兄貴の消えた日 03



 ユラユラと体が揺られる。フワフワとした浮遊感。それにこの温かいぬくもりはなんだろう。

「ああ~、くそ。上りにくいな。桐乃目覚まさないだろうな? 今目を覚まされて暴れられたらたまらねえぞ」

 すごく近い場所から声が聞こえる。それはあたしが求めてやまない、あいつの声だ。

「桐乃が、軽かったのがっ、せめてもの救い、かっ!……ぃしょっと!うし、後は部屋まで運ぶだけだな」

 うっすらと開く目から見えるのは思ったとおり、京介の顔だ。
 あたしは今一体どういう状況なんだろうか。もしかして、京介に抱きかかえられてる?
 でも、たしか京介は……ああ、そっか。これは夢か。ずっとあたしが見続けていた夢。
 ちょっと考えればわかりそうなことだ。あたしの妄想の産物の京介が、こうしていること自体が既に夢だって言ってるようなもんだよね。
 あはは。なんて、都合がいいんだろう。
 でも、夢ならもう何も遠慮も隠す必要も、ないかな。意地を張らなくてもいいのかな?
 あたしが求めるままに京介を求めても、いいのかな?

「ふう。こうして大人しくしてれば可愛いのによ。普段の憎たらしさが嘘みてえだよ。ホント」

 あんたあたしのことそんな風に思ってたんだ。……わからなくもないケド。
 憎たらしいってことぐらい……自覚してる。素直になれない自分。 でも、それは京介も悪いんだから。
 この数年間、ずっとあたしを放っておいたくせに。
 いっつもフラフラと他の女とイチャイチャして。なのにあたしにはそっけなくて。
 そのくせ、いざという時は助けてくれて……そんなの、あんたにどう接していいかわかんなくなるに決まってんじゃん。

 ガチャリ、と扉が開く音がする。
 それからユラユラとした感覚が少しした後、ボフンとやわらかいものの上に置かれた。
 かぎ慣れた匂い。これは……あたしのベッドかな。多分そう。どうせなら京介のベッドがよかったのに。
 ベッドに横にされたあたしに布団が掛けられる。
 狭い視界の中、あたしに「おやすみ」と言って振り返る京介の姿が見えた。多分部屋に戻るんだろう。

 ――嫌だ。行かないで。もう、あたしを一人にしないで。傍にいてよ。

 そんな想いがあたしの心を埋め尽くす。そのせいだろうか。あたしは京介の袖の裾を無意識のうちに掴んでいた。

「桐乃?」
「兄貴……」

 振り向いた京介の目と視線が交わる。
 京介があたしを見てくれる。掴んでいる手が、今京介がここにいることを教えてくれる。ただそれだけの事実が嬉しい。

「わりぃ。起こすつもりはなかったんだけどよ」
「……ううん。…………わざわざ運んでくれたんだ?」
「ん、お、おう。いや、一応起こそうと思ったんだぜ?
 でも声かけてもゆすっても起きねえし。このままリビングで寝かしとくのもまずいかなって……」

 しどろもどろになりながら言い訳をする京介。そんな京介が可愛く見えて内心クスリと笑った。
 でも、少し前までの京介ならそこであたしを部屋まで運ぼうなんて思わなかったはず。せいぜい、寝ているあたしに毛布をかけるのが関の山なはずだ。

「毛布、掛けてくれればよかったんじゃないの?」
「いや、なんか麻奈実から連絡があってよ。
 お前の様子がおかしかったから早く家に帰ってやれって言われて……そんで帰ったら、なんかお前がうなされてるみたいだったし……」


 『麻奈実』。その名前を聞いた瞬間、さっきまで嬉しいという想いに染められていた心にドロリとしたものが流れ込んだ。
 黒い『それ』はあたしの心を一瞬にして侵食していく。
 『それ』が何なのかなんて、自分じゃわかりきってる。どこまでも醜い、そんな感情。ギリッっと歯を食いしばった。

 ――あんたの口からあいつの名前なんて聞きたくない!

