ウィッチ×ブレイド ◆tu4bghlMIw
それは、宇宙の底にあるおとぎの国。
荒野に夢、街に暴力があふれる、ボンクラ達の理想郷《パラダイス》
人呼んで、惑星・エンドレス・イリュージョン。
流浪の男がいた。
黒いタキシードに全身を包み、気だるげな雰囲気を漲らせながら。
花婿の衣装と純潔の精神を持ち合わせ、復讐に全てを捧げた男だ。
〝ヨロイ〟と呼ばれる巨大兵器が闊歩する荒廃した大地にて男は一人の少女と出会った。
その小さな出会いは時を経て大きな物語へと姿を変える。
それは「ウェンディ」がピーターパンと出会ったことで始まる夢の世界の話のように、小さな鼓動を伴いながら。
そして、そんな荒くれ者達のお伽話のような世界と、幾つものおとぎ話が――交わった。
これは全てが夢のおわりへと至る、少し前の物語。
荒野の果てに一人は絶望、そして――もう一人も絶望を胸に抱き、始まるはぐれ者達の物語。
†
光に透かしたペリドットのような緑色の髪を
C.C.は鬱陶しげに掻き上げた。
顕になった額から覗くのは紅色の奇怪な刻印《コード》である。
これこそが彼女が不老不死である証拠、殺し合いの舞台に最もそぐわない存在であることを決定付ける烙印だった。
キラキラと輝く天はいったいどこの田舎から持って来たのかと不思議に思うほど光に満ちていた。
小さく指を握り返してみても返って来る感触は普段とまるで変わりはない。
身体の調子は万全と言ってしまっても構わないだろう。
あえて言えば、少しだけ小腹が空いている程度か。それにしても行動に支障を来たす程ではない。
艶かしい唇の動作と呟き。C.C.は物憂げな眼差しのまま煌く夜空を見上げた。
息が薄っすらとした靄になって空気に溶けて行く。
少しだけ、肌寒いかもしれない。
「だが、今は……」
彼女は胸の部分に銀字でギアスの紋章が刻まれた黒い独特な形の衣服を身に纏っていた。
肉付きのいい身体のラインを浮き彫りにさせるピッタリとしたラインを保ったノースリーブのドレス。
手の甲までを覆ったフィンガーレスのロンググローブが、スラッと伸びた指先をより艶かしく見せていた。
(しかし……あいつも、少しは成長したと思っていたのだが)
膝上以上の長さのある白いロングブーツでカッカッと地面を踏み締めながら、C.C.は注意深く歩を進める。
だが、気付けば意識せずに唇から漏れるのは湿ったため息ばかり。
そしてソレは感情的な意味で言えば〝怯え〟や〝焦燥〟ではなく〝憂鬱〟という二文字の単語にて集約される。
そう。彼女の目下の悩みの種は、すなわち彼女の「共犯者」である
ルルーシュ・ランペルージが犯した致命的なミスについてだった。
この空間に集められた全ての人間の前で彼がギアスを使用してしまったこと、である。
(ルルーシュ。この失態は……大きいぞ)
ルルーシュが持つ「絶対遵守」のギアスは一種の催眠術のようなものだ。
だがその効力は極めて圧倒的だ。
――数十人の人間へと同時に自害を強制する。
――人の限界を超えるほどの力を〝生きる〟ために引き出させる。
――心優しき王女に〝血塗れ〟と呼ばれるほどの虐殺を行わせる。
――忠実な騎士が敬愛して止まない〝主従〟を他の人間に書き換える。
――父親の死に絶望した少女から一人の人間に関する記憶を完全に抹消する。
まさに身震いするほどの魔性を帯びた王の力と言えよう。
どんな人間であれ、どんな生物であろうと、その悪魔の力からは逃れられない。
しかし、ギアスには当然のように多くの弱点がある。
射程距離や効果時間、加えて『同じ人間に一度しか使えない』という制約も致命的だ。
そして最も憂慮すべき問題は『ギアスは視線を合わせることによって発動する』という能力のトリガーキーに該当する部分だろう。
(確実に、何人かの人間はアレでお前の能力に当たりを付ける。
言葉……動作……追求の手が〝眼〟に伸びたとしたら、お前はどうする……?)
