艦体乙女

「お前は一体誰なんだ」

自分の顔を興味深げに見つめる、ウェディングドレス身に纏い、白いヴェールに顔を隠した銀の長髪の女に、長門という名の女はそう訪ねた。


──────────少し前


──────────


夜の鴨川河川敷に、響く女の声が一つ。

「ゴハァッ!?」

腹を石突きで抉られ、盛大に吐瀉物を吐き散らしながらも、目の前の二人を睨み付ける。
夜とはいえ人の気配が絶えたわけでも無いのに、他に人が全くいない鴨川の河川敷で、剣と槍を交える男女を目撃。
呆気に取られているうちに両手足を穿たれた女が槍の柄で頭を砕かれて死亡。
死体が跡形残さず消え去ったのを疑問に思う暇など無く、槍を持った男と、顔色の悪い痩身の男が、消えゆく女に縋って泣いていた少女の衣服を剥ぎ取り、殴り倒したのを見て、駆け出したのだった。
そしてこのザマ。助けようとした少女は助けられず、己も少女と同じ運命を辿ろうとしている。

「ハッ、良かったじゃねえかマスター。二人で使うのも気が乗らない話だろ」

下卑た瞳を己の体に向けながら、歯をむき出して笑う槍を持った男の隙を伺う。
突如、後頭部に衝撃が走り、地面に俯せに倒れる。後ろから蹴られたのだ。

「どうせ殺す相手だ。最後に愉しませてやろう」

痩身の男が身を屈めよウトしたその時、槍の男の全身が茫と霞み、手にした槍が消えた。
同時に聞こえる衝突音。鴨川に派手に水柱が上がるのと、腹に轟くような音が聞こえたのは同時。

─────この音、砲声!?

散々慣れ親しんだ音だ、聞き間違える筈が無い。然し、夜の古都で聞くような音では断じてない。
槍男が視線を向ける先。鴨川の下流に眼を向けると、川面を覆った霧がこちらに向かって来るのが見えた。

「サーヴァントかよっ!」

槍男の声で思い出す。

─────確か、、私は、鎮守府の……提督の部屋で……………。

再度男の槍が消える。再度水柱が立ち、同時に河川敷に爆発。舞い上げられた土砂が降り注ぐよりも早く、辺りは霧に覆われた。
霧の中に奔る閃光は正し砲火の煌めき。正面と右から同時に飛来した砲弾を、奇跡の様な槍捌きで防いだ男が、射手を探し求めて首を盛んに左右に振る。
その眼前に虚突如として出現した白い女の振り下ろした手刀が、槍男の身体を撃砕した。


────────────────────


その女が顔を此方に向け、自分を興味深げに眺めている。

「一体お前は誰なんだ」

「貴女……私の同類かしら?」

答えずに問いを返す女に、長門は怪訝な表情を浮かべた。そもそも己にこんな知り合いは居ない。しかし、先程の砲撃は、艦娘の艤装か?ならばこの女は艦娘か?

「まあ、自己紹介の前に…」

女の背後の空間が揺らめく、水面を破って迫り出して来るかのように虚空より現れたのは、機関砲。
腹に響く轟音と共に放たれた砲弾は、逃走しようとしていた槍男─────ランサー─────のマスターの背中から胸にかけて貫通。胸部を吹き飛ばした。

思わず息を飲む長門の耳に、鈍く湿った音が聞こえた。

「マスターも仕留めておきませんと」

白い女の足元に広がる赤黒い沁み。長門が救おうとした少女の頭は、白い女の足に踏み潰されていた。

「貴様…何故殺した!?」

激怒する長門に対し女はどこまでも冷静だった。

「マスターも殺しておきませんと」、いつ何処で他のサーヴァントと契約するか知れたものではありませんし」

「だからと言って、戦う力を失った者を殺す事など!」

「はあ……私と同じ様な気配がするのに、随分と私と気質が違いますのね。私は兵器。造られた目的に従い、戦い、撃ち倒すのが役目であり存在意義」

「戦う力を持たないマスターは敵では無い!!」

「ああ…貴女瞳と髪の色から察するに日本の方?ならば私とは合いませんわね。私の産まれはドイツ。通商破壊も私の役目の一つなのですから。
誇り高いサムライは、戦闘艦だけを狙い、非武装の船を狙う事を良しとしない。それはそれで立派な事だと思います。讃えましょう。
けれど、私は兵器。騎士道もサムライの精神も、そんなものは駆る方が持っていれば良い。私はそれに従い使われるだけ」

