ふたば系ゆっくりいじめ 582 ビルディング・フォレスト

ビルディング・フォレスト 22KB


悲劇 観察 理不尽 自滅 同族殺し 野良ゆ 赤子・子供 ゲス 都会 現代 独自設定 うんしー 四作目

「ビルディング・フォレスト」
 ・「ふたば系ゆっくりいじめ 527 シティ・リベンジャーズ」の続編という形をとっています
 ・人間視点ですが主軸はゆっくりです
 ・駄文注意
 ・自滅?モノ
 ・いくつかの独自設定を使っています


冬も本格的に到来した季節。朝や夜は耳が痛くなるような寒さが本格的な冬の到来を感じさせていた。
…私は再び羽付きと共に街を歩いていた。
目的は勿論「観察」
冬のゆっくりの中でも越冬をほとんどしない都市の中心部のゆっくりがどう活動しているか見たかったからだ。
羽付きは自身の「仕事」でよく街の中心部まで来ることがあるのでこの辺の地理には詳しいといった。
いくつかの資料を見て分かった事だが街ゆっくりでも越冬をしないゆっくりがいると言う。
往々にしてそれらは街の中心部にいるゆっくりだと聞く。
山や街の外れ(公園や郊外等)のゆっくりは食糧を貯め込め越冬する習性がある。これはゆっくりにとっても人間にとっても当然の常識だ。
だが街の中心部にいるゆっくりは違う。耳が痛くなるほどの寒さでも街の中央で「おうた」を歌ったり「飼いゆっくり」にしてもらうためのアピールを行うゆっくりがいるのを良く見かけるのが何よりの証拠だ。
それらのゆっくりは冬の間はどう生活しているのだろうか?
…私はそこで街の中心部に住むゆっくり特有の最後という物を目にする事になる。


羽付きは繁華街の雑踏を離れた裏通りへと跳ねて行った。
煌びやかな表通りと違ってゴミゴミとして、それでいて灰色のアスファルトやコンクリートがむき出しの荒涼として光景が目に入る。
表通りから見れば風景も人の通りも全てが違うのが、雑踏を歩き回った私や羽付きに何か一種の落ち着きを感じさせた。
ふと歩いていると平たく潰れた何かを私は踏んだ。グチャっとした触感だった様に思う。
足をどけて何かと見るが、グズグズになったそれはもはや何かすら分からなかった。
隣にあるもう一つのそれを指差し羽付きに尋ねた。これは何だと
羽付きはそこら変に落ちている棒きれでそれをつっ突きながら言った。
「これは…あかゆっくりなんだぜ」
羽付きの言葉で急にそれが何なのか思い出すように判明した。これは「ゆっくり」だと
ゆっくりコンポストという物があるのはご存じだろうか?その中にぱちゅりー種や赤ゆっくり、子ゆっくりを入れておくと目にする光景だ。
餡子変換能力が弱いそれらは総じてゆっくりの中でも虚弱と言われる部類のものがよくなると言われている。
それらが腐った物やカビの生えた物をむ~しゃむ~しゃすると小麦粉の皮や中の餡子にカビが生えてしまう。
そうなればもう一巻の終わりで、数日もしない内にデロデロに腐って緑色の何かになり果ててしまうのだ。
だがこれはコンポストでしか見られない光景のはずである。なぜこんな所で見られたのか?
羽付きが言うには街の中心部ではよく見られる光景だと言う。山や郊外の様に柔らかい草や虫などが手に入らないのでどうしても街の赤ゆっくりが口にするのは菓子類、穀物などの様な柔らかいものだ。
だが、常に新鮮な物が手に入るとは限らない。それがゆっくりとなればなおさらだ。痛んだものが殆どだろう。カビが生えたものに気づかずに食べた場合は最悪で、小麦粉の皮ではなく餡子にカビが付いてしまい中から腐ってゆく。その場合は野良ゆっくりではどうしようもないのだ。
おそらくこれらはそう言った赤ゆっくりの跡だろうと羽付きは言った。
それ以外の理由もあるが…と呟く様に羽付きは最後に付け加える。
その言葉を聞いて思索にふけっている私をせかすように羽付きは空地の方へ跳ねて行った。
空地、と言っても使われなくなった駐車場の一角の様な物だった。さびた車がポツンと置かれている。
その片隅に横に倒したビールケースが置かれていた。上にはダンボールを破って平たくした物に石ころが二つ三つ置かれていて雨よけになっている様だ。
その中に数匹のゆっくりが入っていた。