ルルーシュのギアスは視線を合わせなければ発動しない。
眼鏡程度の遮蔽物では効果は無いが、能力を知っているならサングラス程度の対策で無力化出来てしまう。
能力を知られている相手と一対一になった場合、彼はチェックが掛けられたも同然と言えるのだ。
単純な身体能力勝負で彼に勝機を見出せというのはあまりに酷な期待なのだから。
「まったく。本当に……手が焼ける奴だ」
子供の世話に苦心する親のような台詞を呟いたC.C.の口元に浮かんだのは、言葉とは対称的な艶っぽい微笑だ。
既に彼女の思考は動き出していたのだ。
完全な劣勢に追い込まれたチェスのゲームを挽回するための一手の模索。
ソレこそが「生きて」この空間から脱出するためには、必ず必要となる考えの一つなのだから。
そう――生きて、だ。
C.C.は外見こそ、華麗な少女にしか見えないがその正体は数百の刻を生きて来た不老不死の魔女である。
彼女は「殺し合い」という趣旨の催しに自身が放り込まれた、という事実に驚愕していた。
C.C.は喉を掻き切ろうが、火刑に処せられようとも命を落とすことはない。
彼女が死亡するのは「自身が認定したギアスユーザーに不死の運命を引き継がせた場合」だけだ。
V.V.が何を考えてこんなことを始めたのか、C.C.にはまるで想像がつかなかった。
彼も同様に死ぬことも老いることもない不老不死のコードの持ち主だ。
ギアス教団の現嚮主である彼が何を考えているのか、教団のトップの地位をとうに退いたC.C.には知る由もない。
だが、C.C.の「不死の運命」だけを取り除くことがV.V.に出来るとは彼女は到底思えなかった。
(そんな簡単に死ねるのなら、苦労はないな)
夜の闇を踏み締める魔女の手には奇妙な形の杖が握られていた。
これは彼女の支給品であるブリッツスタッフという道具だ。
振るうことによって杖の先端から様々な属性の魔法攻撃を行うことが出来る。
錬金術によって生み出されたこの道具を扱える人間は限られているが、どうやらC.C.はその視覚を満たしたようだ。
込められた力は炎。
使用することで中程度の大きさの火球を発射することが出来る。
使用時には若干の負担が掛かり、加えて使い過ぎると杖自体が壊れてしまうらしい。
「魔女」の烙印を押された自分にとって中々皮肉な道具と言えるだろう。
(V.V.の後ろにはおそらく……シャルルがいると見て間違いはない。
奴らの本願であるラグナレクへの接続を果たすためには私とV.V.、二人のコードが必要の筈だが……さて、)
しかし、腑に落ちない点が多過ぎる。
この催しの代表を務める人物がV.V.である点。
ルルーシュの使用したギアスが効果を発揮しなかった点。
計画に必要不可欠な駒である筈のC.C.までもが殺し合いに参加させられている点。
もしも、本当に死ねるというのなら――――それは喜ばしいことではあるのだが。信憑性は極めて薄い。
(探ってみる価値はあるな。あとは……ルルーシュか)
大衆の前で大きな失態を犯したルルーシュとの合流は最優先事項だろう。
特にV.V.に軽くあしらわれたことで彼が変な気を起こさないとも限らない。
生来のもやしっ子である彼を一人にしておく訳にもいかないだろう。
自分でなくとも、咲世子やロロと早い段階で接触出来ていれば望ましいのだが……。
「……ん?」
そこまで考えて、C.C.は自身の進行方向に一軒の小さな家屋が立っていることに気付いた。
強い風が吹けば倒壊してしまいそうなオンボロ具合だ。
が、特筆すべき点は――その家に明かりが付いているということ。
(誰か、いる? 無用心な奴だな)
C.C.はブリッツスタッフを握り締め、ゆっくりと小屋に近づいて行った。
目的が人探しである以上、ひとまず出会える人間とは接触しておきたい。
それが、V.V.の甘言に乗せられた殺人者である可能性もあるが、背に腹は変えられないといった所か。
とはいえ、少なくともここまで無用心な真似をするのは、戦闘経験の薄い一般人か余程のバカしか考えられないだろう。
C.C.にとっては組し易い相手と言える。
それに出来れば生身でも戦闘能力のある危険ではない人間とコンタクトを取って置きたい気持ちもあった。
今のC.C.にはナイトメアフレームも圧倒的破壊力を持つ武装もない。
不死故、死ぬことはないとしても、同行者が居た方が事は上手く運ぶ筈なのだ。
(さて。鬼が出るか蛇が出るか……どっちだろうな?)