女の右手がヴェールにかかり、その顔を露わにする。

「それはそうと、そろそろ名乗らせて貰いますわ。私の名前は─────」

露わになった顔に長門は驚愕する。何故ならばその顔は─────。

「ビスマルク⁉︎」

「あの娘(こ)を知っているのかしら…?私の様に汚れていない、綺麗なままだと思っていたのだけれど」

ヴェールの下から現れた顔は、長門の知る艦娘の一人、ビスマルクに瓜二つ。然しビスマルクを知るものならば、誰もが違うというだろう。
流れ出たばかりの鮮血の色を湛えた真紅の瞳。処女雪を糸に加工して編み上げた様な、光を受けて輝く銀髪。
顔立ちが双子といっても良いほどに似通っているだけに、違和感が一際増すが、最も異なるものはその表情。そのその眼光。
その瞳には目を合わせる事さえ憚られる気高さと気品が宿り、同時に見られた者を凍てつかせる酷薄さが満ち。
顔に浮かぶ表情は、今しがた頭を踏み潰した少女を嘲る、嗜虐に満ちた笑みだ。
断じてこの女は艦娘では無い。長門はそう確信したが、同時に己の同類であるとも認識していた。

「違う…ビスマルクは貴様の様に、無力な相手を殺して悦んだりはしないっ!」

「ごめんなさいね。お気に障ったかしら?けれど仕方がないの。私は“こうある様に変えられてしまったのだから”」

尤も、元のままでも、無力であっても敵は撃ちますけど。と続ける白い女を長門は劣化の如き視線で射た。

「いいからさっさと名乗れ!一体貴様は─────」

言いかけた長門の口が、女の手で塞がれる。その掌の感触は鋼鉄。砲弾すら弾く硬度と質量を感じさせた。
不意に、長門の足裏から地の感触が消える。女は片手で長門の身体を持ち上げたのだ。
が、それよりも、肌が泡立ち、肉が強張り、骨の髄まで凍り付きそうな冷気が、より強く長門を苛む。
外そうともがくものの、女の力は異常というより他になく、全く外せなかった。

「いい事。始めに名を尋ねたのは貴女。私の名乗りを遮ったのも貴女。なのに『さっさと』とは、随分と不躾な言い方ですわね」

女の腹を蹴る足が二度目で止まる。艤装も無い身では、鋼を誇る女の肉体に、長門は全く無力だった。

「まあ良いでしょう。私の名はシャルンホルスト。ヴェルサイユ条約後に、ドイツが初めて建造した戦艦。そのアヴァター。貴女とは……少し異なる様ですが、根は同じと見ましたわ」

顔を圧搾する女の力が緩み、長門は地にへたり込んで荒い息をついた。

「それで?貴女は?」

「私は……長門。戦艦長門だ」

「あら、まあ……」

白い女は驚きを素直に表した。

「連合艦隊旗艦でもある、あのビッグ7と共に戦えるとは、光栄ですわ……。それで、貴女は如何なる願いを持ってこの戦争に臨むのですか」

「願いなど…無い。私は、こんな処で無意味な戦闘を行なっている暇など無い。戻らなければいけないんだ!!」

「はあ……そうですの……本当に?」

嘲る様な、弄う様なシャルンホルストの視線を、長門は真っ向から睨み付ける。

「どういう意味だ」

シャルンホルストは微笑を浮かべた。嘲笑と嗜虐に満ちた笑みは、マゾの気がある男なら、それだけで射精しそうな笑みだった。

「世界のビッグ7。連合艦隊旗艦。そんな貴女が……。連合艦隊の象徴であった貴女が………。今ではすっかり大和の陰」

シャルンホルストの冷たい手が、長門の左胸に当てられる。

「ロクに砲火を交える事もなく、丸裸にされ、漁船として貸し出されそうになり、挙句虜囚として曳いていかれて、廃艦処理を兼ねた核実験……。
美しく死に花を咲かせて、戦後に悲運の艦として悼まれ、讃えられる大和と違って、嘗て国の誇りとまで言われた貴女は、見向きもされない。
この身体を流れる熱い血が、その事に耐えられるのかしら……」

