盲目のアイロニー

 昼間だというのにカーテンを締め切った薄暗い部屋。
 そこには一台のベッドがあり、萎れた老人が眠っている。
 生きてはいるようだが、この姿からは精気というものが一切感じられない。
 彼が既に再起不能であることは、誰の目から見ても明らかだった。

「悪いな、組長(オヤジ)」

 目を硬く閉じ、か細い息を吐き出して辛うじて生命の証明をし続けている老人。
 それを無感動な瞳で見下ろしながら声を漏らしたのは、赤いペストマスクを被った一人の青年だ。
 乱痴気騒ぎに明け暮れるチーマーと勘違いされてもおかしくない奇特な装備は、しかし彼の印象をまるで損なわない。
 マスクに覆われていない素顔の部分だけで、彼が知性に満ちた優秀な男であることは自ずと理解出来るからである。

 男はあらゆる面で優れていた。
 力もあり、頭もある。
 見た目も精微で、口だって達者。
 そして何より、一度やると決めたことはどんな手段を使ってでもやる。

 そういう人種がどこの世界で最も重宝されるのかといえば、裏の世界だ。
 人道倫理の鎖を引き千切り、純粋に利益と今後の展望のみを見据えて行動出来る冷血漢。
 もしも彼の話をテロリストや活動家達に聞かせたなら、目を輝かせてウチに寄越せと言ってくるに違いない。
 治崎廻という男はそういう人間だった。一つの感情を燃料にして鬼にでも悪魔にでもなれる、闇に落ちるべくして生まれた人間。

「悪いけど、今回は相談する手間も惜しかったんだ。どうせアンタは俺が何を言ったところで聞きやしないだろうしな」

 ではそんな治崎を擁する組織が、彼の性質とポテンシャルを活かすことの出来る場所だったかというと……否であった。
 仁義を重んじる昔気質の任侠団体。義理と人情をなくせば終わりと豪語し、極道なれども決して一線は踏み越えない旧型。
 治崎の情熱は全て無為に終わった。理解されることはただの一度としてなかった。

 それはこの世界での話ではないが――誰よりも組の為に全力を注いできた治崎だからこそ分かる。
 仮にこれから自分がやろうとしていることを正直に話したとして、絶対に賛同は得られない。
 信じすらせずに笑い飛ばされるか、信じて貰えたとしてもウチの理念がどうこうと耳にタコが出来るほど聞いた綺麗事を並べられるだけだ。
 そう、以前のように。だから今度は、非合理的な手間は省くことにした。

 目を覚ます気配もなく眠りこける組長の姿にかつての面影はない。
 そのことを悲しく思う一方で、何としても成し遂げねばという決意が改めて鎌首を擡げる。
 組長のような古い考え、理想では最早極道は立ち行かない。
 故にトップの挿げ替えは必要不可欠だ。旧態依然の組長には一度退場して貰い、治崎自身が若頭として指揮を執る。

 街一つを戦場に変える狂気の儀式。
 数多の英霊と数多の願い持つ者が集って繰り広げる蠱毒。
 生き延びた者には黄金の杯。敗れ去った者には死の末路。

 治崎は、それに勝利する為にこれより組を利用する。
 己を拾い、育ててくれた大切な組を軍隊に変えて全ての敵を抹殺する。
 そのことに呵責はない。何故なら、これが正しいと微塵の疑いもなく信じているからだ。

 自分にしか極道は救えない。
 組に未来はもたらせない。
 世界の清浄化は、成し遂げられない。
 分かっているから治崎は進むことが出来る。路傍の石がどうなろうと、気にも留めずに。

「世界は病みから解放されるんだ。〝個性〟なんて薄汚い病原菌は根絶される。
 そうなればヒーロー全盛の時代は終わり、ヴィランも鳴りを潜め、また極道が輝ける時代がやって来るんだよ。
 アンタの、俺達の――八斎會は、蘇るんだ」

