「…………。」
緑色のマスクを付けた男が、線路を眺めていた。
眺めてから何をするという訳でも無く、ただじっと眺めていた。
目を細め、まるで不倶戴天の仇でも見つめるかのような表情で見据えるそれは、おかしな線路だという印象はない。
山手線の駅の一つから出た、ごくごくありふれた線路だ。
この物語を読む者の中にも、見たことのある者はいるだろう。
「セイバー。線路に何かあるのか?」
サーヴァントの異変に気付いたマスターが、彼に声をかける。
片手で好物と思しき、みたらし団子を食べながら近づいて行く。
お前も食うか、とサーヴァントの目の前にもう一本みたらし団子を渡そうとする。
サーヴァントは物を食べないのか、はたまた食欲は無いのか、右手だけでいらない、というジェスチャーを取る。
「この世界の線路も、神によって創られたのか?」
サーヴァントは、マスターが混乱するような質問を投げかける。
見てくれは黄色い光彩を持つ、鋭い瞳が印象的な巨漢。
だが、首より下の鍛え抜かれた身体と、右手に付けた金属の鉤爪がついた巨大なガントレットは、戦う者である証左だ。
「うーん…線路って大体、工事の人が作るものじゃないのか?少なくとも、神が創ったとは言わないかな…」
質問の意図が読めぬまま、無難な解答を口にするマスター。
まるで法隆寺を建てた人物の名前が分からず、工事の人とでも言うような口ぶりだ。
こちらは黒い髪に黒い瞳、顔立ちこそは整っており、太過ぎず痩せすぎてもいないが、着ているものはジャージ。
東京生まれ東京育ち、ありふれた高校生だということが伝わって来る。
いや、『ありふれた』という表現を否定する要素が、1つだけある。
目だ。
彼の一度捕らえた者を、雷が落ちても見逃さないであろう鋭い目つきだけは、サーヴァントと同じ物だった。
「私の世界にあった線路は、神が創ったものだった。」
「あー……もしかして、八百万の神ってヤツ?万物に神様が宿っていて、線路の神様ってことか?」
「神が魔王の封印を絶やさぬために、神殿と神の塔を繋いだ。それが線路だった。」
会話はかみ合わないのも当然だ。マスターはともかく、サーヴァントは会話を好む性格ではない。
それにセイバーのサーヴァント、ディーゴがいた世界は、マスターとは全く異なる世界だった。
当然、あまり開かない口を開けば魔王だの神だのとの言葉が出てくるからだ。
マスターにとっては、現実の話よりゲームか何かの話を聞いているような錯覚を覚えた。
少なくともあの日より前に聖杯戦争にいれば、サーヴァントを頭のおかしい男としか思わなかっただろう。
「それで…セイバーはその世界で、何をしてたんだ?」
「魔王を復活させ、神を超えようとした。」
少年の目に、光が宿る。
その言葉は、マスター、高畑瞬にとって、この上なく惹かれる言葉だった。
彼が超越的なものにあこがれる年頃の学生だから…と言う訳では無い。実際に彼は、神を殺そうとしたからだ。
セイバーが『超えようとした』と言ったことから、成功はしなかったのだと察しがついても、心が惹かれた。
「凄いんだな。セイバー。」
「凄くなどない。ただただ、愚かなことをしただけだった。」
ディーゴはマスターの賞賛を、にべもなく否定した。
彼は神の使いとして、神の力を承ろうと、何年も何年も修行を続けた。
だが、100年の修行を積み重ねても、理想に手は届かなかった。
手が届かないと分かると、彼は神では無く、魔王の力を求めた。
禁じられた力を求め、何の皮肉か神に与する勇者に助けられ、最期はその勇者たちのために命を捨てた。
「俺は愚かでも、自分を殺して前に進もうとしたことは凄いと思う。俺は断言するよ。」
どうにもならない世界を、どうにもならないままにしようとせず。
ルールに縛られた世界を打ち破ろうと、努力して、戦い抜いた。
ディーゴが否定しても、瞬が決して否定しない事実だった。
やがて電車がやって来て、2人はそれに乗る。
目的地はどこだろうか。それとも目的地は無いのだろうか。
「マスターも得ようとしたのか。神の力を。」
「得ようとしたんじゃない。神を殺そうとした。失敗したけどな。」
「この世界でも、同じことをするつもりか。」
「勿論だ。この世界を牛耳っているのは、神まろとは別の奴みたいだが、それでも殺すつもりなのは変わらないさ。」
「その言い方…どうやらマスターの世界の神とは、ろくな存在では無いようだな。」
高畑瞬と言う男は、神によって退屈を壊され、神を殺すことを求め続けた男だ。
ありふれた高校の、ありふれた高校生だった彼だが、ある日『だるま』が教室に入って来た瞬間、日常は変わった。
次々に殺されていくクラスメイト、迫り来る神の試練。
そして、知らなかった人たちとの出会い、死別。
「この世界の神を殺して、元の世界に帰る。そして退屈を壊した神まろを、今度こそぶっ殺す。」
瞬にとっては、この聖杯戦争はロスタイム、あるいは敗者復活戦。
一度は神を殺すことに失敗した彼だが、チャンスがあるというのなら、手にしない理由は無かった。
今度こそ負けるわけにはいかない。サーヴァントの力を使い、この世界を駆け抜ける必要があった。
「セイバー。お前は聖杯に叶えて欲しい願いは無いのか?たとえあったとしても、その望みには応えられそうにない。
こんなマスターを引いたことを怨むなよ。」
「……。」
炎を燃やす瞳を持つマスターを、ディーゴはただ黙って見つめていた。
