魔弾 - (2009/05/06 (水) 08:15:17) の1つ前との変更点
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魔弾 ◆xsR5u1lNRk氏
しづかはただ闇雲に走っていた。
自分が何処へ向かっているか、そんなことは今や彼女に関係なし……!
ただ離れたい……ただ逃げたいっ……!!
あの恐ろしい男からっ……!!!
(冗談じゃないっ……! あんな―――!!)
思い出した途端、震え上がる全身……! 駆け巡る悪寒っ……!!
和也がしづかに抱かせた恐怖は、尋常ならざるものだった。
躊躇無く人を殺せる度胸、それを快感と捉える異常な性癖っ……!!
それを一目でしづかに理解させた、あの狂気に満ちた瞳っ……!!
あれはもはや人ではないっ……!
悪鬼っ……! 修羅か羅刹かの類っ……!!
(……何なんだよ、ここは……!!)
それは今更な疑問、されど抱かずにはいられぬ必然……!
しづかも親父狩りを行っていた身、同年代の者達に比べれば修羅場は潜っている。
しかし……ここに集うは、彼女が狩ってきた親父達を遥かに超えた人物ばかりっ……!!
和也だけではない。
今思わば、秀峰と勝弘の二人は実の親子でありながらもいがみ合い、そして殺し合った。
しづかは自身が不良であるという自覚がある、決して親子仲も良いとは言い切れない。
だが……! そんな彼女からしてもアレはあまりに歪っ……!!
勝弘に関しては、どこか心を許せられる部分があっただけに見逃していたが……そうだ……!!
冷静に考えてみれば分かるっ……! 異常すぎるっ……!!
彼女が出会ってきた全ての者達は、俗に言う異端者ばかりっ……!!
(……犯罪者の巣窟にでも放り込まれちまったって訳かい……死んでもいい連中ばかりのっ……!!)
されど、取り乱さず……!
しづかは焦りながらも、この状況を把握……そして悟る……!
自分は落とされたのだとっ……!
死んでもいい、社会的価値の無い存在……! 犯罪者としてっ……!!
このギャンブルは、そんな連中を扱って楽しむデスゲームっ……!!
そうでなければ説明がつかない……!! これ程までに、異常な存在ばかりが集まるその理由っ……!!
(くそっ……! そんなの……他にもいるだろっ……腐るほどっ……! 死んでいい屑なんかっ……!!)
死すべき者など他に幾らでもいる……!
込み上げてくる怒り……! 己を選び出した主催者達への、圧倒的憤怒っ……!!
だがそれは、同時に理不尽っ……!!
金目当てで参加した己を棚に上げる……愚考そのものっ……!
「そこの姉さん、止まりな」
「!?」
そんな彼女を待ち受けるは、白いスーツを着こなした一人の男。
油断ならぬ、鋭い目つきで睨みつけてくるっ……!
この出会いは神からの救いか……あるいは、天からの罰かっ……!!
□
(やっぱり、こういうことだったか)
板倉はしづかに声をかけ、その様相を注意深く観察する。
荒い息、額に浮かぶ汗、ところどころが乱れている衣服。
次々に見つかる、スコープからではいまいち分からなかった細かい点……予感は的中……!
目の前の少女は何者かに襲撃され、ここまで逃げてきた……己がその相手を既に撒いたとも知らずっ……!!
つまるところ、彼女は支配されている……! 死の恐怖にっ……!!
ならば絶好のカモ……!
これ程やりやすい相手は他にいないっ……!!
「……あんた、私に何の用があるわけ?」
「そう警戒するな……その様子じゃあんた、誰かに追われてるんだろ?
大丈夫か? もう後ろには誰もいないから安心しな」
「え……」
板倉が取った手段……それはずばり擁護っ……!
しづかの恐怖と不安を取り除く、優しい囁きっ……!!
板倉の狙いは、彼女を安心させる事……! 己を安全だと思い込ませる事っ……!!
怯える孤独者が欲するモノ……! それは救いの手……!!
垂れ下がる蜘蛛の糸をつかまずにはいられないのだっ……!!
「……あ……本当、だ……」
「な、言っただろう?」
獲物は餌に食いついた……!
□
「……」
一条は船井の荷物を己のデイパックに移した後……気付く。
己の身に、ある問題が起きていた事に。
(血か……これはどうにかしておきたいな)
それは、黒いスーツの胸元に咲く赤の色。
自身の衣服に付着した血液……船井を殺した際に浴びてしまった、その返り血。
これは早急に対処せねば危険……人と接触する際、自身が警戒されるのは確実……!
すぐさま、一条は上着を脱ごうとボタンに手をかける……がっ……!!
(クソっ……! シャツにまで跳んでいるか……!!)
その血は始末が悪い事に、下のシャツにまで付着……!
上着だけなら脱ぎ捨てられたが、こうなると話は別っ……! 血を隠す手段が無い……!!
ここで、シャツを脱ぎ捨て上半身裸で歩くなどは論外っ……!!
防護の面でも勿論危険だが、それ以上に見た目的に怪しすぎる。
上半身裸の男が近づいてきて、それで警戒心を与えるなというのは無茶な注文っ……!!
ならば打つ手は一つ……衣類の入手っ……!
この返り血が付着した衣服をどうにかせねば、今後の活動に支障があるっ……!!
