ふたば系ゆっくりいじめ 614 赤ありすと、まりさ一家 後編_01

赤ありすと、まりさ一家 後編 83KB


家出 同族殺し 餡庫ンペ09参加作品






餡庫ンペ09参加作品です。
テーマは差別、キー要素は家出です。
ふたば系ゆっくりいじめ 598 赤ありすと、まりさ一家 前編」の続きです。
作者はマ・あき。
以前「まりさがんばる」「まりさがんばった」を書きました。











赤ありすと、まりさ一家 後編







届かなかった。


お家には夜毎いしさんがぶつかってきた。
もう一家にも理解できた。
いしさんが、ゆっくりできないのではない。
ゆっくりできない、ゆっくりの仕業だ。
一家のお家に、いしさんをぶつけているのだ。
一家は満足に眠れない。


一家が外を出歩けば、赤ありすとそれを匿う一家を非難する声が聞こえる。
だが、面と向かって言ってくるゆっくりはいない。
声のする方を見れば、みんな黙って視線を外す。
気が滅入る。

姉妹と一緒に遊んでくれる子ゆっくりが減っていった。
最初は気のせいかと思っていたが、どんどん数が減り、今ではもう何匹も残っていない。
特に仲の良い子ちぇんと他に数匹だけだ。
姉妹だけで遊ぶことが増えた。

自分達は何も悪いことをしていない。
こんな状況も時間が解決してくれる。
一家はそう信じていた。
だが、あの飼いゆっくりがプレイスを訪れて無法を働く度、
一家への風当たりは強くなる一方だった。
一家が何もしなくても、一家には何一つ関係がなくても状況は悪化する。


最初に赤ありすが襲われたときには、味方のほうが多かった。
だが、今では味方はほとんどいない。




「むきゅむきゅん!もうすっかりいいわ。よくがんばったわね、おちびちゃん!」
「ゆん!ぱちゅりーおねーしゃんのおかげよ!」
「ぱちゅりー、ほんとにありがとうだよ!
 おかげで、おちびちゃんもすっかり元気になったよ!」

まりさ、赤ありす、おいしゃさまのぱちゅりーの三匹がゆっくりと話をしている。
ここは、おいしゃさまのぱちゅりーのお家だ。
最初の診察から、既に数回診察を受けている。
やっとぱちゅりーから、赤ありすの完治宣言がでたところだ。
ゆっくりしているのは、そればかりではない。
一家には、もうほとんど味方がいない。
そんななかで、このぱちゅりーは一家にも分け隔てなく接してくれる
数少ないゆっくりの一匹なのだ。
さらに、職業柄プレイスのゆっくりたちからの信頼も厚く、影響力も大きい。
このぱちゅりーが一家を差別しないことが、
多少なりとも一家への風当たりを和らげてくれていた。
赤ありすは勿論、まりさや他の姉妹にとっても、頼もしくもゆっくりした存在だった。

「むきゅ!いろいろ大変だとおもうけど、
 こまったことがあったらいつでもいらっしゃい。
 そうだんにのるわよ!」
「ありがとう、ぱちゅりー!とってもゆっくりできるよ!」
「ぱちゅりーおねーしゃん、ゆっくちありがとうにぇ!
 とっちぇもとかいはよ!」


ぱちゅりーのおかげで、ゆっくりした気分になれたまりさと、
そのお帽子の上の赤ありすは、
「ぱちゅりーはほんとうにゆっくりしてるね!
 ありすのケガもぜんぶなおしてくれたよ!」
「ほんとにぇ!ありちゅも大きくなったら、
 ぱちゅりーおねーしゃんみたいにゃ、とかいはじょいになるにょ!」
「ゆふふふ!おちびちゃんなら、きっとなれるよ!」
「ゆん!それにしても、おとーしゃんのおぼうち、とかいはにぇ!とってもすてきよ!」
「ありがとうだよ。おちびちゃんにそんなこと言われると、まりさてれちゃうよ。
 でも、ありすのカチューシャさんもとってもきれいだよ!
 しょうらいは美ゆっくりまちがいなしだね!」
「ゆぅぅん!」
帰宅途中の道すがら、ゆっくりとした会話を交し合った。