「……そんな些事はどうでも良い。それよりも、お前は‘’自分が兵器である”といったな」

「ええ、言いました」

長門の僅かな沈黙を、シャルンホルストはどう捉えたのか、鮮血色の瞳に愉悦を浮かべているだけだ。

「兵器である以上、使うものに従うと」

「ええ、言いました」

長門は大きく息を吸う。

「ならば私に従え。戦闘能力を持たない者を攻撃することは許さん」

「了解しましたわ。艦長」

婉然と微笑み、完璧な敬礼を返すシャルンホルストに、長門はどこか懐かしいものを覚える。然し─────。

「艦長!?」

「だって貴女は、このシャルンホルストを指揮する者なのでしょう。ならば、艦長とお呼びするべきかと」

からかわれているのか、真面目に言っているのか。長門には判別がつかなかった。

















【クラス】
バーサーカー

【真名】
シャルンホルスト@20世紀ドイツ

【ステータス】
筋力:A (A+++) 耐久:A+(EX) 敏捷:A (A ++) 魔力:C 幸運: A + 宝具A+++

【属性】

秩序・狂

【身長・体重】
(アバター)174cm・60kg〜31850t

艦体 235.4m・31850t

B92W58H87


【クラススキル】
狂化:
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
バーサーカーには、制御不可能どころか理性を失っている様子すら見られない。
これは狂化スキルがバーサーカーの本質と合わさっているためである。
尤もバーサーカーは軍艦であり怪物である為、人の倫理や常識は通用しない。
つまり、制御できる保証はない。

【保有スキル】

無辜の怪物:A
後世の与太話により能力、性質が変貌している。
二十世紀の戦艦であり、神秘など欠片らも無い存在でありながら、高位の魔獣に匹敵する神秘を帯びている。
このスキルは外せない。


鉄の戦船:C(A)
バーサーカーはの本来の姿は戦艦。水上に浮かぶ鋼の城である。
艦内に内蔵された機関の生み出す膨大な出力が、バーサーカーの筋力と敏捷を高いものにしている。
更に、鋼の艦という本質の為に、バーサーカーの身体は鋼の硬度をと人体の靭性を併せ持つ。
が、機関を駆動させるには膨大な魔力を要し、フル稼働ともなると消費量は絶大なものとなる。
水上での戦闘では全ての行動判定に大幅なプラス補正がかり、魔力の消費量が減少する。
マスターが海軍の関係者であるならば、Cランク相応の千里眼とBランク相応の射撃と嵐の航海者のスキル効果をも発揮するが、カリスマの効果は無辜の怪物スキルにより発揮しない。
更に建造した各国海軍のドクトリンに基づき異なるスキルを発揮する。
バーサーカーの場合はCランクの単独行動。


死神艦:A+
本スキルの存在によって、バーサーカーの幸運ランクは跳ね上げられている。特定の条件なくしては突破できない敵サーヴァントの能力さえ突破可能。
ただしこの幸運は、他者の生命を、そして何よりマスターの生命を無慈悲に奪う。
バーサーカーは数多くの関係者が不慮の死を遂げたが、共にあった僚艦は無傷だった。という与太話により獲得したスキル。
史実でもバーサーカーは幸運艦として名高い戦艦である。
この幸運の効果は、共に戦うサーヴァントにも齎されるが、そのマスターは生命を吸い上げられる。


戦闘続行:A
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。


ルーンの護り:A
Cランク相応の対魔力を発揮し、魔術以外の攻撃を1ランク低下させる
呪いに対してはBランク以下を無効化、Aランク以上でもBランク分は差し引いた数値 として計上する。
後世の与太話により得たスキル




【宝具】
霧夜の亡霊
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ: 1〜70 最大補足:1000人


常に霧を纏い、敵に捕捉される事がなかった。という与太話に基づく宝具。
北海の濃霧を周囲数百m、最大で10km範囲に渡って発生させる。
この霧の中ではバーサーカーは瞬間移動を可能とし、Bランクの気配遮断と気配探知を攻撃中であっても発揮する。
また、各種武装も範囲内の任意の場所に出現させる事が可能。
北海の霧は強力な幻惑効果と冷気を帯びており、範囲内の生物の体力を無慈悲に奪い、霧の中を行くもの全てを惑わせ彷徨わせる。
こ宝具は、常時効果としてバーサーカーの身体を、氷の様に冷たくしている。
水上で用いた場合、魔力消費量が三分の一まで抑えられる。