 広域指定暴力団・死穢八斎會。
 これはその組長が突然の急病により失脚した、一週間後の一幕である。


    ▼  ▼  ▼


「市内の同業者は粗方掌握出来た。よく働いてくれたな、バーサーカー」

 組長の失脚による、若頭の実質的な組長就任。
 一から十まで仕組まれた交代劇を終えるや否や、治崎はすぐに行動を開始した。
 己のサーヴァントと組員を用いた同業者……市内の他のヤクザへの襲撃と脅迫。
 拳銃が輪ゴム鉄砲に思えるほどの絶対的な〝逸脱者〟を前に、彼らが陥落するのはすぐだった。

 中には徹底抗戦を掲げたところもあったが、見せしめとシンボルの崩壊も兼ねてトップを葬ってやると、此方も早かった。
 従わない者は殺し、或いは殺させ、従う利口な者は手駒としてストックする。
 表向きはあくまで睨み合いを続ける敵同士という構図を演じながらも、実情は市内全ての極道が八斎會の手に落ちた。

 圧倒的な速度で実行された武力制圧は治崎に不信感を抱く組員の殆どを〝力〟という甘い蜜で舞い上がらせ、従順な手駒へと変えた。
 八斎會に取り込まれた側も、組への忠誠心がまだまだ低い若年層を中心に続々と治崎への信奉者を輩出している。
 今や反治崎の声はすっかり聞こえなくなった。というのも、声に出そうものなら命の危険が伴うからだ。

 治崎廻……オーバーホールと自らを称した彼もまた、怪物と呼ぶべき力をその身に宿す存在。
 治崎は反乱分子の粛清や拷問、その他あらゆる用途で事ある毎に力をちらつかせ、無数の死体を生み出した。
 そんな存在に声を上げられる気概のある人間は、京都の裏社会から殆ど絶滅してしまっている。
 斯くして完成した、治崎の箱庭が。聖杯戦争を戦う上で凡そ盤石のものといっていいだろう陣地が整った。

「わたしは何も。ただ、為すべきことを為しただけですよ」

 治崎の労いは口先だけのものと誰にでも分かる渇いたものだったが、バーサーカーはそれを皮肉るでもなく慎ましやかに受け止めた。
 そんな淑女めいたサーヴァントがどんな姿をしているのかというと、こちらはペストマスクの治崎以上に異様な成りをしている。
 プラチナブロンドの髪にやや小柄な体格、にも関わらず豊満に成長した胸。海色のロングドレス。
 この極めて整った容姿を、頭から生えた二対のねじれた角が台無しにしてしまっている。

 バーサーカーは〝角付き〟だった。
 悪魔か怪物か、とにかくこの世の人倫から解き放たれた存在であることを示す冒涜的特徴。
 そして、その通り。彼女は悪魔であり、同時に怪物でもある規格外のサーヴァントである。
 聖職者が見たのなら顔を青くするか怒り狂い、悪魔学者が見たとしても蒼白面を晒すだろう大悪魔。
 治崎廻という悪魔の如く恐ろしい男の下に舞い降りた――正真正銘の魔性に他ならない。

「……この世界は綺麗だ」

 治崎は窓の外、綿雪の降り頻る景色を見つめて言う。
 言うまでもなく、景色の美しさを賞賛しているのではない。
 この世界には、治崎の世界では今や当たり前になったとある概念が存在していない。
 彼が病と呼び、心から嫌悪する人類規模の大異常……〝個性〟という異能力が萠芽の兆しすら見せていない。

 〝個性〟の出現。
 それは、世界を大きく変えてしまった。
 治崎も含めて、今や世界の八割もの人間が異能の力を抱えている。
 〝個性〟の常識化は新たな秩序と体制を生み出し、ヒーローと敵(ヴィラン)という新たな枠組みを作り出した。

