女が目を覚ますとそこは真っ暗な空間だった。
どこか簡素な家の一室のようだが、明かりはついておらず、窓も閉じているようで部屋の様子はうかがえない。
間違っても自室ではない。
疑問と怖れに苛まれて、女はなぜこんなところにいるのが必死に記憶を探りはじめた。
自分は夜の相手をする客を探して路頭に立っていた。
そこへ奇妙な格好をした外国人の男二人が声をかけてきたのだ。
牛のような模様でまとめた若い男と、フィクションの世界の貴族そのままといった出で立ちに髭を蓄えた紳士。
この京都で外国人はそう珍しくはないが、その中にいても目立つどことなく浮世離れしたしたものを感じさせる組み合わせだった。
第一印象としてはそんなところ。
次に覚えた感想はカネを持っていそうだ、という商売女としての嗅覚からくるもの。
どことなく不安は覚えるが上客を拒むつもりはない、と笑顔で向き合った時に見えた紳士の鮮やかな碧い眼が最後の記憶だった。
それから何がどうなって暗闇の一室で意識を失っているのか。
誘拐でもされたのか。一体何の目的で。
混乱。焦燥。恐怖。そうした感情が湧き上がり悲鳴となって女の口から洩れ出そうになる。
「お目覚めのようだネ」
それを留めるようにどこからともなく声が響いた。
一寸先も見えない闇の中から聞こえてきた、機械を通したようなノイズ交じりの声に女は反射的に質問を投げかける。
「だ、誰?なんで私をこんなところに?」
「先ほど君を買おうとした男の一人さ。伯爵、と呼んでくれて構わないヨ。
なぜここに連れてきたのかと聞かれたら、そりゃあ春を売ってる女性を買うのに外でやるわけにいかないだろ?公衆の面前でやるのはちょっと、まずいよネ?」
女は返ってきた答えにほんの少しだけ息をつく。
前後が不明瞭で、まだ物騒な事態になる可能性は否定できない。
それでも客だと主張するのなら、少なくとも相手をしている間は無事で済むはずだと。
でもせめてあまりにも過激な真似をすることになるのは避けたいと、震える声を抑えて少しだけ主張することにする。
「その……真っ暗な部屋でするのがあなたの趣味?そのくらいならいいけれど、顔や体に傷をつけるのは無しよ」
体にコンプレックスがあるのくらい珍しくない。それを見られるのが嫌で暗くするのはやりにくいが分かる。
肥満、手術痕、刺青など個性なのだからそのくらいなら受け入れる。
でも傷をつけたり、つけさせたりするのが茶飯事で、それを隠すための暗闇だとしたらそういうのは御免被りたい。
対価を受け取る仕事としてやる以上、契約の条件としてそのくらいは通させてもらう。
はっきりとそう告げると一瞬の沈黙をおいてノイズ交じりの返事が返ってきた。
「いいネ。プロ意識の高い女性だ。好きだヨ、そういう人は。
でも……私はともかく教会の人間は君の仕事をよく思わないだろうネ。躰を売る仕事に一端の誇りを持つなんて生粋の毒婦(ヴァンプ)だと」
薄っすらと笑いを含んだ声が、なぜかペンを走らせるような音を交えて耳に届く。
瞬間、女の体に変化が生じた。
突如暗闇に目が慣れ、部屋の様子が見渡せるようになる。
別に明かりは壊れているわけではないように見えた。
窓はカーテンに加えて雨戸まで完全に閉じられている。
その窓から日の差し込まない場所に満杯の本棚。
床にはなぜか無造作に酒瓶が置かれている。
部屋の中央にはちゃぶ台、その上に無線機らしいものがある。どうやら声はここから聞こえていたらしい。
見渡してみても部屋には他に誰もいない。
背後まで見渡してみると扉がある……さっきまで全く分からなかったのだが、その向こうから人の気配のようなものを感じる。
感覚が鋭敏になっているのがはっきりと自覚できる。
だが一番大きな変化はそれではない。
渇く。
渇く。
渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く渇く。
視界が真っ赤になるほどに渇く。
咄嗟に床に置かれた酒瓶に手が伸びる。
中身は……空。
苛立ち混じりに酒瓶を床に叩きつけた。
ガラスの砕ける甲高い音が響く。
そしてその欠片が天井にまで反射して深く刺さる鈍い音と苛立った舌打ちも響く。
部屋には水道などない。
