それ以上でもそれ以下でもない

京の都。
古き時代の面影と、当時に手施された在り方を現代になお残し続ける美しくも異常な空間。
これが何を意味するかは様々逸話や歴史や数多の記録がある。
歴史とは受け継がれゆくものだろう。
だが逆に『受け継がれないもの』『語られぬもの』も存在した。

例えば―――ファティマ・第三の予言。
ローマ教皇が内容の恐ろしさに絶句し封印した。核戦争・第三次世界大戦の予言だ。
噂や諸説が幾つもあっても、結局のところ本格的な発表は現在に至るまでされてはいない。

つまるところ。
歴史とは全く以て信用ならない事だ。史実と歴史に異なる点はありえる。
アーサー王やネロ・クラウディウスが女性だったり、加藤段蔵がからくり人形だったり。
所詮は語り継がれたモノ。アテにはならない。
故に……
歴史の曖昧さ故の『隙』というのが存在するのである。


「――――――」


凍えるような冷気。
現代の京都。その一角で氷づけになっている英霊が声も上げる事なく、キラキラと粒子となり消失を迎えようとしていた。
傍らでは、肉体そのものが『停止』したことにより『凍結』した人間がいる。
ソレがマスターであった事は、明白だ。


「……■■■■■………ほまるはうと………」


演武の如く『唄』を口ずさむ平安貴族のような格好の男が一人。
随分若い。まだ二十代手前と言った二枚目。どこかでアイドル活動をしてそうな美男子は。
不気味な理解不能の言語で『唄』を奏でつつも、氷点下の美を傍観する。


「ふんぐるい、むぐるうなふ―――」


「……それ何?」


恐る恐る美男子に問いかけたのは――十四松だった。


十四松。
松野十四松である。
松野家五男の十四松は十四松以外に何者でもないので、十四松と説明する他ない。

明るい狂人。笑顔を絶やさない十四松ですら、冒涜的な光景に顔がひきつって見えた。
美男子は憂い帯びた表情で振り返る。ギョッと体を跳ねる十四松。
両者に謎めいた沈黙が広がり。やや保たれた間を気に留めず、美男子は十四松から視線を逸らし謎めいた『唄』を続ける。


「―――ホマルハウト、ウガア、グアア、ナフル……」


ああー。と呆然に近い声を十四松は漏らした。






どういう訳か京都に点在する松野家。
寒さを逃れるために、六つ子揃って炬燵に入ってテレビを視聴。
何気なくニュースが一つ報道されたのである。


『京都市にて変死体が発見されました。―――警察は事件性を見て捜査を――――』


マジで?近所じゃん。と兄弟の誰が口にしただろうか。
とは言っても。変な危機感を抱いたりせず、所詮は他人事。そんな風に言えばマジメっぽい風な。
ついつい口にしてしまった癖のようなもので意味なんて無い。

ただ一人。
十四松だけは笑顔のまま顔色だけが悪かった。アレは自分のサーヴァントの仕業だと、誰より知っている。
確かに、殺した。ヒト一人殺してしまったのだが、結局のところ。正当防衛である。
多分、悪くない。十四松は勝手に頷いている。

あの主従は十四松がマスターであると分かって攻撃を仕掛けた。
否。元より無警戒で聖杯戦争の事を口にした十四松自身が迂闊だったに違いない。
とにかく、攻撃されたからだろう。
十四松のサーヴァントは、マスターの指示を受ける必要なく彼らを打倒してしまった。
アッサリ説明しているが十四松にとっては、わりとショッキングな出来事だ。

気分転換を兼ねて十四松が松野家の屋根に上がろうと外に出れば、冬に関わらず不思議にも温かい。
そして、あの唄が聞こえる。


「ほまるはうと うがあ ぐああ なふる……」


「――ねえ! それ何の歌?!」


今度はテンション高めに飛びだしながら十四松が、屋根の上で唄う美男子のサーヴァントに問う。
ピタリと唄が止むと。いきなり身が震えるような風が二人を吹きつけた。
次はサーヴァントは十四松に振り返らず、虚空を眺めて言う。


「君は確か。十四松。名は十四松だよね」


「うん。そうだよ」


「現代の世にして風流な名を貰った幸運な人。ジュウシマツ。鳥の『十姉妹』が由来なんだろう?」


「え? そーなの?」


「『十』の『姉妹』だから、君達兄弟に準えた訳ではないようだ」


「へえ~~~」


傍らに座りながら十四松が尋ねる。


「さっきの歌、なに?」


「うーーーーーーーーーーーん………」


唸ってから相変わらず虚空を眺めて美男子が言う。


「ああ、僕の呼び名を教えてなかった。僕は『フォーリナー』だよ」


「フォーリナー? え? 外国人?」


十四松のサーヴァント・フォーリナーは、京都の古き良き道を歩む人々を眺めながら


「ここに居ると寒いよ。十四松」


「そうかな? さっきは寒くなかったよ」


するとフォーリナーが虚ろな紅染みた瞳で歌い始める。


「ふんぐるい、むぐるうなふ……くとぅぐあ、ほまるはうと………」


結局その『唄』は何を意味するのか?
十四松が答えを知る事はなかったものの。フォーリナーが歌うと風が止み、全身が炬燵に包まれるように温かい。
だから「別にいっか」と十四松は疑問を抱くのを諦めた。