「ゆびっ、ゆび!ゆぐっ!ゆえええええん!」
「なかないで、まりさ・・・。むきゅぅぅぅ・・・。」
お家に辿り着くと、様子が変だ。


お家がぼろぼろだよ。
おちびちゃんたちが、泣いてるよ。
一体何があったの。

呆然とする、まりさと赤ありす。
お家がぼろぼろに壊され、そのお家の前で子まりさが泣いている。
子ぱちゅりーは、その子まりさを慰めているようだ。
だが、呆けている場合ではない。
親としての責任感からか、いち早く立ち直り、子ゆたちの安否を確認する。

「二人ともだいじょうぶなの?ケガはない?」
「むきゅうん・・・。だいじょうぶよ、おとーさま。
 わたしも、まりさもケガはないわ・・。」
幸い二匹ともケガはないようだ。
「ゆぐっ!ゆええええぇぇん!まりしゃのお家しゃん・・・。
 みんなのお家しゃんがぁぁーー!!
 こんなのひどいのじぇぇぇぇ!!!
 ゆぴぃぃぃーーー!」

しかし、子まりさはお家が壊されたことが余程ショックだったのだろう。
凄い勢いで泣き叫んでいる。
普段、陽気で腕白な子まりさだけに、余計に痛々しい。

「ゆぅぅぅ・・・。なかないでね、おちびちゃん・・・。
 ・・・だいじょうぶだよ!お家ならまた、おとーさんがつくるよ!
 だから、ゆっくりしてね!」
「むきゅ!そうよ。こんなことでまけちゃだめよ!」
まりさと、子ぱちゅりーが口々に子まりさを慰める。
その甲斐あってか、やっと子まりさが泣き止む。

「ゆぐっ・・・。ま、まりしゃ・・・、もう泣かないのじぇ!
 ゆっくちするのじぇ!」
「そうだよ!ゆっくりだよ!」
「むきゅきゅ!むっきゅりよ!」
「「「ゆっくりしていってね!!」」」

お互いへのゆっくりしていってね、で落ち着きを取り戻した三匹。
まりさは、子ゆたちの安否確認に続き、何があったのかを二匹に尋ねる。
「むきゅ・・・。」
「だじぇ・・・。」

言い辛そうな二匹。
しかし、子ぱちゅりーが意を決して口を開く。

「むきゅう・・・。せいっさいっだそうよ。
 ゲスの飼いゆっくりをかくまうゆっくりに・・・。」
プレイスのゆっくりたちが集まってきて、一家のお家を壊したときの様子を説明する。

「「ゆ!?。」」
まりさと赤ありすの驚愕の声が重なる。

「ど、どうして!?そんなのひどすぎるよ・・・!
 まりさたちはなんにもわるいことなんかしてないのに!」
まりさは思う。
ゲスの飼いゆっくりとは誰のことだ?
赤ありすは悪いことなど何もしていない。
自分達家族の誰一人として、断じてゲスなどではない。
だが、現実としてとうとうお家まで壊されてしまった。
ここに来て、例の飼いゆっくりが今まで以上に無法を働いているのだ。
人間さんの力を恐れ、飼いゆっくりには逆らえない。
だが、例外的に人間さんとはぐれてしまった(と思い込んでいる)、
飼いゆっくりの赤ありすならば、せいっさいっをすることができる。
おそらくそういった理屈で、その鬱憤が一家に回ってきたのだろう。
嫌がらせはエスカレートする一方だ。
時間が経てば徐々に落ち着き、
また元の穏やかな生活が戻ると考えていた自分は甘かったらしい。
このままでは、おちびちゃんたちに直接危害を加えてくるのも時間の問題だろう。
ここは最早、自分達一家にとってゆっくりプレイスではないのかもしれない。


「・・・・・。」
赤ありすは思う。
自分はゲスなどではない。
何一つ悪いことなどしていない。
一家のお家を壊される謂れなどない。
これはあまりに理不尽だ。
 ・・・・。
だが、理不尽であれどうであれ、自分が原因なのは間違いがない。
自分が飼いゆっくりであるばかりに一家に迷惑が掛かる。
これからも迷惑をかけ続ける。
壊されたお家を見ていると、自分を始め、
まりさや姉妹にまで危険が迫っていることが嫌と言うほど理解させられる。
自分は一家にとって、疫病神なのかもしれない・・・。



