某月某日、深夜に京都府警に入った一本の助けを求める通話。
走行中の車から、半狂乱になって掛けられた通報によると。『バケモノの群れに追われている。このままじゃ殺される。他の連中はもう殺された』というもの。
通常ならば、悪戯か、クスリかアルコールが脳の奥深くにまで行き渡ったアホウの戯言と処理するところだが、声に含まれたものがそれを許さなかった。
取り敢えず近場にいたパトカーを通報のあった現場に赴かせたところ、警官達が見たものは、姿形はおろか人数すらも判別出来ない程に破壊された複数の人体。
現場に残された車のナンバーから所有者を割り出した所、暴行、恐喝、監禁、傷害、強姦等の複数の犯罪への関与が疑われる人物で。捜査関係者を大いに驚かせた、
この殺人事件こそが、京都市を震撼させる連続殺人の始まりだと、当然ながらこの時は誰も予想できなかった。
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「や、やめ─────」
命乞いをする男の口に、突き込まれた長槍は、脳幹を貫き男を即死させ、頭部を貫いた穂先が、男の後ろの壁に掛かっていた額縁に穴を開けた。
『無駄な人間などいない』と、墨痕淋漓と大暑された額縁が真っ赤に染まる。
京都市内にある貸しビルの一室は地獄と化していた、
表向きは小さな輸入品を扱う会社だったが、実質は振り込め詐欺と闇金及び密輸品の売買を行う、犯罪組織の一端だった。
そんな所に白昼堂々乗り込んで来たのは、黒髪黒瞳の黒いセーラー服に身を包んだ少女だった。
室内に居た男達が、少女を見た瞬間一斉に立ち上がったのは、アイドルとしてもやっていけそうな整った顔立ちに惹かれた為ではない。
少女が左手に提げた、黒鞘の日本刀に反応しての事だった。
やっている事がやっている事なだけあって、男達の反応は早かった。
入り口に近い連中が事務机をひっくり返して少女の行動を封じ、残りの連中は、ある者は椅子を投げつけ、ある者は隠してある銃器を取り出した。
こういう手合が殴り込んで来るのは、頻繁ではないが珍しくもない。大抵がアル中か薬物中毒(ジャンキー)で、ドナーにも肉屋にも廻せない屑ばかりだったが。
殴り込んで来た連中は、その度に制圧して、ある者は殺人(スナッフ)ビデオに出演させ、ある者は人狩り(マンハント)や射的の的にして来た。
どんな人間であっても彼らは金銭にかえてきた。文字通り『無駄な人間などいない』のだ。
今回も同じように処理して、先ず全員で輪姦してからボロ雑巾になるまで裏モノのビデオに出演させて、最後はバラして豚の餌にでもする。
狩られる側の獲物が脆弱な牙を剥いた所で、捕食種に敵うはずが無い。
そう思っていた男達は知る事になる。
今日は自分達が狩られる側であり、少女が冠絶した捕食者だったと。
椅子を投げた男が、投げつけられた椅子を打ち返され─────掴んで投げ返したのではなく、掌打をいれて、より強力な勢いで送り返したのだ─────顔面が砕けて死んだのを皮切りに、一方的な殺戮が始まった。
少女の周囲に不意に現れた無数の影が、剣で斬り、槍で突き、マスケット銃で撃ち、弓と弩で射抜き、影で出来た猟犬を嗾ける。
瞬く間に室内に生きた人間は少女一人となると、少女はクルリと踵を返し歩み去った。
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歌詞ビルの一室で殺戮を行なった二日後。寂れたセーラー服の少女、‘’クロメ”の姿があった
二日前に皆殺しにした連中の知識によれば、此処には窃盗グループの溜まり場があるらしい。
己がサーヴァントの特性。殺したものを“自分達”の内に加え、その知識と経験と技術とを己のものとする能力。
己の持つ帝具“八房”と同じ性質を持つサーヴァントだった。
この能力を用いて、クロメは自己の負担を減らす為の魂喰いに丁度良い手合いの情報を獲得していた。
サーヴァントは人の魂をを喰うことで魔力を補充・強化する事が出来る。あくまでも副次的なものに過ぎず、戦力の強弱を覆すものでは無い。
だが、クロメのサーヴァントは喰えば喰うほど、殺せば殺す程に強くなる。魔力は高まり、ステータスは向上する性質を持つ。
尤もその為にはサーヴァントを喰うか、数万単位の殺戮を行う必要が有るが。
クロメは別段、自己のサーヴァントを強くする為に殺戮に励んでいるわけでは無い。
単純な話が、己れにかかる負担を減らす為に、サーヴァントに人を喰わせているのだった。
思わず眉間に皺が寄る。記憶を取り戻し、サーヴァントを召喚して以来ずっと不機嫌だが、物思いに耽る度に、更に機嫌が悪くなるのを感じる。