【クラス】フォーリナー

【真名】冷泉天皇@史実(+クトゥルフ神話)

【属性】中立・中庸


【ステータス】筋力:C 耐久:D 敏捷:D 魔力:B 幸運:A 宝具:A


【クラス別スキル】
領域外の生命:EX
 外宇宙あるいは別次元の領域に住まう存在。砕けた表現でいう宇宙人・エイリアン。
 我々の世界において理解不能。測定不能。
 文字通り、測る事すら不可能な存在が故に神また邪神とされるが、その正体は果たして――

狂気:A
 精神を冒涜的狂気によって蝕まれた者が持つスキル。
 精神異常・精神汚染と同等で、精神スキルを阻害ものでありながら
 英霊自身の正気と正常を崩壊させる。
 冷泉天皇は元より精神に異常を来していた為『負×負=正』の理論で正常になった。

【保有スキル】
神性:B
 神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。

生ける炎の加護:A++
 とある邪神の加護。
 敵対する混沌属性に対する強力な耐性と特攻を持ち合わせている。

三寒四温の唄:EX
 「ふんぐるい むぐるうなふ……」
 冷泉天皇の奏でる唄。それと規格外の邪神の能力が重なり合ったもの。
 『生ける炎』と呼ばれる彼の神だが、実際は『炎』ではなく『熱』そのものを操作している。
 熱を停止すれば炎と対極的な『氷』を。
 熱を高めれば如何なるものにも『炎』を。
 炎と氷だけではなく、体感的な『寒暖』すら操作出来る。


【宝具】
『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』
ランク:A 種別:対混沌宝具 レンジ:1~500 最大補足:1~500人
浮遊する八つの紅勾玉。それを自在に操作可能。行動範囲はレンジ内に限られる。
スキルの『三寒四温の唄』を勾玉に付与することで強力な攻撃が実現できる。

彼の有名な『三種の神器』の一つ。
八咫鏡に対して月を示しているのではないか?とされるが不明。具体的な形状の詳細すら不鮮明。
ましてやそもそも『神器は二つ(八咫鏡と天叢雲剣)だった』。
何故か『八尺瓊勾玉』のみ神器を剥奪されてる。なんて事も多々記述として残されている。

元より存在しなかったものの可能性を隙に、規格外の存在によって歪められた。
いや……元より邪神によって歪められた歴史こそが、我々の世界で正常と認知されてしまって。
本来の神器は二つのみだった……かもしれない。



【人物背景】
平安時代・第63代天皇。冷泉院。
生後間もなく権威の関係で非常に恵まれていたが、精神病を患っていた。
奇行エピソードは数多にあるが、御所が火事になった際。大声で歌をうたっていたらしい。
それが『歌』だったのか『呪文』であったのか。現在、真相を知る術は存在しない。
冷泉天皇は『三種の神器』が一つ『八尺瓊勾玉』の箱を開けようとした逸話がある。
箱より白い煙が湧きあがり、恐怖により実物を確認しなかったらしい。

遥か未来で異形の神々によって観測された我々の世界。
ほんの一瞬垣間見えた世界に、彼らは関心を抱く。
無論『這い寄る混沌』すらいづれ、こちらの世界に至るであろう。
ソレと敵対する『生ける炎』は炎を目にし奇行の唄を奏でた冷泉天皇に注目し、接触。
しかし、元より精神が狂っていた事が功を奏し(?)異形の神に取り込まれる事は無かった。

十四松に呪文の詳細を話さないのも、自らの正体を明かさないのも。
彼を正常にさせる為であって、気がふれている訳じゃなく意図的である。
正常になったことで過去の己の行いに恥ており。
仮にそれを指摘されれば、逆鱗に触れたようなもので、正常な意味で憤慨する。
本人は真面目に、親身にサーヴァントとして十四松を守り、十四松の願いを叶えるつもり。

【容姿・特徴】
紅色の文官束帯。天皇の座についていた時代である二十歳手前の姿。
顔立ちは非常に整って二枚目。
普段は日本男児らしく短髪黒髪・黒目だが、邪神の能力を使用すると髪目に赤みがかる。
現在、前述の姿で留まっているが、邪な神の力を使用し続けると。
服装と肉体が炎もしくは氷に侵食され、赤髪赤眼へと変色していく。
宝具を出現させると彼の背後で旋回する。


【聖杯にかける願い】
サーヴァントとして正常であり続ける。



【マスター】
松野十四松@おそ松さん


【聖杯にかける願い】
どうしよう……?


【人物背景】
松野家の一卵性六つ子の五男。
明るい狂人。
ジャンルそのものが十四松。ただの十四松。
体のてっぺんから足のつま先に至るまで十四松。それ以上もそれ以下もない。

……しかし、聖杯戦争の一端と異常なフォーリナーを目撃し。
ハッスルマッスルできない状態。


【能力・技能】
足の速さや身体能力は人並以上にあるだろう。
しかしギャグ空間ではない為、いつも通りにはいかない。

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最終更新:2018年01月05日 02:23