育毛剤氏の復帰を祈って投下します。本人じゃないのであくまでもifです。
「なんでそう思うんだ?」
「なんでって……そんな気がしたから」
カンかよ、まあ、あながち間違っちゃいない。俺は妹が嫌いだった。
勉強もスポーツも何でも出来て、それどころか容姿も上の方。
当然、近所のおばさん連中からはもちろん、親からの評価も俺より断然良かった。
わかるか?この惨めさが。3つも年下の妹に何一つ勝てなかったんだ。
嫌いだと思うどころか居なくなっちまえばいいとさえ思っていたんだ。
しかし、もうそんなことは過去の話だ――
「別に、もう6年も会ってないんだ。好きとか嫌いとか、そんな感情ねーよ」
「ふーん………ずいぶん薄情なんだね」
「あぁ?」
「居ても居なくてもどうでもいいってカンジじゃん」
「………ちげーよ。居ないんだからどうしようもねーだろが。割り切るしかねーんだよ」
「じゃあ、もし妹に会えたらどうする?」
「………謝る。許してくれるかどうかわかんねーけどな」
「え?なんで?」
「俺が妹をシカトしてたのも嫌ってたのも、結局俺のくだらねー嫉妬が原因なんだよ。
なのにあいつを一方的に悪者にしてたからな……………兄貴なのに……」
「……………後悔してるの?」
「……まぁな」
そりゃ、この歳にもなれば変なプライドなんていらないさ。
俺があいつを避けたりしなければこんな事にはならなかったんじゃないか?
何か俺に出来ることがあったんじゃないだろうか?
妹が出て行ってから後悔しなかったわけがない。
あいつの悩みも、あいつの気持ちも、何一つ汲んでやれなかった。
俺がこいつみたいな家出少女を放っておけないのも、そういう気持ちがあるからなんだろう。
「――だから、会いたいよ……会えるなら……」
親父はたぶん居場所を知ってると思う。なんてったって現役の警察官だ。
家出した娘の居場所を調べて把握しておくくらいのことは出来ただろう。
本当に会いたいなら聞けばいい。でも、それは違う気がする。
ずっとほったらかしていたのは俺の方だ。だから、俺が自分で見つけないと意味がないんだ。
……なんで俺はこんな話してるんだろうな?
やっぱり酒のせいかそれとも睡眠不足のせいか。
「それで警察になったんだ」
「ふん!その通りだよ。もういいだろ、いい加減寝せろ」
リノに背を向けて本格的に寝に入ろうとする。
もう満足したのだろうか話しかけてこなかった。
――――シュル…
―――シュル……
――パサッ……
衣擦れのような音が聞こえる。布団が合わずに頻繁に寝返りでもしてるのだろうか?
「………ねぇ」
またかよ!いつまで相手すれば寝させてくれるんだこの女は!
もういい加減無視を決め込んで寝ないと明日がキツイ。放っておこう――
――そう思っていたらベッドの軋む音の後、足音が聞こえてきてリノがコタツに入ってきた。
何を考えてるんだ、俺からベッドを奪っておきながらそれを捨てるだと?まったくふざけてやがる。
本来の用途とは違う為に二人も布団に入ると相当狭い。
必然的に、リノは俺の体に抱きつくような形で横になっていることになる。
「……何考えてんだよ」
「いいじゃん、一緒に寝よ?」
「人をベッドから追い出しておいて何言ってやがる」
「じゃ、ベッド行く?あたしもそっちの方がいいし」
「あのなぁ…」
顔を見て話をしようと寝返りをうちリノの方へ顔を向けると、そこには驚愕の景色が広がっていた。
「んな、な、なななななななんでハダカなんだよっ!?」
「ちょっ!ばか!声が大きいって!」
服はさっき乾かしていたはずだから着れないなんてことは無い。
普段着だから寝苦しいといったって下着まで脱ぐことないだろ?
しかも俺にしがみついてくる必要がどこにある!?
「何考えてんだおまえは!?」
「そっちこそなにそんな狼狽えてんの?あ、もしかして童貞?」
「ひ、人をからかうのもいい加減にしやがれ」
「い、いいじゃん。あ、あたしも一緒だし」
「は?」
「だから!あ、あたしもそういうコトしたことないし……」
つまり処女ってことか?ふざけんな。
よく知りもしない男の家にホイホイ上がりこんで傍若無人な振る舞いをして、
寝てる男に自分から裸になって抱きついてくるような家出少女が処女だと?
説得力ねーにもほどがあるだろ!