シャルンホルスト級一番艦シャルンホルスト(Scharnhorst, DKM Scharnhorst))
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:ー

戦艦シャルンホルストを呼び出す宝具。
人間型の姿は言わばアバターであり、この姿がバーサーカーの本来の姿。
この宝具発動時にはステータスとスキルが()内のものになり、本来の出力を発揮する駆動機関の放出熱によりA ランクの魔力放出(熱)を得る。
この時バーサーカーは海を征く鉄の城としての本質を発揮し、撃破は非常に困難となる。
対人宝具では決して傷つかず、対軍宝具はその威力を六割減衰する。
しかし、魔力消費量は莫大なものとなり、現状では10秒と持たない。
水上で用いた場合魔力消費量が半減する。



生きて帰りし者は無し
ランク:A+++ 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:レンジ内の全員

バーサーカーが沈んだ時、2名を除き全員死亡。脱出した2名も携帯ストーブが爆発して死亡した。という与太話により得た宝具。
バーサーカーは消滅時に周囲に死の呪いを撒き散らす。
この呪いに対し抵抗に失敗すれば何らかの偶発的な原因により死亡。抵抗に成功しても幸運が2ランク下がる。
この呪いに耐えるのに必要なのは、呪いを上回る加護か、幸運値もしくは偶発的な死の要因に耐える体力である。
猶、乗員全てが死亡したという与太話に基づく宝具の為に、発動時にはマスターは必ず死ぬ。






【weapon】
28.3cm(54.5口径)3連装砲3基
15cm(55口径)連装砲6基
10.5cm(65口径)連装砲7基
37mm(83口径)連装高射機関砲8基
20mm(65口径)連装高射機関砲5基
艦載機
3機、射出機2基
アバターが使用する際には、基本的にアバターのサイズに合った大きさに変わるが、本来のサイズでの使用も可能。
威力は大きさに比して上下する。


【人物背景】
ヴェルサイユ条約後、ドイツが最初に建造した戦艦。
ドーバー海峡を白昼堂々突破するなどの武勲を挙げ、共に出撃した僚艦が沈んだ事がない為に幸運艦として知られる。
……………が、誰が言い出した与太話かは知らないが、シャルンホルストはいつの間にやら数多のの呪われた逸話を持つ死神艦と認識されだした。
とはいえ、与太話の中でも彼女の僚艦が沈んだ事はなく、手を組んで共に戦えばその幸運の恩恵に与れるだろう。
与太話に影響されてか、性格は嗜虐的かつ好戦的。
自身を兵器と定義し、尚且つ通商破壊を運用目的とする独逸艦は、マスターであれば例え無力な存在であっても殺害する。
日本艦の長門とはこの辺り反りが合わないかも、


艦娘というよりもアルペジオの霧に近い。


【外見】
艦これのビスマルクを銀髪紅眼にしてウェディングドレス着せた姿。


【方針】
マスターに従う。 無辜の民に害を為す者は殲滅する。

【聖杯にかける願い】
無い。兵器は願いなど持たない



【マスター】
長門@艦隊これくしょん(プラウザ版)

【能力・技能】
連合艦隊旗艦であった戦艦長門の擬人化か、戦艦長門の能力宿した人間かは判らないが、戦艦長門としての本来の能力を発揮すればバーサーカーよりずっと強い。
が………艤装が無い為に常人の域を出ていない。精々身体能力が高く運動神経が良い程度
戦闘経験は豊富なのでバーサーカーを巧く運用出来るかも。

【weapon】
無い。あったらバーサーカーより強いが。

【人物背景】
長門型一番艦にして連合艦隊旗艦。戦前・戦中に於ける帝国海軍の象徴だった。
戦後は大和に取って代わられたが。
美人。格好は現代の衣服が支給されている。無かったら痴女だし。


【方針】
聖杯戦争に巻き込まれた者たちを救う。民間人を護る。

【聖杯にかける願い】
帰還。

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最終更新:2017年12月18日 20:01