首をへし折られる感覚。
痛みすらなく、脳髄に一瞬の衝撃が叩きつけられ意識が閉じる。
思考すら許されぬ最後の時、私の眼は白い少女と黒い少女が手を取り合う光景を映していた。

私、魔法少女ピティ・フレデリカの頭の中はずっとその最後の景色をリピートしていた。
現界を果たした時から、いや英霊の座とやらにいた時からか?
私の脳名はあの瞬間に囚われていた。

私はこれでも、魔法少女に尽くしていたつもりだ。
特にその中でも理想ともいえるスノーホワイトのため、
あの手この手で指導を行い、指導から外れた後も彼女の名を広めるために手を尽くし、
その傍ら部門間の対立に巻き込まれながら、彼女の親友リップルを救った。
そこから先は本格的に魔法の国との戦いに身を投じ、身を粉にして働き続けていた。

全ては私の理想の魔法少女のため、その中でも全ての模範となるべきスノーホワイトのためであったが、その私の行いは報われることはなかった。

再び私の前にスノーホワイトが立った時、彼女は人の道から外れるどころか魔法少女の道からも外れる行いを働いてしまっていた。
それだけで眩暈がするが、あろうことかリップルすらそんな彼女に躊躇なく手を伸ばし、スノーホワイトもまた手を血で汚したリップルに手を伸ばした。
私一人を、置き去りにして。

「それは…あんまりじゃないですか。スノーホワイト…リップル…」

思わず声が漏れる。
誰よりも魔法少女を理解しているつもりだった。
そんな私の中の魔法少女という概念を、誰よりも共有できる二人だと思っていた。
彼女たちが生き続けていればその中に私は生き続け、私もまた彼女らがいれば永遠に蘇り続ける、そんな運命だとすら思っていた。

しかし彼女らは、あくまで互いだけを見ていて、私など見てはいなかった。
仮に私がこの聖杯戦争とやらに勝って再び彼女らと相対することが叶ったとして、彼女たちはもう魔法少女として私と対峙はしてくれないだろう。
そう考えただけで、私はもはや生きる気力を無くし、既に光の粒となって消えてしまいたい気分だった。

「アサシン?」

思考の中に引きこもっていた私に、現実から声がかかった。
そういえば私はサーヴァントとして召喚されたのだ、マスターくらいはいるか。
意識を引き戻すと、そこは薄暗い洞窟ではなくネオンきらめく夜の都会の町であった。
記憶と寸分も違わない日本の東京。その高層ビルの一つの屋上に私たちは居た。
目の前にいるのは一人の少女だ。
現実離れしたその恰好からして魔法少女であることは間違いがない。
彼女には初めて会うが、私は彼女に見覚えがあった。

「スイムスイム…ですか。」

「私のことを知ってるの?」

乾ききったビルの屋上に不釣り合いな白のスクール水着に、
さらにその衣装にも似合わない成熟した体。
特に、スイムキャップなどつけずに直接頭にゴーグルをつけているのは、
その美しい白桃色の髪がゴムで傷みそうで勿体がない。
魔法少女スイムスイム、資料で見た覚えがある。
厄災クラムベリーが起こした魔法少女試験において、その厄災クラムベリーが倒れた後も凶行を働きリップルに倒された魔法少女だ。

「ええ、知っていますとも。スノーホワイトにリップル、クラムベリーにあなた…
 あとなんでしたっけ?ルーラという武器に付いてまで私は知ってるんですよ。」

『ルーラ』、その名前を聞いた彼女のうつろな瞳に一瞬の熱が籠る。
彼女はその瞳で私を見つめると、有無を言わさずこういった。

「知ってること全部、話して。」

「ご命令の通りに。」

私は彼女たちの戦いを語った。
一人で考えに耽るより、人と共有するほうが気がまぎれる。
スイムスイムの知らないことを極力省きつつ、スノーホワイトとの関係、スノーホワイトと私との語り尽きない物語。
スイムスイムが飽きそうになれば、ルーラという武器の行方やその活躍を織り込む。
そんな努力をしながらも、私は気づいていた。
彼女らのあの結末について、このスイムスイムは理解することはできないであろう。
なにせ、この私ですら理解が追い付いているか怪しい話だ。
これは対話や啓示ではなく、あくまで私の一人語りに過ぎないという虚しさを感じながら語り終えたが、
スイムスイムが放った言葉に私は驚かされた。

「なったんだね。スノーホワイトはリップルに、リップルはスノーホワイトに。」

私は、脳天を金づちで殴られたような衝撃を受けた。
スイムスイムは、ついに私すら置いて行かれたスノーホワイトとリップルの物語を、私の断片的な説明から理解しえたのだ。

私の魂に輝きが戻る。
思考の霧が晴れ、立ち上がる足に力がこもる。
私はもうスノーホワイトとリップルの物語についていけないだろう。
しかし、目の前の彼女ならどうだ?