 そしてそれらの台頭は、治崎にとって大恩ある組の零細化を招いたのだ。
 かつて誰もが恐れ敬っていた極道は社会の影に隠れ、時代遅れの天然記念物と冷笑されるようになった。
 ヒーローと警察の絶え間ない監視を受けているから正攻法での復権も不可能。後は自然消滅するのを待つのみの、完全な負け組と化してしまった。
 だから治崎は、憎んでいる。ヒーローヴィラン云々以前に、世界を穢した元凶である〝個性〟そのものを憎悪している。

「穢らわしい病人共がいない。病原菌も蔓延していない。俺にとって、理想の世界だ」

 この男にしては珍しく、心底羨むような声色だった。
 もしも組の全てをそっくりそのままこちらの世界に持って来ることが出来るというのなら、治崎は喜んで頷いたろう。
 ヒーロー思想を拗らせた英雄症候群の患者達が彷徨くわけでもなく、八斎會は全盛期の頃の勢いを保っている。
 聖杯を手に入れる為に治崎が行った介入で結局形は歪んでしまったが、それさえなければ、組長健在のまま末永く存続していったに違いない。

 だからこそ治崎はこの世界を綺麗だと思う。
 あのむせ返るような腐臭に満ちた膿んだ世界に比べれば、何百倍とマシだ。
 心の底からそう思っている、のだったが。

「いえ、いえ。そんなことはありませんよ、廻。
 この世界は、ひどく汚れています。
 とても拭い去れないくらい深い汚濁の罪に、穢れているのです」

 バーサーカーは悲愴な声で、それを否定する。
 この世界は綺麗などではない。
 おぞましいほど汚く、吐き気がするほど穢れていると断言した。
 その表情はまるで恋に破れた乙女のよう。この世の何もかもに絶望した顔を、彼女はしているのだった。

「元凶の悪魔(おまえ)がそれを言うとはな。何の皮肉だ?」
「前にも言ったでしょう。わたしは、こうなどなりたくはなかった」

 目を見開き、息は荒い。
 なまじ見た目が麗しい為その様はひどくエロティックだったが、これに興奮する者は余程の豪傑でもない限りまずいないだろう。
 溢れ出しているからだ、彼女の抱える狂気が。
 パラノイアとでも形容すべき病みの波動が。

「わたしは永久に大海を揺蕩っているべきだったのです。
 退屈でも、あの時わたしは確かに満たされていた。
 いずれ神の晩餐に並ぶ運命の怪物だとしても。少なくとも、飢えに苦しみ喘ぐことだけはなかった」

 バーサーカーは生まれながらに悪魔だったわけではない。
 彼女は神の手で生み出された生物。最強であれと願われ、海へ放たれた大海の支配者。
 その彼女が悪魔に変生するに至ったのには、当然ながら理由がある。
 他人が聞けば下らない、しかし当人にしてみれば切実な祈りの果て、諸悪の王は七罪の悪魔へとカタチを変えた。

「願うべきではなかった。願うべきではなかったのです。
 この海を離れて陸を歩き、未知なるものを知りたいなどと。
 そんな子供じみた願いを抱いた結果がこの霊基(カタチ)だというのなら、成程、これは神の罰以外の何物でもないのでしょう」

 怪物が願ったのは未知と自由。
 海の全てを知り尽くしてしまった彼女は上陸を求めた。
 子女のように強く願い、祈り、その願いは遂に神の被造物たる己を全く別の存在に変生させるに至った。

 海という檻を離れ、陸を歩けるヒトの姿。
 そして、どこへでも行ける悪魔の力。
 しかし、これだけではなかった。
 憧れた自由への変生は、彼女を永劫に苦しめ続ける副作用も同時に連れてきたのである。

「人の世界に踏み入ったわたしを待つのは人の罪でした。
 嫉ましいのです、羨ましいのです――他者の全てが。
 わたしに持っていないものがあることが耐えられない。
 全身の肉の内側を蛆が這い回るような苦痛が常に付き纏い続けるのです。

