盤上のトリック劇場  ◆DZllJyXPF2



巨大なベットの上にて、山田奈緒子は目を覚ました。

「何だ?今の変な夢……」

どこだかよくわからん場所に大勢の人間が集められている夢。
大人から子供まで、男女問わずの人達……上田さんも混じっていたような気がする。
ぶいつー、とかいう名前の外国人の少年(妙に日本語が達者だった)に、殺し合いをしてもらうと命令されて。
……まだ小さな女の子の首が、爆発して。

「ったく……何だったんだ一体」

僅かな吐き気と胸糞悪さを覚えながら、ベットの上から下りる。
改めて、自分が寝ていた部屋を見渡す。
……まったく見覚えのない部屋。とりあえず自室よりは格段に広い。
綺麗に整理整頓されて、そしてなかなかに豪奢な調度品……ホテルの一室だろうか?。
どこだろう。また上田さんの超常現象取材に付き合わされたんだったっけ。

(―――とりあえず、顔でも洗って頭をすっきりさせるか)

部屋に備えつけだった洗面所を見つけると、水道の蛇口を捻って顔を洗う。
同じく部屋の備品らしいタオルで顔を拭き……タオルを取り落とす。
洗面所の鏡に映った自らの姿、そして自分の首に付けられた……金属製の首輪。
首に手をやれば、そこには確かにひんやりとした感触が。


「……夢じゃ、ない?」


どくん、と心臓が急激に跳ね上がるのを感じた。




「V.V.……まさか、生きていたとはな」

豪華でありながら趣味の悪くない調度品が並ぶ、広いホテルのロビー。
そこに置かれたソファに腰掛け、ジェレミア・ゴットバルトは思考を巡らせる。

「確かに死体を確認した訳ではなかったが……何のつもりだ?大勢の人間を集めての殺し合いなど……」

苦虫を噛み潰したような表情で見つめる視線の先には、デイパックの中に入っていた参加者名簿

(ルルーシュ様……それに枢木スザク、C.C.、ロロ・ランペルージ……篠崎咲世子、とはあのSPの名前だったか?
 人選には特に意図も見られないな。全体的に見れば、イレブンが少し多い程度。
 最後の一人は無事に帰すと言っていたが……とても信用はできんな)

とりあえず自分が考えるべき事は、主君の安全……早急に居場所を探し出さねばならないだろう。
この場所はホテル……地図によると、B-1かG-2のどちらかだろう。

(まずはここが北か南、どちらのホテルかを調べる必要があるか。一先ず外に出てみれば分か―――)

チン、という軽い音が突如耳に届く。
名簿をデイパックに突っ込むと、素早く身を翻して柱の影に身を潜める。
先ほどの音はおそらくエレベーターの到着音。自分以外の参加者がこの建物にいるという事だ。
もしもの事を考え、デイパックに入っていた日本刀を握りしめる。

エレベーターのあった方向から現れた人影は………

(女性……イレブンか)

辺りをきょろきょろと見回しながら歩く様子からは、この状況に戸惑っている様子が感じられる。
軍属の人間には見えない……恐らくは民間人だろうか。
巻き込まれただけの民間人ならば、できれば保護などしたいところではあるが……

(今優先すべきはルルーシュ様……申し訳ないとは思うが、ここは見逃すべきか?)

民間人では、どうしても足手まといになるのは避けられない。
主君を一刻も早く見つけたい今、移動を制限されるのは避けたいところ。

立ち去るか、声をかけるか。忠義と善意の狭間で考える中―――
突然床に響いた振動と大きな音に、ジェレミアはその場でたたらを踏んだ。




(……ひとまず、上田さんを探そう)

奈緒子の考え付いた行動方針は、簡単な物だった。
名簿に乗っている知り合いの名は上田のみ、とりあえずは知り合いといた方が何かと心強い。
ロビーまでエレベーターで下り、外へ出ようとし……ふと思い出す。

(そういや、荷物の中身まだ確かめてなかったっけ……)

ホテルの部屋では、名簿を見ただけで確認は終えてしまった。
何か役立つ物が入っているかもしれない……と、背負っていた荷物を下ろし、中を漁る。

最初に取り出したのは、鋏。平仮名で書くと、ハサミ。
妙にアンティークっぽい雰囲気だが、あまり役立つとは思えない。
……ハズレと認識し、次の支給品を探す。

次に取り出したのは一冊の本。表紙に書かれたタイトルは『エロ凡パンチ・'75年4月号』
どうみてもただのエロ本です本当にありがとうございました。
……脊髄反射気味に、それを床に思いっきり叩き付ける。