ドアのノブに手を掛け、C.C.はゆっくりと扉を開けた。
その時、リン――という鈴が鳴るような音が聞こえたような気がした。
†
「…………な」
C.C.は言葉を失った。
いや、正確に言えば『かける言葉が見つからなかった』とでも表現するべきなのだろうか。
いざというと時はすぐに応戦出来るよう、杖を構えてオンボロ小屋へと足を踏み入れた彼女の視界に飛び込んで来たのは、
極めて不思議な格好をした男の背中だった。
思わず見上げてしまうような長身に適度に付いた筋肉。
が、その着ている服と言うのが何故か「タキシード」を着ているのだから。
そんな怪しい格好をしたいい年頃の男が入り口に背中を向け、ゴソゴソと戸棚を漁っていれば普通は意表を突かれるというものだ。
「お?」
しかし、流石に掘っ立て小屋に近い家屋で人が入ってくれば誰でも気付く。
テンガロンハットの鍔に取り付けられたリングを風鈴のような音で鳴いた。
男が振り向きざまにC.C.の姿を捉え、間の抜けた声を漏らした。
――が、C.C.の姿を確認するや否や男は小さくため息をつくと、また棚を物色する作業に戻った。
そしてこのような露骨な態度を取られてC.C.が腹の虫を悪くさせるのも道理。
C.C.は普段よりも僅かに声調を低くして男に声を掛ける。
「おい、そこのお前」
「なんだ」
「何をしている」
「……見りゃあ分かるだろうが。食い物探してんだよ、食い物」
「こんなちっぽけな家で、か?」
「ああ」
ひとまず会話は成立しているが、背中と言葉を行き来させるのはあまり気分の良いモノではなかった。
C.C.は額に手を当て、何とも微妙な相手と遭遇してしまったと、己の不幸を呪った。
「まあいい。お前に尋ねたいことがある」
「なんだ」
「――ルルーシュという男と会ったことはないか?」
「ああ、まぁ……会ったな」
「何?」
C.C.が僅かに反応する。
しかし、
「最初の、ホールで妙なポーズを取ってた奴だろ?」
「…………ああ。そうだ、会ってるよ」
C.C.の心の中で少しだけ芽生えた期待の泡がパチンと弾けた。
そう。ルルーシュの姿自体はあの場にいた人間全てが目撃している。
しかもご丁寧に「名前付き」で、だ。
しっかり記憶されている辺り、ルルーシュの前途はおそらく多難だろうとC.C.は思った。
「そういや……アンタもアイツの側にいたな」
「……そんなこともあったかもしれんな」
そして、当然のようにC.C.も認識されている。
不用意な行動を取ったルルーシュを庇うためには、あの場はああするしかなかったのだ。
またも不安材料が一つ、増えた。
「まあいいさ。ところで…………アンタ、何か食い物持ってないか」
クルッとC.C.の方へと向き直りながら男が言った。
乾いた首の骨が鳴る音がちっぽけな部屋の中に響いた。
「は? 荷物の中に食料なら入っていただろう」
「俺のには何も入ってなかったから言ってるのさ」
改めて、C.C.は男と視線を交わらせる。
一言で言ってしまえば、いまいち捉え所のない風貌だ。
黒髪、細い眼、突き出た顎。典型的な東洋人のような顔付きだが瞳はガーネット色だ。
少なくとも、歳は二十代半ば以上。正面から向き合うとその痩躯と長身が異様に印象的だった。
「人に頼み事をしたいのならまずは名乗れ」
「俺は
ヴァンだ。今は〝夜明けのヴァン〟で通ってる」
「私はC.C.だ。まぁ好きなように呼べ」
「ああ、分かった」
しかし、先程は眼に入らなかったが、その腰には日本刀らしき武器がぶら下げてあった。
長さは若干、短め。脇差だろうか。
刀は扱うのが非常に難しい。剣の心得のない人間にとっては鉄パイプにすら劣った武器にまで成り下がる。
そう考えると目の前のヴァンと名乗った男は、それなりに戦いの経験はあるのだろう。
実際に、彼からは常人とは明らかに違う雰囲気を感じる。