「……だったらなんでいきなりこんなことしてんだ?」
にもかかわらず、処女だというリノの言い分を信じたのは、
抱きついたこいつの胸から伝わってくる心臓の鼓動が、こっちが驚くくらい激しかったからだ。
「や、なんていうかさ。チャンスだと思って」
はあ?ふざけてんのかコイツは!
処女捨てるチャンスがありゃ誰でもいいってことかよ!?
「あ、あたしさ、今まで処女でいられたのって奇跡かもしれないんだよね」
「………何の話だよ」
「ホラ、あたしっていわゆる家出少女ってヤツだし、
ソレ目的で声かけてくるオトコとかいっぱいいるじゃん?
ママのお店に来る連中からそういうことされそうになったこともあったし……
あ、もちろんママは知らないよ。自分で何とか逃げてたから」
「ヘヴィだな……」
「うん、やっぱり初めてってそんな相手にとられたくないじゃん。
みっともないかもしれないし綺麗事かもしれないけど、初めては好きな人に……
それが無理でもちゃんと“いいな”って思える人にあげたいじゃん」
「……それが何で今日会ったばっかりの俺なんだよ」
「初めてをあげるなら……あんたみたいな男がいい」
「……お前に俺の何がわかるっていうんだ?」
「優しいことぐらいわかるよ」
しがみついてくる手が震えている。怖いなら無理しなけりゃいいのに。
コイツは一体何に怯えて、何を求めてるんだろう?
「いざって時に責任とれねーからやめろ」
「あはっ、言うと思った」
「なんだと?」
「きっとあんたならそう言うと思ってた」
「じゃあ、さっさと服着て寝ろ!」
「やだ」
「テメっ、いい加減にしろ!大体そんな危ない目に会うくらいならおとなしく家に帰りやがれ!」
我ながら馬鹿なことを言ってしまった。
誰も好き好んで家出なんてしない。家に居ても安心できないから家出するんだ。
「………あたしだって帰れるなら帰りたい」
「……泣くくらいなら帰ればいいだろうが……」
「……居場所がないだもん……」
『居場所がないなんてお前の思い込みだ。両親はちゃんとお前を待ってる――』
そう言えたらどれだけラクだろう?でも俺はそんなことを軽々に言えない。
ごく僅かとはいえ、居るからだ。ロクでもない親が。
「……それでも……一度帰ってみたらどうだ?」
「勇気が出ない……」
「一人で生きていくって思う方が、よっぽど勇気がいると思うけどな」
「一人なら……誰にも裏切られずにすむよ?」
「……世の中裏切るような奴ばっかじゃねーよ」
「じゃあ、あんたが教えてよ。優しい人もいるって証明してよ」
「………意味わかんねーよ」
「鈍感!」
「悪かったな」
そっと髪をなでてやる――
こいつも色々あったんだろう。泣きたくなることも怒りたくなることも。
それこそ、人間不信になりかけるようなことも……
しがみつく腕の力をゆるめたリノは涙で濡れた顔をそっと近づけてきた――
ん…ちゅ…ちゅぷ……ちゅ……
初めてキスした相手がロクに知りもしない女子高生ってまずいなぁ……
そもそも警察が未成年に手を出すなんてヘタすりゃ懲戒免職モノなのに……
「っはぁ…」
顔を赤らめたリノがこちらの心配を見透かしたように見つめてくる。
「あ、あのさ、なんか誤解してるみたいだけど、あたし一応ハタチだからね」
「……そうなのか?」
「そだよ、………だからママは気兼ねしないであたしを置いて逃げたんだと思う」
………………そういうことか。
もうわかったから。だからそんな泣きそうな顔するな。
「………ここでいいのか?」
「……どっちでもいいけど………ベッドがいい」
どっちだよw素直じゃねーなあ、この性格じゃ苦労することの方が多かっただろうに。
意地を張りたい気持ちもわかるが、つらい時にはつらいと言った方がいいんじゃねーか?