 それがわたしの被った罪。わたしに課せられた永遠の罰。七つの大罪が一、嫉妬の性」

 傲慢、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲――そして〝嫉妬〟。
 七つの大罪が一つにして、楽園の蛇が司るとされる悪徳。
 悪魔となったバーサーカーは人から抽出された妬みの罪を、その魂に刻み込まれた。
 その結果生まれたのは全ての嫉妬を司る大悪魔。レヴィアタンという名はそのままに、最強の力もそのままに、形だけを大きく歪められた怪物。

 そこに生まれながらの悪性など存在しない。
 あるのは人間の悪徳を自由の代償に押し込まれたことへの嘆きだけだ。
 悪魔でありながら、自身の司る罪からの解放を願う彼女は成程異端の一言に尽きよう。

「お前の自業自得以外の何だっていうんだ? 
 被害者面するなよ、悪魔。そうなることを望んだのは、他でもないお前自身だろう」

「分かっています。分かっていますとも。誰よりもわたしが、己の罪深さを理解しています」

 神に造られながら、役目からの逸脱を望んだ罪。
 悪魔となってでも、自由の二文字を得たいと欲した罪。
 その顛末が今の己だ。バーサーカーはその言葉の通り、誰よりもそのことをよく理解している。

「わたしは俗物なのです。頭では分かっていても、割り切れない。
 永遠に続く罰に耐えられるほど、わたしは強い心を持っていない。
 だから聖杯を求めるのです、廻。聡明なあなた。我がマスター。
 堕落に付き添う悪魔ではありますが、あなたにだけはそれをもたらさぬと誓いましょう」

「当然のことを改まって言われても何も響かないな。
 思い上がるなよ、お前は道具だ。病気で汚れた世界を浄化して八斎會を再興させる。お前はその為の兵器に過ぎない」

 下らないし興味もない。
 道具は道具らしく仕事だけをこなしていればそれでいい。

 聖杯の恩寵も半分は渡そう。
 〝個性〟の廃絶程度なら、残りの半分でも事足りる筈。そこで無駄な軋轢を生むつもりはない。
 要は利害の一致さえあれば他には何も要らないというのが、治崎のスタンスだった。

 サーヴァントと絆を深める? 
 互いの願いに同調する? 
 それは無益、非合理的というものだろう。

 そんな暇があるなら勝つ為の策なり備えなりを一つでも多く用意すべきだ。
 時間は有限ではなく、刻々と戦況は変わっていく。
 それに乗り遅れた者から脱落していくのだと、治崎は最初から理解している。
 故にこそ治崎はバーサーカーを重用はすれど、彼女を理解しようとは全く思わない。

 それどころか、彼の彼女に対する感情は先の一言に全て集約されている。
 即ち、自業自得。同情には値しないし、心底どうでもいい。
 それ以上でも以下でもない。バーサーカーがどれほど悲愴な顔をしようが、治崎としては知ったことではない。
 重要なのは勝つかどうか。その為に何をするか。――己に配られたカードをどのように使い、どのように勝つか。

〝ええ――分かっています。分かっています。
 わたしは道具であなたは使用者。サーヴァントとマスターの関係とは本来そういうもの。
 それ以上の何かを期待するのは、幼稚なことなのでしょう〟

 バーサーカーも、そんな治崎の考えはよく理解していた。
 反発するどころか、むしろそれでいいと認めてすらいる。
 事実治崎廻というマスターは相当な〝当たり〟だ。
 知略も腕っ節も身分も高い。聖杯戦争を誇張抜きに掌握できる力を秘めた、自分などより余程悪魔じみた男。

 そんな彼のことを心から信頼し、敬愛するからこそ――バーサーカーは怖くて堪らない。
 駄目なのだ、こういうのは。こうなるとバーサーカーは、自分の病気が抑えられなくなる。

