「どういうことですか!?天使様!」
聖杯戦争の舞台に呼ばれてから数日が経過して。
マスターの一人である冒険者、ベル・クラネルは、自身のサーヴァントに対して抗議の言葉を投げかけていた。
「言った通りだよベルくん。君はどこかに身を隠していたまえ。戦いは僕が引き受ける。君は魔力さえ提供してくれればいい」
対するサーヴァント…セイバー。
仮の名としてユーリィ・L・神条を名乗り、真名を大天使ウリエルというその存在がマスターに投げかけた言葉。
それは一言で言えば「一人で戦うからすっこんでろ」ということであった。
「元々聖杯戦争というものはマスターがサーヴァントという使い魔に戦わせて行われるものだ。マスターである君が戦う必要はない」
「確かに僕はまだレベル2で、弱いですけど!それでも、後方支援ぐらいは…!」
「不要だ、僕は一人で戦う。君がそばにいると迷惑だ」
冷たく、ユーリィはベルの言葉を切り捨てる。
しかし、ベルも退かない。
「…やっぱりおかしいですよ天使様。僕に戦わせないってだけならまだ分かります。だけどサーヴァントはマスターを守るものなんですよね?それならなおさら、僕に身を隠させて遠くに追いやる必要はない。むしろ一緒に行動するのが定石なんじゃないですか」
ベルの指摘に、ユーリィはチッと苛立たし気に舌打ちする。
ベルの言う通り、サーヴァントにはマスターが必要なのだから、霊体化してマスターの側にいるのが普通だ。
実際、ここ数日の探索中はずっとそうしていた。
それなのに、ここに来てユーリィは一人で行動してベルには身を隠せと要求してきた。
「本当のことを言ってください天使様。どうして僕のことを、遠ざけようとするんです」
「…君に、ここの戦いを見せたくはないんだ」
ベルの必死の眼差しに根負けし、ユーリィは白状する。
「ベルくん。僕は天使として、多くの人間を天界からみて来た。現世の人間は、産まれた頃はみんないい子なんだ。だけど、そんなやさしい人間もいずれ、真っ白な心を黒く染めてしまう…」
みんなと合わせなければ。
みんなもやってるし。
そうした心が人を黒く染めていく。
暴力、差別、いじめ、戦争、事故、災害。
本来悲しまなくていい人間が黒く染まっていく。
そんな光景を、ユーリィは何千年も見てきた。
ユーリィは、ベルを見つめる。
その眼差しは、とても優しいものだった。
「ベルくん、僕は君を尊敬している。この年齢でここまで魂が清らかな人間というのは、すごく珍しい。君は、あの子と同じくらい、貴重な人間だ」
「そ、そんな…僕はそんな…」
「だからこそ!君には見せたくないんだ!聖杯戦争などという悪意が渦巻くこの場所で!人間が持つ醜い欲望を!黒い感情を!君のような人間が黒く染められてしまうことが…僕には耐えられない!」
涙ながらに訴えるユーリィ。
ベルは戸惑いつつも、しかし彼に対し言葉をかける。
「天使様のいうこと、少しは分かります。この世は理不尽なことが溢れてるし、嫌な人間だっている」
仲間を守るためという理由があったとはいえ、他のファミリアに大量のモンスターを押し付けられたこともあった。
嫉妬から悪意をぶつけてくる人間もいた。
いい人ばかりじゃないことは、ベルも知っている。
そしてこの場は、願いを求めて他者を蹴落とす聖杯戦争。
きっと今の自分には想像もつかないような悪意を持つ者だっているかもしれない。
「だけど、僕は…逃げたくない」
思い出すのは5階層でミノタウロスに襲われた時のこと。
あの時の自分は、ただ逃げることしかできず、アイズさんの助けがなければ死んでいた。
「僕には…願いがある!憧憬のあの人に追いつきたいっていう、目的がある!」
あの時助けられた金髪の少女。
彼女に追いつくには、並大抵の努力では足りない。
強さが、必要なのだ。
腕力だけではない。
どんな困難にも立ち向かえる、心の強さが。
「だから、その目的を果たすためにも!僕は、この現実から目を逸らしたくない!あの時みたいに…逃げたくないんだ!」
ベルはその場に正座で腰を下ろし、頭を地面まで下げた。
いわゆる、土下座というやつだ。
「お願いします天使様!僕を、一緒に戦わせてください!僕を、ベル・クラネルを……逃げ腰の臆病者にさせないでください!」