「やめて欲しくなったらちゃんと言えよ?」
「うん……」
ギシッ―――
「あ、あんまりジロジロ見ないでよねっ!?」
「見なきゃ出来ねーよ、お前の言う通り童貞なんだよ俺は!」
「へ、へぇ、やっぱりあたってたんだ」
「ああ大正解だよ。……彼女作ろうとか、そういう気になれなかったからな」
ベッドに座るリノに覆いかぶさるようにしてもう一度キスをする。今度は俺からだ。
俺の人生にこんな展開があるなんて思ってもいなかったが、
相手が自分以上にパニくってるのを見てると逆に冷静になれるもんだな。
「っふぅ…」
服を脱いでお互い全裸になった俺達はそのままベッドに倒れこんだ。
最初に見た時にも思ったことだが、コイツ相当美人だな。
自分でも言っていたがこの容姿で一人家を飛び出して暮らしてきて、
誰にも手を付けられなかったのは本当に奇跡なんじゃなかろうか……
「な、なに?あたしの美貌に見とれてるの?」
「ああ、そうだよ。……お前綺麗だな、顔も、体も」
「な、な、なっ…!」
「返されて照れるくらいならアホなこと言うな」
「…んっ!」
恥じらうリノにキスをする。目を閉じればこいつも少しは落ち着くだろ。
頬を撫でながら優しく唇を離す――
リノのちょっと拗ねたような表情が印象的だ。
「あんたホントに童貞?やけに落ち着いてるじゃない」
「お前があんまり慌ててるから逆に落ち着いちまったんだよ」
「く、なんか悔しい…! っあ!!」
そっと胸に右手を当てる――
さっき抱きつかれていた時に感じた鼓動が手のひらから強く伝わる。
内側からの波打ちと、その肌の滑らかさと柔らかさに俺は心奪われた。
「ふっ…ん…!」
リノの様子を見ながら出来るだけ優しくそのふくらみを揉みしだく。
左手で頬と髪を撫でながら右手でその左右の乳房を交互に愛撫していく――
やがて俺はその頂上にある突起の誘惑に負けて、そっと口を近づけた。
「ひゃあ!!―あっ!はンッ!!」
甘い――
いや、実際には甘くなどないのだろう。
ただリノから立ちのぼるどこか懐かしい香りが、俺の味覚を支配しているんだ。
――ちゅ……れる……れる…
舌先でサッカーでもするように口の中で乳首を転がす。
そのたびにリノが嬌声を上げてその体が跳ねる――
「あっ…!やあぁっ…!!」
俺の頭を抱きかかえるようにリノの手が伸びてきたが、俺はその手をとってしっかり握り、
舌を次第に下半身へと移動させていった――
「ぁんっ…んっ…」
ヘソ、脇腹、足の付け根――
全ての部位に優しく口づけをしながら、リノの反応が良い部分を重点的に責める。
強く握ったその手にはリノの指と爪が食い込んでくる。
だが、その手のひらから伝わる熱が俺の行動をさらに促していた――
うっすっらとした茂みの中のワレメに舌を伸ばす――
リノのソコはもう既に湿っていた。
「――っあ!? ひゃんっ!!んっ!んーーっ!!」
ぴちゃ…ぴちゃ…
水音を立てながらリノの秘所を舐め回す。初めて味わうその蜜の味を堪能しながら――
「あ…あぁ…っ!!」
リノの反応を窺いながら続ける。鼻先にあたる小さな突起にも刺激を加えながら――
「ひっ! いっ…! ぁあっ!!」
両側にある足が俺の顔を締め付けてくる。
止める為か、離さないためか――どっちなんだろうな?
閉じようときつく締め付ける足と違って、
さんざん舐め回したそのワレメはパックリと口を開き始めた――
顔を上げて握りしめていた手を離す。脇から足にかけて優しく撫でながらそっと足を開かせる。
リノ上気した顔を見つめながら、最後にもう一度だけ聞く。
「いいんだな?」
「……うん」
息を荒げながら受け入れる返事をする。ならばもう何も言うまい。
俺は自分のいきり立った分身をリノの中に埋めていった――
「ひっ! いたっ!! あぁ!!」
俺のソレにブツリと何かを引き裂いてしまったような感覚が伝わり、
見てみると二人の結合部から色のついた体液が流れているのが見えた。
「血が……、痛むか?」
「…うん、ちょっと痛い…けど、平っ気ぁ!!」
大丈夫そうな様子を見て根元まで押し込んだ。
「ひっ! くぅ!! ――あぁっ!!」
暴れるリノに体をぴったりと重ねて腕を回し抱きしめる。
優しく、それでいて強く。
「ふっ うぅ~!! んっ! んっ!」
唇でリノの口を塞ぎながら、少しずつ動く――
ゆっくりと引き抜いて、また埋める。その繰り返しだ。
「はぁ! あっ! んっ!」
頬に流れる涙を舌でそっとすくいながら優しく体を撫でる。
だが俺自身、初めての快感に限界はもうすぐそこまで来ていた。
「…クッ! リノ、俺もそろそろ…!」
「うんっ…! 来て、京介…!」
名前を呼ばれた時、コイツの髪に付いているヘアピンが目に付いた。
どこかで見たことがある気がする、これは――?