私と羽付きが近づくとすぐにバスケットボール程のゆっくりが飛び跳ねてきて前に立つ。大きなリボンが特徴のゆっくり、「れいむ」だ。
れいむはそのまま口をつぐんで体を大きく膨らませるとピコピコと左右のピコピコを激しくふるわせ始める。威嚇の様だ。
「ゆ!ここはれいむとおちびちゃんのおうちだよ!ゆっくりできないにんげんさんとまりさはゆっくりはいってこないでね!」
奥の方に目をやるとハンドボールほどの子まりさとテニスボールほどの子れいむが同じように大きく体を膨らませて威嚇していた。
羽付きと私は無言でその様子を眺めていた。暫くしても立ち退かない私たちを見てそのれいむは次々と言葉を放っては体を膨らませる。
山にいるゆっくりならまだしも、今どき街に住んでいるゆっくりが人間や他のゆっくりに対して威嚇を有効と思いこんでいる時点で、このれいむは長くはないと言う事を私は感じた。
「ゆっくりかえってね!れいむおこるよ!」
「…にんげんさん、かえるんだぜ」
羽付きがくるっと振り向いて跳ねだす、私も大慌てで足早に建物の蔭に消えた羽付きの後を追った。
後ろからは「ゆっくりこないでね!」と叫ぶれいむの声が響いている。
羽付きが隠れた場所はそこからあのれいむ一家の行動が見られるちょうどいい場所だった。
私が来て早々に「あのれいむ…ながくはないんだぜ」と羽付きが呟く。
私はあえてそれを聞かなかった。私も同じ考えだったからだ。
しかし不思議に思ったのはあのれいむは番いとなるゆっくりがいないと言う事である。都市部ではそう言った事はよくあるし、珍しくとも何ともないが、何か知っていないかと私は羽付きにその事を尋ねた。
羽付きは静かに、だが淡々と語り始める。どうやら知っている様だ。
羽付きの話では、元々はまりさ種とつがいだったあのれいむは冬の直前の時期にすっきりをしたという。
植物型であったが、まりさ種の方は冷静だった。冬を越せないかもしれないから引き抜こうと言ったのだ。
当たり前のことだがゆっくりが冬の直前にすっきりをするのはあり得ない事だ。食糧集めに難航するし、自分の体積以上のものを毎日食べる上に狩りにだせない赤ゆっくりというネックがあつからだ。だが不思議とこれをする後先を考えないゆっくりが多いと聞く。
そう言った背景も考えれば当然の話だ。だがそれに猛反発したのがあのれいむだった。
なんとそのれいむは「おちびちゃんがふえる→もっとゆっくりできる」から転じて「ゆっくりの数が増える→食糧集めの効率も良くなる」と謎の理論を展開して押し切ろうとしたそうだ。
確かにそうだがそれは全てが生体サイズであった時の話であって、頭に蔓を生やしたゆっくりや子ゆっくりでは役に立つどころか逆に負担になる。
それでなくともれいむ種というのは元来保護欲が強い種類の饅頭である。それが悪い方向に働けば「しんぐるまざー」と称して滅茶苦茶な行動を繰り返すようになったりするが…
また、子ゆっくりができればれいむ種は番いより子ゆっくりを優先する傾向にある。だから「もっと番いが働けばみんなでゆっくりできる」という結論に至るのだ(普通に考えれば無茶苦茶な話である)
何より子ゆっくりを盾にされれば大抵の番いは言う事を聞かざる負えなくなる。ゆっくりの世界では子ゆっくりを捨てて逃げるなど飾りのないゆっくりが飾りを奪うにも匹敵する行為だと言われているからだ。
稀にあまりにも無理が過ぎれば見捨てて逃げられるという話もあるが。それはあくまで例外の話と言われている。
そう言った背景もあり、れいむの我儘を押しつけられたまりさ種はそれから連日食料を集めたという。もちろん冬の直前でまともな食料が取れる筈もなく、遂には「あぶれゆっくり」が固まっている危険な餌場に手を出してそれ以来見かけていないそうだ。
それからあのれいむは一匹で子ゆっくり達の面倒を見ているらしい。
羽付きが言うにあのれいむは決して「ゲス」ではない。どちらかといえば原始ゆっくりに近い気質を持っていると推測できると言っていた。つまり「ゆっくりする」という事の本来の意味に重きを置くタイプである。