ならば、と扉の方へと足を進めるが
「ああ、ダメだヨ。この部屋は立ち入り禁止だ」
無線機越しではなく扉の奥から声が聞こえた。
人がいる。あの男がいる。■が飲める。
渇きの求めるままに扉の向こうに踏み入ろうとするが、なぜかそれができない。
入るなと言われたところでそれに従う必要などない筈なのに、魂がその命令に逆らうことができない。
「ぅ、ぅううう……!」
ドアノブを掴むこともおぼつかない。体重をかけて無理矢理に押し開けることも叶わない。
ガリガリと扉に爪痕を刻み付けるのが精いっぱい。まるで檻の中の猛獣のよう。
「ふぅむ、扉を傷つけるので精いっぱいか。せいぜいが下の上といったところだネ。
もしかして君、赤子のころ母乳を飲んでいなかったな?乳腺でろ過されているとはいえ母乳(ち)を口にしていれば、毒婦(ヴァンプ)なんだしもう少しましな力を得ると思ったが。
やれやれ、期待を外れてしまったようようだネ」
今度は呆れたような、失望したような声が聞こえてきた。
だがその内容はどうでもいい。
渇きに耐えきれない。無心に扉を掻きむしり続ける。
突然、扉が弾けるように開かれた。
女の方に向かって途轍もない速さで押し開かれたために、それに女は部屋の反対側にまで弾き飛ばされてしまう。
そこから現れたのは一人の男だ。
女にはその男に見覚えがある。
牛柄の服の若い外国人、自分を買おうとしていた伯爵なる男といたのを覚えていた。
「随分とよォ~、おっかねえ面になったな、おい」
男の顔には恐怖があった。
汗をびしょびしょにかいている。アドレナリンだとかの匂いも嗅ぎ取れた。
「イイ女だと思ったんだが、キャスターの宝具の効果ってのはそこまでキくのか。麻薬でハイになってたウンガロの方がまだマシかもなぁ~」
ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
慎重に、しかし怖れを踏み越えるように堂々と。
勇ましい。
とても……おいしそうだ。
「ぅ、うゥ、WRYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」
男が二歩目を踏み出したところで女も跳んだ。
男に向かってではなく、部屋の壁へ。
そのまま壁を蹴って三角跳び、男の背後に向かう。
狙うは頸動脈。
星の形の奇妙な痣がある首筋へと長く伸びた犬歯を突き立て血を啜るのだ。
歯が、触れた。
そのまま顎を閉じ、肉を食い破ろうとする。
だがそれができない。
今度は何かを命じられたわけではない。
なのに牙を突き立てることが……それだけでない、体が全く動かせない。
「汗ってよォ~、何でかくもんなのか知ってるよな?脂汗ってのはまあ別だが、基本的には体温を下げるために出るもんだ。
オレ、さっきまで汗だくだったろ?でも今は乾いてる。蒸発したんだ。熱を奪って、な」
冷たい。
男の首筋に触れている歯を通じて、顎が、首が、全身が冷え切って動かない。
凍って、固まってしまっている。
「まだ慣れねえからロッズが体温を食うのも併せてようやく、ってところだが。
それでも顎関節だけなら触れた一瞬で、全身だって10秒ありゃあ氷像にしてやる」
凍結して動きを止めた女から一歩距離をとると同時に再び扉が開いた。
「キャスター。お前、結局出てきたのか」
「マスターの勇姿はこの眼で見なければネ。いやあ、素晴らしいよ、リキエル。
吸血鬼の父を持ち、殺されたはずなのに今そうして歩いている……そんな女とは比べ物にならない才覚。吸血鬼としては上の中といったところかな。さあ、もっとらしくなってくれたまえヨ」
そう言いながらキャスターは一本の身の丈ほどに長い杭を差し出す。
リキエルはそれを受け取ると、身動きの取れない女の腹部へと突き立てる。
凍った肉を抉る鈍い音と、えずくような断末魔。
腹部から胸部へ杭を進ませ、その先端が心臓を抉ると女の体は灰へと還って消える。
亡骸はなく、残ったのは杭についた真っ赤な血が数滴だけ。
リキエルはそれをフォークについた上等なステーキのソースを口にするように舐めとる。
「嗚呼、なんたることを。怪物に堕したとはいえ麗しき乙女を串刺しにしてその血を啜るなんて!