 黒い『それ』は『嫉妬』という明確な形を持ってあたしを支配する。
 京介の腕を力いっぱい握り締めてグイッと自分のほうへと引っ張り込んだ。突然のことに京介は対処できなくてこっちに倒れこんでくる。
 あたしは京介を引っ張った勢いを利用して、寝起きとは思えないような機敏な動きで京介と体を入れ替えて馬乗りになった。
 ぐつぐつと煮え返る心とは裏腹に、頭はいやに冷静だ。
 もう随分昔のことのように思える最初の人生相談。そのときと同じ構図になる。違うのは、ここがあたしの部屋か京介の部屋かってことぐらい。

「お、おい。なんのつもりだ!? 」
「うっさい。黙って」

 俯いてるあたしの顔は京介には見えてないはずだ。でも、あたしの雰囲気が普通じゃないことに京介も気付いたみたいだった。

「黙ってって……やっぱりお前何かおかしいぞ。麻奈実が言ってた通り、やっぱり何かあったんじゃ……」
「黙れって言ってんでしょ!!」
「!!?」

 これ以上その名前を聞きたくない。あたしは京介の口を塞いだ。自らの口を使って。
 これがあたしのファーストキス。ムードも何もあったもんじゃない。本当に泣きたくなった。

「んん!? ん、んうぅぅぅう!!?」
「ん、んふっ、 ん…んん! んっんっ、んぅぅう!」

 目を見開いて暴れる京介を、無理矢理押さえつけながらキスを続ける。
 本当はこんなことしたくなかった。
 あたしだって女の子だ。初めてのキスは、夜景の綺麗な場所で好きな人と、って思ったこともある。大好きなエロゲに出てくる妹達みたいに、両思いの相手といつまでも思い出に残るようなキスをしたかった。
 だけど、結果はこれ。嫉妬に駆られて、どうしようもない自分の想いをおさえきれずに、無理矢理押し付けるようなキス。こんなの……あんまりだ。でも――京介とキスしている。そんな今に歓喜をあげている自分も確かに存在した。
 素直になれなくて、周りの目を気にして、京介の態度にやきもきして、ずっとくすぶり続けた想い。それが今、キスを切欠にあふれ出して止まらなくなってる。
 愛情と嫉妬、歓喜と失望、これが現実であってほしいという希望と夢であるという諦め。色んなものが混ざり合ってあたしの理性を狂わせていく。
 もう―――止まれない。止まるもんか。

「んん~~っ、ぷはっ! ハァ、ハァ…… お、お、お、お前何のつもりだ!? 流石にこれは冗談じゃすまねえぞ!?」
「……冗談なんかじゃないし」
「なんだって?」

 京介の言葉を聞かずにあたしはその場で膝立ちになった。
 そのまま服に手をかけて、スルッと一気に脱いだ。今日着ていたのはワンピースタイプの服だったから、一枚脱げばあたしが身に着けているのは下着だけだ。
 こんな姿を京介に見られてると思うとすごくドキドキする。心臓の鼓動とまらない。    

「ちょ!? ば、バカ! いきなり服脱ぎだすなんてお前何考えてやがる!? 服着ろ! 服!それと俺の上からどけ!」
「ねえ、あたし綺麗かな?」
「人の話を聞けよ!い、今はそんなこと言ってる場合じゃねえだろ!」
「何で?」
「何でって……」 

 真っ赤な顔で狼狽する京介の手をとって、あたしは自分の胸へと押し当てた。
 大きな手。胸の大きさには少しだけ自身があるけど、京介の手にはスッポリとおさまってしまう。

「んっ――ほら、あたしこんなにドキドキしてる。わかる?」
「あ……う……」
「冗談、なんかじゃないから。あたしは、ずっとあんたとこうなりたかった」

 本心からの言葉だった。
 白状してしまうけど、あたしは今までに何度も京介を想って自分を慰めたことがある。
 アメリカへ発つ前まではそんなことは一度もなかった。でも、京介が迎えに来てくれて、自分を必要としてくれるんだと思って、
 そして家でエロゲをしていたら、あたしはいつの間にか自分を慰めていた。京介に、触られるのを想像して。
 それはきっと、自分の中にある気持ちを誤魔化すことができなくなったから。京介のことを、男として好きだということが。
 それからというもの、あたしは自分を抑えることが出来なくなった。エロゲに自分達を重ねて慰めたこともあったし、
 自分で想像してスることもあった。壁一枚向こうで、京介が寝ているのをわかっててベッドでしたこともあった。