「き…リノ……!?」
「あ、ああ!!京介っ!京介っ!!」
一瞬、意識が別のところに飛んだ間に、リノの足が俺の腰に巻きついて来て
射精の瞬間に引き抜くことが出来なかった―――
「……どうすんだよ俺」
避妊具もつけずに行為に至ってしまったのは明らかに俺の落ち度だ。
そもそもそんな準備がなかったのならするべきじゃなかった。
「何落ち込んでるの?」
「……これで後悔しない奴が居たらただの馬鹿だろ」
「ちょっ!?それって失礼じゃない?相手があたしで不満だっていうの!?」
「ち、ちげーよ馬鹿!!お前みたいな可愛い子が相手なんだから不満なんてないっつーの!
ただ……、その……、避妊を…しなかったワケだろ?それを公開っつーか反省してんだよ…」
「ああ、いざという時のセキニンってやつ?」
「そうだよ!!っていうか何で男の俺が狼狽えて女のお前が落ち着き払ってるんだよ?
どう考えてもこの状況で焦るべきなのは女のお前の方だろが!!」
「あ、あたしは出来たら出来たで別にいいかな~って」
「何言ってやがる……犬猫拾うのと訳が違うんだぞ」
「誘ったのあたしなんだし別にあんたに責任とってもらおうなんて思ってないよ?」
「俺が嫌なんだよ!そういう無責任なことはしたくなかったの!!」
こういう事は後から後悔するんだ。いや、後から悔やむから後悔って言うんだ。
もし俺の妹がこいつみたいなことになってたらと思うと胸が張り裂けそうだ。
頭をバリバリと掻き毟りながら自責の念にかられていたところ、
背中に柔らかいものが当たってきた―――
「本気で悩んでるんだ?」
「………わりーかよ」
「ううん、嬉しい。あんたやっぱり優しいね」
さっきまでとうって変わって今度は俺がリノに慰められてるような状況だ。
ただ、だからと言って解決するわけでもない――
「ちゃんと見つけれたから良かった」
「……何の話だ?」
「あんたが聞いたんでしょ?なんでこんなところに居るんだ?って」
「………そうだよ、お前彼氏探してたんじゃなかったのか?」
「男探してるっては言ったけど、彼氏探してるっては言ってない」
「じゃあ、誰を探してたんだよ」
「ん~?あんたみたいに優しい男」
甘えるようにギュッと抱きついて摺り寄せてくるリノに、不覚にもドキドキしてしまう。
隠そうにも鼓動が早まってるのは聞こえてるんだろうなぁ……
「……おだてたところで何もでねーぞ?」
「ううん、ちゃんと勇気が出たよ」
「勇気?」
「うん」
ひょっとして家に帰る気になってくれたのか?
それなら、それはそれでめでたいことだ。
だが家出した娘が妊娠して帰ってきたとなれば、またひと悶着あるに違いない。
さっきの話を聞く限り、リノの父親はかなり厳格な人物のようだし――
「帰るのはいいけど、もし何かあったらちゃんと俺にも連絡しろよ?」
「何かって何?」
「……また家に居られなくなりそうだったら、相談くらいには乗ってやる。
それにその…万が一妊娠してたりしたらおおごとだろうが」
「気にしなくていいって言ったのに……、でもアリガト」
リノに引き寄せられるまま体を寄せて二人で横になる。
こいつの年齢が二十歳過ぎてるというのであれば、
仕事や住むところを見つけさえすれば普通に生きていくこともできるだろう。
保証人が必要な場合は俺がなってやればいい。
万が一の場合は……責任をとる。こいつの居場所になってやればいい。
場合によっては子供だけ引き取ることもあるかもしれない。
何にせよリノ一人に負担を押し付けるような真似だけはしないように…
色々と先のことを考えながら俺は眠りに落ちて行った―――
pppppppppppppppppppppppppppppppp………………
強烈な電子音に頭をかき回されながら目を覚ます。
やけに寒いと思ったら裸じゃないか。昨夜はあのまま寝てしまったのだ。
リノはどうなんだとベッドを見渡すも彼女の姿は無い。
「あれ?どこに行ったんだ?」
部屋を見渡し、耳を澄ましても、俺以外に人の気配はない。
それどころかあいつの服も無くなっていた。
「帰った……のか?」
コタツの上にある書置きを見ながらひとりごちる――
「『またね』かよ。」
不思議と置いて行かれたような気はしない――
それどころか、ずっと探していた誰かを見つけたような気がするのはなぜだろう?
窓を開けて朝日を入れる――
いい予感がする、なにかとても楽しいことが待っていそうな、ワクワクした予感。
こんな明るい気持ちになったのは久しぶりだ。
「さて、仕事に行かないとな」
昨日までの疲れもどこ吹く風に、気力に満ちた調子で家を出る準備をする。
次に家に帰った時、きっとそこには何かとてもいいものが待ってそうな気がする――
【Fin】
最終更新:2011年04月28日 09:32