彼の覚悟は、かつて自分を倒した勇者と、その隣にいた姫に似たものだった。
だからこそ、分かっていた。
この少年は、神に選ばれた勇者ではないと。
神に選ばれたとしても、その神は自分の世界にいた神とは違い、極めて凡庸な存在だと。
退屈に甘んじること、どうにもならないことを由とせず、命を賭してでも進もうとする姿勢は、賞賛に値する。
だが、
進んだ先にあるのが、勝利と願望の成就であるとは限らない。
神に挑もうとしたディーゴならば分かることだ。痛いほど思い知らされたことだ。
人と、神や魔王との間には、決して超えられぬ壁がある。
勝利と願望の成就を成し遂げるのは、その壁を超えた者達だ。
それは努力や決意だけではどうにもならない。
2人を、その他大勢の乗客を乗せた電車は、静かに進んでいく。
この世界をただグルグル回り、夜遅くになれば停止し、朝が来ればまた動き始める。
そして、いつかは廃車と言う形で、役割を終える。
だが、もしその列車が突然意志を持ち、そんな決まった役割しか持ってない自分に嫌気がさし、レールを無視して走ったとしよう。
その先にあるのは、車体の崩壊と、ほんの数百人ほどの乗客の死亡だけだ。
ほんの一時期、新聞にその事件が載るかもしれないが、世界を変えることなど到底できない。
諦めるな
肉体を奪われた姫に、彼がかけた言葉だ。
だが、あの時の彼女は、神の力がついていたからこそ、彼女なら出来るという確信があったからこそ、かけられた言葉だ。
無鉄砲を知っている彼だからこそ、今のマスターに対してその言葉をかけられるかどうか、自信が無かった。
戦いを放棄するつもりは無い。
だが、彼の願いは叶わない、その事実を突き付けられた時、お前はどうする?
前と頭上しか見ない男の背中を見つめながら、ディーゴはそう考えた。
【キャラクターシート欄】
【CLASS】セイバー
【真名】ディーゴ@ゼルダの伝説 大地の汽笛
【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具D
【属性】混沌 善
【クラススキル】
対魔力:A
セイバーのクラススキル。魔術に対する抵抗力。Aランクともなると、どのような大魔術であろうとも、Aランク以下の魔術を無効化する事が可能となる。短期間では魔王レベルの魔力さえも止められる
騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
【保有スキル】
【固有スキル】
目標補足:C
目標として捉えた相手をロックオンするスキル。
相手の動きを的確に捉えられ、攻撃が当てやすくなる。
しかし複数の相手を補足することはできない。
神殺しの心得:D
100年ほどの修行のみで、神の使いである者を破った逸話から。
神では無く神の使いであるため、また、その人物を殺すには至らなかったため、スキルは低めだが、それでも神に属する相手と戦う際に、筋力を1段階上げる
魔力放出:C
光の塊を敵目掛けて撃つことが出来る。当たった相手は、耐久:D以下、あるいは対魔法:C以下ならば一定時間気絶する
仕切り直し:D
戦闘から離脱する能力。
【宝具】
『勇往神魔』
ランク:B 種別:対界宝具 レンジ:0~10 最大捕捉:1~2?
神の力を承った勇者と姫と戦いを繰り広げた逸話から来る宝具
戦いを決めた相手と、キャスターの陣地作成のように、バトルグラウンドを作ることが出来る。
決着がつかない限りは、ディーゴ、敵両方その場所からの脱出は難しい
【weapon】
鍵爪の付いた鉄鋼ガントレット。
振り回して相手を斬り付けることが出来るほか、空気の刃を飛ばしたり、ガントレットそのものを相手目掛けて飛ばしたりすることが出来る。
【人物背景】
神の遺志を継ぐ者の弟子。神の力を求めて修行を積んだが、100年以上も修行をしても神には認められず、代わりに神をも越える力を手にしようと決意。
魔族のキマロキと結託し、ゼルダ姫の肉体を奪い、魔王マラドーを復活させるも、利用されていただけだった。
助けられた以降は魔王を倒そうとする勇者リンクと、ゼルダに協力することにする。
最終決戦ではゼルダを身を挺して庇うも、魔王マラドーにその肉体を消されてしまった。
【サーヴァントとしての願い】
なし。ただマスターとともに戦う
【マスターへの態度】
神への挑戦を諦めぬ姿勢は尊重するが、それが身を崩すと分かっているため、心配している。
【マスター】
高畑瞬@神さまの言うとおり
【マスターとしての願い】
帰還し、自分の退屈を壊した神まろを殺す
【能力・技能】
なし。ただし、土壇場での瞬発力、発想力、決断力は代えがたい強さがある。
【人物背景】
都立みそら高校二年生。日常を退屈だと感じ、唐突な非日常に対し今までの自分を「殺し」、変わろうとする。
ある日突然、綾小路神まろの創ったデスゲームにクラスごと参加させられ、次々と周りが死んでいく中、ゲームを乗り越えていき、数々の出逢いと別れを経験する。
そしてゲーム『うんどうかい』で仲間と共に、神まろを殺そうとするも失敗。会場の外に飛ばされた後、この聖杯戦争に参加させられる。
【方針】
帰還し、神を殺す。それを妨げるなら、この世界の神も殺す。
【サーヴァントへの態度】
何考えてるか分かりにくいが、確かな力は持っているので期待している。
最終更新:2024年04月22日 02:54