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ちょっと違った未来9






二人で駅前まで歩き、桐乃があやせに返した時間通りに着くと、

「桐乃~!」

夜のライトが照らす中、駅前の噴水をバックに立っていたあやせがこちらに気がつき声をかけてきた。

「あやせ、ごめん、ま、待った?」

「ううん!今来たところだよ~!」

嘘付け。どう見ても現地待ち合わせ時間より前からいましたって感じじゃねえか。

その証拠にあやせに声をかけようとしていたであろう遠くにいる男たちのうめき声が聞こえる。「ちっ、男がいんのかよ」、とか、「さっきから俺のほうを見ていてくれていたと思ったのに」、とか。甘い、甘いぜ。貴様ら程度に御しきれる存在ではないわ!

ーーー新垣あやせ。通称・ラブリーマイエンジェル。そして現在は…。

「あれれ?一体こんなところで何をしているんですか?お に い さ ん ?」

元・ラブリーマイエンジェル。現・ジェノサイドマイデビル。俺と桐乃の前に立ちはだかるその大いなる壁…。

…このことについて説明を加えねばなるまい。

俺が大学受験に合格して一人暮らしを始めた時、桐乃が俺のアパートに押しかけてきて、俺達はその夜、結ばれた。

それから桐乃と情事を終えた際にこれからの事を話し始めた。…その時の話の要約として俺達には3つの壁がある、ということを認識した。

一つは親父とお袋。もう一つは麻奈実。そして、あやせ。

どう考えてもこの4人は猛反対するだろうな。だが、あやせはもしかしたら…ということで俺と桐乃は意見が一致した。

桐乃は血が繋がっていないとはいえ、兄妹であることからの暗雲が漂うであろうこれからの2人の未来に不安さを滲み出したのか、俺の身体にそのすべすべした柔肌をすり寄せまさぐりを入れてきた。

俺も桐乃のそんな不安に怯えながらも、俺だけしか見えないその瞳に愛しさを感じ、初夜を迎えたばかりなのにまた燃え上がった。

桐乃は初めてで血に濡れそばった秘部でまだ痛みを感じるだろうに、必死に我慢して、けれど敏感なのかすぐに快感に打ち震えた。

俺の首もとと腰回りに俺を決して放したくない、離れたくない、といわんばかりに両手両脚を回し、俺を受け入れ何度も喘ぎ声を上げオーガズムに達した。

ーーー何があってもこいつを守ろう。絶対に、守るんだ。

桐乃の女神のような身体を愛しながら、そう固く心の奥で俺は誓った。

して、話は3つの壁に遡る。



ーーー一つ目。親父とお袋の壁。

…正直にいえば俺は親父からぼこぼこに殴られ、お袋においおい泣かれ、勘当を言い渡される覚悟だった。

今まで育てた恩を忘れやがって、この恩知らずが!!

…ドラマや小説でよく聞くこんなセリフ。こんな言葉を浴びせられてもしょうがない、と思っていた。

一生償っていこう、とさえ覚悟していた。…それほどまで俺の中で桐乃という存在は、かけがえのない人だった。

実家へ二人で向かう道中、桐乃はそんな俺の心中を察してくれたのか、

『今日、もし家から追い出されてもあたしがいるよ。二人で出て行こう。でも、時間をかけてお父さん達にわかってもらおうよ。』

と俺の指を指で絡ませながら言ってくれた。

…このときほどこいつを愛らしく思ったことはない。

家の門の前に着いた時、どちらともなく二人で絆を確かめるようにキスをして、呼び鈴を鳴らした。

…ところがどっこい、そんな俺達の覚悟など無かったかのように、親父は、

『そうか。それなら桐乃を嫁に出さずにすむしな。よくやった、京介。』

とにんまりとして(あの極道顔で!)言い。お袋も、

『あらそう。いいことじゃないの。京介、しっかり守ってあげてね。』

と今夜は赤飯だ~などといいながら台所に戻っていった。

このときほど肩透かしを食らったことは後にも先にもねえよ…。(ちなみに親父。桐乃を嫁に出さずにすむって、そんな理由でいいのかよ!?)