(ここからなら……よし、近くにホテルがある。
武器の類は兎も角、代えの衣服ぐらいはある筈だ)
一条はすぐ隣のエリアにホテルが一つあることを確認。
このゲームの性質上、明確に武器と断言できる類のものはまず見つけられないだろう。
だが、衣服となれば話は別っ……!
置いてあっても何ら不思議は無いっ……!!
(それに……これは返って好都合だっ……!!)
そして怪我の功名っ……!!
目指すホテルは大施設……人は自然と集まってくる……!
カイジ達が目指している可能性も、低くはないっ……!!
血に濡れた復讐人、その顔には笑みっ……!!
□
(……助かった……)
しづかは和也から逃げ切れた事を知り、途端に安堵の溜息をつく。
全身を縛り上げていた、恐怖という名の蛇はようやく離れた……!
突きつけられていた死神の鎌が、喉元を離れてくれたっ……!!
「……ありがとよ、兄さん」
「気にするな、こんな状況じゃ焦っちまうのも無理ないさ」
同時に、板倉に抱いていた警戒心が一気に解ける。
彼が己の身を気遣ってくれたことに、しづかは安堵……!
出会えないと思われていた、まともと言える参加者っ……!!
(……そうだよね……私の考えすぎだ。
確かにおっさん達はどこか危なかったけど、まともな人達だってそりゃいるさ……)
その顔には、僅かな笑み……!
そして板倉……それを見逃さず畳み掛けるっ……!!
「さてと……姉さん、悪いんだが念のため確認を取らせてくれ。
あんたは殺し合いに乗っちゃいないんだな?」
「当たり前さ……あんな連中とやりあうなんか、ゴメンだよ……!」
「成る程な……」
板倉はしづかの返答を聞くと、ちらりと横目でホテルを見やる。
この時、佐原に動き無し……!
周辺に怪しい人物はいないっ……!!
彼女が囮であるという、万が一の可能性もこれで潰えたっ……!!
「……どうしたのさ、兄さん?」
「ああ、ホテルに仲間を一人待機させてるんだ。
それでライフルを使って見張りを頼んでいたんだが、動きが無い所を見ると安全らしいな」
ここで板倉は、しづかに佐原の事をばらす。
自身の策を不用意に話すというのは、無防備に思われる……がっ……!
実際はその逆……! このまま何の説明も無しに、彼女を佐原に紹介した場合……それが問題なのだ……!!
自分達がこっそりと見張っていたという事実……それを知った時、彼女は確実に不信感を抱く……!
それでは折角の仕込が台無しっ……!!
だが、逆に今明かせば話は別…!
「へぇ、よく考えてるもんだねぇ……」
「それほどの事でも無いさ。
いつ誰に襲われてもおかしくないからな」
しづかはその手腕に感心……! 板倉を高評価っ……!!
彼女はもはや、板倉を完全に信じ込んでいる。
まさに思い通り……! 都合よく物事が運んでいる事に、板倉は心の中でガッツポーズっ……!!
ここまでくれば後一押し……! 最後の決定打を打つっ……!!
「とにかく、あんたがゲームに乗ってなくて助かったな。
俺達はこのゲームの転覆を考えてる……今はその仲間を集めているんだ」
□
「板倉さん、何話してんだ……?」
佐原はスコープ越しに二人のやり取りを見る。
声は当然ながら聞こえぬ為、何を話しているのかまるで見当が付かない。
しかし見たところ、言い争っている様子はない。
それどころか、少女の顔には笑みすらも浮かんでいる……友好的な接触なのには違いない。
正直最初は、この引き金を引くのではないかと冷や冷やしていた。
安心し、溜息をつく……
がっ……!!
「ん……アレは……!?」
佐原が目撃したもの……! それは第二の参加者っ……!!
板倉達から離れた位置に一人、スーツ姿の男……!
佐原は男を注意深く観察……! その直後……!! 彼は見つけてしまうっ……!!
「血っ!?」
佐原に衝撃走るっ……!!
男のスーツには、まだ真新しい血っ……!!
見たところ、男に外傷らしきものは無し……! つまりこれは、男のものではない何者かの血っ……!!
返り血っ……!!
「ま、まさかっ……!?」
状況は一転っ……!
途端にこみ上げる、怒涛の焦りっ……!!
銃を握る手には冷や汗……! 震えっ……!!
このままでは板倉達が危険……! 救う方法は一つっ……!!
「っ……!!」
佐原は引き金を引くっ……! 同時に、発射の反動で体は仰け反る……!!
弾丸は窓ガラスを貫通っ……! 板倉達を守るべくっ……!!
だが……佐原は行動を行うのには、余りにも不向きすぎていた。
彼は板倉とは違い、あくまで一般人……! 銃自体を扱った経験など皆無っ……!!
発射の反動を抑える事も出来ず、ましてや高度な技術を誇る狙撃っ……!!
その上に、予想外の事態に対する極度の焦りっ……!!
これだけの悪条件が揃い、成功するわけなどないっ……!!
摩り替わる……救いの手が、地獄からの手招きにっ……!!
□
「まだ具体的な方法とかは考えてないが、とにかく人手は多いほうがいい。
よかったら協力してもらえないか?」
板倉、ここでトドメにかかる……!
主催者の打倒は、優勝狙いの人物以外ならば誰しもが確実に考える……!