その日は、ボロボロのお家の残骸と、近くで拾い集めてきたダンボール片や
ビニール片で作り直した仮設のお家で過ごした。

「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛。しゃ、しゃむいんだじぇ・・・。」
「むっきゅしょん!そうね・・・。それにお腹も空いたわね・・・。」
「ごめんね、おちびちゃんたち・・・。
 明日になったら、お家も、ごはんもなんとかするからね。
 今日だけはがまんしてね。」
「ゆ!ゆっくりりかいしたのじぇ!
 まりさはいいこだから、わがままいわないのじぇ!」
「むきゅん!ぱちぇもがまんできるわ!
 あしたはみんなで、ごはんをさがすのよ!」
「ゆゆーん!おちびちゃんたちは、ほんとにゆっくりしてるね!
 ・・ゆ!そうだよ!みんな、こっちにあつまろうね!
ほら、みんなですーりすーりすればあったかいよ!」
「「ゆゆーん!!」」「・・・・・。」

赤ありすも一家と一塊になってすーりすーりしてみる。

お家はボロボロで隙間風が身にしみる。
冬に備えた備蓄のごはんもほとんどが持っていかれてしまった。
一人でさまよっていたとき以来の空腹が寒さに拍車をかける。
だが、そんなことは大して気にもならない。

今の自分には、とかいはなみゃみゃがいない。飼い主さんもいない。
未だに離れ離れのままだ。
恋しい。
なのに、今日まではとてもゆっくりできていた。
この、とてもゆっくりした一家と一緒だったから。

このゆっくりした一家と一緒だから、寒さも空腹も気にならない。
この一家と自分が、寒くてひもじい思いをするのは自分のせいだ。
飼いゆっくりの自分が一緒のせいだからだ。
なのに、この一家は誰も自分を責めない。
今も、こうして一緒にすーりすーりしている。
寒さも、空腹も気にならない。

気にならないくらい、ゆっくりできない。

寒さより、空腹より、ゆっくりした一家と一緒にいることがゆっくりできなかった。
理由は分からないが、とてもゆっくりできない。
一家と一緒にいることに耐えられないほどに。
赤ありすは、こんなに酷い目に遭っているのに、
自分を責めることさえしない一家と一緒にいることが何より辛かった。



赤ありすは、お家を出ることにした。




そして朝。
一番に目覚めたのは子まりさだった。
「ゆ゛−・・・。ゆっくりしていってね!!!おはゆっくりだじぇ!!」
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
「おはようだよ、おちびちゃんたち!」
「むきゅー!おはゆっくりよ!」
「ゆっくりしていってにぇ・・・。」

この一家とも今日でお別れだ。
自分で決めたこととは言え、気分の良い朝とはいかない。
僅かなごはんでの朝むーしゃむーしゃを終えると、
昨日話していた通りお家の材料集めや狩りへ行くことになった。
いつもは、まりさだけでの狩りだが、場合が場合だけに
姉妹もプレイスの中で草花など安全に採れるごはんを採りに行くことになった。
「それじゃ、おちびちゃんたちも、きをつけてね!
 おひるにはまりさも一度もどってくるからね!
 おちびちゃんたちもおひるにはお家にもどるんだよ!
 それじゃ、ゆっくりいってきます!」
「「ゆっくりいってらっしゃい!!」」

姉妹は、まりさを見送ると自分達も出かけることにした。
「むきゅ!それじゃ、いきましょうか!
 あまりとおくへいくのはきけんだから、
 プレイスと川さんのさかいのあたりで狩りをしましょう!」
「ゆ!わかったのじぇ!狩りならまりさにまかせてほしいんだじぇ!」
「ゆっくちがんばろうにぇ・・・。」
プレイスと隣接する川原の辺りは、草花やむしさんが比較的多く採れる狩場だ。
川原へはゆっくりプレイスから直接移動でき、
危険の多い人間さんのプレイスに出る必要がないため、
子ゆっくりが狩りをするにはうってつけの場所だ。