〝どうかお気をつけて、廻。
 わたしはあなたに堕落を与えません。
 しかし……〟

 バーサーカー・レヴィアタンの司る悪徳は嫉妬。
 それは彼女が人にもたらす堕落であると同時に、彼女の魂を永劫に苛む衝動だ。
 まさに病。後天性にして治す手段のない、完全なる存在さえも発狂させるパラノイア。

〝わたしは、あなたのことも羨ましい。
 触れれば砕き、散った命すら復元する力。
 欲しくて堪りません。わたしにはあなたの両手が、きらびやかな宝石に見える――〟

 ――そこに見境はない。それどころか彼女が私的な感情を注げば注ぐほど、同時に衝動は強まっていく。

〝――嗚呼、なんておぞましい〟

 悪魔になどなるべきではなかった。
 あの海へ還り、永遠に満ちたまま既知の海を漂っているべきだった。
 満ち足りたい。退屈の牢獄に閉じ込められたい。その祈りこそが、大悪魔レヴィアタンのすべて。

 ひとりは充足からの解放を。
 ひとりは解放からの充足を。
 全く正反対のものを奇跡の力に乞いながら、彼らの聖杯戦争は続いていく。

【CLASS】バーサーカー

【真名】レヴィアタン

【出典】旧約聖書、七つの大罪、悪魔学

【性別】女性

【身長・体重】150cm、39kg

【属性】混沌・狂

【ステータス】

筋力:A 耐久:A 敏捷:C 魔力:B 幸運:D 宝具:A+(人間体)

筋力:A++ 耐久:A+++ 敏捷:D 魔力:A 幸運:D 宝具:A+(竜体)

【クラス別スキル】

 狂化:EX
 全ステータスを1ランクアップさせるが、理性は失われていない。
 後天的に付与された性質とはいえ、悪魔であるバーサーカーは狂化の鎖をはね除け、その上でメリットのみを受けることが出来る。
 ただし、それは彼女が狂っていないこととイコールにはならない。狂化など施すまでもなく、彼女は生まれた瞬間から狂気を宿している。

【固有スキル】

 大海の支配者:EX
 太古の魔海に君臨した大海竜としての能力。
 人間体の状態でも、自由自在に自分の肉体部位を竜化させることが出来る。
 〝変化〟〝自己改造〟などの強化スキルが幾つも複合されたユニークスキル。
 また、父にして母なる海の支配者であるバーサーカーは水、海に纏わる攻撃から受けるダメージを常に大きく軽減し、ランクが低ければその攻撃を支配し返して完全に掌握することも可能。
 それが液体であるならば、余程桁違いの神秘でも抱えていない限り大なり小なりバーサーカーの干渉を受ける。

 嫉妬の性:A+
 バーサーカーが持つ、悪魔としての特性。彼女は嫉妬の罪を司る大悪魔である。
 相対した全ての存在に等しく嫉妬し、その人物の輝かしい部分を奪いたいという衝動に常に駆られ続ける。
 普段は悪魔としての意志力で抑え込んでいるが、彼女自身でも制御不能な領域にまで欲求が高まると暴走の危険がある。
 バーサーカー自身にとっても忌まわしくて堪らない、呪いのような性。

 天性の魔:A+
 英雄や神が魔獣に堕としたのではなく、怪物として産み落とされたものに備わるスキル。
 生まれながらに怪物であったバーサーカーは、人の身で辿り着くのは困難なランクの筋力と耐久力に到達している。 

 魔力放出(水):A
 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射。
 バーサーカーの場合、水を魔力として放つ。鉄砲水のように打ち出したり、地面から噴き上がらせて盾にするなど応用の幅はかなり広い。
 長時間に渡り放出させ続けることで、水流ブレードなどの武器を形成することも出来る。