その話を聞き終わった直後だろうか、タイミング良くれいむの声が響いた。
「おちびちゃんたち!かりにいこうね!」
「ゆっきゅりわかっちゃんだじぇ!」
「ゆっきゅりわかっちゃよ!」
勢いよくどこかへと跳ねていく。どうやら食料探しに行くようだ。子ゆっくりも動員しなければならないと言う辺りにあのれいむ一家の厳しい事情が垣間見える。
羽付きがその後方を跳ねていった、私もその後ろについて歩き出す。
「ゆ~ん♪ゆゆ~ん♪ゆ~っくり~♪」
「ゆ!ゆ!ゆっきゅりおねえしゃんにちゅいちぇくりゅんだじぇ!」
「ゆっきゅりわかっちゃよ!ゆ!ゆ!ゆっきゅりいしょぎゅよ!」
上機嫌な様子でボヨンボヨンとリズミカルに跳ねている。親れいむの方が能天気にペースも考えずに跳ねているその後ろで、かなり苦心して必死に子まりさと子れいむがついていっていた。
ちらっと一瞥しただけだが、私の目にはソフトボール大の子れいむの後ろ側の小麦粉の皮に緑色のシミが出来ている様に見えた。気のせいかもしれないが…
そんな考えは頭の片隅に追いやって、一体どこに行くのかと見れば別の路地裏だったようだ。
ここで羽付きと私は顔を見合わせた。向かうのは間違いなく「餌場」。この時期に手つかずの餌場なんて存在する筈もない。間違いなくこのれいむ一家は無傷では帰れないだろう
「ゆ!いっぱいごはんさんがあるばしょへいくよ!おちびちゃんたちもゆっくりさがしてね!」
「わかったんだじぇ!」
「れいみゅあまあましゃんがちゃべちゃいよ!」