明確な判断基準がある訳ではなく、〝勘〟という極めて原始的な感覚に頼ってこそいるものの……。
理性で考えればただのバカにしか見えないが、直感的な部分では彼には特別な力があるのではないか、という気はするのだ。
「じゃあ、何か食い物を――」
「おいおい。まさか私が、簡単に『はい』とでも言うと思っったんじゃないだろうな」
「……へ」
が、無遠慮な男の質問にC.C.のイライラはピークに達していた。
目の前の不躾な人間がバカで間抜けであることは一瞬で理解出来たが、それでも全ての話が片付く訳ではない。
危険人物には到底見えないが、使えない人間に用はない。
自分は「愛」や「慈悲」を売り歩く宣教師ではないのだから。
C.C.は部屋の中央に置かれた木製の椅子に腰掛けると、テーブルに肩肘を付く。
「いいか、確認するぞ。私とお前はこうして出会った訳だ」
「はぁ」
「ところで、お前剣の腕に自信は?」
「それなりに」
「そうか。言わなくても分かると思うが、私はあのルルーシュという男を捜している。そして見ての通り、私は女の身だ」
「はぁ」
「…………お前、真面目に人の話を聞いているのか?」
C.C.はこの目の前の腕は立ちそうだがバカっぽい男を利用出来ないだろうか、と考えていた。
寝首を掻かれる――という場合を除けば、同行者を作るのはそれなりに有効な手段だ。
出会ったばかりの相手を信頼出来るのかどうか、という問題は残るが、当然こちらも情報は小出しにする。
こちらがV.V.と知り合いであることが知られている以上、C.C.自身には情報源としての利用価値があるはずだった。
「すいません」
ヴァンはとても素直に謝った。
大の大人が背を丸めて項垂れる姿はなんとも情けない光景だった。
「……まあいい、心して食え」
そう言うとC.C.はデイパックの中から「PIZZA HAT」というロゴの描かれたケースに入ったピザを二つ取り出してテーブルの上に置いた。
大量のピザと「エアドロップ」という水中で息が出来るようになる飴玉が彼女の残りの支給品だった。
C.C.は大のピザ好きであるが、まぁコレだけあるのならば一枚ぐらいやってもいいだろう、と考えた訳である。
それにこれほど沢山用意されたピザを消費しないのは勿体ないことだ。
脱出するまでに完食するくらいの勢いで食べるのもいいだろう。
「悪いな」
「礼はいらん。お前にはその分、働いてもらうからな」
「……なんだそりゃ」
小さく毒づいたヴァンは、自身もピザを口に運ぼうとしているC.C.を尻目にとある行動に出た。
彼にとっては極めて当然、だが他人から見れば極めて異様な〝アレ〟である。
ヴァンはテーブルの下に置いてあったデイパックへと両手を突っ込むと、淡々とその中から色鮮やかなボトルを取り出した。
赤――ケチャップ。
黄――マスタード。
白――タルタル。
緑――サルサ。
朱――チリ。
飴――ハチミツ。
薄緑――ビネガー。
紅――タバスコ。
黒――ソイソース。
そして、右手の指に四本、左手の指に四本と器用に挟み込んだソレらを――思いっきりピザの上にぶっかけた。
「な――っ!?」
それは、思わず椅子から立ち上がり、声を荒げてしまうような衝撃だった。
豪快な音と共に八色の粘性を帯びた各種調味料がヴァンの目の前に広げられたピザを毒々しい色に染めて行く。
「ピ、ピザが……っ!」
ケチャップとマスタードが赤と黄色の山を作り、タルタルソースがドロリとピザのクラストを侵食。
サルサの緑色とチリの朱色が混ざり合って、チーズを覆い隠し、ハチミツが飴色のヴェールでオニオンをコーティングする。
強烈な酸の臭いを撒き散らしながら、ビネガーがこんもりと山を作っていた他のソースと混ざり泥水のような色合いを示し、
タバスコも負けじと殺人現場の血痕のような足跡をピザ生地に残す。
そして、トドメのソイソースがピザを水浸しにする。
「……おい、ヴァン!」