吸血鬼(バケモノ)め!父に劣らぬ稀有な怪物め!フフフ、父も煉獄で笑っているだろうサ」
楽しそうな笑みを口の端に浮かべながらキャスターは己がマスターをそう評する。
そして喉を鳴らして血を飲み干すリキエルを確かめると、ペンを取り出し一筆したためる。
するとリキエルの口から覗く犬歯が伸び、より吸血鬼らしさを増していく。
「KUAAAA……」
「上々、上々。そろそろ体を霧にできるようになるかナ?ネズミやコウモリを使い魔として使役できるようになったら敵探しを手伝ってくれたまえヨ」
キャスターの言葉に反応して体の調子を確かめるように動かす。
霧にするというのは感覚がつかめずできるのかどうか分からなかったが、スカイハイに意識を巡らせるようにすると、部屋の端から這い出たネズミがリキエルの足元集まってきた。
「使い魔の使役はできそうだネ。死の病、ペストを運ぶネズミは死の象徴とされ、吸血鬼の僕として有名だ。疫病が蔓延するように増えるのも早い。
私も使えるが、ロッズを扱う君の方が恐らくうまく扱えるだろう。よろしく頼むヨ」
リキエルが指揮をするように腕を振るうとネズミは散っていく。
着実に怪物性を増していく姿はキャスターにとってこの上なく好ましい題材として映った。
「本当に面白いヨ、君と君の父親にまつわる物語は……
10万年以上生きた吸血種の作った宝具によって吸血鬼となった男が、天国を目指して神父と友になり、その目的のために君を含めて多くの子をこの世に放った、なんて!
カイン以前の吸血種!?吸血鬼が天国を目指す!?神父と友情を育む!?人と子をなす!?禁忌のオンパレードだ、聖堂教会の連中が知ったら怒り狂うこと間違いないネ!
私の生きた時代でそんな本を書いたら発禁になるかもしれないヨ。神がいて物語を紡いでいるのならこれほど奇妙な物語もそうあるまい。
いやあ、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだネ、はは!カーミラを読んで以来の感動だヨ」
名作を読んで感動した。
名優に実際にあえて興奮している。
キャスターがリキエルに向ける関心はそういうものに近い。
そうなった彼がどうするかは生前から決まっている。
ヴラド三世、ヴァンベリ教授という人物をもとにした、ある種の二次創作をしたように、この地でもまた物語を書くのだ。
「オレたちの物語はアンタの書いたドラキュラより奇妙かい、ストーカー先生よ?」
「比較することに意味はないヨ。ワラキア公の伝説が奇譚として語られるように、君たちブランドーの血族の物語もまた数奇な運命に彩られている。
今もまた、だ。吸血鬼が聖杯を目指すのだヨ?これを奇妙と言わずに何を奇妙というのか!読者としても作者としても興味に耐えないネ」
「奇妙、ねぇ……」
歴史上でも指折りの怪奇譚を書いた男にこうまで言わせる星の巡りに誇らしいような嫌気がさすような微妙な感慨。
(独特の価値観というか、文豪ってのは変人ばかりというか。ウンガロのスタンドと突き合せたら面白いかもなぁ)
時代というだけでは括れない明らかな差異……プッチ神父とはまた違う偉人の考えと言葉に興味をそそられ、ふと語り合ってみたくなる。
「なあ、ストーカー先生よ。この世で一番強いものってのは何だと思う?あんたは吸血鬼って答えるのかな?」
「いいや。ドラキュラという怪物はヘルシングという英雄に敗れるものサ。吸血鬼はとても力が強いが、同時にとても弱いからネ。
作家の端くれとして、サーヴァントの端くれとして答えるならこの世で最も強いのは神々でも怪物でもなく英雄だと答えるヨ」
「ほお。つまり吸血鬼に堕してるオレやあんたはサーヴァントには絶対に勝てないってことかよ」
ストーカーの答えに少しの皮肉と疑問を込めてリキエルは問うた。
対してストーカーは少し自慢げに懐から銃と杭を掲げて見せる。
「私は吸血鬼であると同時に吸血鬼ハンターという英雄でもあるのサ」
「ズルいなそれ」
「設定を盛るのは作者様の特権と言っても過言ではないからネ。それはそうとマスター、君は何が一番強いと思うんだい?」
アーサー王とアレキサンダー大王はどっちが強いと思う?