口々に勝手な事を言いながら路地裏へ進んでいく、そこでれいむは突然何かに弾き飛ばされた。
私が見たかぎりでは丸っこい何かがれいむを弾き飛ばしたようにしか見えなかったが大体想像はつく。
「ゆんぎゃ!いだいいいいいいい!!」
「ゆゆ!?おきゃあしゃんどうしちゃんだじぇ!?」
「ゆ!?」
私が目を向けるとそこには大きなありす種とちぇん種、そしてまりさ種がれいむ一家の前に立ちふさがっていた。
体当たりで弾き飛ばされたれいむは。口から少量の餡子を吐きだして声を上げている。相手はどうやらこの辺を根城にしているゆっくりの様だ。
「かってにちぇんたちのてりとりーにしんにゅうするなんていのちしらずなんだねーわかるよー!」
「ありすたちのゆっくりぷれいすにてをだそうとするなんてとんでもないいなかものね!」
「こんなゆっくりできないげすはせいさいするんだぜ!」
まず外見からして街ゆっくりだとわかった。全体的に薄汚く、砂糖細工の歯と歯茎を剥き出しにしてニタニタと笑っている。明らかにゲスゆっくりだと分かるゆっくりだ。
往々にして歯茎を剥き出しにしてニタニタと笑っていたが、突如素早い動きで動き始めた。ありすがれいむの右のピコピコを口で引っ張り上げて引きずり出す。待ち構えていたまりさが帽子の中から小石を取り出した。
「さっさとくるのよ!このいなかもの!」
「いだいいいいい!!ゆっぐりやべでね!れいむのびごびござんびっばらないでね!」
「ゆっへっへ!まりさたちのこわさをおもいしらせてやるんだぜ!」
一方ちぇんの方は子ゆっくり達を脅しかけるように木の枝を口にくわえて上下に振りかざしていた。
「さ~てどうしてやろうかかんがえてるんだね~わかるよ~」
「ゆんやああああああ!!きょわいよおおおおお!!」
「ゆ!ゆっきゅりおきゃあしゃんちょまりしゃたちをかえしゅんだじぇ!まりしゃおきょりゅよ!」
子まりさに小麦粉の皮をくっつけてがたがたと震えている子れいむ。子まりさの方は果敢にも体を膨らませて威嚇している。
今までの一連の行動、そしてこの子まりさの行動を鑑みるにれいむ一家は多分純粋な街ゆっくりではないと私は直感的に判断した。
なぜなら街ゆっくりというのは決して体をふくらませる威嚇はしない。動けなくなることを知っているからだ。そんな事をするよりかは動き回ったり攻撃に転じた方が遥かに良いと言う経験から淘汰された行動なのだろう。
「やべでね!おちびちゃんにゆっくりさわらないでね!れいむもゆっくりはなして…ゆびゅっ!?」
「ごちゃごちゃうるさいんだぜ!」
こんな状況になっても能天気に振舞うれいむ(私から見ればだが当のれいむは真剣なのだろう)にまりさが舌を使って小石で打ちすえた。
れいむの小麦粉の皮が大きくへこんでその部分の餡子が盛り上がって見える。中の餡子が不規則に変化したせいか、人間でいう痣の様になっているのだ。
勿論だが、まりさの舌は休まない。どんどん小石を振り下ろしていく。
「ゆびゃっ!ゆぎぃっ!いだ!いだいいいいいいいい!!やべでね!れいむをだだがないでね!ゆぎぃぃっ!」
れいむの方はその度に砂糖水の涙を流し、玉の様な砂糖水の汗を小麦粉の皮に滴らせながら叫んでいる。遠目で見た程度だが、どんどん小麦粉の皮が膨れ上がっていくのがわかる。
不意にありすがれいむのピコピコを口でブンブンと振り回し始めた。その度に地面に潰れたようになっていたれいむは右に左にと振り回されていく。
「やべでええええええええええ!!でいぶのびこびこざんびっばらないでえええええ!!ゆぎいいいいい!!ぢぎれるうううううう!?」
「うるさいわよ!いなかものなれいむはだまってなさい!」
れいむの方は砂糖水の涙と涎をまき散らしながら右往左往に振り回される。張りつめたピコピコが今にも千切れそうな軋みを上げてれいむを繋いで振り回される。アスファルトに顔を突っ伏して横に振り回されているのだ、相当な痛みだろう。
不意にありすが大きく体をひねった様に見えた。ブチっと音がしてれいむがゴロゴロと投げ出される。
「あ”あ”あ”あ”!?でいぶのびごびござんがああああああああ!!」
見れば、ありすの口にはれいむの右側のぴこぴこが咥えられていた。思いっきり振り回したのが原因でちぎれたのだ。ありすが拾ったが興味のない物を捨てるようにペっとピコピコを地面に投げる。
「ゆ”!ゆ”!れいぶのびごびござんゆっぐりぐっづいでね!
れいむはそれを舌で拾い上げると元あった場所にペタペタとくっつけ始める。当然くっつく筈がなく、自分で自分ペーロペーロしているようにしか私には見えなかった。
「どぼじでぐっづがないのおおおお!?ゆっぐりでぎないいいいゆぎゃ!」
泣き叫ぶれいむをまりさがボヨンと跳ねて弾き飛ばした。れいむの方は壁にぶち当たり餡子を吐いて昏倒した。
ぐったりと小麦粉の体を潰しているが、大した傷ではないようだ。そもそも餡子があまり出ていない時点でゆっくりは重傷にはならない。
私がれいむの方に目を凝らしていたが、子ゆっくり達の方が大変な状況に陥っている様だった。
「いぢゃいいいいいいいいい!!までぃざのおべべぎゃああああああああ!?」
「おねえしゃあああああああん!?」
声にハッとなり目を向けると、子まりさの寒天の目が無くなっていた。周りを広く見るとちぇんの口にある木の枝の先に一個、そして地面に一個転がっている。
羽付きはその瞬間を見ていたらしく、その状況を見ていなかった私に説明してくれた。そんな複雑な物ではなく、膨れた子まりさにちぇんが木の枝で子まりさの寒天の両目を突き刺したといったとの事だ。
「こんなのじゃおわらせないんだねー!わかるよー!」
ちぇんはそう言うと子まりさの帽子を口で取り払い、髪の毛を口で毟り始めた。当然子まりさの体はズリズリと引きずられては引っ張られている。
先ほどのありすの様に左右に口をふるい始めた様に私の目には映った。ブチブチと引きぬけるたびに口でくわえてどんどん砂糖細工の髪の毛を毟っていく。
「いぢゃいいいいいいいいい!!まりぢゃのがみじゃんぬがにゃいでぼじんだぢぇえええええええええ!!」
あっという間に子まりさはおさげを残してその砂糖細工の髪を殆ど毟られてしまった。産毛の様な物がチラホラ残っているのが見ていて痛々しい。
「ゆ”!ゆ”!いぢゃいんだじぇえええええ!!にゃにもみえにゃいんだじぇえええええええ!!」
「ゆびえええええええええん!!きょわいよおおおおおお!!ゆっきゅりだちゅげぢぇええええええ!!」
恐怖からか保身からかはここからでは定かではないが、子れいむの方が砂糖細工の涙をまき散らしながら飛び跳ねて逃げだした。
「にがさないんだねー!わかるよー!」
「ゆんやああああああ!!きょなにゃいぢぇね!ゆ!ゆ!」
当然スピードはちぇんの方が上だ。どんどん追いつめられていく。
「ゆ!ゆ!ゆぎゃ!いぢゃいいいいい!!」
「ここまでなんだねー!」
子れいむが着地した拍子に小石にぶつかり前のめりに倒れた。体を起こすのにもたついている間にちぇんはすぐそこまで来ている。
それを見て私は声を上げて前に飛び出した。
「コラ!うるさいぞ!」
「ゆ!?」
「に、にんげんさんはゆっくりできないんだね!にげるよおおおお!!」
ちぇんの方が私の姿を見てすぐに引き返し始める。以前人間に辛酸をなめさせられた経験でもあるだろうか?とにかく引き下がってくれてとよかったと私は安堵した。
子れいむの方は穴という穴から涙とも涎ともつかない砂糖水を流しながらこちらを見ている。まだ状況が理解できていないようだ。
「どうしたんだぜ!?いきなりとびだすなんて!」
私の行動に驚いていたのだろうか、遅れて羽付きが飛び出してくる。
別に善意で助けたわけではない。どうしても気になった事があるからだ。
私は手を伸ばして子れいむを掴む。
「ゆゆーん!おしょらをちょんじぇるみちゃいー!」
先ほどの態度はどこへ行ったのか、すっかり上機嫌になった。こういう心境の急激な変化は私、少なくとも人間には理解できないだろうと常々思う。
触ってみての感想だが、触感は最悪だった。モチモチとした…というにはほど遠く、部屋の隅に落として拾った油粘土の様な感触だ。所々ゴミやほこりが付いていて、それでいて微妙にぬるぬるとしている。
「ゆっきゅりできるにんげんしゃんだっちゃんぢゃね!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」
私の顔を覚えている様だ。小麦粉の皮をクネクネと動かして砂糖水の涎をたらしながらニヘラニヘラと愛嬌をふりまいている。子れいむにはそれが媚を売っていると思っているのだろうが、とても汚い何かにしか私には見えなかった。
底部に近いギリギリの地面に当たらない皮の部分を見て先ほど見た物が気のせい出ないとわかった。
ほんの僅かだがカビが生えている。
羽付きもそれを見たようだ。同時に驚いた表情から一転して落ち着きを取り戻した。どうやら私が飛び出した理由を分かってくれたようだ。
私は子れいむを地面に降ろす。子れいむの方はニタニタと笑いながらこちらを見上げていた。
悪意はないのだろうが薄汚れて砂糖水の何かをべたべたとつけた姿は本当に何か気味の悪いものにしか見えない。だから「ニタニタ」と意地汚い笑い顔を浮かべている様に見えた。
子れいむは「ゆっくちしちぇいっちぇね!」というとそのまま親れいむのいた方へ跳ねだしていった。