ーーーそしてもう1つ…。今度は麻奈実だ。

これは予想通りだった。

昔よく3人で遊んだ公園に呼び出し、そこで話をした。

なんの事情も聞かされていない麻奈実に対し、桐乃は俺との血のつながりがないことを告げた上で、

『きりりん大勝利~♪』などど口にし、

『あんだけ尽くしてきたのにさあ、京介取られちゃってぇ~、今どんな気持ち?ねえねえ、どんな気持ち?どんな気持ち?』

と爆笑しながら嘲弄し始めた時はさすがに頭を殴ってやったが。

(殴って麻奈実に謝らせた後、「積年の恨みが…」とかぶつぶつ言っているのは聞かないことにした。)

それから、俺と桐乃の事情を話すと案の定、麻奈実は反対してきた

…曰く、『反対できなかった皆の分も私が反対するね。』

…曰く、『きょうちゃんが誰と付き合おうとも私は一向に構わない。だけど、桐乃ちゃんだけは、別かな。』

と言うのだ。

そして、『私が認めなかったら、二人は付き合えないよね?』と、いつもの、しかし内実は凍えるほど温度を低下させた笑みを貼り付けて言うのだ。

麻奈実は俺の言う事は大抵笑顔で受け入れてくれる。…だがこうなった麻奈実を押し切るのは、不可能に近い。

…しかし俺達は負けなかった。

俺一人なら麻奈実を論破できなかったろう。簡単に返り討ちに合っていたかもしれない。しかし、今回は桐乃がいたんだ。

だから、負けなかった。麻奈実は俺たち二人を祝福してくれた。

心の底からはまだ無理かもしれないけれど、時間をかけて必ず祝福すると。

そん時は俺と桐乃は幼いあの頃に戻ったみたいにわんわん泣きじゃくった。

麻奈実はそんな俺達を優しい眼差しで泣き止むまで暖かく見つめていた。


ーーーで、最後、だ。

実はこれが一番の強敵だった。いや強敵、だ。

新垣あやせ。通称・ラブリーマイエンジェル(二度目の天使な紹介)。

桐乃と俺は瑠璃と並ぶもう一人の親友であるあやせを誰もいない実家で昼間呼び出し、俺との関係を伝えた。

兄貴を、京介を愛しているの、と。

ところが…天使はその愛らしいつぶらな瞳から一気に光彩をなくし、

『この変態がぁ!!死ねえええええ!!!!』

とミドルキックを俺の顔面にかましてきた。(←すんでのところで回避)

その場は桐乃が暴れまわる闘牛よろしく、どうどう、と押さえ事なきを得た。

その場は「とても納得いきませんけど、帰ります。」とプンプンして(←可愛い)帰っていった。

ところが…その後だった。あやせの真の恐ろしさは。

あやせは桐乃との関係は変わっていなかった。少なくとも俺が見える範囲では。しかし…


「お兄さん?聞いてます?わたしはお兄さんの馬鹿顔なんか呼んでませんけど?」


…回想終わり。現在に戻る。

あやせは桐乃とはなんにも変わっちゃいねえよ。むしろ前より仲がよくなった気がするくらいだ。だが…。

「あれ?お兄さん?耳に糸くずついてますよ?」

糸くずをとる可憐な仕草で俺の耳を爪先で捻るあやせ。いてて…!!