そんな子供の話題のような話に楽しそうにストーカーは応じ、リキエルにも問い返す。
その問いに対する答えをリキエルはとうに決めている。
「キャスター、君は引力を信じるか?人と人の間には引力がある、ということを」
突如として口調が変わる。
淡々とした、おそらくは誰かの言葉と口調をそのまま真似た問いを投げかける。
「フム。万有引力というやつか?物理学は専門じゃないんだが」
「そう、引力だ。あらゆる怪物を切り伏せる剣でもない。どんな攻撃も受け付けない鎧でもない。
神から不死を奪う毒でもない。それらすべてを掌で転がす神算鬼謀でもない。
人と人が引き合う引力……すなわち『運命』。それこそがこの世で最も強い力だとオレは思う」
引力。
プッチ神父に教えられた……そしてプッチ神父もまたディオ・ブランドーから教えられた力だ。
それをリキエルは最も強大な力だと悟ったか、あるいは信仰していた。
「万有引力といったな、キャスター。そうだ、星と星もまた引き合う。
きっとオレに宿る星が引き寄せられたんだ、この聖杯戦争という星座(しんわ)の一節になるために。白紙の原稿に物語が紡がれるように、あんたとおれの名が刻まれるのさ」
キャスターの召喚に用いられた無記名の霊基。
ジョースターから始まった、星の紡ぐキャスター曰く奇妙な物語の続きを紡ぐように、そこには作者(ストーカー)の名が刻まれた。
「オレの父とジョースターの血族は出会うべくして出会った。プッチ神父ともそうだ。そしてオレたち、ヴェルサスにウンガロが神父のもとに導かれたのもそう。
神父の弟が進むのも、空条徐倫がオレを降していくのも全ては偶然という名の運命だ。
そして、今もまた。オレがこうして聖杯戦争に参加しているのも、君をパートナーにしていることも全ては『引力』のなせる奇跡」
宗教家の説法のように静謐で情熱的な論説。
たった一人の聴衆、ストーカーは
「似合ってないヨ、その口調」
リキエルの答えに対するものではなく、その口調に対して素っ気なく反応を返した。
その指摘に、自覚はあったのか気まずそうにリキエルは視線を逸らす。
「やっぱダメか。神父を真似てみたんだが」
「仕事柄、キャラ設定にはうるさくてネ。君は君らしい方がいい」
「まあそれは置いといて……なるようにしかならない。それがオレのスタンスだということは理解しておいてくれ。
聖杯を欲するならば汝その力でもって証を立てよ、だったか。最も強い『力』とは『運命』だ。
ならばオレが何をしようと優勝者は変わらない。オレがするべきことは聖杯を手にすることなのか?誰かが聖杯を手にする助けになるべきなのか?