跳ねる子れいむの後姿を見ながら羽付きが呟くように声を上げた。
「かびさんはうつるんだぜ、ぺーろぺーろしたり、すーりすーりしたり…だからあのれいむやまりさは…」
私はそれに何も答えなかった。ただ無言でれいむ一家の方に目を向ける
先ほどのゲスゆっくり一向は居なくなっていた。ちぇんが知らせてどこかへ逃げおおせたようだ。ここがテリトリーと言っていたのでそう遠くではないだろう。
私の目に映ったのはゆっくりの様な「モノ」としか思えないものであった。
おさげをわずかに残して寒天の両目が無くなった子まりさは口を開けて寒天の目が合った所から砂糖水の涙をドバドバと流している。
「ゆびぇえええええええん!!にゃにもみえないんだじぇえええええ!!きょわいんだじぇえええええええ!!」
「ゆ”!ゆ”!おちびぢゃん…ゆっぐりだいじょうぶだよ…ぺーろぺーろ…」
宥めるように先ほどの親れいむが別に小麦粉の皮が裂けてもいないところをぺーろぺーろしている。
「おねえしゃん!れいみゅはきょきょぢゃよ!しゅーりしゅーり!」
先ほどの子れいむも安心させようと「カビの生えた」小麦粉の皮ですーりすーりを繰り返していた。
一通り見てだが、一番マシなのは子れいむだ。全く持って無傷と言っていい。だが親れいむの方は約1、5倍にも腫れ上がった小麦粉の皮と砂糖細工の髪と頭のボロボロのリボンがなければ何種かも分からない程にやられてしまったようだ。
片方のピコピコもなく、所々小石の角ぼ部分が当たった所はにじみ出るように餡子が漏れ出している。だが餡子がそれほど漏れてはいないのでかなり元気だ。流石に飛び跳ねる事は出来ないだろうが…
子れいむが親れいむや子まりさにすーりすーりしていると、暫くして親れいむがしてこう言いだした。
「ゆ”…!ばりざはおがーざんのぴこぴこさんをくちにくわえでね…ゆっぐりおうぢにがえるよ…」
「ゆ…わかっちゃんだじぇ…」
子まりさが親れいむのピコピコを口で咥えるとずりずりと這いずる様にして移動を始める。子れいむもそのスピードに合わせて這いずっている。
奇妙な何かの行進、そう形容する他なかった。「ゆ”!ゆ”!」とくぐもった声で凸凹に小麦粉の皮が腫れたれいむらしきゆっくりと、寒天の目が合った所がぽっかりと穴が開いており、そこから砂糖水の涙を流してそのれいむのぴこぴこを口でくわえた砂糖細工の産毛とおさげだけの禿げ饅頭がナメクジの様に這いずって移動している。
その後ろに比較的にまともな子れいむがついているのだ。アンバランスさも加わって不気味に見えた。
点々と砂糖水で黒く湿った印を残してその行進は続いていく…
私は知っている。「カビ」が生えたゆっくりの末路を
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あれから一週間後、私と羽付きは再びあのれいむ一家がいる場所へと足を進めていた。
「さいきんはえさばのほうもぶっそうになってきたんだぜ…」
餌場や水場を争っての抗争が激化しているらしい。冬ももう入って久しいのだ。最後に生き残りをかけた争いだと羽付きは呟いた。
「たまにいるんだぜ、このあいだのれいむたちみたいになにもしらずにえさばにはいってゆっくりできなくなるゆっくりが…」
羽付きが言うには「れいむ」や「まりさ」の様なゲスでない通常種がこの時期餌場に飛び込むのはかなり珍しいそうだ。
大体はゆっくりが集まっているのでれみりゃやふらんが少数でやってきては帽子と服の切れ端を残してあぶれゆっくり達の餡子になるのだと言う。
あのれいむ一家がいた餌場は件のまりさ一味が取り締まっている小規模な物なのでかなりユルい方らしい。
凄まじい所は夜になると壮絶な争いが繰り広げられ、朝になれば残っているのは餡子と飾りだけという所も多々あると言う話だ。