そして、これだけ相手を柔和させての勧誘……効果が無い訳が無いっ……!!
「……ああ、そうだね。
私も、このゲームを開いた連中が気に入らなくなってたところさ……!
あんた達と一緒に行動させてもらうよ」
(よし……!)
しづか、陥落っ……!
彼女の殺し合いに対する嫌悪感と、板倉の甘い言葉……その両者が見事化学反応っ……!!
板倉は見事、しづかを引き込むことに成功っ……!!
この収穫は大きい……!!
(名簿を見た限りじゃ、女はこいつを含めて三人……こいつはいいぞ)
女性相手となると、態度が甘くなる男は山ほどいる。
彼女が側にいてくれれば、新たな参加者の引き込み……その難度はかなり下げられるっ……!!
また、その体力は明らかに男性に劣る……! 故に彼女は狙われやすいっ……!!
ゲームに乗った連中の目を反らす囮としては、これ程都合のいい奴はいないっ……!!
女性の数が極端に少ないこのゲーム……彼女はキーファクターっ……!!
「よし、それじゃあ俺の仲間と合流するぞ。
付いて来てくれ」
用が片付いた今、わざわざ外にいるメリットは無い。
ならば、残る情報の交換や支給品の確認といった作業は、ホテルの中で行う事にするのが得策。
板倉はしづかに背を向け、足早に佐原の元へ戻ろうとする。
だがっ……この直後、それは起きるっ……!!
バァンッ!!
「……えっ……?」
轟音と共に、しづかの首元を何かが掠めた。
それは板倉の耳にも確かに届き、彼はとっさに振り返った。
すると……彼女の首元には、赤い一つの筋が出来上がっていた。
それは傷っ……!
彼女の首元を、高速で掠めた何かが作り上げた一筋の切り傷っ……!!
しづかは何が起きたのか分からず、呆然としたまま自身の首元に手を伸ばす。
ぬるりと、気持ちの悪い感触がした。
「これって……血っ……!?」
感触の正体は、流れ出ている血っ……!!
その事実を認識した途端……! しづかの全身を再び恐怖が支配っ……!!
「クソッ……すまねぇ姉さん、ちょっと堪えてくれ!!」
「!?」
一秒にも満たない一瞬、考慮した後……! 板倉、動くっ……!!
とっさに飛び出し、しづかの口を手で塞ぎ……ダッシュっ……!!
選択は説得……! 彼女という存在は、ここで捨てるには惜しい駒っ……!!
「っ……よし、一先ずはここなら大丈夫だ。
悪いな、手荒な真似をしてしまって……落ち着いたか?」
「……あ、ああ……」
「どうやら、俺は奴に裏切られたらしいな……まったく、最悪だ」
数秒後、板倉は佐原から見て死角に当たる一本の木の陰へと到着。
しづかに腰を下ろさせ、そしてすぐさま弁解……!
佐原と絡んでの狙撃ではないと、懸命の説得っ……!!
この状況で最も避けなければならない最悪の事態を回避する為、必死っ……!!
「……すまない、あいつを信じきった俺のミスだ」
「あ……いや、あれは仕方ないさ。
確かに、最悪なのには違いないけどね」
どうにか成功……!
しづかを助けたという行動、必死の弁解……! この両者が功を奏したっ……!!
板倉はホッと胸をなでおろす。
そして、彼女の傷口を放置していた事に気付きそれを見る。
幸いな事に傷はそれほど酷いものではない……簡単な止血で事足りる。
早速、上着を脱ぎシャツの袖口を引き裂こうとする……
がっ……
そのとき、二人に声をかける人物ありっ……!
「大丈夫ですか?」
「!!」
「先ほど銃声がしましたが、どうやら彼女が撃たれたようですね?」
それは他でもない、佐原誤砲の元凶……! 一条その人であるっ……!!
そのスーツには、明らかな返り血……! 当然、板倉は一条を警戒っ……!!
「……ああ、だが首元をちょっと掠めた程度だ。
こりゃ見た目ほどは酷い傷じゃない……あんた、何か止血に使えるものは持ってないか?」
がっ……その警戒、すぐに停止っ……!!
そう判断した理由は簡単……! 一条が声をかけたからっ……!!
自分達を殺す気ならば、声をかける必要性がない……! 少なくとも今の時点では殺意は無いっ……!!
ならば、ここは素直に応対するのが得策……!
「ええ、少し待っていてください」
一条はデイパックを肩から降ろし、その中に手を突っ込む。
その時、板倉はそのデイパックに目を奪われるっ……!!
(こいつは……!!)
外見からは気付かなかった……! 一条のデイパック、その内部搭載物の量っ……!!
見えたのは一瞬だが、その一瞬だけでも十分に分かるっ……!!
自分達のものに比べ、それは明らかに多量っ……!!
(この兄ちゃん、誰か他の奴の荷物を持ってやがるっ……!!)
板倉は即座に把握……! 一条は誰か他の参加者の荷物を手にしているっ……!!
それが自己防衛の為か、それとも進んで誰かを殺したのか、そこまでの判別はまだ現時点では分からないが……!
スーツに付着した血から判断するに、これは十中八九誰かと争って奪ったものっ……!!