「なんだ、くれるんじゃなかったのか」
「確かにやるとは言ったが……しかし、これはあまりにも! これでは……ピザが可哀想だ」
「何言ってんだ。お前の分はそっちにあるだろう。問題ないはずだ」
持っていた調味料をテーブルの上に全て置いたヴァンは、更にデイパックからペッパーのミルを取り出しキリキリと。
黒胡椒と白胡椒が砂漠の粒のようにピザに香ばしい薫りを付け加える。
「……とんだ味オンチだな」
大好物のピザがありったけの調味料に凌辱される光景を見て、C.C.は憎々しげに呟いた。
百歩譲ってタバスコを掛けまくるのは〝アリ〟かもしれないが、他のスパイスは普通は在り得ないだろう。
彼女が気になっていたのは味ではなく、単純に見た目の悪さだった。
「お前も使うか」
その時、ふと顔を上げたヴァンが調味料のボトルを顎で示しながら言った。
胡椒を使い終わった彼は、デイパックから他の瓶やチューブを取り出しテーブルの上に並べる。
まだまだ、味付けは終わらないらしい。
「その調味料をか?」
「ああ」
「……美味いのか?」
「まだ、完成してないが――絶品だ」
「……お前ほど、舌がおかしい人間は私も初めて会ったよ」
その時、ヴァンの言葉を聞いて、数秒彷徨ったC.C.の視線が机上のとある調味料へと注がれた。
ムスッとした表情を浮かべたC.C.は無言でボトルを掴む。
ソレは彼女と馴染みの深いソースだった。とある料理を食べる際、彼女はこのソースを掛けて食べるのだ。
「使いたいのか、それ」
「……! 誰が使うかこんなもの!」
「そうかい」
ドンッと持っていた「マンゴーソース」の瓶をC.C.は荒々しく机に置いた。
C.C.は不老不死であるため、生きるためではなく完全に趣味嗜好で食事を行う。
普段からピザを食べて寝てばかりいるイメージのある彼女だが、目玉焼きにはマンゴーソースを使うのがお気に入りだった。
自分のことを棚にあげてヴァンに文句を言っているが、彼女も中々の味覚オンチであることは間違いない。
そんなC.C.からしても、目の前の男が行うピザへの暴行は背筋が凍るような戦慄を覚えずにはいられなかった。
「よし、出来た」
「うっ……」
ハチミツの甘ったるさを完全に押し流すような異臭がテーブルの向かいからツン、と鼻腔を刺激する。
ピザの生地の部分はもはや一切見えない。
全てが調味料によって覆われ、押し流され、もはやコレをピザという物体であると認識する術も「PIZZA HAT」のロゴが入ったケースだけである。
そして、既に準備してあったナイフとフォークを高らかに掲げ、ヴァンは変わり果てた物体(ピザだったもの)にナイフを入れる。
これだけ色々なモノが掛かっていると、手掴みで食べるのは難しいためだろうか。
そして丁寧に切り分け、フォークを突き刺しパクリとヴァンは何の躊躇いもなくソレを口に含んだ。
ポタポタと黄土色の液体がピザの先端の切っ先から滴り落ちる。
飛び散った調味料がテーブルを汚した。
「……か――」
そして、特製ピザの一口目を飲み込んだヴァンがカッと瞳を見開きながら叫んだ。
「からぁあああああああああああぁぁああああああいっっっ!!!」
と。
(…………バカだ)
そして、ヴァンは凄まじい勢いでナイフとフォークを動かし食事を始める。
そりゃあ、辛いだろう。あれだけ色々掛かっているのだ。
だが、それでもヴァンの手は止まらない。どれだけ極端な味付けが好きなのだろう。
結局、C.C.はそんなヴァンを半笑いのまま見つめつつ、何も調味料の掛かっていないピザを口に運ぶのだった。
(私の勘も衰えたのだろうか……。この男にはルルーシュに似た「拾い物」の感覚を覚えたのだが)
C.C.は、やっぱりこの男を頼るのは止めようかと本気で考え始めていた。
いや、実際に行動に起こすとなると色々面倒なので、ピザを食べてから考えるとするのだが。
