「ぎゃ、ぎゃぁあああ!!何してんのアンタ!!へ、変態!露出狂!!」
「い、いやこれは‥!」
桐乃は俺の半ケツを見るや否や、悲鳴をあげながら俺と逆方向のベッドの端まで退いた。パンツ見えてるぞ。
涙目でパンツを上げる俺に、同じく涙目で顔をゆでダコのようにした桐乃が真っ赤にしながら抗議する。
俺が何をしていたのか、こいつもどうやらようやく、ようやく分かったらしい。
「あ~最悪!今日の夢に出たらどうしてくれんの!?最悪最悪最悪最悪‥‥」
あああ、俺だって最悪だよ。今日は何て最悪な日なんだ。よりによって、妹にオナニーの現場を抑えられるなんて‥
その後も、桐乃はブツブツと俺に批難をぶつけていたようだが、放心状態の俺の耳にはもう何も入ってこない。
ただ俺は目の前の虚空を眺め、この後の人生の身の振り方を考えていた‥もう死にたいよぅ。
いやいや‥ただオナニーを見つかったことぐらい、どうだと言うんだ‥そうだよ、世の中にはもっと辛い事だってあるさ。
「ね‥ねえ」
そうだ、こんな事は苦じゃないんだ。親父にぶん殴られた時に比べれば
「ねえってば」
あ~そうだ、今日は
麻奈美と図書館に行って勉強しよう。うん。もうそうしよう。
「ねえ!!」
「何だよ!!」
うるせえな、こいつまだいたのかよ。俺をどこまで追い詰める気なんだ。もう頼むから部屋から出て行ってほしい。
俺はそう
お願いするべく、横から声をかけてくる桐乃様のほうを見やった。
「‥‥‥」
はて?こいつはどうして、俺の服の裾を掴んで顔を赤らめているのだろう。
俺も細かいことを思考するのをやめ、妹と間近から見つめ合う事にした。何だこの状況。
しばしの静寂の後、妹の方が先に口を開いて聞いてきた。
「で‥どうだった?」
「は?何が?」
こいつは一体何を聞いてくるんだ?Tシャツとパンツ姿の俺は、訳も分からずただ妹と見つめ合う。するとさらに妹は聞いてきた。
「だから‥どうだった‥って聞いてんの‥!やってて、こ、興奮してたの?」
ああ?エロ動画のことか?そりゃあもう赤フレームの眼鏡のAV女優は俺のストライクゾーンを捉えたね。
こうなればヤケだ。もうどうにでもなぁ~~れ♪
「ああ、興奮した!」
俺は心中涙目ながら胸を張ってそう答えた。すると桐乃は「ふ、ふうん‥」とつぶやいて顔を赤らめたまま目を伏せる。
おいおい、何だその態度は。そりゃ目も伏せたくなるだろうけどさ、そろそろ勘弁してくれよ。
顔を上気させたまま俯いていた桐乃だったが、数瞬の後、意を決したようにいきなり顔を上げ、再び詰問してくる。
「やっぱり、兄貴は‥ああいうの好きなの?」
「――す、好きだよ。好きなんだから仕方ないじゃんかよ」
「い、いつもああいうので‥その、ひとりで‥してるの?」
「ぐっ!ああ、そうさ!いつも同じようなジャンルでオナニーしてるよ!!」
「ほんとに?ほんと?」
「本当の本当だよ!」
ああもう何を聞いてくんのコイツ!?しかもそれにことごとく答えちゃう俺って何なの!?
それに、こいつはこいつで「へ、へ~‥そうなんだ‥」とか言いながら頷いてるし‥
ふと気付くと、桐乃の視線が俺の視線と交わらず、俺の顔より下に向けられている。んん?俺の体に何か‥?
「なんかパンツに染み出来てるけど‥何それ?」
桐乃がそう言って指をさした先には、良い所でオナニー中断された為か、悲しそうに小さくカウパー汁が先っちょに染みている俺の股間のテント。
「こ、これはお前が途中で入ってくるから!」
もうこれ以上の恥はないと思っていたが、さらに恥の上塗りをされた。
きゃあとかキモいとか言いながら顔を両手で隠す桐乃。もう耳は真っ赤である。もちろん俺も真っ赤っ赤。
ぐう!もう泣いてもいいよね?頑張ったよね俺?もう完走(ゴール)してもいいよね?
はあ‥もう今日は厄日だ。これ以上まともに桐乃と顔を合わせられる気力はない。
俺は今度こそ、桐乃に部屋から出て行って欲しいと頼むべく、桐乃の方を見て、たまげた。
股間から顔を上げると、鼻息のかかりそうな距離に桐乃の顔があったからだ。
その刹那、電流のような感覚が俺の下半身に走った。月並みだけど、本当に電気が走ったかと思ったよ。
桐乃が俺の股間に手を置いていたからだ。口をパクパクさせてる俺に、桐乃が顔を紅潮させたまま言った。
「途中で中断されるのって、辛いんでしょ?よ、よかったらあたしが抜いてあげよっか?」
「な、何言ってんの!?そんなのダメに決まってんだろ!!」
こいつは何て事を言い出すんだ。いま自分が何を言ったのか分かっているのだろうか。
我が耳を疑ったが、桐乃の方は大真面目なようで、俺の股間をさすり始めていた。
「だ、だって確かにノックしなかったのはあたしがほん~~~~の少しだけ悪かったかも知れないし‥」
ほんの少しどころじゃねーよ!お前さえ気を付ければこんな事にならずに済んだんだよ!
実の妹に股間を触られてドン引きしている俺とは裏腹に、桐乃は顔をうっとりさせながら体を密着させてくる。
いくら実妹とはいえ、ティーンズ誌のモデルをやっているような妹だ。そんな奴が
俺のチンチンをさすりながら俺を押し倒してるときたもんだ。たまったもんじゃない。てかヤバいでしょこの状況?
気付けば俺は完全に桐乃に組み伏せられていた。いつかと同じ状況だ。
「それに、あたしの貸したやつでオナニーしてくれてたのって、う、嬉しい‥かな?」
何が嬉しいの?え、自分のPCをオナニーに使われると嬉しいって、ごめんぜんぜん意味わかんねえよ‥
俺の妹はとんだ変態ということなのだろうか?どこの世界に自分のPCを貸し出して、
オナニーに使われたら興奮する性癖の輩がいるというのだろうか。いや、目の前にいるんだけどさ。
これが俺の立場だったら、嬉しいどころかキレる場面だと思う。だが、妹は嬉しいと言う。