そんな話を聞きながられいむ一家のいるダンボール箱を覗き込む。
そこでは私は案の定ゆっくりらしきものを目にした。
「ゆへぇ…ひどいんだぜ…これは…」
覗き込んだ羽付きがそう漏らすほどにそこには凄まじい光景が広がっていた。
「ゆ”!ゆ”!ぽん…ぽんが…いだい…よぉぉ…」
私は思わず鼻を衝く異臭に吐き気を催した。それほどの臭いがしたからだ。
目の前にいるのはもはやゆっくりと呼べる代物ではなかった。
少なくともゆっくりというのは丸々としていて張りがあるはずだ。(なすび型もあるが)
だが「それ」は違った。カビらしき物はすでに小麦粉の皮全体に広がっており深緑色に変色してしまっている。
空気の抜けたというよりパンクしたゴムまりの様に地面に潰れていた。寒天の両目はすでにない、落ちてしまったようだ。
何より小麦粉の皮がデロデロに溶けている。れいぱーありすにすっきりされた時の様に小麦粉の皮と砂糖細工の髪と飾りを残して潰れたような感じと同一だと私は思ったが…
皮もあまってビロビロで、張りが無くなったとかそんな問題ではなかった。
異臭の正体とさらに不気味さを醸し出す物を見た。グズグズの深緑の何かが転がっている。ネチョっとしたような触感、これは「うんうん」だ。
コンポストの中でカビが生えるゆっくり特有のものだ。餡子変換能力が極端に弱くなるか、なくなる事によってどんなものを食べても餡子にならずにうんうんと同時に出てしまうのだ。
だがこの場合は少し違う。餡子についたカビを出そうとして餡子をうんうんで出してしまったのだ。しかも三分の一を失うまではかなり時間をかけて。
想像を絶する苦痛ではないかと私は思う。小麦粉の皮が余ってビロビロになってしまったのはそのせいだ。
「ゆ”…!ゆ”…!ゆ”…ぎ…ぃぃ…」
だが一番私が驚いた事はまだこのれいむが生きていると言う事だ。
時折まるでアメーバの様な動きでクネクネと小麦粉の皮が動いて、あにゃるらしき部分から餡子が深緑に変色した餡子らしき物が垂れ流しになっていた
大量のカビの生えた餡子(うんうん)に目を向けると、中に埋もれるようにして砂糖細工のおさげと小さなリボンが浮かんでいた。既に二匹の子ゆっくりは完全に腐って饅頭としての形を保てなくなっていたようだ。
「かびさんがはえたゆっくりがいるとそのまわりぜんたいまでかびさんがはえるんだぜ…」
明日は我が身だと言わんばかりの表情で羽付きが呟く。
通常ゆっくりにカビが生えると言う事はまずあり得ない。ぺーろぺーろや水浴びで常に清潔に保っておくからだ。
だがここは街、それも中心部のコンクリートジャングルだ。水場も確保しなければならない程にそういった事情には逼迫している。
なので街の中心部にいるゆっくりは実はかなりカビにかかりやすい、との事だ。
ちょっとでもカビが生えてしまえばゆっくり特有の「すーりすーり」や「ぺーろぺーろ」で伝染する。
そうなれば数日の内にカビで動けなくなってしまうのだ。中の餡子についた場合はもっと最悪で、うんうんを垂れ流しにして小麦粉の皮だけになってしまう。
ふと突然目の前の親れいむが激しくウネウネと動きだした。
「ゆ”!ゆ”!ゆ”!ゅ”!ゅ”…!ゅ”…」
これはゆっくりの餡子が三分の一以上無くなった時の行動だ。目はないが、あれば恐らくは寒天の目をグリンと上に向けて痙攣を始める。
私の目の前でその親れいむはものの1分もしない内に完全に動かなくなってしまった。
後に残っているのはグチャグチャに腐った饅頭らしきものだけであった。