「で、でもお前、俺のことキモいとかウザいとか言ってたじゃねえか」
「あれは……んっ…た、確かに言ってたケド、別にあんたのこと嫌いなんて…ぁん!言ったこと、ないし……」
「で、でもだな……お、俺達は兄妹だぞ。こ、これは、まずいだろ!?は、早く手を離せ!」
「んんっ…そんなこと、言ってるけどさ兄貴…んぅっ!さっきからあんたの手、あたしの胸揉んでるじゃん」

 そう、こいつは口ではそんなことを言っておきながら、あたしの胸をさっきかずっと揉んでいるのだ。
 さっきから途中途中で言葉が切れるのもそれが原因。……この変態スケベシスコン兄貴め。

「こ、これはっ――!」
「いいよ、兄貴なら。だってあたし、あんたのこと―――好きだし」
「!?」

 すっごい驚いてる。それも仕方ないか。これはあたしが今まで素直になれなかったせいなんだから。

「す、好きって、マ、マジで言ってんの?お前」
「うん。あたしはあんたが好き。ていうかここまでやってそこに行き着かないあんたもどうかと思うけどね。
 ……もう逃げない。誤魔化しもしない。あんたがどう思おうと、あたしの気持ちは変わらない」
「そ、それって兄貴として好き……とかっていうことは……」
「しつこい。あたしはあんたが、一人の男として好き。誰にも渡したくない。だから――あんたの初めて、あたしが貰うから」
「! まっ――!?」

 体を少し横手にずらしながら、さわっと京介のズボンを押し上げる『それ』をなで上げる。
 あはは、今ビクってした。あたしが気付いてないとでも思ってた? 気付かないわけないじゃん。こんなにおっきくしちゃってさー。
 やっぱりこいつ、あたしで興奮してる。もっともっと、あたしだけで頭が一杯になればいい。あんな女のことなんか忘れるぐらいに。

「ほら、口じゃそんなこと言ってるくせにこれはなんなの? 妹の体で興奮するとか……もうシスコン否定できないよね。あんた」
「や、やめろ。桐乃」
「いーや」

 そう言ってあたしは京介にもう一度キスをした。

「はん、んちゅ……ん、ん、んぅぅ」
「んぁ! ん、ん、んンっ!、んっんん!」

 キスしながらピクッピクッって時折震える京介がヤバイくらい可愛い。まあ、あたしがキスしながら京介のものを撫でてるせいなんだケド。
 京介の抵抗が弱まったのをいいことにあたしは京介の口に舌を差し込んだ。京介は一瞬目を見開いたけど、もう抵抗するのを諦めたのかそれ以上の抵抗はなかった。

「んふっ……んく、んふぅ……ん、んっ……んちゅ」

 あたしの舌が京介の歯を、舌をなめあげるたびにくちゅくちゅといやらしい音がする。そんな音が耳を震わせるたびに体が熱を持ってあたしを興奮させる。
 すごい、これ……気持ちいい。こんなの気持ちよすぎてやめらんない。こんなに京介とキスするのが気持ちいいなんて思いもしなかった。

「あん、ん、んっ……んちゅる、んは!ぁんん……! んふ……んちゅ、ちゅ、ちゅる……」

 もっと、もっと、もっと……。
 今まで我慢してきたものを吐き出すようにキスを続けているうちに、熱を帯びる自分の体の奥から湧き上がってくるものを感じた。
 え? うそ……あ、あたし……キスだけで、イっちゃう――!?

「んちゅっ、ん、ん、…んふぅ!?」

 あ、あ、クる、クる……! きちゃうよぅ――!
 そんな風に思っていたときに、あたしが一方的に絡めていた京介の舌がいきなりあたしを絡めとる様に動き出した。
 お互いの舌が絡み合うことで不意打ちのように倍増した快感に、あたしは一気に上りつめていく。

「ん、んむぅっ、んく、んはぁ……んちゅる、ちゅるる……ん!ん!……っ!…っ!」

 絶頂を寸前にした体はピクピクとした震えをあたしに伝えた。
 だ、だめ……もう、我慢できない。あたし……京介と、京介とキスしながら――イっちゃう!
 イく、と思ったその瞬間、あたしは京介にぎゅうっと抱きしめられた。

「んん~~~~~~!!!!」

 頭がホワイトアウトするように真っ白になる。ビクビクと快感に襲われて痙攣する体は、京介に抱きしめられていて身動きが取れない。チカチカとする視界に、自分がイったんだって自覚した。