「私の支給品に包帯がありますから、これで止血をしましょう」
「ああ……えっと……」
「そういえば自己紹介がまだでしたね、私は一条です」
「ありがとな、一条さん。
私はしづかって言うんだ」
「俺は板倉だ」
包帯を巻いて止血をしつつ、三者は自己紹介を終える。
そこで板倉、すかさず打って出る……!
彼がどういった人物か、見極めの為に先手を打つっ……!!
「それで一条さん、見たところ服に血がついてるようだが……そいつは自己防衛の結果ってとこか?」
「……どうしてそう思いましたか?」
「あんたがゲームに乗ってるなら、俺達を助けるわけが無いからな」
「ハハッ……ええ、その通りです。
向こうから襲い掛かってきたので、やむを得なく……」
予想通りの返答。
ならばと、板倉は一条に話を持ち掛ける。
「成る程な……だが、乗ってないなら安心した。
よかったら、俺達と行動しないか?」
その理由は、彼の持つ支給品の量、恐らくは1000万以上あるであろう現金っ……!!
この魅力的な両者の存在と、それを戦闘で入手した一条自身の戦力っ……!!
彼が殺し合いに乗っていないというのは、佐原に裏切られたばかりなのもあってまだ信用できない。
だが、そのリスクを承知の上で行動を共にする価値は少なからずある……!!
これだけの大物を、序盤である今の内に入手できるチャンスは恐らく他にないっ……!!
利用する価値、大いにありっ……!!
□
(予想通りの反応か……)
一条は板倉としづかににこやかな表情で応対しつつも、心中では冷静に事態を見ていた。
彼はつい数分ほど前に、偶然にもしづかが撃たれた場面を遠目で目撃していた。
銃声がホテルから聞こえてきた事には、焦りを覚えた……だが、彼はこの状況をすぐさま逆利用っ……!
負傷したしづかに自分から近づき、優しく声をかける事により自らが安全であるとアピールしたのだっ……!!
これで返り血の欠点を乗り切るっ……!
ならば後は簡単っ……! 相手に話を合わせ……そして利用するっ……!!
(こちらを信じきっているのならば好都合だ……悪いが、これも復讐の為だ……!)
一条が狙うのは、あくまで復讐の妨げとなる者のみ。
ならば他の者はどうなるか?
見逃す? 否……一条は使える者は全て使う……そういう男っ……!!
故に彼は、害が無いであろう二人に目をつけたっ……!
カイジ達への復讐……その為の駒としてっ………!!
「ええ、こちらもそう言おうとしていたところです」
「そうかい、なら助かるな……よろしくな」
「こちらこそ」
二人は手を握り合う。
だが、その間に友好なんてものは皆無っ……!
これは儀式っ……!
利用する者、される者っ……!!
互いに知られざる、宣戦布告っ……!!
【F-6/ホテル前/夕方】
【板倉】
[状態]:健康
[道具]:毒液入り注射器 ※どのような毒かは不明(本人確認済み)
不明支給品0~2 通常支給品
[所持金]:1000万円
[思考]:仲間を利用して生き残る 宇海零、標を探す 対主催者と合流する
※佐原が自分達を裏切ったと判断しました
※しづかは重要と考えていますが、いざとなれば切り捨てる気でいます
※一条を完全には信用していません、彼を利用する気でいます
【しづか】
[状態]:首元に切り傷(止血済み)
[道具]:不明支給品0~2(確認済み) 通常支給品×2
[所持金]:2000万円
[思考]:板倉と行動を共にする ゲームの主催者に対して激怒
※このゲームに集められたのは、犯罪者ばかりだと認識しています
※板倉と一条を信用しています
※和也に対して恐怖心を抱いています
【一条】
[状態]:健康
[道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ)、改造エアガン、毒付きタバコ(残り19本)、マッチ、スタンガン、包帯
不明支給品0?1(本人確認済み) 支給品一式×4
[所持金]:4000万円
[思考]:カイジ、遠藤、坂崎、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者を殺す
復讐の為に利用できそうな人物は利用する
※板倉としづかは復讐の為に利用できる駒としか見ていません
「あっ……あぁっ……!?」
銃を床に落とし、佐原は床に崩れ落ちる。
―――何故、こんな事になったっ……!!
―――良かれと思ってやったことなのにっ……!!
取り返しの無い失敗っ……!
やってしまったっ……! もっともやってはならないことをっ……!!
銃弾が外れたならまだいい……だが、不幸にも放たれたのは命中弾っ……!!
これではもはや弁解しても無駄っ……!!
「そ、そんな……俺……どうしたらっ……!?」
取り乱す佐原っ……!
しかし、そんな彼に助けを差し伸べる者はいないっ……!!
圧倒的絶望っ……!
頭の中が白く染まりあがるっ……!!
全てを多い尽くすかのような白っ……!!
まるで煉獄の光っ……!!
【F-6/ホテル/夕方】
【佐原】
[状態]:重度の錯乱状態 首に注射針の痕
[道具]:レミントンM24(スコープ付き)、弾薬×29 通常支給品
[所持金]:1000万円
[思考]:己のミスに対する深い後悔と絶望
|054:[[十に一つ]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|056:[[焦燥]]|
|054:[[十に一つ]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|056:[[焦燥]]|
|039:[[観察]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:佐原|056:[[焦燥]]|
|039:[[観察]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:板倉|069:[[姫と双子の紳士]]|
|039:[[観察]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:しづか|069:[[姫と双子の紳士]]|
魔弾 ◆xsR5u1lNRk氏
しづかはただ闇雲に走っていた。
自分が何処へ向かっているか、そんなことは今や彼女に関係なし……!
