「は?意識不明っ!?」
つい大声を出してしまうが仕方がねえよ。 こんなわけの分からない事を聞かされればな。
学校も終わり
麻奈美といつものように他愛の無い話をしながら帰ってきたら、
いつも暢気な顔をしているおふくろの表情が明らかに違う。 んで気になって訊ねてみればこれだ…。
なんでもアメリカで桐乃が車に轢かれたらしい。 しかも相手の車は逃げて、桐乃は意識不明だと言う。
「外傷が無いのが不幸中の幸いかしら…」
まったくだ………別にあいつの心配をしてるわけじゃないからな?
というのは今回はよそう。 いくら仲の良くない兄妹とは言え家族に事故があれがいくら俺でも心配はする。
「でね、その意識不明ってのもお医者様の話ではすぐに目を覚ますだろうって。
ただしばらく激しい運動は控えたほうが良いって事らしいの。 だからこっちに帰ってきてもらうつもりなんだけど。
明日からアメリカへ
お見舞いも兼ねて、様子を見に行くつもりなんだけど、京介も付いてきてくれないかしら?」
そう言うおふくろの言葉を聞いて大分安心した。
意識不明なんて言うからどうしたものかと思ったが、別に深刻なものでもないらしい。 ったく、先にそっちを言えってんだ。
まあ学校も少しぐらい休むのもいいし、桐乃の事もたいした事じゃないと分かればだ……初めての海外を楽しむのも悪くないだろう。
「ああ、俺はいいけどな。 親父はどうするんだ? 仕事を休むわけにもいかないだろう?」
「あの人は警察官だからね~、流石にね」
「まあそうだよな。 わかった、麻奈美にでも説明して学校を休む事を先生に伝えてもらうよ」
俺の妹は近くにいても俺の平穏な生活という物を壊してくれるが、遠く離れていても変わらないらしいな。
へっ、数ヶ月それなりにのんびりとできただけでもいいか。
それにらしくないとは思うが、最近はあの騒がしい日々も若干懐かしくもある。
観光がてらあいつを迎えにいってやるとしようじゃないか…。
・
・
・
・
桐乃の病室前、病院からは連絡が来て意識は既に戻っているらしい。
無事なのに越したことはないが、こうもあっさりだとなにか釈然としないものがあるのも確かだ。
そんな事を考えている間におふくろはドアを開け病室へと入っていったため、俺もその後に続いく。
中に入ると桐乃はベッドの上で半身を起こした状態で、ドアの開く音に気づいたのか首だけを回し、こちらを振り向いた。
「えっ!?おかあさん!?なんでこっちに居るの~?」
「何言ってるのよこの子は…、娘が病院に運ばれたと聞いて放っておく親がいるわけないでしょうが…」
入るなりそんな会話を交わしながら俺とおふくろはベッドの横に据えてあるイスに腰掛ける。
うちの両親は俺にはどうか知らないが桐乃には甘いしな。 俺が倒れた時に同じように言ってくれる事を祈ろう。
「も~別に来なくてもよかったのに~、大袈裟にしすぎだって」
恥ずかしいのか耳を赤くし、やや早口でそんな事を言う桐乃。だがわざわざアメリカまで飛んできた俺たちにその物言いはないだろう。
病み上がりだろうが少しくらい文句を言っても流石に罰は当たるまい、無事だったから言えるってことでもあるしな。
「おい、こら。 他に言うことはないのか? 心配かけてごめんなさいとか、ありがとうございますとか…」
俺の言葉にいぶかしげにこっちを見てくる妹、そんなに兄貴の事が嫌いか、お前は? 涙が出てくるぜ。
「…………おかあさん、さっきから気になってたんだけど……………」
だが…????いや、これは何か様子がおかしい。 いくら嫌われているとしてもこの眼は……そう…
俺が嫌な予感に身を震わせると桐乃はこうのたまったのだ…
「……………この人誰?」
「ふと思いついた」第2弾でした。 プロローグ部のみでこの後は
兄の記憶だけ無くしてしまった桐乃。
寂しさを感じつつも、もともと仲の良い兄妹ではなかったからと自分を誤魔化し自然に任せようと考える京介だが
桐乃の方はそうでないらしく、自分の知らない事があるのは気持ち悪いからと積極的に記憶を取り戻そうとする。
すると必然的に2人はいつも一緒にいるようになり、その様子はまるでデートをしているカップルのようであった。
記憶が戻るなら、とそんな状況に京介は流されるが、兄妹の接し方という記憶の無い桐乃は京介を兄と見ることができずに
1人の男として見てしまい……
……という構想なんですけど、次回は20XX年世界が核の炎に包まれた頃の予定です。
「……………この人誰?」
「あの・・・いま付き合っている人はいるんですか?好きなんです付き合ってください。
・・・あれ私何をいってるんだろ?」
困惑する母と京介。
事故にあった桐乃は兄という記憶は無くなってしまったが京介への恋心は残っていた。
母はこれを兄弟愛と
勘違いして桐乃の記憶が戻るまでは京介に桐乃の
お願い通りに恋人の役をするように命じる。
だが兄弟という血縁の禁忌を忘れてしまった桐乃の京介へのアピールはとどまるところを知らない。
夕暮れの病室。ついに京介をベットに押し倒し京介のベルトに手をかけた桐乃。
そのとき病室のドアが開き桐乃を心配して渡米してきたあやせが乱入。
京介の運命はいかに?
次回「妹と?妹の友達と?それとも3p?」
最終更新:2009年12月13日 23:19