「んぷはぁ……ハァ……ハァ…」
「き、桐乃? だ、大丈夫か?」
「ば、ばか……ハァ…ハァ…あんたがいきなり抱きしめるから、イっちゃったじゃん……」
「す、すまん」
「あやまんなくていいっての。……すっごく、気持ちよかった……」
「そ、そうか?」
「うん」

 京介に抱きしめられて、その温かさを感じながら余韻に浸る。
 すごく幸せな時間。でも、こいつはどういうつもりなんだろうか。さっきまであたしを拒否してたのに……どうでもいいか。どうせこれは――――夢なんだから。

「なぁ、桐乃。俺……」
「ところでさあ」
「…っ、な、なんだよ」
「『これ』、さっきより大きくなってない?」
「!」

 京介に抱きしめられてるせいで位置的にあたしのお腹辺りにある『それ』は、さっき以上に大きくなっているような気がする。ズボンの上からでも熱いのがわかった。

「こんなにパンパンにしちゃって……今楽にしたげる」
「ちょ、ま!?」

 ジ~~~~~。
 京介に起き上がられても面倒だから、あたしは器用に京介に体重を預けながら下半身を浮かせてズボンのジッパーを下ろす。
 山になってるせいで上手くいかないかと思ったけど、案外すんなりとジッパーは降りた。
 そのままテントを張っている下着に手を伸ばし――一気に『それ』を剥き出した。
 それを見たあたしは――

「……キモッ!」
「てめ、人の勝手に出しといてなんだよそれは!」

 だって仕方ないじゃん。エロゲじゃモザイクかかってて形なんてよくわかんないし……
 じたばたと暴れる京介を押さえながらそんなことを考える。もう、そんなに暴れないでよ。押さえるのも大変なんだから。

「んぁ!?」
「うっ!?」

 バタバタ暴れる京介のチ○ポがずりゅっとあたしの股間をこすった。その時にピリッとした感覚が体を走って声をあげてしまう。
 落ち着いたと思っていた体はまだまだ熱を持っていて、それを切欠にまたスイッチが入ったようにしてあたしの興奮を高めていく。

くちゅり

 そっと自分の股間に手を伸ばしてみれば、一度イってしまったせいか、そこはもうびしょびしょに濡れていた。
 下着が意味を持たないぐらいに濡れているのは、自分の興奮の度合いを示してるともいえた。
 くちゅくちゅと自分のをいじりながらあたしは自分の上半身を起こして京介の顔を見下ろす。

「ん!…兄貴、見える?…んくっ。あんたとキスしてて、あたしのここ、こんなになっちゃった…」
「く、桐乃、それは……! んおっ!」

 チ○ポの裏筋に自分の股間をあてつけるようにしながら自分でもそこをいじっていく。くちゅくちゅと音を立ててこすれる感じがたまらない。あたしの股間とこすれる刺激が強いのか、京介も苦しいような、気持ちいいような顔をしている。
 あたし、京介に見られながら、京介でオナニーしてる……!

「んくっ、兄貴の、エッチ…んっ! なに、妹のシてるところ凝視してんの? キモいっての……んんん! ハァ…ぁふっ…そんなに見たいなら…あんたも手伝ってよね…んぅっ!」
「くそ。桐乃…っは、お前、今度は何を…?」

 あたしは自分のブラのフロント部分に手をかけて――プチンとそれをはずした。
 ハラリと落ちるあたしのブラ。今、あたしの胸が京介の前に、さらされてる。何もつけてない、そのままの形で。
 京介にはどう見えてるんだろ。あたしの胸は、京介の好みかな……そういえばこいつ、巨乳好きだったっけ。

「っ、…見える? あんたの好きなお、おっぱい。こんなに乳首もビンビンになってる……!」

 ヤバ、なんかおっぱいって言ってて超恥かしいんだケド。でも、なんか余計に興奮してきたかも。

「…………ぞ」
「え?」
「もう……止まれないからな!」
「あんっ」

 ぐわしって音が聞こえるような勢いであたしの胸が京介の手に掴まれた。そのままぐにゅっぐにゅっともみしだかれる。

「ちょ、ちょっと、んんっ! あ、あんた勝手にひとのんぁあ!? ふぅ…んくっ! 胸を……っ!」
「お前が…手伝えって、いったんだろうが…っ!」
「そ、だけど…ぅふん! はっ、んあっ、んく、…んきゅぅ!? あっ…んは! ちく、び…んくっ…やだぁ…!」

 あたしのおっぱいが、おっぱいが京介にもまれちゃってる。それに、乳首が手の平に転がされて……刺激がつよすぎちゃうよぉ!