…私と羽付きは人が交差する表通りの雑踏を進んでいた。
表通りを歩くと煌びやかで、賑やかな光景が広がっている。
だが、私にはそれが何か寂しくて無機質な物として目に映った。
羽付きと私がふと路地裏に目をやると雑多に積まれたゴミにまみれて汚いゆっくりがダンゴのように固まってウネウネと動いている。
暫く立ち止まって見ていると一匹のゆっくりが私に気がつくとそそくさと周りのゆっくりもどこかへ跳ねていってしまった。
視線を戻して街の中心から離れるために再び歩く。羽付きもその光景を見て無言で跳ねていた。
その後、羽付きと別れる間際に聞いた話によれば、今も「とかいはなゆっくりプレイス」を夢見て街の中心部までやってくるゆっくりは後を絶たないらしい。
あのれいむ一家は何だったのだろうか?捨てゆっくりか山から下ったゆっくりか?
色々考えた歯見たが、今となっては詮索しようもない。
羽付きと別れて家路につく途中、ふと振り返るとそこには天を衝くようなビルが固まっている街並みが目に入った―――




挿絵 by儚いあき


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このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

すべてのコメントを見る
  • 私は、羽付きまりさが大好きです。 -- 2016-07-16 16:04:57
  • 中々香ばしいおキチさんが湧いてらっしゃいますね。 -- 2013-03-25 18:50:52
  • このシリーズ(?)は面白いですね
    虐待とは違った視点が好きです


    ↓下の人たちってさ人様の作品のコメント欄で醜い言い争いして悪いと思わないの?