ただ離れたい……ただ逃げたいっ……!!
あの恐ろしい男からっ……!!!
(冗談じゃないっ……! あんな―――!!)
思い出した途端、震え上がる全身……! 駆け巡る悪寒っ……!!
和也がしづかに抱かせた恐怖は、尋常ならざるものだった。
躊躇無く人を殺せる度胸、それを快感と捉える異常な性癖っ……!!
それを一目でしづかに理解させた、あの狂気に満ちた瞳っ……!!
あれはもはや人ではないっ……!
悪鬼っ……! 修羅か羅刹かの類っ……!!
(……何なんだよ、ここは……!!)
それは今更な疑問、されど抱かずにはいられぬ必然……!
しづかも親父狩りを行っていた身、同年代の者達に比べれば修羅場は潜っている。
しかし……ここに集うは、彼女が狩ってきた親父達を遥かに超えた人物ばかりっ……!!
和也だけではない。
今思わば、秀峰と勝弘の二人は実の親子でありながらもいがみ合い、そして殺し合った。
しづかは自身が不良であるという自覚がある、決して親子仲も良いとは言い切れない。
だが……! そんな彼女からしてもアレはあまりに歪っ……!!
勝弘に関しては、どこか心を許せられる部分があっただけに見逃していたが……そうだ……!!
冷静に考えてみれば分かるっ……! 異常すぎるっ……!!
彼女が出会ってきた全ての者達は、俗に言う異端者ばかりっ……!!
(……犯罪者の巣窟にでも放り込まれちまったって訳かい……死んでもいい連中ばかりのっ……!!)
されど、取り乱さず……!
しづかは焦りながらも、この状況を把握……そして悟る……!
自分は落とされたのだとっ……!
死んでもいい、社会的価値の無い存在……! 犯罪者としてっ……!!
このギャンブルは、そんな連中を扱って楽しむデスゲームっ……!!
そうでなければ説明がつかない……!! これ程までに、異常な存在ばかりが集まるその理由っ……!!
(くそっ……! そんなの……他にもいるだろっ……腐るほどっ……! 死んでいい屑なんかっ……!!)
死すべき者など他に幾らでもいる……!
込み上げてくる怒り……! 己を選び出した主催者達への、圧倒的憤怒っ……!!
だがそれは、同時に理不尽っ……!!
金目当てで参加した己を棚に上げる……愚考そのものっ……!
「そこの姉さん、止まりな」
「!?」
そんな彼女を待ち受けるは、白いスーツを着こなした一人の男。
油断ならぬ、鋭い目つきで睨みつけてくるっ……!
この出会いは神からの救いか……あるいは、天からの罰かっ……!!
□
(やっぱり、こういうことだったか)
板倉はしづかに声をかけ、その様相を注意深く観察する。
荒い息、額に浮かぶ汗、ところどころが乱れている衣服。
次々に見つかる、スコープからではいまいち分からなかった細かい点……予感は的中……!
目の前の少女は何者かに襲撃され、ここまで逃げてきた……己がその相手を既に撒いたとも知らずっ……!!
つまるところ、彼女は支配されている……! 死の恐怖にっ……!!
ならば絶好のカモ……!
これ程やりやすい相手は他にいないっ……!!
「……あんた、私に何の用があるわけ?」
「そう警戒するな……その様子じゃあんた、誰かに追われてるんだろ?
大丈夫か? もう後ろには誰もいないから安心しな」
「え……」
板倉が取った手段……それはずばり擁護っ……!
しづかの恐怖と不安を取り除く、優しい囁きっ……!!
板倉の狙いは、彼女を安心させる事……! 己を安全だと思い込ませる事っ……!!
怯える孤独者が欲するモノ……! それは救いの手……!!
垂れ下がる蜘蛛の糸をつかまずにはいられないのだっ……!!
「……あ……本当、だ……」
「な、言っただろう?」
獲物は餌に食いついた……!
□
「……」
一条は船井の荷物を己のデイパックに移した後……気付く。
己の身に、ある問題が起きていた事に。
(血か……これはどうにかしておきたいな)
それは、黒いスーツの胸元に咲く赤の色。
自身の衣服に付着した血液……船井を殺した際に浴びてしまった、その返り血。
これは早急に対処せねば危険……人と接触する際、自身が警戒されるのは確実……!
すぐさま、一条は上着を脱ごうとボタンに手をかける……がっ……!!
(クソっ……! シャツにまで跳んでいるか……!!)
その血は始末が悪い事に、下のシャツにまで付着……!
上着だけなら脱ぎ捨てられたが、こうなると話は別っ……! 血を隠す手段が無い……!!
ここで、シャツを脱ぎ捨て上半身裸で歩くなどは論外っ……!!
防護の面でも勿論危険だが、それ以上に見た目的に怪しすぎる。
上半身裸の男が近づいてきて、それで警戒心を与えるなというのは無茶な注文っ……!!
ならば打つ手は一つ……衣類の入手っ……!
この返り血が付着した衣服をどうにかせねば、今後の活動に支障があるっ……!!