あんたの言う通り、オレはオレらしく振る舞い、その結末が敗北だろうと勝利だろうと甘んじて受け入れよう」
リキエルはすでに満ち足りた最期を一度迎えている。
信じるものを得て、今怪物としてここにいるリキエルに願いはない
「本当にそうかナ?」
とはストーカーは思わない。
「自らの意思で歩むのと、ただ流されるままに進むのは違うヨ。
抗えないのが君の言う運命だとしても、それでも運命の前に抗うか抗わないかという選択はできる。
……聖杯を手にするのが君でないとしても、それは君が願いを持たない理由にはならないナ。君の願いは何だ?君は何のために聖杯へと歩みを進める?」
ストーカーがリキエルという怪物(キャラクター)に肉をつける。
そのための問いに、絞り出すように小さく、祈るように真摯にリキエルは答えを口にした。
「願わくば。オレもディオと神父が目指すという天国へ」
「グッド。願いがあるなら君はこの聖杯戦争の登場人物になる権利がある。
このブラム・ストーカーが新たに書く作品の第一の読者兼登場人物として君を正式に認めるヨ。いい物語を期待している、そして期待してくれマスター」
頁は捲られた。
文も書かれた。
物語が始まる。
【クラス】
キャスター
【真名】
ブラム・ストーカー@19世紀アイルランド
【パラメーター】
筋力C 耐久E 敏捷B+ 魔力D 幸運A 宝具A+
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
陣地作成:C-
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
彼が作るのは基本的に工房ではなく、物語を紡ぐ“書斎”である。
ドラキュラ邸や串刺しの陣の二次創作をすることもあるが、その場合ランクは低下する。
道具作成:C
魔力を帯びた道具を作成する。
宝具にまでなった人物像を歪める小説を執筆するほか、吸血鬼ハンターの扱う白木の杭や銀の弾丸などを魔力消費で生み出す。
【保有スキル】
無辜の怪物:A
吸血鬼に血を吸われたものは吸血鬼となる。つまり吸血鬼の手によって吸血鬼は生み出されるというのが大衆の認識である。
ならばもっとも有名な吸血鬼ドラキュラの生みの親の正体もまた、吸血鬼であって然るべきであろう。
……ワラキア公ヴラド三世と同名同質のスキル。
能力・姿が変貌し、吸血鬼となっている。
血を啜り、傷を再生し、優れた身体能力を誇り、コウモリを使役し、ネズミやコウモリや狼へと姿を変え、霧に転じ、目の合ったものを魅了する強大な化け物。
そして陽光に焼かれ、祝福された武器に拒絶され、流水を渡ること叶わず、閉ざされた地に許可なく入れない弱小な存在。
怪物理解:A+
吸血鬼に対する深い造詣。
吸血鬼に関連する宝具やスキルを目にした場合極めて高い確率で真名を看破する。
また現界にあたって聖杯から剪定事象であろうと異聞帯であろうと幻霊であろうとに限らずあらゆる吸血鬼の知識を獲得している。これにより彼はディオ・ブランド―にまつわる物語も認識している。
戦闘続行:D++
吸血鬼としての頑健な肉体と、小説家としての不屈の精神。
瀕死の傷でも長時間の戦闘を可能とする。
自らの望む作品を書き上げることに関してはプラス補正が発生し、病の床だろうと重体だろうと何としても脱稿する。
高速詠唱:E
魔術詠唱を早める技術。
彼の場合、魔術ではなく原稿の進みに多少の恩恵があるようだ。
ドラキュラ執筆に一年半を要した彼は速筆ではないが、それでも題材の決定は素早い。
ヴラド三世はドラキュラである、と即座に決めて書き始めたように、かの者は吸血鬼であるというプロットだけなら即座に書き上げるだろう。
敏捷のプラス補正はこのスキルの恩恵であり、執筆時に発生する。
【宝具】
『此より始まるは鮮血の伝承(レジェンド・オブ・ドラキュリア)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:666
偉大なる武人にして信徒であるワラキア公ヴラド三世を無辜の怪物に貶めた怪作「吸血鬼ドラキュラ」の生原稿。
舞台化、映画化、二次創作やリメイクに富んだドラキュラを、ヴラド三世以外の別の人物をモチーフにしてストーカー自身が改めて創作する。
そうすることでヴラド以外の人物にドラキュラにまつわるスキル:無辜の怪物を付与し、その者を新たな吸血鬼へと変える宝具。