昔の自分なら兎も角、今では帝国の敵では無い人間を、悪人だからといって無分別に殺すのは多少気が引ける。
余程の下劣畜生や外道鬼畜の類─────あの連中のような─────ならいざ知らず。本来ならば捕縛して法の裁きを受けさせるべきなのだろう。
「ふふ……」
笑みが溢れる。少し心が温かくなる。こんな事を考えるのもウェイブの影響なんだろうなとは思う。
こんな事をやっているのを知れば、きっと怒るだろうとも。
だが、それでも─────。
「お姉ちゃんが待っている……」
愛おしい姉との決着。他の誰にも、例えウェイブやエスデスにすらも邪魔はさせない、ただ二人きりでつけるべき決着。
それを前にしてこんな所でクロメは死ねない。死ぬ訳にはいかない。
なんとしてでも生還し、姉の─────アカメの前に立つ。
その為にも“勝つ”為の布石を怠る訳にはいかなかった。
強化薬物の使用で、壊れかかっている肉体に負荷を掛けない為にも、サーヴァントに人を喰わせる事は避けられなかった。
周囲に放った“サーヴァント達”から、周囲に人通りが無い事を確認。この地で取り込んだNPCの知識から獲得した周辺の地理を脳裏に浮かべ、
迅速かつ人目につかずに逃走できるルートを複数思い描いておく。
それにしても─────。ふと思った。
こうして街を徘徊しては殺戮に耽るなんて、まるでランを殺した奴等のようだと。
そう思うと、改めてこのサーヴァントを召喚した時のことを思い出す。
あの時、男達にハイエースに押し込まれそうになっていた自分の前に現れ、瞬く間に男達を殺してのけたサーヴァントは、荒野を吹きすさぶ狂風のような、嵐の夜に全ての音を圧して響く雷鳴のような。少年のような、老人のような声でこう名乗ったのだった。
“我はライダー。ワイルドハント”と。
クロメは、姉との決着に割って入り、こんな名前のサーヴァントを己が元によこし、自分にこんな事をさせている聖杯戦争に対して、改めて激しい怒りを覚えた。
【クラス】
ライダー
【真名】
ワイルドハント@ヨーロッパ伝承
【ステータス】
筋力:C 耐久: C 敏捷:C 魔力:B 幸運: C 宝具:EX
【身長.体重】
190cm ー(体重は無い)
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
騎乗:A
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
衆知の智慧:C(A)
ライダーを構成する群霊の知恵と知識と経験と技能。
英雄が独自に所有するものを除いたほぼ全てのスキルをDランク相当で発揮する。
また、個々が過去に蓄積した知識、情報、技能を発揮できる。
サーヴァントを取り込めばそのスキルも使用可能となる。
これらの内知識のみは、マスターにも念話の形で完全に伝授する事が可能。
自己改造:A++
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
魔術:A+
ヘカテー及びオーディンを首魁とするという伝説を持つ為に獲得したスキル。
魔術神の技能と膨大な魔力が併さって、並なキャスタークラスよりも強力。
狂化:ー(A+)
宝具使用時に発動し、全ステータスを2ランク向上させるが、制御不可能になる。
が…、ライダーには、制御不可能どころか理性を失っている様子すら見られない。
これは狂化スキルがライダーの本質と合わさっている為で有る
尤もバーサーカーは怪物であり、人の倫理や常識は通用しない。
つまり、制御できる保証は無い。
【宝具】
嵐の夜に駆ける者たち(ワイルドハント)
ランク:A 種別:対人及び対軍宝具 レンジ:京都府全域 最大補足:京都府全域
複数の人間霊や精霊の集合体であるワイルドハントの本質。
自身の身体を構成する群霊を切り離して別個体として行動させることや、自身を構成する無数の群霊の一個体の姿を取る事が出来る。
大半の霊体は常人並の能力しか持たないが、長きに渡る信仰によって魔獣並の霊格を有している。
作り出す分体が多い程、一つの個体を構成出来る霊体の数は少なくなり、弱体化が著しくなる。
最大限内包する群霊を解放すれば、数十万の軍勢となるが、一部の例外を除き、一体一体は通常の人間と変わらなくなる。
また、ワイルドハントに殺された者は、マスター、サーヴァント、NPCを問わず、ワイルドハントに加えられる。
殺す程、魂を取り込む程にステータスが向上していくが、ステータスを一つ上げる為にはサーヴァントを喰らうか、数万単位の人間を喰らうか必要が有る。
吹けよ風 呼べよ嵐(ストームライダー)