(ここからなら……よし、近くにホテルがある。
武器の類は兎も角、代えの衣服ぐらいはある筈だ)
一条はすぐ隣のエリアにホテルが一つあることを確認。
このゲームの性質上、明確に武器と断言できる類のものはまず見つけられないだろう。
だが、衣服となれば話は別っ……!
置いてあっても何ら不思議は無いっ……!!
(それに……これは返って好都合だっ……!!)
そして怪我の功名っ……!!
目指すホテルは大施設……人は自然と集まってくる……!
カイジ達が目指している可能性も、低くはないっ……!!
血に濡れた復讐人、その顔には笑みっ……!!
□
(……助かった……)
しづかは和也から逃げ切れた事を知り、途端に安堵の溜息をつく。
全身を縛り上げていた、恐怖という名の蛇はようやく離れた……!
突きつけられていた死神の鎌が、喉元を離れてくれたっ……!!
「……ありがとよ、兄さん」
「気にするな、こんな状況じゃ焦っちまうのも無理ないさ」
同時に、板倉に抱いていた警戒心が一気に解ける。
彼が己の身を気遣ってくれたことに、しづかは安堵……!
出会えないと思われていた、まともと言える参加者っ……!!
(……そうだよね……私の考えすぎだ。
確かにおっさん達はどこか危なかったけど、まともな人達だってそりゃいるさ……)
その顔には、僅かな笑み……!
そして板倉……それを見逃さず畳み掛けるっ……!!
「さてと……姉さん、悪いんだが念のため確認を取らせてくれ。
あんたは殺し合いに乗っちゃいないんだな?」
「当たり前さ……あんな連中とやりあうなんか、ゴメンだよ……!」
「成る程な……」
板倉はしづかの返答を聞くと、ちらりと横目でホテルを見やる。
この時、佐原に動き無し……!
周辺に怪しい人物はいないっ……!!
彼女が囮であるという、万が一の可能性もこれで潰えたっ……!!
「……どうしたのさ、兄さん?」
「ああ、ホテルに仲間を一人待機させてるんだ。
それでライフルを使って見張りを頼んでいたんだが、動きが無い所を見ると安全らしいな」
ここで板倉は、しづかに佐原の事をばらす。
自身の策を不用意に話すというのは、無防備に思われる……がっ……!
実際はその逆……! このまま何の説明も無しに、彼女を佐原に紹介した場合……それが問題なのだ……!!
自分達がこっそりと見張っていたという事実……それを知った時、彼女は確実に不信感を抱く……!
それでは折角の仕込が台無しっ……!!
だが、逆に今明かせば話は別…!
「へぇ、よく考えてるもんだねぇ……」
「それほどの事でも無いさ。
いつ誰に襲われてもおかしくないからな」
しづかはその手腕に感心……! 板倉を高評価っ……!!
彼女はもはや、板倉を完全に信じ込んでいる。
まさに思い通り……! 都合よく物事が運んでいる事に、板倉は心の中でガッツポーズっ……!!
ここまでくれば後一押し……! 最後の決定打を打つっ……!!
「とにかく、あんたがゲームに乗ってなくて助かったな。
俺達はこのゲームの転覆を考えてる……今はその仲間を集めているんだ」
□
「板倉さん、何話してんだ……?」
佐原はスコープ越しに二人のやり取りを見る。
声は当然ながら聞こえぬ為、何を話しているのかまるで見当が付かない。
しかし見たところ、言い争っている様子はない。
それどころか、少女の顔には笑みすらも浮かんでいる……友好的な接触なのには違いない。
正直最初は、この引き金を引くのではないかと冷や冷やしていた。
安心し、溜息をつく……
がっ……!!
「ん……アレは……!?」
佐原が目撃したもの……! それは第二の参加者っ……!!
板倉達から離れた位置に一人、スーツ姿の男……!
佐原は男を注意深く観察……! その直後……!! 彼は見つけてしまうっ……!!
「血っ!?」
佐原に衝撃走るっ……!!
男のスーツには、まだ真新しい血っ……!!
見たところ、男に外傷らしきものは無し……! つまりこれは、男のものではない何者かの血っ……!!
返り血っ……!!
「ま、まさかっ……!?」
状況は一転っ……!
途端にこみ上げる、怒涛の焦りっ……!!
銃を握る手には冷や汗……! 震えっ……!!
このままでは板倉達が危険……! 救う方法は一つっ……!!
「っ……!!」
佐原は引き金を引くっ……! 同時に、発射の反動で体は仰け反る……!!
弾丸は窓ガラスを貫通っ……! 板倉達を守るべくっ……!!
だが……佐原は行動を行うのには、余りにも不向きすぎていた。
彼は板倉とは違い、あくまで一般人……! 銃自体を扱った経験など皆無っ……!!
発射の反動を抑える事も出来ず、ましてや高度な技術を誇る狙撃っ……!!
その上に、予想外の事態に対する極度の焦りっ……!!
これだけの悪条件が揃い、成功するわけなどないっ……!!
摩り替わる……救いの手が、地獄からの手招きにっ……!!
□
「まだ具体的な方法とかは考えてないが、とにかく人手は多いほうがいい。
よかったら協力してもらえないか?」
板倉、ここでトドメにかかる……!
主催者の打倒は、優勝狙いの人物以外ならば誰しもが確実に考える……!
そして、これだけ相手を柔和させての勧誘……効果が無い訳が無いっ……!!
