時は深夜。場所は河川敷。
一人の男性が、缶ビールを片手に空を見上げている。
男が着ているスーツは、上等なものだ。髪もしっかりセットされている。
一般人が見れば、一流企業のビジネスマン辺りだと思うことだろう。
だが修羅場を経験したことのある人間なら、感じ取れるはずだ。
男からあふれる、どす黒い意志を。

「まったく、不用心だな。聖杯戦争のマスターともあろうものが、こんな夜中に一人で外をうろつくとは」

ふいに、男に声がかけられる。
男の背後から現れたのは、目を引くほどに長く髪を伸ばした青年だ。
武術家の道着にも、宗教家の法衣にも見えるような、独特の白い服を着ている。

「一人ではないさ。君がいるだろう、ライダー」

スーツの男は、かすかな笑みを浮かべながらそう言う。
このやりとりで分かるようにスーツの男はマスターであり、長髪の青年は彼に召喚されたサーヴァントであった。

「あまり過信しない方がいい。俺がおまえを守るという保証はないのだからな」
「ほう、まだそんなことを言うのか」

二人の出会いは、数日前。
それははっきり言って、険悪なものだった。
マスターが聖杯によって叶えたい願いは、おのれが地球の支配者になること。
だがそれは、かつて人類の救済を目指していたライダーにとって受け入れられるものではなかった。
妹やその盟友との対話により、死の間際におのれの過ちを認めたライダーであったが、人類の未来を憂う気持ちは変わらない。
一人の男による人類の支配など、彼にとって暴挙以外の何物でもない。
結果として彼らは、まともに交流しないまま現在に至っていた。

「君は私の願いを、許容できないと言った。ならばなぜ、私を殺さない?
 むろんそれを察知すれば私も令呪で阻止しようとするが、これまでその気配すら見せていないじゃないか」
「それは……」
「初日に、君は言ったな。聖杯にかける願いなどない。
 なぜ自分が召喚されたのかわからない、と。
 だがそれは、死した英霊としてのこと。
 実際にサーヴァントとして召喚されて、欲が出てしまったのではないかね?
 願いが叶えられるというなら、叶えたい。
 たとえば、過去を改変したいとか……」
「黙れ!」

ライダーは、男に向かって拳を繰り出す。
だがその拳は、男の眼前数ミリで止まる。
男は、薄笑いを浮かべたまま微動だにしていなかった。
最初から、ライダーが拳を止めるつもりだとわかっていたかのように。

「別にいいじゃないか。君も知的生命体だ。
 いやまあ、すでに死んでいるから生命体というとおかしくなるが……。
 とにかく、知的生命体が欲望を抱くのはごく自然なことだ。
 それを叶えるべく行動するのは、そんなに恥ずべきことかな?」
「おまえは……まるで悪魔だな……」

苦虫をかみつぶしたようような表情で、ライダーは言う。

「舌先三寸で人の心を揺さぶり、堕落へと誘う……。
 古典的宗教観における悪魔の役割そのものじゃないか」
「超越存在に例えられるのは、悪い気はしないね。
 ああ、そういえば古典文学に私と似たような名前の悪魔がいたな」
「メフィストフェレスのことか?」
「そう、それだ。さすがに学があるね」
「別に褒められるような知識じゃない」
「いや、過去の名作に触れることは大切だよ。
 温故知新、私の好きな言葉です」
「おまえは知識をひけらかしたいだけだろう。
 もういい、おまえと会話するだけ徒労だ」

呆れたように、ライダーは会話を打ち切った。

「やれやれ、まだ君の信頼を得るには遠いようだね。
 まあいい、今日のところは空調の効いた我が家に帰るとしようか」

残っていたビールを飲み干すと、男は歩き出した。

「そういえば、結局ここで何をしていたんだ?」
「おや、私との会話は徒労ではなかったのかね?」
「いいから答えろ」
「なに、少々故郷に思いを馳せていただけさ。
 もっとも、この偽りの空では、故郷など見えるはずがないのだがね」

一瞬だけ地球人の擬態を解き、メフィラス ―外星人第0号― は言う。
それに対し、緑川イチロー ―仮面ライダー第0号― は何も言わなかった。



【CLASS】ライダー

【真名】緑川イチロー@シン・仮面ライダー

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力C+ 幸運E 宝具B

【性別】

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
騎乗:B
乗り物を乗りこなすための能力。
Bランクでは大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。
彼の逸話からすればCランク程度が妥当だが、「仮面ライダー」の言霊が持つ力によりランクアップしている。

【保有スキル】
オーグメント:A
SHOCKERによって生み出された改造人間。
通常の人間をはるかに超える身体能力を持ち、大気中の「プラーナ」と呼ばれるエネルギーを吸収することで飲食なしで生存できる。
プラーナ自体が神秘を帯びているため、科学で生み出された存在でありながら宿す神秘は決して低くない。
サーヴァントとしてはプラーナを魔力に変換できるため、魔力の消耗を抑えることができる。
生前「アルティメット・オーグメント」と称されたライダーは、当然のAランクである。

魔力吸収:―(B)
他者の魂を魔力に変換し、吸収するスキル。
言うなれば強力な魂喰い。
生前の行いを悔いているライダーが自らの意志で封印しており、発動には令呪の使用が必要。

【宝具】
『真の安らぎはこの世になく(シン・ライダー・ゼロ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
ライダーの、オーグメントとしての戦闘形態。「仮面ライダー第0号」、あるいは「チョウオーグ」。
発動中は幸運と宝具を除く全てのステータスが、1ランク上昇する。
弱点としてはスキルによる自然回復をはるかに上回るペースで魔力を消耗するため、長時間の発動はできないこと。
生前のライダーはその弱点を補うため玉座をかたどった回復装置を用意していたが、今の彼はそれをあえて放棄している。

【weapon】
なし

【人物背景】
この世に絶望し、全人類の魂を精神世界に送ることで救済を成し遂げようとした青年。
だがそのもくろみは妹と彼女が見いだしたヒーローたちによって阻止され、彼はおのれの過ちを認めあの世へと旅立った。

【サーヴァントとしての願い】
ない、はずだった……

【マスターへの態度】
とうてい信用できない。
すぐに殺すのが正しいのかもしれないが……。


【マスター】メフィラス@シン・ウルトラマン

【性別】

【マスターとしての願い】
地球の支配者となる

【能力・技能】
擬態を解くことで高い戦闘能力を発揮可能。
ただし冥界にベーターボックスが存在しないため、本来の大きさに戻ることはできない。
また、ネット上に存在する多数の画像や動画をまとめて削除できるほどのコンピューター操作能力を持つ。

【人物背景】
地球人を支配するため長きにわたって地球に潜伏し、陰謀を巡らせてきた外星人。
地球人にとって「悪」であることに間違いはないが、彼なりに地球へ愛着を持っているのも事実であり、どこか憎めない。

【方針】
聖杯狙い

【サーヴァントへの態度】
なんとか懐柔し、協力してもらいたい。

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最終更新:2024年05月26日 19:10