「ゆっくりのひー、まったりのひー!」
「むっきゅん、むっきゅん!むきゅむきゅむっきゅん!」
「・・・・・・・・。」
元気にお歌を歌う姉妹。
元来陽気で忘れっぽいゆっくりである。
加えて、今日は天気もよく過ごしやすい。
ちょっとした冒険気分だ。
そうなった理由は、お家が壊されごはんの備蓄も奪われたため、
子ゆたちにも少しでもごはんを採ってきて欲しいという切実なものなのだが、
赤ありす以外の子ゆっくりたちは楽しそうである。

しばらく移動すると、川原にたどり着いた。
「むきゅん!それじゃさっそく狩りをしましょうか!
 おひるには一度もどるから、それまでにごはんをあつめるわよ!」
「ゆん!まりさはあっちでむしさんをとってくるのじぇ!」ぴょーん
まりさは、一匹で先に行ってしまう。
「むきゅ!?もう、まりさったら!
 ありすはぱちぇとお花さんでもあつめましょ。」
「ゆゆー・・・。ありちゅ、あっちでひとりでごはんをあちゅめりゅわ。」
「むきゅー・・・。ありすは、まだひとりはきけんよ。
 ・・・しかないわね。でもとおくへいったらだめなのよ!」
むきゅ。
もともと危険の少ない場所だし、あまり遠くへ行かなければ大丈夫ね。

思いの外、赤ありすが頑固なのを見て、子ぱちゅりーのほうが折れた。

「ゆん!ありがちょう、ぱちゅりーおねーちゃん!」
赤ありすは、お礼を言うと茂みの中へと入っていく。
そしてそのまま、川の下流へと進んでいく。

このまま、一家ともゆっくりプレイスともお別れだ。
みゃみゃや、飼い主さんを探しに行こう。
みゃみゃや、飼い主さんに会えるかは分からないがここに留まることもできない。

こうして、赤ありすはゆっくりプレイスを出た。



赤ありすが、川沿いに進んでいると、姉妹と仲の良い子ちぇんに出会った。
多分、子ちぇんも狩りにきているのだろう。
子ちぇんは赤ありすよりも大分年長だから、一人でプレイスの外れにも来ているようだ。

「ありすー?一人でおさんぽなんだねー。
 でも、ありす一人じゃあぶないから、ちぇんもいっしょにいくよー。」

子ちぇんは、今でも姉妹と遊んでくれるゆっくりとしたゆっくりだ。
きっと今も自分のことを心底心配して同行を申し出てくれたのだろう。
そんな心優しい子ちぇんを拒絶するのは忍びないが、
「ゆん!ありちゅは一人でおさんぽすりゅにょ!
 ちぇんみたいな、いにゃかもにょとは、いっしょにあるけにゃいわ!」
「にゃー・・・。ありす、ひどいよー・・・。」

尻尾と耳を力なく垂れさせる子ちぇん。
「それじゃ、ありちゅはしつれいすりゅわ!」
子ちぇんを振り切るように、出来るだけ高飛車に振舞う赤ありす。
が、
「ありすは、まだ赤ちゃんだから一人で遠くに行ったらだめなんだよー!
 わかってねー!」
それでも、赤ありすを心配して追いかけようとする子ちぇん。
「ぷくー!!ちぇんは、ありちゅをほうっておいてにぇ!
 ありちゅ、ほんきでぷくーすりゅよ!」
「にゃ!?ありすー・・・。わがらにゃいよー・・・。」

それでも心配そうな子ちぇん。
しかし、ぷくーまでされてしまっては結局赤ありすを見送るしかなかった。






お昼近く。
子ぱちゅりーは、そろそろお家に帰るために、
妹たちと合流しなければならないと考えていた。
「むきゅーん。もうじかんね。まりさとありすはどこかしら?」
と、
「ゆっゆゆーん!たいりょうなのじぇ!まりさは狩りの名人なのじぇ!」
子まりさが戻ってきた。
頭の上の小さなお帽子が大きく膨れている。
どうやら、狩りの成果は上々らしい。