当然モチーフにするだけの吸血鬼らしさは必要だが、「母乳を口にした」者はすなわち吸血鬼であるため全く無垢な人間というのは少ない。
さらに「死んだはずだが動いている者」であるサーヴァントはより吸血鬼らしい存在と言える。
吸血鬼らしさに応じてスキル:無辜の怪物のランクは向上し、より吸血鬼に近づく。
低ランクでは吸血衝動の他に肉体が頑健になる程度の変化だが、高ランクになれば使い魔の使役や肉体を霧に変えるなど強力な特性を獲得する。
個体によっては二十七祖や真祖に近い特異な能力を獲得することもあるかもしれない。
なお彼の書く吸血鬼はあくまでヴァン・ヘルシングに討たれる反英雄であるため、吸血鬼特有の弱点を克服することは決してできない。
日の下を歩くこと能わず、流水を渡ることはできず、許可なく閉ざされた空間に踏み入ること叶わず、ニンニクを嫌悪し、信心深い者であれば十字架に縛られ、心臓に杭を刺されれば灰へと還る。
どんなに弱小な存在も不滅の吸血鬼へ昇華させる宝具であり、どんなに強大な存在も必滅の吸血鬼に貶める宝具である。
死の概念を持たない獣であってもこの宝具の影響下では、強靭なれど脆弱な吸血鬼でしかなくなるだろう。
またあくまで無辜の怪物を付与する宝具であるため、すでに別種の無辜の怪物を持つサーヴァントには効き目がない。読者の呪いに冒されたハンス・C・アンデルセンやオペラ座の怪人、メフィストフェレスなどの別種の怪物には効果を発揮しないが、ヴラド三世やカーミラなど吸血鬼としての無辜の怪物を持つものならばランクを向上させる。、
『血濡れ鬼殺(カズィクル・ベイ)』
ランク:D++ 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:666
吸血鬼ドラキュラの生みの親であるストーカーは吸血鬼に誰よりも通じている。
同時に吸血鬼ハンターヴァン・ヘルシングの生みの親でもあるストーカーは吸血鬼の殺し方にも通じているのだ。
ドラキュラの原典であるヴラド三世の串刺しと、ドラキュラを殺す白木の杭による刺突の再現。
真名解放により大地から白木の杭を突き出し、敵を串刺しにする。杭は心臓を追尾する。
吸血鬼に対しては特攻、かつ即死判定の攻撃である。
心臓に当たった場合には二重に即死判定が行われる。
即死判定に成功した場合、死体は即座に灰へと還る。
当然だが杭による刺突は吸血鬼でなくとも十分なダメージであり、心臓に刺されば死ぬ確率が極めて高い。
【weapon】
白木の杭や銀の弾丸。
敵を吸血鬼に仕立て上げて、吸血鬼特攻の武装で攻撃するタチの悪い戦術だヨ。
【人物背景】
本名、エイブラハム・ストーカー。イギリス時代アイルランド人の小説家で、怪奇小説の古典『吸血鬼ドラキュラ』の作者として知られる。
ポリドリ作のヴァンパイア、シェリダン作のカーミラなどドラキュラ以前にも吸血鬼を扱った作品は在れど、世に吸血鬼の存在を知らしめ、もっとも有名な怪物の一角にまで押し上げたのはブラム・ストーカーの功績であろう。
大学時代から観劇の趣味を持ち、名優ヘンリー・アーヴィングと知り合ってからは特に創作意欲を刺激されたらしく、政庁勤めの傍らで劇評や小説の連載に精を出す。
アーヴィングを通じてアルミニウス・ヴァンベリという人物に知り合う。
彼はハンガリーのブダペスト大学の東洋言語学教授で、16ヶ国語を話し、20ヶ国語が読めるという碩学であり、彼に聞かされたトランシルヴァニアの吸血鬼伝説がストーカーを『ドラキュラ』執筆へと駆り立てた。
以降一年半を調査と執筆に費やし、敬愛する英雄ドラクルことヴラド三世モチーフのドラキュラ、物語のヒントをくれた碩学ヴァンべリ教授をモデルにしたヴァン・ヘルシングという二人の主人公を有する怪奇小説「吸血鬼ドラキュラ」は世に放たれた。
ストーカーはこの後も何本かの小説を発表しつつ1912年に64歳で亡くなったが、『ドラキュラ』があまりに有名すぎるためか他の作品はほぼ完全に忘れ去られてしまっている。
悪く言えば一発屋だが、ドラキュラの発表以降その影響を受けていない吸血鬼創作は皆無といえる現状、吸血鬼という一面に限れば「あらゆるジャンルはすでに彼が書いている」とまでいわれるウィリアム・シェイクスピアに匹敵する影響力と言えよう。
ちなみに彼のドラキュラが異常とも言える知名度を得た背景に、吸血鬼を世に浸透させることでその神秘を貶め、死徒の弱体化を企てた聖堂教会なる組織の影響があったとも……?