【宝具】

『諸悪の王(リヴァイアサン)』

 ランク:A+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:1

 バーサーカーの本来の姿である、全長数百メートルはあろうかという巨大な神獣ランクの竜種に転身する。
 魔力消費が凄まじく大きく、その上あまりにも目立つためおいそれとは使えない切り札だが、その分非常に凶悪な性能を誇るのが特徴。
 災害じみた攻撃力もさることながら、真に厄介なのはその防御力。竜の全身は鎧を思わせる強固な鱗に覆われており、この鱗はあらゆる〝武器〟による直接攻撃に対し高い耐性を持つ。
 Aランク以下であればそもそもダメージを受けず、それ以上のランクでも最終ダメージが大きく軽減されてしまう。
 このため、武器の存在に依存したサーヴァントがバーサーカーに手傷を与えようと思うなら、武器から放った光線や炎などといった〝派生形〟で攻める必要がある。
 他にもドラゴンブレスを始めとした竜種固有の技を多数有するため、ただ防戦するだけでも容易ではない。
 更に本来海の支配者である竜体のバーサーカーは、ただそこにいるだけで自分と接触している箇所の地面を溶解、擬似的な海に変えてしまう。このため、真の姿を解放したバーサーカーを野放しにしていれば際限なく都市機能が破壊されていく。
 まして彼女が嫉妬を拗らせて暴走状態にあったなら、誇張抜きに京都の町が地図から消えてしまう可能性がある。

『七罪魔手・楽園の蛇(エンヴィー・デモノロジー)』

 ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:1

 彼女を象徴する悪徳である〝嫉妬〟……何かを羨む浅ましい想いそのものが宝具の域に昇華されたもの。
 背後の空間から半透明の巨大で禍々しい腕を出現させ、敵に向けて攻撃を仕掛ける。これ自体の威力は見た目に反して驚くほど低いが、重要なのは接触によって発動する事象。
 この腕に触れられた対象は、バーサーカーが羨望を覚えたスキルを一つ奪い取られる。もし掴まれてしまえば宝具すら奪われる危険性がある。
 奪ったスキルや宝具はバーサーカーの所有物となり、真名解放も含めて本来の持ち主と同等の技量・知識で扱うことが出来るようになる。
 これを取り返す手段は、バーサーカーを殺害して『七大罪手・楽園の蛇』の効果そのものを消滅させるしかない。
 対魔力などのスキルで抵抗可能だが、最も効率よく奪う手段である〝掴み〟が決まったなら、A+ランク相当の対魔力持ちからでもスキルまでは略奪出来る。
 逆に対魔力を持たないサーヴァントにとっては、わずかにかすることすら許されない、最悪レベルの厄介な能力となるだろう。

【weApon】
〝大海の支配者〟〝魔力放出(水)〟によって作り出した武器

【解説】

 レヴィアタン。旧約聖書に登場する海中の怪物。悪魔と見られることもある。
 語源は〝ねじれた〟〝渦を巻いた〟という意味のヘブライ語だが、現代では原義から転じて、単に大きな怪物や生き物を意味する言葉として使用されることも多い。
 神が天地創造の五日目に作り出した存在で、同じく神に造られたベヒモスと二頭一対を成すとされている。
 ベヒモスが最高の生物と称されるのに対し、レヴィアタンは最強の生物と呼ばれる。その硬い鱗と巨大さはいかなる武器も寄せ付けず、世界の終末に際してはベヒモスと共に食べ物として供されるという。
 また、中世以降はサタンなどと同じ悪魔と観られるのが一般化。水を司る者という属性は変わらず、外観も怪物であるとされるが、その一方で一般的に想起されるような悪魔の外観を持つという説も存在する。
 コラン・ド・ブランシーが著した『地獄の辞典』に拠ればレヴィアタンは地獄の海軍大提督を務めており、悪魔の階級においてはサタン、ベルゼブブに次ぐ第三位の地位を持つ強大な魔神とされる。
 キリスト教の七つの大罪では、嫉妬を司る悪魔と定義されてもいる。また、嫉妬は動物で表された場合は蛇となり、レヴィアタンが海蛇として描かれる場合の外観と一致する。しかしこれについては当時から反対意見が多く、知性のない怪物であるレヴィアタンを無理矢理悪魔と定義しただけのこじつけ、オカルティストの創作であるという意見が根強い。