ルルーシュも色々と問題は多かったが、基本的には聡明な男だった。
少しばかり肉体労働が苦手で、うっかりすることが多いくらいで、あれはあれで相当に優秀だ。
彼が本当に心底の愚か者ならば、C.C.はいくら腕が立っても捨て置くつもりでいた。
が――とにかく、現時点での一つの真実として。
C.C.の予想を超える範囲で、このヴァンという男は――かなりのバカである。
それだけは紛れもない事実だった。
【一日目 深夜/F−1 小屋】
【C.C.@
コードギアス 反逆のルルーシュ R2】
[装備]ブリッツスタッフ(アイテム効果:炎・中ダメージ、MP消費小 品質:最高魔力)@
ヴィオラートのアトリエ
[所持品]支給品一式、エアドロップ(アイテム効果:水中呼吸が出来る)x3@ヴィオラートのアトリエ
ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2
[状態]健康
[思考・行動]
0.ピザを食べる
1.生還し、不老不死のコードをルルーシュに譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる
2.ルルーシュと合流する
3.利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない
[備考]
※TURN11「想いの力」終了後、日本に戻る前から参戦
※不死でなくなっていることに気付いていません。
【ブリッツスタッフ@ヴィオラートのアトリエ】
振るうことで火球を杖の先端から発射する錬金術のアイテム。
数回使用することで壊れる。他に雷と氷を発するパターンもある。
従属効果、範囲指定はなし。
【エアドロップ@ヴィオラートのアトリエ】
口に含むことで水の中でも息が出来るようになる。
原作の描写では目も見える。
【ヴァン@
ガン×ソード】
[装備]薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、菊一文字則宗@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
[所持品]支給品一式、調味料一式@ガン×ソード
[状態]健康、空腹
[思考・行動]
0.ピザを食べる
1.カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する
2.レイが気にならない事もない。ミハエルは出会ったら倒す。
[備考]
※23話「みんなのうた」のミハエル戦終了後より参戦。
※ヴァンはまだC.C.の名前を覚えていません。
【薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-】
志々雄一派、十本刀の一人。「〝刀狩り〟の張」こと沢下条張の愛刀。
新井赤空作後期型殺人奇剣。刃の強度を保ったまま可能な限り薄く鍛えた、数メートル程の細い帯状の刀。
剣先が僅かに重くなっていて、鞭の如く手首の微妙な返しを使って刃を自在に操ることができる。
張はこの刀を腹に巻いて持ち歩いていた(防具も兼ねており、剣心の攻撃を食らっても大したダメージにならなかったのはこのため)
【菊一文字則宗@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-】
志々雄一派、十本刀の一人。「〝天剣〟の宗次郎」こと
瀬田宗次郎の愛刀。
【調味料一式@ガン×ソード】
ヴァンが料理を食べる際に必ず使用する調味料のセット。
これにはエンドレス・イリュージョンに存在しない類の調味料も入っている様子。
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最終更新:2010年06月12日 01:53