「むきゅ!まりさ、狩りはうまくいったようね!」
「ゆん!あたりまえなのじぇ!
 狩りのことなら、まりさにまかせてほしいんだじぇ!
 おねーちゃんとありすにも、ごちそうとってきたんだじぇ!」
「むきゅきゅ!ありがとう、まりさ。ところで、ありすを見なかった?」
「ゆーん?まりさはありすとはあわなかったのじぇ。」
「むきゅー。それじゃ、ありすをよびにいきましょ。あっちにいるはずよ。」

ありすの向かった茂みのほうへと跳ねていく二匹。
すると、がさごそと音を立てて、茂みの中から子ちぇんが出てきた。
「むきゅ!」
「ゆ!」
「にゃ!」
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
きれいに重なる三重唱。
お決まりの挨拶だ。
これさえあれば、いつでもゆっくり。
効果抜群の魔法のことば。
のはずが、子ちぇんは心なしか元気がないようだ。
「ちぇん、どうかしたのかしら?げんきがないわね。」
「まりさにはなすんだじぇ!そうだんにのるんだじぇ!」
心配する二匹。
「にゃー・・・。ちぇんは、ありすにきらわれちゃったみたいだよー・・・。」
子ちぇんは、赤ありすとの一部始終を姉妹に話した。

「むきゅー・・・。ありすが、そんなことを・・・?」
「ゆ!それより、そんなに遠くへいったらあぶないのじぇ!
 はやく探しにいくのじぇ!」
「ごめんねだよー。ちぇんがもっとちゃんと、とめてればよかったよー・・・。」
「ちぇんはわるくないんだじぇ!でも、ありすのこともゆるしてほしいのじぇ。
 きっとなにか、りゆうがあったんだじぇ。」
「むきゅむきゅ。そうね、ありすはそんな、ゆっくりできないこじゃないわ。」
「いいんだよー、ちぇんはきにしてないんだよー。
 それより、ありすをさがしにいくんだねー!
 ちぇんもいっしょにいくんだよー!」
「ゆ!いくのじぇ!」
「まって、ふたりとも!いくらありすでも、もうとおくへいってしまったわ!
 まずは、お家にかえっておとーさまにほうこくよ!」
「ゆ!?ゆゆぅぅ・・。しかたないのじぇ。
 おとーしゃんなら、なんとかしてくれるのじぇ!」
「ぱちゅりーたちのおとーさんはとってもたよりになるんだねー!わかるよー!」

そうと決まれば、善は急げだ。
子ちぇんと別れ、姉妹はお家に大急ぎで戻ってきた。
お家には既に、まりさが帰っていた。
「ゆはー、ゆげー・・・。おとうさ・ごほっごほっ!!むぎゅんむぎょん!!」
「おちびちゃん、だいじょうぶ!そんなにあわてなくてもいいんだよ!
 まりさは、どこにもいったりしないよ!」
「ちがうのぜ!ありすが、ゆくえふめいなのじぇ!
 プレイスからでていったらしいんだじぇ!」
「ゆふー・・・。そうよ!ちぇんがありすをみたそうだけど、ようすがへんなの!」
子ぱちゅりーは、子ちぇんから聞いた話をまりさにも聞かせた。
「ゆゆゆ!?ありすが!?そんな・・・。」

まりさは、幾つかの可能性を考えた。
餡子脳にしては良く考えたほうだ。
一つは赤ありすが、家出してしまったこと。
これまでの、一家の苦労の原因と言えば、やはり赤ありすだった。
一家は誰も気にしていないが、優しい赤ありすにはそれも苦痛だったのかもしれない。
二つ目は、一人で狩りをしていて危険な虫さんに襲われたり、
川さんに流されてしまったということ。
比較的安全なプレイスとその周辺ではあるが、赤ゆっくりには危険も多い。
今回は、非常事態ということでおちびちゃんたちだけで行かせてしまったが、
自分も少し甘かったかもしれない。
三つ目は、飼いゆっくりを恨む一団に襲われたということ。
これまで、最初の襲撃以来おとなしかった為油断していたが、
いつ再び赤ありすに対して直接危害を加えようとするか分かったものではない。
まさか、ゆっくり気のないプレイスの外れで、赤ありすを・・。
いけない!
すぐに赤ありすを探しに行かなくては!
それに、危険といえばこうなった以上、他の姉妹から目を離すことも危険にすぎる。
全員で一緒に行動するべきだ。