 が、実は誤っているのは否定派の方。
 レヴィアタンは正真正銘の大悪魔であり、同時に神が作り出した大海の支配者でもある存在。
 神の手で創造されたレヴィアタンは伝承通りの強大な怪物であったが、しかし知性を持たないわけではなかった。むしろその逆。彼女はその頃から明晰な知性とパラノイアめいた狂気を宿していた。
 大海の支配者は長い時間を過ごす中で、海からの脱出を願うようになる。退屈で、永く、終わりの見えない海遊をやめ、人として地上に昇って生きたいとそう思うようになっていく。
 だが、神の造った怪物である彼女の願いは歪んだ形で叶えられた。レヴィアタン自身の変質、人の悪性を司る悪魔への変容という形で。
 悪魔となったレヴィアタンは人から抽出された妬み、嫉みの感情を常に抱えながら、人を堕落・破滅させる魔性そのもの。欲しいものが手に入らなければ抱え込んだ衝動は次第に膨れ上がっていき、いつかは爆発する。
 半端に理性の残ってしまっている彼女にとって、それは自分が自分でなくなる苦しみに他ならず――故にその願いは悪魔らしからぬもの。
 自らのアイデンティティの崩壊……嫉妬の終わり。充足の時を、彼女は聖杯に願うのだ。

【特徴】

 頭に捻れた二対の角が生えた、プラチナブロンドの少女。小柄だが胸は大きい。
 海色のロングドレスを着用し、臀部からは鯨のそれを思わせる尻尾が生えている。
 彼女の嫉妬心が高揚するとドレスの色が夜の水面のように黒く染まっていき、表面が波打ち始める。

【聖杯にかける願い】

 満たされたい。それが自分という悪魔(そんざい)の破綻をもたらすとしても、この情動から解放されたい


【マスター】

治崎廻@僕のヒーローアカデミア

【マスターとしての願い】

 全人類の〝個性〟の消滅。

【Weapon】

 ヤクザの若頭であるため、拳銃などの凶器を所持している。

【能力・技能】   

 ■個性『オーバーホール』
 対象物を分解し、任意で再構築する個性。
 自らの爪で引っ掻いたものを対象にし、任意の規模で分解あるいは再構築を行う。
 人体程度ならば引っ掻いてから一瞬で完全分解し、死亡直後ならば死人の再構築(=蘇生)すら可能。
 治崎は二つの性質を巧みに組み合わせ、建物や地形そのものを自在に変形させながらの戦闘を得意とする。

【人物背景】

 指定敵予備団体・死穢八斎會の若頭。通称オーバーホール。
 作中世界では落ち目となっている極道の人間で、八斎會の組長への恩義もあって誰よりも強く組の、ひいては極道の未来を案じている。
 その思いは最早狂気に近く、綿密な努力と計算でどんな非道にも手を染め、遂には恩人である組長をすら再起不能の身に変えた。
 彼の目的は〝巻き戻し〟の個性を持つ少女、壊理を利用して個性を人から消す銃弾と、それに対する血清を開発。
 前者をヴィラン、後者をヒーローに売り捌き、市場を独占することによる組の復興である。
 だが無論、聖杯さえ手に入ってしまえば組を衰退させた諸悪の根源である個性をこの世から苦もなく消し去れる為、今回はそれを目標に動く。
 八斎會本部強制捜索が行われる前からの参戦。

【方針】

 聖杯狙い

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最終更新:2017年12月21日 19:27