「……ああ、そうだね。
私も、このゲームを開いた連中が気に入らなくなってたところさ……!
あんた達と一緒に行動させてもらうよ」
(よし……!)
しづか、陥落っ……!
彼女の殺し合いに対する嫌悪感と、板倉の甘い言葉……その両者が見事化学反応っ……!!
板倉は見事、しづかを引き込むことに成功っ……!!
この収穫は大きい……!!
(名簿を見た限りじゃ、女はこいつを含めて三人……こいつはいいぞ)
女性相手となると、態度が甘くなる男は山ほどいる。
彼女が側にいてくれれば、新たな参加者の引き込み……その難度はかなり下げられるっ……!!
また、その体力は明らかに男性に劣る……! 故に彼女は狙われやすいっ……!!
ゲームに乗った連中の目を反らす囮としては、これ程都合のいい奴はいないっ……!!
女性の数が極端に少ないこのゲーム……彼女はキーファクターっ……!!
「よし、それじゃあ俺の仲間と合流するぞ。
付いて来てくれ」
用が片付いた今、わざわざ外にいるメリットは無い。
ならば、残る情報の交換や支給品の確認といった作業は、ホテルの中で行う事にするのが得策。
板倉はしづかに背を向け、足早に佐原の元へ戻ろうとする。
だがっ……この直後、それは起きるっ……!!
バァンッ!!
「……えっ……?」
轟音と共に、しづかの首元を何かが掠めた。
それは板倉の耳にも確かに届き、彼はとっさに振り返った。
すると……彼女の首元には、赤い一つの筋が出来上がっていた。
それは傷っ……!
彼女の首元を、高速で掠めた何かが作り上げた一筋の切り傷っ……!!
しづかは何が起きたのか分からず、呆然としたまま自身の首元に手を伸ばす。
ぬるりと、気持ちの悪い感触がした。
「これって……血っ……!?」
感触の正体は、流れ出ている血っ……!!
その事実を認識した途端……! しづかの全身を再び恐怖が支配っ……!!
「クソッ……すまねぇ姉さん、ちょっと堪えてくれ!!」
「!?」
一秒にも満たない一瞬、考慮した後……! 板倉、動くっ……!!
とっさに飛び出し、しづかの口を手で塞ぎ……ダッシュっ……!!
選択は説得……! 彼女という存在は、ここで捨てるには惜しい駒っ……!!
「っ……よし、一先ずはここなら大丈夫だ。
悪いな、手荒な真似をしてしまって……落ち着いたか?」
「……あ、ああ……」
「どうやら、俺は奴に裏切られたらしいな……まったく、最悪だ」
数秒後、板倉は佐原から見て死角に当たる一本の木の陰へと到着。
しづかに腰を下ろさせ、そしてすぐさま弁解……!
佐原と絡んでの狙撃ではないと、懸命の説得っ……!!
この状況で最も避けなければならない最悪の事態を回避する為、必死っ……!!
「……すまない、あいつを信じきった俺のミスだ」
「あ……いや、あれは仕方ないさ。
確かに、最悪なのには違いないけどね」
どうにか成功……!
しづかを助けたという行動、必死の弁解……! この両者が功を奏したっ……!!
板倉はホッと胸をなでおろす。
そして、彼女の傷口を放置していた事に気付きそれを見る。
幸いな事に傷はそれほど酷いものではない……簡単な止血で事足りる。
早速、上着を脱ぎシャツの袖口を引き裂こうとする……
がっ……
そのとき、二人に声をかける人物ありっ……!
「大丈夫ですか?」
「!!」
「先ほど銃声がしましたが、どうやら彼女が撃たれたようですね?」
それは他でもない、佐原誤砲の元凶……! 一条その人であるっ……!!
そのスーツには、明らかな返り血……! 当然、板倉は一条を警戒っ……!!
「……ああ、だが首元をちょっと掠めた程度だ。
こりゃ見た目ほどは酷い傷じゃない……あんた、何か止血に使えるものは持ってないか?」
がっ……その警戒、すぐに停止っ……!!
そう判断した理由は簡単……! 一条が声をかけたからっ……!!
自分達を殺す気ならば、声をかける必要性がない……! 少なくとも今の時点では殺意は無いっ……!!
ならば、ここは素直に応対するのが得策……!
「ええ、少し待っていてください」
一条はデイパックを肩から降ろし、その中に手を突っ込む。
その時、板倉はそのデイパックに目を奪われるっ……!!
(こいつは……!!)
外見からは気付かなかった……! 一条のデイパック、その内部搭載物の量っ……!!
見えたのは一瞬だが、その一瞬だけでも十分に分かるっ……!!
自分達のものに比べ、それは明らかに多量っ……!!
(この兄ちゃん、誰か他の奴の荷物を持ってやがるっ……!!)
板倉は即座に把握……! 一条は誰か他の参加者の荷物を手にしているっ……!!
それが自己防衛の為か、それとも進んで誰かを殺したのか、そこまでの判別はまだ現時点では分からないが……!
スーツに付着した血から判断するに、これは十中八九誰かと争って奪ったものっ……!!
「私の支給品に包帯がありますから、これで止血をしましょう」
「ああ……えっと……」
「そういえば自己紹介がまだでしたね、私は一条です」
「ありがとな、一条さん。
私はしづかって言うんだ」
「俺は板倉だ」
包帯を巻いて止血をしつつ、三者は自己紹介を終える。
そこで板倉、すかさず打って出る……!