「桐乃、気持ちいいのか?」
「ば、ばかじゃん……うぅんっ、あ、あんたの手なんか、んくっ、きもちいいわけ……」
「そういいながら、ここはさっきよりも……」
「んぁぁあっ!」

 きゅっと乳首をつかまれたせいでのけぞりながら悲鳴じみた声をあげた。
 そんなあたしの反応を見た京介は、そのまま乳首を離さずにコリコリ、キュッキュッとあたしの乳首をいじめる。
 だめ、ダメだってきょうすけぇ。そんなにされたら、あたしがまんできなくなっちゃう!

「あぁん! あ、にき…っ! そんなに、乳首んぁっ、ばっかりぃ……あはぁっ」
「だってお前すっげえ気持ちよさそうな顔してる」
「ば、ばかぁ、 みるなぁあ!」

 恥ずかしくて両手で顔を隠すけど、京介の手は動くのをやめなくてどんどん気持ちよくなってくる。
 そのせいか、気付かないうちに自分で腰を擦り付けるように動かしていた。ぐちゅぐちゅと聞こえる音もさっきより大きい、気がする。
 や、ヤバイって。これ以上ちょっと、がまんむり。京介の手が気持ちよすぎて、あたまへんになるっ。

「ほら、桐乃。もっと……」
「だ、だめ!」
「うお!?」

 はぁはぁと肩で息をつきながら何とか京介の手をあたしの胸から離すことができた。
 さっきまで触られてた胸がジンジンと熱い。まだ感触が残ってるみたい。
 股間に手を伸ばす。そこはもう準備なんて必要がないぐらいに濡れてる。今からここに、京介のを…

「兄貴。あたし、もう我慢できないから……いいよね?」

 自分の下着をずらして京介のをそこにあてがう。くちゅり、と音を立ててキスをしたそこから熱さが伝わってくる。
 手の平なんか比べ物にならないぐらい熱い、それ。
 その様子をまるで呆けたように見つめる京介は、何を考えてるんだろうか。

「いくよ……?」
「――! まっ」

 京介が入ってくる。十分以上に濡れていたあたしのそこは、思っていたよりもスムーズに京介を飲み込んで行く。ズズズとある程度は入ったところで、覚悟を決めた。

 ツプ、ズブブブ、グチュン!  ――――――…………っ

「ふぅぅううんっ!! …っ、ハァ、ハァ、…………うっ、ぐ……」
「くお、あつ……! 桐乃、お前泣いて……」

 あたしの顔を見て京介が焦ったように声をあげる。京介が言ったように、あたしは泣いていた。
 痛かったわけじゃない。痛かったから泣いたんじゃない。むしろ、痛みで泣けていたらよかった。

 今、これが夢なんだと思ってても、どこかで期待してた。痛みがあれば、これは夢なんかじゃないのにって。現実なのにって。
 京介を確かに膣内に感じるのに、でも、そこに至るまでに痛みがなかった。あたしは、処女なのに。
 それだけで十分だった。
 これは夢だ。どこまでも夢なんだ。最後には全部消えてしまう、ひと時の夢。
 だったらもう遠慮することなんてない。あたしの全部をぶつけよう。

「桐乃、痛いなら無理は……」
「大丈夫。痛くなんかないから。それよりも、動くから……勝手にあんただけでイかないでよ?」

 京介の胸に手を置いてゆっくりと腰を上下させる。

 じゅぷ、じゅぶぶ、ずぷ、じゅぷん……

「は、あふっ……んん! 兄貴、気持ちいいよ。ああぁ……んくっ!」
「く……俺も……すっげえ気持ちいい。ぬるぬるなのに、締まって……!」
「んんん……ホント? じゃあ、もっと……あ、は……はやく、するからね」

 じゅぷっ、じゅぽっ、じゅっ、じゅっ、じゅぶ、じゅぷっ。

 動きが速くなった分、勢いがついて京介がコツコツとあたしの奥を叩く。そのつど頭の先まで突き抜けるような快感があたしを追い詰めていく。

「ああぁ、あんっ、ん、ん、んぁあっ! 兄、貴……! すごい、すごいよ……んんん! うぁ、あっ! あんたのが、コツコツって、あたしの奥まで届いてる!」
「くぅ!桐乃……っ」