    作者やコメント見た人の気持ちを考えろよ

    -- 2012-06-25 22:00:58
  • 感動しました^^
    -- 2012-04-29 14:46:25
  • 途中で気持ち悪くなったお(´∀`)
    -- 2012-04-29 14:45:33
  • 感想書けよおまえら

    私はこのSS楽しかったです -- 2012-01-21 18:17:46
  • ゆっくりしろよ -- 2011-08-25 17:21:33
  • ↓必死かよw -- 2011-07-17 16:19:41
  • ↓、↓×3
    そういうことか、お前ら同一人物か!自演乙すぎるw -- 2011-07-16 18:38:01
  • ↓×2 過去にズタボロに論破されてるみたいだな
    それが悔しくて実は自演でしたとか嘘乙w
    -- 2011-07-12 08:39:16
  • ノリノリだな -- 2011-07-11 17:47:50
  • おもろい?そうか、それはよかったっ!私も頑張った甲斐があったというものだっ!
    何故ならばっ!ここにあるコメントの約8割がっ!この私のっ!自作自演!だからだぁっ!
    私は諦めない!ステアウェイトゥゆっげえの完遂を諦めないっ!
    悪意を燃やせっ!殺意を巡らせろっ!ステアウェイトゥゆっげえは終らないのだっ! -- 2011-07-09 19:51:57
  • おまえらのコメがおもろいわw -- 2011-07-08 15:46:37
  • ぎゃあぎゃあ五月蝿いからほっとけばいい希ガス -- 2011-07-02 23:05:21
  • コメントできる頭のいいゆっくりがいっぱいいるな -- 2011-06-24 23:03:35
  • ( ゚∀゚)О彡゚えーりん!えーりん! -- 2011-05-10 02:43:07
  • なにここの米楽しいwwwww

    ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! -- 2011-03-31 01:57:17
  • www本当のこと言われたからってそんなにムキになんなよゆとりDQNのキモ荒らしさんww -- 2011-03-09 15:28:06
  • お前ら楽しそうだな
    -- 2011-03-07 12:29:22
  • ↓>薄々勘づいてはいたけど、これでただのDQNだってことが明らかになったね!

    あっやべ!もしかして恐がらせちゃった?
    やっぱりすげえビビらせちゃった?
    いや、わりーwわりーw、でもビビんなくていいぞw
    つうかこれくらいで超ビビってんじゃねえよwマジヘタレだなww

    >自分の思い込みで見事にドツボにはまってるねぇ

    やっぱりここにこだわっちゃうんだw
    連続投稿一人小芝居だけはどうしても、ど~しても否定したいんだww
    だから別の俺はやっちゃ駄目なんて言ってないじゃない
    やりたければ好きにやればいいじゃない、それでお前が虚しくないのならなww

    >必死に自分の顔のキモさをアピール

    結局それかよw語彙がどうとか言っといてお前も「お前がキモい」かよww
    まあ別にいいけどな
    憎しみが憎しみを呼び、顔も知らぬお互いをキモいキモいと罵り合うキモキモ合戦・・・
    そんな不毛でキモい戦い、俺は結構好きだぜ!

    あっでもお前はリアルでキモいけどな

    ↓↓>特にゴルア連呼してる奴

    一見全員のスレチを諌める風を装っているが結局標的はゴルア一人w
    わっかりやすいのうw
    なんともわかりやすい一人小芝居だのうww
    ついに伝家の宝刀「連続投稿一人小芝居」を抜いたんだねーwキモウザいよーw


    まあでもお前が虚しくないなら連続投稿一人小芝居すればって言ったけどさ
    何人かでガーガー言ってるように見えて、
    実はゆとり二人が罵り合ってるだけってかなり寒いよなw

    お前はキモ寒いんだよ!!!ゴルゥアアアァァァァ!!!!!

    まあ俺は違うけどなw

    -- 2011-02-25 13:30:19
最終更新:2009年12月16日 17:03
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