「あ……あのガキんちょ……喧嘩売ってんのか」

殺し合いなど開催している時点で喧嘩を売っているどころではないのだが、コンプレックスをピンポイントに突かれた事でそれどころではない。
もしや、自分に配られた道具はこれだけなのか……と不安になりながら、さらにデイパックの中身を漁る。
手が固いものに触れた……今度こそ役に立つ品が出てくることを祈りながら、それを掴み引っぱり出す。

―――彼女が、荷物の確認をホテルの部屋でも廊下でもなく広いロビーで行ったことは、相当な幸運かもしれない。

荷物の袋から出てきたのは、車だった。

クリーム色のカラーリングをした、四人乗り程度の小型車。
それが、荷物を入れるデイパックの中からスポンと飛び出してきた。

「……は?」

ぽかん、と呆けるしかない奈緒子。
それが当り前の反応というものだろう。何しろ背中に背負える程度の大きさしかない袋の中から、小型とはいえ車が一台出て来たのだから。

「ちょっと待て……どうなってるんだこれ?」

自分は上田のような知識は持っていないが、明らかにおかしい事くらい分かる。
荷物を背負っている時も車の重さなんて感じなかったし、そもそも入れ物の大きさ的にありえない。

だが……彼女が目の前の事態に収集をつける前に、新たな出来事が訪れる。

「失礼、そこの貴女」
「………へっ!?」

後ろから掛けられた声に、慌てて振り向いた先には………奇妙な男性が立っていた。
白と紫を基調としたコートに、同系色を基調とした貴族の様な服装。
緑色の髪に……顔の左半分を覆う、オレンジ色の仮面。

「……劇団の、人?」
「……違いますが」

ぽつりともらした感想に、仮面の男性は律義に訂正を入れてくれた。




「はぁ……つまり、ルルーシュさんって方を探したいんですね?ええと……ジェレミアさん、でよかったですか?」
「ああ、貴女の名は山田奈緒子さん、でよかっただろうか?」
「ええ……まあ……」

ホテルのソファに向かい合って座りながら、奈緒子はジェレミアと名乗った珍妙な仮面の人物を見据えた。
名前からして外国人だろうが、日本語にはそれらしい訛りも感じられない。
あのぶいつーという少年といい……これが国際化、というやつだろうか。
ちなみにデイパックから這い出てきた車は、ロビーに置きっぱなしにしてある。

「それで、その人を探す協力をしてほしいって……そういうことですか?」
「君にとっても悪い話ではないはずだ。殺し合いなどという下賎な物に参加する気がないのなら、一人よりも二人で行動したほうが安全ではないか?」
「……うーん」

ジェレミアの誘いは、正直言ってありがたいものではある。
確かに殺し合いなんてもんに乗る気はさらさらないし、一人でいるのも心細い。
目の前の男性は姿こそ怪しいものの、こうして自分に声をかけてきた事を考えると悪い人物ではないようだし……

待て、どうして自分に声をかけてきた?

「ジェレミアさん、私に声をかける前って何してました?」
「ん?私はずっとこのロビーにいたぞ、荷物の確認などをしていたからな。さすがに君が来た時は用心の為に身を隠させてもらったがな」

その返答を聞き、奈緒子は考えを巡らせる。
返答もその理由も納得できる物ではあるが……何か引っかかる。
自分がこのロビーに下りてきてからは、かなりの時間があった筈だ。
接触しても安全な人物か確認するには十分な時間……まぁ、用心には用心を重ねていた可能性もあるが。
確かロビーでの自分の行動を思い返してみる。
エレベーターから降りて、荷物の確認を始めて、中からハサミを出して、エロ本を出して、それから車を引っ張り出し―――

(……あ、もしかして)

ふと浮かんだ可能性。

「ジェレミアさん、ちょっと1つ聞きたい事があるんですけど」
「ん……何だ?」

地図を見て考え込んでいた様子のジェレミアが顔をあげた。
鋭い奈緒子の視線が正面から向けられる。



「ええ、ジェレミアさんが私に声かけてきたのって……もしかして、私に支給された車が目当てだったりします?」


――――豪奢なロビーの空気が、一気に数度下がった様な錯覚。


「……そう考えた理由を聞こうか」
「まず、あなたが私に声をかけてきたタイミングです」

まっすぐジェレミアに視線を向けたまま、奈緒子が指を一本立てる。

「私に声をかけてきたタイミングは、荷物を確認している最中でした。
 荷物の中身はハサミにエロ本、それと……」
「あの車、だろう?」
「……もし私が安全だと思って声をかけてきたんなら、車を出した後に声をかけてくるのはおかしいんじゃないかと思いまして。
 いきなり車を引っ張りだしてたりしたら、危険……というか、直後に話しかけてみようって気にはならないんじゃないかと」