 体の中でどんどん大きくなっていく快感に、力が入れられなくなってきた。そのうちに手をつく体勢を維持できなくなって、京介の体の上に倒れこむ。

「ん……兄貴、あにきぃ……んちゅる、ちゅ、ちゅる、んん…っ!は、んむぅ…っ……っ」
「ちゅび、はむぅ……き、りの…んちゅ、ちゅ、んん」
「んんん……はぁっ、はっ……あにき…好きって、好きって言って……」
「桐乃…?」
「お願い。あたしの、こと……好きっていって……!」

 夢の中だけでもいい。京介から好きって言ってほしい。

「桐乃……好きだ」
「……!」
「好きだ……好きだ、桐乃!」
「ああ……あにき……っ、きょう、すけ……京介!」

 一番聞きたかった言葉。怖いぐらいの幸福感があたしを包んでいく。

「んちゅ、好き、好き、はぁんん! ……きょうすけ、すきなの……ちゅ、ちゅく……もう、どこにもいかないで……」
「んぷはっ。ああ、俺も桐乃が好きだ。ずっとお前の傍にいる。もう離さねえ」
「ぜったい? ぜったいだよ? もう、どこにもいかないでね?」
「どこにもいかねえよ。絶対だ」
「……うん!」

 じわっと涙が溢れる。これは夢。だからそれは果たされない約束。でも、それでもよかった。
 京介からそれが聞けただけで、あたしはもう十分だ。
 倒れこんでしまった時に止めてしまった動きを再開する。

 ぐちゅん、ぐちゅう、じゅぶっ、じゅぽっ、じゅぽっ

 お互いが求めるように、合わせるように動くことでさっきとは比べ物にならない速度で何かが駆け上がっていく。

「んあっ、あん、あ、……あふ! ああぁあん! んふあ、あっ、あああっ!きょう、すけ……あたし、もう……っ!」
「ぅく……ああ、俺も、もう――!」
「ん、うん……いいよ……ああ……そのまま、あたしのなかで……んんんっ!」
「で、でもそれは」
「い、いいから!……そのまま――!あ、あ、あ」

 パンパンパンと肉のぶつかる音が響く。だんだんと何も考えられなくなって、京介を感じることしかできなくなってくる。
 だめ、もうげんかい。クる。さっきよりもぜんぜんおっきいのがクる!

「くぅ!? 桐乃、もう、出る!」
「あたしも、いく、いく、いっちゃう……っ!……っ!」

 そして

「ぐ――、でる!」

 どびゅる!びゅるるる!! びゅるる、びゅるるるる!

「!? 熱っ……あああっ、ああぁぁああっ!? んふあ、ああっ、あああん! いく、いくぅううあああ―――!!」

 あたしは自分の一番奥に京介の熱い迸りを受けて

「んあ……あ……ふ……ん……」
「はぁ、はぁ……ん、おい、桐乃? 桐乃?」

 眠るように気を失った。

目を開けたその眼前に、京介がいた。どうやら眠っているようでスースーと寝息が聞こえる…ってそうじゃなくって――!?
 へ? あ、え、うえ? な、なんでこいつがいるの? 兄貴はいないはずで、現実じゃなくて――!?
 混乱する頭は正確な答えが出せなくて、よけいに混乱に拍車がかかっていく。
 と、とりあえず一回起きなきゃ!
 そう思って体を起こした時にはらりとかかっていた布団がまくれた。その下のあたしは、パンツ一枚しか着ていなかった

「き、きゃああああああーーーーーーっ!!」
「うおぉお!? 何だ? なにごとだ? 何があった!?」

 あたしの叫び声に隣で寝ていた京介も目を覚ましてしまった。
 何事かと辺りを見回していた京介と目が合う。

「き、桐乃!? お前、一体何があっt「こっちみんなバカ! エッチ! シスコンのド変態!! あっち向いてろ!!」ぶへぇ!?」

 バッチーン!と痛快な音を立て京介の顔をはたいたあたしは布団を手繰り寄せる。
 ちょ、な、な、なんであたし下着一枚なわけ?それになんでこいつと一緒に寝てなんて――
 とそこまで考えて、思い出した。
 も、も、もしかして、あの夢だと思ってたのは――!?