彼がどういった人物か、見極めの為に先手を打つっ……!!
「それで一条さん、見たところ服に血がついてるようだが……そいつは自己防衛の結果ってとこか?」
「……どうしてそう思いましたか?」
「あんたがゲームに乗ってるなら、俺達を助けるわけが無いからな」
「ハハッ……ええ、その通りです。
向こうから襲い掛かってきたので、やむを得なく……」
予想通りの返答。
ならばと、板倉は一条に話を持ち掛ける。
「成る程な……だが、乗ってないなら安心した。
よかったら、俺達と行動しないか?」
その理由は、彼の持つ支給品の量、恐らくは1000万以上あるであろう現金っ……!!
この魅力的な両者の存在と、それを戦闘で入手した一条自身の戦力っ……!!
彼が殺し合いに乗っていないというのは、佐原に裏切られたばかりなのもあってまだ信用できない。
だが、そのリスクを承知の上で行動を共にする価値は少なからずある……!!
これだけの大物を、序盤である今の内に入手できるチャンスは恐らく他にないっ……!!
利用する価値、大いにありっ……!!
□
(予想通りの反応か……)
一条は板倉としづかににこやかな表情で応対しつつも、心中では冷静に事態を見ていた。
彼はつい数分ほど前に、偶然にもしづかが撃たれた場面を遠目で目撃していた。
銃声がホテルから聞こえてきた事には、焦りを覚えた……だが、彼はこの状況をすぐさま逆利用っ……!
負傷したしづかに自分から近づき、優しく声をかける事により自らが安全であるとアピールしたのだっ……!!
これで返り血の欠点を乗り切るっ……!
ならば後は簡単っ……! 相手に話を合わせ……そして利用するっ……!!
(こちらを信じきっているのならば好都合だ……悪いが、これも復讐の為だ……!)
一条が狙うのは、あくまで復讐の妨げとなる者のみ。
ならば他の者はどうなるか?
見逃す? 否……一条は使える者は全て使う……そういう男っ……!!
故に彼は、害が無いであろう二人に目をつけたっ……!
カイジ達への復讐……その為の駒としてっ………!!
「ええ、こちらもそう言おうとしていたところです」
「そうかい、なら助かるな……よろしくな」
「こちらこそ」
二人は手を握り合う。
だが、その間に友好なんてものは皆無っ……!
これは儀式っ……!
利用する者、される者っ……!!
互いに知られざる、宣戦布告っ……!!
【F-6/ホテル前/夕方】
【板倉】
[状態]:健康
[道具]:毒液入り注射器 ※どのような毒かは不明(本人確認済み)
不明支給品0~2 通常支給品
[所持金]:1000万円
[思考]:仲間を利用して生き残る 宇海零、標を探す 対主催者と合流する
※佐原が自分達を裏切ったと判断しました
※しづかは重要と考えていますが、いざとなれば切り捨てる気でいます
※一条を完全には信用していません、彼を利用する気でいます
【しづか】
[状態]:首元に切り傷(止血済み)
[道具]:不明支給品0~2(確認済み) 通常支給品×2
[所持金]:2000万円
[思考]:板倉と行動を共にする ゲームの主催者に対して激怒
※このゲームに集められたのは、犯罪者ばかりだと認識しています
※板倉と一条を信用しています
※和也に対して恐怖心を抱いています
【一条】
[状態]:健康
[道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ)、改造エアガン、毒付きタバコ(残り19本)、マッチ、スタンガン、包帯
不明支給品0?1(本人確認済み) 支給品一式×4
[所持金]:4000万円
[思考]:カイジ、遠藤、坂崎、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者を殺す
復讐の為に利用できそうな人物は利用する
※板倉としづかは復讐の為に利用できる駒としか見ていません
「あっ……あぁっ……!?」
銃を床に落とし、佐原は床に崩れ落ちる。
―――何故、こんな事になったっ……!!
―――良かれと思ってやったことなのにっ……!!
取り返しの無い失敗っ……!
やってしまったっ……! もっともやってはならないことをっ……!!
銃弾が外れたならまだいい……だが、不幸にも放たれたのは命中弾っ……!!
これではもはや弁解しても無駄っ……!!
「そ、そんな……俺……どうしたらっ……!?」
取り乱す佐原っ……!
しかし、そんな彼に助けを差し伸べる者はいないっ……!!
圧倒的絶望っ……!
頭の中が白く染まりあがるっ……!!
全てを多い尽くすかのような白っ……!!
まるで煉獄の光っ……!!
【F-6/ホテル/夕方】
【佐原】
[状態]:重度の錯乱状態 首に注射針の痕
[道具]:レミントンM24(スコープ付き)、弾薬×29 通常支給品
[所持金]:1000万円
[思考]:己のミスに対する深い後悔と絶望
|054:[[十に一つ]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|056:[[焦燥]]|
|054:[[十に一つ]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|056:[[焦燥]]|
|039:[[観察]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:佐原|056:[[焦燥]]|
|039:[[観察]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:板倉|069:[[姫と双子の紳士]]|
|039:[[観察]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:しづか|069:[[姫と双子の紳士]]|
|036:[[鏡]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:一条|069:[[姫と双子の紳士]]|
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