奈緒子の言葉に、沈黙するジェレミア。
かまわず、奈緒子は自らの考えを話し続ける。

「それにさっきの話によると、ジェレミアさんの目的は『ルルーシュさんを探すこと』ですよね?
 人探しをするなら、移動手段が徒歩じゃあどうにも心もとない……でも車があれば、道路沿いに各施設を回る事ができる。
 参加者は自然に施設に集中すると思うから、迅速に各施設を回って人探しをする事ができる……と、思ったわけです」
「………。」

奈緒子の言葉が終わる。
しばらく無表情のまま押し黙っていたジェレミアだったが―――やがて、口を開いた。

「まったくもって、君の考えの通りだ。ルルーシュ様の捜索のため、君の所持している車を利用したいと私は考えた。
 ただ、何故君はその考えを私に話した?もしかすれば……」
「あなたに殺されていたかもしれない、ですよね……けど、その可能性は低いと思ったんです。
 車だけが目当てなら私を殺せば済む話ですし」

ちょうどいい凶器もあるみたいですし、と奈緒子はジェレミアの所持していた日本刀を指さす。

「あなたの考えとしては、まずはルルーシュさんを保護したい。でも積極的に殺し合いをする気はない……
 いえ、可能ならあのぶいつーって子供に反逆したい、ってとこですか?」
「……本当に民間人か、君は」

関心と呆れが半々の様子でジェレミアが言う。
エヘヘヘヘ、と奇妙な声を上げながら奈緒子が笑った。

「それほどでも……ただの超天才マジシャンですよ」




ホテルのロビーから車を移動させた二人は、地図で現在位置を確認していた。
ちなみにホテルの入り口は車が一台通れるほど広くはない。
そこで奈緒子の案『いったんデイパックにしまい、再び表で出す』という方法で車を外に運んだのである。

「周りの風景も殺風景ですし……このホテル、G-2のみたいですね」
「そうだな……道沿いに南に進めばカジノ、ショッピングモール、病院と施設が連なっているな。
 それらを経由し、南西部の市街地に進むとしよう」

方針を示し合わせると、小型車に乗り込む。
運転席はジェレミア、奈緒子は後部座席である。

「確認しておくが、私が君と同行するのはルルーシュ様を保護するまで。
 また、君が足手まといになった場合には容赦なく見捨てていくぞ」
「それで大丈夫です。私ももしもの場合はジェレミアさんを囮にして逃げたりしますから」

奈緒子の言葉を聞いて、ジェレミアは頷く。

「いいだろう……では、行くぞ」

エンジンをかけられ発進した小型車は、警戒に南へ向けて走り始める。
運転席に座る男の、忠義の心を乗せて。

(どうか無事でいてください、ルルーシュ様……
 このジェレミア・ゴットバルト、亡きマリアンヌ様の遺児である貴方様を必ずやお守りしてみせましょう!)


後部座席で冷や汗を垂れ流す女性の、焦りを乗せて。


(は、ははははは……やばいぞこの人。忠義とかどこの戦国時代だ……
 ……早いとこ上田さん見つけて、縁切ろう)



【一日目深夜/G-2 ホテル前】

【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ
[装備]逆刃刀・真打@るろうに剣心、ミニクーパー@ルパン三世
[所持品]支給品一式、ランダム支給品(確認済)0~2
[状態]健康
[思考・行動]
1.ルルーシュを探し、護衛する。
2.奈緒子にしばらく同行。足手まといになる場合は切り捨てる。
3.V.V.に従う気はない。
参戦時期はR2、18話直前から。ルルーシュの配下になっている時期です。
※奈緒子と知り合いについて簡単に情報交換しました。V.V.については話していません。

【山田奈緒子@TRICK】
[装備]なし
[所持品]支給品一式、庭師の鋏@ローゼンメイデン、エロ凡パンチ・'75年4月号@ゼロの使い魔
[状態]健康、冷や汗
[思考・行動]
1.とりあえず上田を探す。
2.ジェレミアにしばらく同行。危なくなったら逃げる。
3.デイパックの仕組みについては……後で考えよう。
※ジェレミアと知り合いについて簡単に情報交換しました。
※ジェレミアを(色々な意味で)変な人物と認識しました。


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ジェレミア・ゴッドバルト 051:LOST COLORS
山田奈緒子



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最終更新:2010年06月12日 01:31