「いちちちち……。おい、ひでえじゃねえか! 俺が何したっていうんだ!」
「う、ううう、うっさい! それよりこれの説明しなさいよ! あ、あんた一体あたしに何したわけ!?」
「いや、何って、言われてもな……」
「ちょ、ちょっと、そこで顔赤くして黙んないでよ! ま、ま、まさか――!」
「まさかって……お、お前が誘ってきたんだろうが! 俺がお前をここまで運んでやったらお前がいきなり――!」
「わかった! もういい! もういいからそれ以上いわないで! お願いだから!」

 ま、マジなの!?あ、あたし、こいつと、その、一線越えちゃった!?
 あれ、でもそれだったらなんで……ああもう! 考えるの後にしよう。今は一回状況を整理しないと。

「と、とりあえず着替えるから一回でてってよ。今、あたしちょっと混乱してるから……。そしたらリビングに集合。わかった?」
「わかった……また後でな」

 そう言って京介は部屋から出て行った。
 はあ、とにかく一回着替えよう……うわ、なんかベトベトする。股の間になんか挟まってる感じがするし……一回シャワー浴びよう。それぐらいの時間ぐらい大丈夫でしょ。
 あたしは一度シャワーを浴びたあと、布団のシーツを処分した後にリビングへと向かった。
 これは後で知ったことだけど、処女でも行為の際にまったく痛みがないこともあるそうだ。
 赤い染みのついたシーツの言い訳なんて、思いつくわけがないししかたがなかった。

「……つまり、俺は桐乃の妄想の産物で?実際にはいないもんだと思い込んでいたと」
「……うん」

 リビングに集まったあたしたちは、昨日のことについて一通りのことを話した。
 何であたしがあんなことをしたか。というのが大部分だったけど。

「お前、実はバカなのか?」
「な――!?もとはといえばあんたが悪いんでしょ!?
 一昨日、 あんたなんで帰ってこなかったわけ? あたしはそのせいで色々と勘違いしちゃったんですケド!」

 そう、全部は一昨日こいつが帰ってこなかったのが悪い。その説明はしっかりしてもらわないと!

「ああ、それか……てかお前携帯は?昨日なんでか繋がらなかったんだが」
「う……こ、壊れた」
「壊れた?」
「う、うん。一昨日階段で落とした拍子に踏みつけちゃって、こわれちゃった」
「そういうことか……まあ、一昨日は連絡しなくて悪かったよ。こっちも色々あってな……」
「色々って?」
「……酒で酔いつぶれた」
「はあ?」

 こいつ、今なんて言った? 酒で酔いつぶれたとか聞こえたんですケド

「いや、久々に赤城と遊んでてだな、あいつの家に行ったわけなんだが、
 赤城のやつがそこで酒を出してきてな。明日は休みだし少しぐらいいいだろって話になって……」
「…………」
「お、俺は帰ろうと思ってたんだぞ!?
 自分でも酔いつぶれるなんて思ってなかったんだよ!まさかコップ一杯で潰れるとか思わねえだろ!?」
「ふぅん……それで妹一人残して泊まってきたわけ」
「た、確かに桐乃を一人にしたのは悪かったと思ってるけどよ……でも連絡はしてたはずだぞ。俺じゃなくて瀬菜が、だけど」
「……え?」
「後で聞いたんだが酔いつぶれた俺達を見て瀬菜がこっちに連絡入れたらしい。
 家電にかけたけど誰も出なかったから留守電に入れといたって言ってたぞ」

 留守電……あはは、そういえばまったくそっちは頭になかった……かも。
 そろ~っと電話機のほうを見てみれば留守電のランプがチカチカと光っているのが見える。

「……聞いてなかったのか?」
「……うん」
「なるほどな。もしかして黒猫がお前の様子がおかしいって言ってたのも……」
「黒いの、そんなこと言ってたの?」
「ああ。「いつもなら軽く流してしまうような冗談なのに、随分と動揺していたわ」とか言ってたぞ」
「うう……」

 まさか京介がいなくて情緒不安定だったなんて黒猫には絶対に言えない。言えばからかわれるのが目にみえてる。

「じゃ、じゃあ、あの表札は何よ!? 何でいつもかかってる表札がなかったわけ!?」
「あれはただぶら下げてた画秒が折れただけだぞ。表札自体は部屋に置いてある」
「……マジ?」
「おう」

 なに、つまり、あの時あたしがこいつの部屋に入って、それを確かめておけばこんな勘違いしなかったってこと?
 ズーンと自分に嫌気がさして顔を俯かせる。
 全部、あたしの空回りだったってわけ? それはあんまりなんじゃない?

