知れない人間。
但し、積み重ねて来た業と言う意味では、ぶっちぎりでこっちの方が上。従う分には、悪い気はしない。戦闘能力も高い上に、経験値も豊富だ。

【備考】

プリズナーについて:
囚人、或いは、受刑者。幾度の転生を経ようとも、贖罪を行おうとも、決して許されぬ罪を背負った者。
このクラスを宛がわれて召喚されるサーヴァントはそもそもからしてまともなサーヴァントではありえず、『その召喚されたシチュエーション自体が、償いの一環と判断された為に召喚』される。
つまり、このクラスで召喚されたサーヴァントは、人理焼却や人理編纂の時であったのならば、いつかは消滅するし、聖杯戦争の場合ならば必ずや聖杯到達前に退場する。
だが同時に、このサーヴァント自体、余程の事態でない限りは召喚はされない。それ程までに、特異な出自のサーヴァントだからである。
しかし、本企画の舞台が、冥界と言う特殊なロケーションである事。そして、召喚したマスターであるペペが、余りにも戸愚呂自身と先のない者同士で相性が良かった事。
以上の要因が重なって、召喚されるに至ってしまった。ペペからすれば信じがたい程の貰い事故、召喚される前から詰んでいる案件である。はー御愁傷様。



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【マスター】

スカンジナビア・ペペロンチーノ@Fate/Grand Order

【マスターとしての願い】

聖杯って、輪廻の続きとかも用意してくれるのかしら?

【weapon】

【能力・技能】

修験道:
役小角を開祖とする、日本古来から伝わる山岳信仰。密教の流れを汲む事で、一般的には知られる。
厳しい山岳の環境に身を置いて、血の滲む様な修行をし、悟りを得、神通力はその過程で得られる副産物……と言うのが、一般的かつ、広く受け入れられやすい解釈。
ペペの産まれた実家と言うのは、その仏教から分派した密教、から更に分派した修験道から、また更に分かれた流派の1つ。
修験道の外道とも言うべき『天狗道』を目指す法術師の一派。彼の流派の初代は偶然かは兎も角、魔王尊とパスを繋いだらしく、その初代に倣い、
自ら天狗道に堕ちる事によって超人化を目指した。しかし、一族に相伝される才能や素質は無いため、完全に1から接続を目指そうとしていた。
この為、市井から子供を攫っては修行を強いるという所業を繰り返しており、鴉郎もまたこの内の1人、ないし分家の家元の嫡出子の可能性が高い。

 非常に才能が高く、天才児と言うべきレベル。修験道に伝わる様々な法術を高いレベルで修めている他、身体能力も、御山での修行の為か極まっている。
そして最大の特徴が、常人であれば100年修行に費やして、1つ習得出来ればいい方とされる六神通の内、3つを。10歳までに習得していると言う点。
走力を初めとする様々な身体能力が高まる『神足通』、相手の心を読む『他心通』、自らの終わりを悟る(解脱する)『漏尽通』の3つを、鴉郎は会得し、使いこなせる。

【人物背景】

カルデアが嘗て用意していた生え抜きメンバー達、所謂Aチームとしてカルデアから選抜された優秀なマスターの一人。本名は妙漣寺鴉郎。
その高いサバイバル技術と、卓越した殺しの技術を買われ、マリスビリーにスカウトされた。過酷な特異点での生活を、サポートする役目を期待されたのである。
しかし、人理焼却に際して、レフ・ライノールの用意した爆弾によって一度は死に、その後、クリプターとして蘇り、カルデアと敵対した。

原作第2部6章終了後より参戦

【方針】

考えてみれば、聖杯戦争そのものに参戦するのは初めてよねぇ……。のらりくらりと……出来るかしら?

【サーヴァントへの態度】

相棒としては上出来で、信頼している。強さと人間性も、先のない外道の自分には申し分ないと思っている。
が、一方で、漏尽通で垣間見た、未来のなさについては一抹の不安を覚えている。杞憂であればいいのだが……。

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最終更新:2024年05月26日 19:00