「あなたは、この聖杯戦争でどうしますか?」

「優勝する。ルーラならそうするから。」

彼女はそう言い切ると、私は目頭が熱くなるのを感じた。

(いたよ。スノーホワイト…リップル…ここに君達に相応しい魔法少女が…)

心の中で、未だに脳裏に焼き付いて離れない彼女たちに向けて話す。
彼女らに追いつき得るこの魔法少女が、再び彼女らの目の前に現れた時どうなるのか。
私の思考はそんな実験好きな子どものような、純粋な好奇心に囚われていた。

私はスノーホワイトとリップルの敵役にはなれなかった。
しかし、彼女らの敵役を作ることはできるかもしれない。

「決めました。私はあなたに協力します。」

私が手を差し出すと、スイムスイムはその手を取らずにこう言った。

「ルーラは握手なんてしない。ルーラは頂点にいるから。」

そのルーラだけを映した瞳に、私はリップルを映すスノーホワイトとスノーホワイトを映すリップルの姿を見た。
やはり私の見立ては間違っていない。
そんな彼女に、私は恭しく頭を垂れた。

その晩、二人の魔法少女はこの聖杯戦争で戦うべく駆け出した。
夜の摩天楼を駆ける二つの影は、魔法少女の形をしているのか、ヴィランの形をしているのか。
まだ、誰も知ることはなかった。

【CLASS】
 アサシン

【真名】
 ピティ・フレデリカ@魔法少女育成計画シリーズ

【性別】
 女性

【属性】
 秩序・悪

【ステータス】
 筋力:C 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:A 宝具:A

【クラススキル】
気配遮断:C
自身の気配を消すスキル。
アサシンは宝具の性質上本体が気配を消す必要が無い…はずだが、むやみやたらと気配を消すことに長けている。

【固有スキル】
魔法少女:A+(Ex)
魔法の才能を持った生物が、魔法の国の技術によって変身する生命体。
通常の毒物を受け付けず、暗闇を見通し、飲食を必要とせず、精神的に強化される。
内包した魔力は使いようによって、魔法の国を再興させうるとも言わる。
ピティ・フレデリカはこれの最高峰と言える現身まで保有している。

コレクター(髪):A
ピティ・フレデリカの嗜好・技能がスキルとなったもの。
何気なく落ちている毛髪を目ざとく拾えるほか、
通常は残らないであろうサーヴァントの毛髪も彼女の周囲では残る・奇跡的に残っていた。などの減少が引き起こされる。

魔法の大道芸(偽):C
水晶玉に手を入れることで、どこからともなく大道芸品などを取り出すことが可能。

【宝具】
『水晶玉に好きな相手を映し出せるよ』
ランク:B 種別:対人 レンジ:99 最大捕捉:1
ピティ・フレデリカの持つ固有魔法。
自身の持つ水晶玉に髪を巻き付けた指を近づけることで、髪の主の姿を水晶玉に映すことができる。
ただ映すのみではなく、片腕のみ水晶玉に入れることで水晶玉の先に移動し、持ち上げられる範疇のものを取ってくることが可能なほか、
逆に自身を含む持ち上げられる範疇の物質を水晶玉の映す先に移動することが可能。
カシキアカルクシヒメに変身した場合、以後使用不可能。

『プキン・ペンダント』
ランク:D 種別:対人 レンジ:50 最大捕捉:1
伝説と謳われた魔法少女、プキンの剣を使用したペンダント。
切った相手に暗示をかけることができるが、あくまでフレデリカの魔法ではないため大幅に劣化し、
現在の効果は『サーヴァント、および令呪一画以上を持つマスター以外の所謂NPC,またはピティ・フレデリカとそのマスターの考えを変えられるよ』である。

『カシキアカルクシヒメ』
ランク:A 種別:対城 レンジ:10 最大捕捉:0~99
ピティ・フレデリカが奸計の果てに手に入れた野望の結晶。
魔法の国の粋を集めた現身と言われる存在である。
サーヴァントとして呼ばれたピティ・フレデリカには人から魔法少女に変身するように、
魔法の端末で不可逆的に変身可能な存在として実装されている。
その姿は旧来のピティ・フレデリカの姿とうり二つであり、
スノーホワイトらを苦しめた現身の圧倒的能力と、『たくさんの魔法の水晶玉を操るよ』という新たな魔法を得ることができるが、
この存在に変身した後は旧ボディに戻ることはかなわず、戦略的な運用が可能な『水晶玉に好きな相手を映し出せるよ』を使用することはできない。

【wepon】
宝具、あるいは魔法の大道芸で取り出すアイテム

【人物背景】
魔法少女育成計画シリーズの中編「スノーホワイト育成計画」から長きにわたってスノーホワイトたちと戦い続けた魔法少女。
主に以下の作品に登場している。

【出典作品】
スノーホワイト育成計画、魔法少女育成計画limited・JOKERS・ACES・QUEENS・黒・白・赤

【マスターへの態度】
基本的に従順、マスターが聖杯戦争で勝つべく手段を択ばない。

【サーヴァントとしての願い】
 スイムスイムに捧げる

【マスター】
 坂凪綾名@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
 自身の蘇生(ルーラならそうするから)

【能力・技能】
彼女自身魔法少女であり、固有魔法『どんなものにも水みたいに潜れるよ』を持つ。

【人物背景】
魔法少女育成計画第一作で登場した魔法少女。
魔法少女ルーラに対する強い憧れがある。

【出典作品】
魔法少女育成計画

【方針】
 聖杯狙い(ルーラならそうするから)

【サーヴァントへの態度】
サーヴァントは臣下としてふるまっているため、気にしていない。

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最終更新:2024年04月07日 21:23