ランク:C 種別:対人及び対軍宝具 レンジ:ー 最大補足:ー
黒雲を呼び、狂風を吹かせる。
この宝具を使用している時、ライダーは風に乗り飛行することができる。
飛行以外にも、 風や雷で攻撃を行なうことも可能とする。
また、飛行時のライダーを見た者は精神判定を行い、失敗した場合数ターン恐慌状態に陥る。
此の効果はCランク相当以上の精神耐性系スキルで無効化可能。
嵐の王(ワイルドハンツマン)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:一人
ワイルドハントの首魁の亡霊の姿と精神を前面に押し出し、英霊に限りなく近い存在に我が身を再構築する。
ステータスは姿を取った英霊に1ランク落ちるものとなり、その英霊のスキルも-が付くものの使用可能になり、神獣に相当する霊格となる。
この宝具を使用すると、衆知の智慧スキル及び狂化スキルが()内のものとなりステータスが劇的に向上する為、結果として模した英霊を上回るステータスとなる。
また、英霊の象徴である宝具は再現できないが、代わりに並の対軍宝具に匹敵する暴風や稲妻を用いて戦う。
この宝具を用いる為には、その時点で存在する全てのワイルドハントを集結させなければならない。
【weapon】
マスケット銃と弩と弓矢と剣と槍、あと影で出来た猟犬。そして影で出来た乗馬
姿を取った英霊の持つ武具を形だけ再現したもの
【人物背景】
其れは個にして群。群にして個。ワイルドハントとは嵐の夜に空を征く、精霊、妖精、英雄、死者、落魄した神である。
日本で例えるなら百鬼夜行がこれに近い。
目撃すれば災厄や戦災を招くとされ、行進を阻んだり、追いかけたりすれば、冥府へと連れ去られ、ワイルドハントに加えられるという。
その本質は、亡霊や幻霊やシャドウサーヴァントの群れ。
模する英霊の姿は座にいる英霊のものではなく、人々の抱くイメージの具象である。
通常の状態では自我が希薄で、伝承通りの行動しか出来ないが、ワイルドハンツマンの形態を取れば、その姿に相応しい個我を持つ。
【外見】
17世紀辺りの狩猟服を着て、馬に跨った偉丈夫。人馬共に黒い影法師であり、顔立ちや服の細部は不明。
この姿は基本形であり、分裂した場合は、意図して同じ形にしない限り、異なる姿を持つ事になる。
【方針】
悉くを狩る
【聖杯にかける願い】
無い
【マスター】
クロメ@アカメが斬る!(原作漫画版)
【能力・技能】
非常に高い身体能力に、遠距離からの狙撃を回避する反応速度
頭か心臓を潰されない限り一撃では死なない耐久力
作中でも上位に入る戦闘能力だが、薬物強化の産物であり、定期的に薬を摂取する必要がある。
これらは元の素質をドーピングで引き上げた結果である為、重度の薬物中毒であり、定期的に薬物(お菓子)を食べ必要がある。
食べないと禁断症状を引き起こし、死ぬ。
【weapon】
死者行軍・八房:
千年前に始皇帝が作らせた48の兵器の一つ。
日本刀型の帝具。
斬り殺したものを八体まで“骸人形”として行使できる。
骸人形は自我は無いが生前の能力をそのまま行使し、クロメの命令に忠実に従う。五体を粉砕されない限り止まらない。
強い念を持ったまま死んだ骸人形は、生前の念に影響されて動く事がある。
強化薬物:
身体能力を底上げする。中毒性が強く定期的に摂取しないと禁断症状を起こす。
超強化薬物:
強化薬物を遥かに超える身体能力の強化を齎す。
効果が極めて短時間で、効果が切れると身体能力が低下する。
【人物背景】
反帝国組織“ナイトレイド”のメンバーアカメの妹。
アカメと共に帝国の暗殺者養成機関に売られ、暗殺者として育てられた。
強化薬物を使われた為に戦闘能力は高いが、薬物中毒となっており余命は僅か。薬の副作用でと洗脳により、思考と倫理が常人のそれから逸脱している。
帝国を裏切った姉には憎悪と歪んだ愛情を向けている。
特殊部隊イェーガーズに招集されて、そこで出遭った少年ウェイブとの出逢いで、帝国に忠実な殺人機械だった人格に変化を来していく。
ずっと一緒にいたいと願った人間が自分の元から離れようとするのを(例え死別であっても)“八房”の骸人形にする事で阻止しようとするのは変わっていないが。
姉との決着後はウェイブと共に帝国を離れ、ウェイブと共に余生を過ごした。
【方針】
善良なNPCを護りつつ他陣営皆殺し。治安を無出す輩を相手に魂喰いを行わせて自身にかかる負担を減らす。
薬物中毒の為に持久力が無く、薬が無くなると禁断症状で詰むので、早期決着を狙う。
【聖杯にかける願い】
帰還。アカメとの決着は自分で着ける。
最終更新:2017年12月30日 19:56