余談であるが、彼なくしてはディオ・ブランドーにアルクェイド・ブリュンスタッド、ひいてはジョジョの奇妙な冒険や月姫、もしかするとTYPE MOONそのものも生まれなかったかもしれない。
【サーヴァントの願い】
面白い作品を知り、面白い作品を書く。
特にいろいろな吸血鬼のことを知れれば最高だネ。
【特徴】
立派な顎髭を蓄えた恰幅のいい男性。
俳優として舞台に立つこともあったため、そこそこに体格がいい。
舞台でのドラキュラ伯爵の衣装(いわゆる貴族風の黒いローブ)を身に着けているが、腰に白木の杭を打つための槌や、銀の弾丸の籠められた回転銃を下げている。
【マスター】
リキエル@ジョジョの奇妙な冒険
【マスターとしての願い】
聖杯を手にする運命のある者へ聖杯を授ける。
それが自分であるのなら、もしも許されるなら自身もDIOや神父の目指す天国へとたどり着く。
【weapon】
後述の能力に依存する。
【能力・技能】
いわゆる超能力者、スタンド使い。ステータスは【破壊力:なし / スピード:なし / 射程距離:肉眼で届く範囲 / 持続力:C / 精密動作性:なし / 成長性:なし】
スタンドのエネルギーを魔力の代替として供給する。持続力はCなので並の魔術師と同等かそれ以下の供給量。
リキエルの手首に装着される両生類の様な姿の小さなスタンドで、能力はロッズ(スカイフィッシュ)を操ること。
このロッズは視認が不可能な程のスピードと障害物にぶつからない正確さで飛行し、動物の体温を奪って活動している。
ロッズを操って肉体の特定の部位から体温を奪うことが主な戦闘方法になる。
体温を奪うというのはそんなに恐ろしくなさそうに見えるが、熱を奪う部位によって若々しい健康体の少年を血尿にする、対象の体を自由に動かす、凍傷で体を腐らせるなど、相手をさまざまな病気にする事ができる。
さらに脳幹の体温を奪えば相手を即死させる事も可能。
また、ロッズはスタンドではなく生物なので倒されたところで本体にはなんの影響も無い。さらにこのロッズはいたる所に生息しているようで、次から次へと繰り出すことが出来る。
ストーカーの宝具によって獲得したスキル。
吸血鬼としての適性が極めて高いリキエルは高ランクの無辜の怪物スキルを獲得した。
リキエル自身はそうと知らないが、父ディオ・ブランド―とほぼ同じことができるようになっている。
日光や波紋に弱い、そしてドラキュラ同様胸に杭を刺されれば死ぬなどの弱点も再現されている。
【人物背景】
かつて天国を目指した吸血鬼、ディオ・ブランド―が計画の駒として産ませた男。
母は吸血鬼ディオに血を自ら捧げて死に、父ディオ自身は星の痣の一族に野望を阻止され命を落とした。
そうして孤児となったリキエルはひっそりとアメリカで育つこととなる。
パニック障害を抱え、自分の存在意義も生きる自信も見いだせずに過ごすが、ディオの親友プッチ神父と出会うことで光を見出した。
天国へ行くという父と神父の願いに影響され精神的に大きく成長、父を打倒した星の痣の一族がプッチの邪魔をしないよう排除に動く。
奮戦及ばず敵の覚悟に敗北するが、その敗北もまた神父にとって意味のある偶然だったと確信しながら最期を迎えた。
その直後の参戦である。
最終更新:2018年01月19日 23:08