しかもその際耳元で「さくっと死んでください」という呪詛付き。泣けるぜ…。

あやせは桐乃にはなにもしない。しかし俺には小姑よろしく、会うたびに様々なダメだしを理由をつけてはしかけてくる。

…そういえば俺には小姑的存在がいないんだよなあ。お袋も違うし麻奈実も違う。

未来は明るいぜ、いやっほう!!…などとそんなことを考えていた時期が、俺にもありました。

甘かった。まさに獅子身中の虫。敵は嫁の親友に在り。

…記憶を失った後そんな一連の流れを見ていない桐乃が(これも覚えてないのか…。)どうしたらいいのかとあわあわとしている。

「でも今日のお兄さんは少しだけ及第点です。」

くすっ、と蝶が舞うような笑みをこぼすエンジェル(←蝶カワイイ!!)。

「こんな夜の道…記憶を失って万全でない桐乃が…もし一人で来ていたら…お兄さんを○していたかもしれません。」

こえーよ!なんだよ○すって!笑顔と言動がリンクしてねえーんだよ!…でも天使。

悪魔にその身を堕としても、なお美しいあやせに「すこし」デレデレしてしまった。

「まあ、鬼畜歩く18禁男である変態シスコンお兄さんが桐乃を一人にするわけないと思ってましたがね。」

そうですか…。もう少しで敵前逃亡図りそうでした、つったらサンドバッグ確定だろうな…。

ありえたバッドエンドを回避できたことによる冷や汗と安堵感を胸に収め、俺はあやせに、

「ところで今日は桐乃になんの用なんだよ?」

「あれ?用がないと桐乃に会っちゃいけないんですか?というか桐乃の小間使いの言える発言ですか?分相応・不相応って言葉ご存知ですか?」

そんなので警察官大丈夫ですか?何かあったらマスコミに訴えましょうか?、とも付け加えるあやせ。

もうやめて!俺のライフはゼロよ!!

ガクッと肩を落とす俺にあやせが

「…特に用はないんですけど、桐乃に会いたくなったんです。…あと、お兄さんにも。」

最後なんて言った?小声でよく聞き取れなかった。

ぷいっ、と「な、なんでもありませんっ。」と顔を背けるあやせ。

…ふと桐乃の方をみると、

「む~。」

口元を「~」←こんな具合にしてむっとしていた。

「あやせと京介さんは、ど、どんな関係なんですか?」

桐乃はそんな質問をしてきた。

「どんなって、なあ?」

「わたしとお兄さんはただの…。」

そしたら桐乃が、

「こ、恋人さん、なんですか?」

えええええ!!??俺とあやせが!?ありえねえよそんなこと!?

つか今の一連のやり取りから何を読み取ったんだよ!?どうみても理不尽な女王さまに虐げられる奴隷の図だろうが!?

あやせもあやせで「わ、わたしと、お、おおお兄さんが、こ、ここ恋人同士…。」などと顔を茹でらせて言っている。おい、しっかりしろ!いつものあやせはどこにいった!?

「違げぇーよ!俺の恋人はおま…」

「…いいな、恋人みたいで。」

ぷいっ、と拗ねる桐乃。

おそらく初めて見るであろう、親友のいじけた姿に慌てだすあやせ。

こんな予想外なことは想定外だったのだろう。

「桐乃…?わたしとお兄さんはそんな関係じゃないのよ?」

「そうだぜ?一回もそんな関係になったことなんかねーよ。」

そういうと今度はあやせから足をつま先で踏まれた。いてえよ!?

「そんなはっきり言わなくてもいいじゃないですか…。」

小声で何かをまた呟いている。頼む、こんな時くらい静かにしてください。

そしたら今度は逆方向から脇の下をつねられた。いてててて…!今度は何だ!?

「…。」

…桐乃だ。相変わらず、む~っと丸顔をさらに丸めてふくれっ顔をさせている。

「京介さんって、女の子からとってもモテるんですね?」

あの…桐乃さん?

「こ~んな綺麗な人から言い寄られて、あたしも妹として鼻が高いです。」

きゅうう!っとさらに脇の下をつねられる!いてえ!痛えよぉ!

「…。」

桐乃はひとしきり俺を睨んだ後、

「ふん。」

と言い残し、もと来た道を引き返し始めた。

「き、桐乃、ちがうの、待って?」

「桐乃、違うんだよ~。」

そうして俺とあやせの2人は高坂家への帰路へ着こうとする道中、弁解にその時間を費やされたのだったーーー。

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最終更新:2012年10月25日 17:59
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