「ゆ!みんなでありすをさがしにいくよ!
 おちびちゃんたちは、まりさのお帽子にのってね!」
「むきゅ!ありがとう、おとうさま!」
「ゆん!まりさもおとーさしゃんのお帽子さんにゆっくりのるのじぇ!」
よーじよーじ
「ゆ!二人とものったね!それじゃ、ゆっくりありすをさがしにいくよ!」
「「ゆっくりー!!」」







赤ありす捜索の決意もゆっくりと、一家が気炎を上げているその頃。
一方では、奴がプレイスに近づいていた。

「ゆふふふ!今日もゲス野良をせいっさいっだよ!
 人間さんのためにもゲス野良くじょは飼いゆっくりのぎむだよ!
 ノブレス・オブリージュだよ!
べ、べつにすきでやってるわけじゃないんだよ!!」

今日もゲス野良の住処で、ゲス野良駆除をするよ!
ゆっゆっゆっゆ!今日の第一汚物消毒はどの汚まんじゅうがいいかな?
きょろきょろと今日の獲物を物色する飼いゆっくり。
早くも、飼いゆっくりの存在に気づいた野良ゆっくりたちが、
あるものは大慌てで逃げ出し、
あるものは自分に注意が向かないよう体を縮めてやり過ごそうとする。
そんななか、一匹の野良ゆっくりに目が留まった。

「むきゅ!ゆ風邪ね!大丈夫よ。良く効くおくすりがあるわ!ちょっとまっててね!」
てきぱきと患ゆを診察する、あのおいしゃさまのぱちゅりーだ。
まだ、飼いゆっくりが現れたことに気づいていない。

ゆ!今日はあの紫もやしに決定だよ!ゆゆゆーん!!
ぱちゅりーに向かって跳ねていく飼いゆっくり。
そしてそのまま
「ゲス野良はゆっくりしね!!」どすん
「むぎゅ!」ごろごろ

若干ぱちゅりーより大きな体で、勢い良くぶつかっていく。
「むぎゅぅぅぅぅ・・・。」
背後からの不意打ちに、大ダメージのぱちゅりー。
しかも、ぱちゅりーと言えば体の弱さでは定評がある。
このぱちゅりーも例外ではなく、一撃でほぼ行動不能だ。

「ゲス野良はゆっくりしね!おぶつはしょうどくだよ!ゆっはーー!」
ぼよんぼよん
「むぎょ!むげぇぇぇ!!や、やめ・・・。
 ぱちぇ、むぎゅぅぅぅ!!!し・・・、しんじゃはぁふぅ!」
飼いゆっくりは、ころころと転がってそのまま起き上がれないぱちゅりーの上に
飛び乗ると、その上で全力で跳ねだした。
そのまま、何度も何度もぱちゅりーの上で飛び跳ねた。
「むぎゅぎゅ・・・。おねがいですぅぅぅ・・・。ぎゃふっ!!
 ぱ・・、ぱちぇはゲスなんかじゃありませんんんん。んぐぅっ!!
 みんなのけがやびょうきをなおす、いじゃなんでずぅぅぅぅ・・・。」

ぱちゅりーも、周りのゆっくりも手を出せない。
相手は飼いゆっくり。
背後には、恐ろしく強大な人間さんがついているのだ。
下手に手を出せば、自分のみならず、
このゆっくりプレイスのゆっくり全てが永遠にゆっくりさせられてしまう。
見ているしかない。

「ゆゆーん?おいしゃさまー!?ゲス野良が、かたはらいたいよ!
 だいたいゲスの野良を治すなんて、あくぎゃくひどうここにきわまれりだよ!
 くろっ!まっくろくろだよ!はんけつっ!しけいっだよっ!」
「そ、そんな・・・。ぱちぇは、「ぐちゃ」むぎょぎょぎょぎょ!!!」
えれえれえれえれ、びくんびくんびくん
言葉の途中で、飼いゆっくりに踏みつけられるぱちゅりー。
とうとう吐クリームと痙攣を同時に起こしてしまう。