「ベルくん…」
土下座で頼み込んでくるベルの姿を、ユーリィはしばし呆然と見ていた。
そして、諦めたようにフッと苦笑した。
「全く…天子くんといい、君といい…僕が好きになる人間ってのはどいつもこいつも強情っぱりだなあ」
「天使様…お願いします」
「顔を上げてくれ、ベルくん。僕が悪かったよ。これまで通り、共に行動し…そして、共に戦おう」
「!…はい!」
顔を上げて涙ながらに返事をするベルを見て。
泣き虫なところもそっくりだなあと、ユーリィは思った。
【CLASS】セイバー
【真名】大天使ウリエル@ウソツキ!ゴクオーくん
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運A 宝具B
【属性】秩序・善
【クラススキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
単独行動:A
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Aランクは1週間は現界可能。
【保有スキル】
キセキ:A
地獄に縁を持つ者、聖属性を弱点とする者に対して特効効果を持つ。
ウロボロス:B
ペットであるヘビバトを真の姿「ウロボロス」に変化させ召喚する。
普段は首にマフラーのように巻いている。
【宝具】
『ヘブンSドア』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1~20
周囲にいる者を10分間、天国へ送り込む。
この宝具使用中、自身の全ステータスが一段階上昇。
送り込まれたものは自らの願望を具現化した幻覚を見せられ、宝具効果終了時まで生き残っていた場合は地獄に堕ちて閻魔大王に舌を抜かれる幻覚を見せられる。(本当に舌を抜かれたり、ウソをつけない舌を授けられたりとかはしない)
【weapon】
ウイングクロス
【人物背景】
大天使として多くの人間を見てきた彼は、現世で黒に染まっていく人間に絶望し、救おうとした。
黒くなってしまう前に、人間をやめさせようとした。
しかし、宿敵の手により計画は失敗し、救おうとした人間によって逆に救われた彼は、再び人間を信じ、現世に負けず、強く生きることを願った。
【サーヴァントとしての願い】
全ての人間に充分なキセキが行き届く世界を作りたい。
ただし、マスターの守護が第一で、執着するつもりはない。
【マスターへの態度】
彼のような清らかな心を持つ人間を失わせてはならない。
命は勿論、その心も守ってみせる。
【マスター】ベル・クラネル@ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
【マスターとしての願い】
聖杯を使って願いを叶えるつもりはない。
ただ、手に入るなら願いを持つユーリィに使ってほしいとは思う。
【能力・技能】
「ナイフ術」
憧憬の相手との特訓により磨かれたナイフによる戦闘能力
「憧憬一途(リアリス・フレーゼ)」
相手の懸想に比例して成長する。
分かりやすく言えば好きな相手への想いを強めるほどにステイタスの成長が早くなり上限を限界突破する。
ちなみにステイタスの更新については契約を交わした神、ヘスティアが必要であるが、この聖杯戦争中は使役したサーヴァントも更新作業が可能。
「ファイアボルト」
無詠唱で放つ炎雷の魔法。
「英雄願望」
チャージすることによって必殺技の威力を上げる。
このベルはレベル2なので最大チャージ時間は3分。
【人物背景】
冒険者として新米の少年は、一人の少女に助けられ、彼女に並び立てる存在になるべく強くなると決めた。
そしてそれを機に彼は著しい成長を遂げ、わずか1か月半でレベル2へのランクアップを果たし、史上最速兎(レコードホルダー)の称号を手にした。
なお彼の参戦時期は5巻(アニメ1期終了直後)である。
【方針】
なるべく犠牲を出さずに元の世界に帰る。
【サーヴァントへの態度】
過保護な所もあるけど、優しい人。
神様みたいな存在なので、畏れ多さも感じる。
最終更新:2024年04月13日 18:50