「麻奈実も心配してたぞ。あやせには何でか「ぶち殺します!」とかって追いかけられたが。あれは怖かった…」
「……なによ、あいつ。あたしがあんなこと言ったのに心配? お人よし過ぎるでしょ。そういうところがムカつくのよ」
「桐乃?」
「……なんでもない。あやせに関してはあたしもよくわかんない
 (むしろ何であんなこと言ったのかあたしが聞きたいぐらいなんだケド)」
「そうか……桐乃」
「何よ?」

 俯いた顔を上げて、京介の顔を見ればいつになく真剣な顔でこっちを見つめていた。
 普段見せない凛々しい顔にドキッと胸が高鳴る。

「まあ、昨日までに何があったかはわかった。じゃあ……昨日のことは、全部、嘘か?」
「そ、れは……」

 嘘は、ない。昨日あたしが京介にしたことは、全部、自分が望んでいたことだ。そこに嘘は一つもない。

「……ううん。あれは全部本当のこと。あたしの気持ちも、ずっとあんたを想ってきたってのも、全部本当のことだよ」
「……そっか」
「あんたは? あの時言ってくれたのは……勢いだけ? それとも……」

 正直、これを聞くのは怖い。でも多分聞けるのは今をおいてないと自分の中の何かが訴えている。
 きっと、今ならどんな返事でも受け止めることが出来ると思う。

「……桐乃」
「何?」
「俺はさ、お前のことがずっと大嫌いだった。お前は俺をまるでさもいないように無視してやがったし、
 いざこうやって話せるようになったかと思えばお前の口から出るのは文句や罵倒ばっかりだ。」
「……うん」

 言われてみればその通りだ。いくら素直になれなかったとはいえ、思い返せば随分ひどいことをしてきたように思う。

「でもな」
「……?」
「そんなお前が留学して、いなくなって、すごく寂しいっての自覚して、お前を迎えにいって、顔を見れたときに思ったよ。漸く会えた、ってな」
「……」
「お前がこっちに帰ってきてからも色々考えてみたんだよ。俺は何でお前なんかのためにこんなに頑張ってんだろうって」
「……なんかは余計だっての」
「うるせえよ。……どうしても妹ってだけじゃ処理しきれない感情があるのはわかってたさ。
 それでも無理矢理そういうのに理由をこじつけて、自分を誤魔化してた。それが、漸くわかったんだよ。昨日な」
「それって……」

 それは、そういう意味で受け取ってもいいの?

「昨日も言ったけどな。改めて言うぞ。俺は桐乃、お前が好きだ」
「うん」
「確かにお前は妹だけど、それだけじゃなく、女の子としてお前が好きだ。お前にはもうどこにもいってほしくないんだ」
「うん……うん!」    」

 涙が頬を伝う。それは昨日流したような悲しい涙なんかじゃなくて、嬉しくて、嬉しくて自然にもれていく涙だ。

「この先いろんな問題もあると思うけどさ、俺はそれでもお前と一緒にいたい。桐乃は、どうだ?」
「あたしも……あたしも、あんたと一緒にいたい! ずっと、ずっと一緒にいたい!」
「だったら、ずっと一緒だ。もう絶対に離さないからな」
「あたしだって、あんたのこと、絶対に離さないからね」
「おう」
「……今日からあんたのこと、二人きりのときは京介って呼ぶからね」
「なんだか照れくさいな」
「いーじゃん。そのほうがそれっぽいでしょ?」
「それもそーだな」

 ふたりで見詰め合って笑いあう。そんなひと時に幸せを感じる

「だから、さ」
「ん?」
「あんたはこれからあたしの兄貴じゃなくって」

 これから先、いつまでもこのときを守っていきたいと思う。
 あたしたちなら、それが出来ると思うから。だから――

「あたしだけの、京介だからね!」

 これからも、ずっとずっと、よろしくね。



  • END-

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最終更新:2011年05月10日 11:53
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