「ゆっふー!!!いいしごとしたよ!!」
凄くいい笑顔の飼いゆっくり。

「ぱちゅりぃぃぃぃぃーーーー!!!ゆっくりよ!ゆっくりしてね!!!」
すると、瀕死のぱちゅりーの元へ駆け寄る一匹のゆっくり。
面倒見が良いと評判の、とかいはありすおねーさんだ。
ぱちゅりーとは同世代で、特に仲が良い。
コミュニティでも人気者のおねーさんだ。

「ゆゆ!?またゲス野良が寄ってきたよ?せいっさいっされたいんだね!!」
ゆふふふふ、と上機嫌の飼いゆっくり。

とかいはありすおねーさんは、この言葉にきっとなって振り返ると、
「だまりなさい!このいなかもの!こんなことをして恥ずかしくないの!!
 そのお飾りの銀ばっじと飼い主の人間さんにもうしわけないと思わないの!?」

「ゆゆゆゆゆ!?なにいってるの!うるさいよ!
 ゆっくりできない野良れいぱーはせいっさいっしてあげるよ!!」ぼよーん
「こんの・・・かっぺがぁぁぁぁぁーーーー!!!」ずどん
「ゆ!?ゆべぇぇぇ・・・!」ごろんごろん
体当たりをする飼いゆっくり。
それを迎撃する、とかいはありすおねーさん。
ありすおねーさん渾身のかっぺごろし(体当たり)で吹っ飛ぶ飼いゆっくり。

「ゆべべべべ・・・。な、なんでぇぇぇ・・・!?」
「なんでじゃないわよ!
 今まであなたがみんなにしてきたことを思い出しなさい!
 もっと酷いことをいっぱいしてきたでしょう!」
「ゆー?なにいってるの!?
 飼いゆっくりとゲス野良とじゃいのちの価値がちがうでしょぉぉぉーーー!!
 ばかなこといわないでね!!」
「いのちの価値がちがうですって!?そうね!
 あなたみたいなゲスと、
 ゆっくりとしたぱちゅりーのいのちの価値は比べ物にならないわね!」
「ゆぎぎぎぎ!!!ちんこシューがうるさいよ!ばかにしないでね!!!」
「もんくがあるならかかってきなさい!!いくらでもあいてになるわよ!」ずいっ
「ゆ!?」ずざっ
「もうおわりなの?口ほどにもないわね!
 これにこりたら二度とプレイスにはちかづか・・・。」
「・・・フヒっ。フヒヒヒヒ!この銀ばっじがめにはいらないの!?
 ばかなの?しぬの?」
「銀ばっじがどうしたっていうの!?
 いまさら飼いゆっくりだからってゆるさないわよ!」
「ゆへへへへ!いいの!?
 飼いゆっくりに逆らうと人間さんがただじゃすまさないよ!
 ありすだけじゃないよ!
 ここのゲス野良ぜんぶがえいえんにゆっくりしちゃうよ!」
「ゆ!?」
「ばかなありすはまわりをよくみてね!」

飼いゆっくりに言われ、辺りを見回す、ありすおねーさん。
「ありずぅぅぅ・・・・。」
「ありす・・・。」
「だめだよぉぉぉぉ・・・。人間さんにみんなころされちゃうよぉぉぉ・・・。」
「れいむとおちびちゃんをまきこまないでね!」
「むきゅ・・・。ありす・・・。」
「ありすのきもち、わかるよー・・・。
 でも飼いゆっくりに逆らったらだめなんだよー・・・。わかってねー・・・。」
「ありす・・・。だめなんだぜ・・・!」

みんなの顔、顔、顔。
どれも今にも泣き出しそうな顔ばかりだ。
恐怖、悲しみ、怒り、屈辱。
どれもゆっくりしていない。
そのゆっくしていない顔が、ありすおねーさんに現実を突きつける。

「ゆ!そこのちんこシュー!」
「ありすは、ちんこシューなんかじゃ・・・」
「ちんこシューは飼いゆっくりに逆らうの?」
「ゆ・・・。ゆん・・・、ありすはちんこシューです・・・。」
「ちんこシュー!ぺにぺにをだすんだよ!ゆっくりしないでね!」
「そんな・・・!わがりまじだ・・・。これがありずのぺにぺにです・・・。」
天を衝くかのような立派な如意棒が、エレクチオン。
あまりの恥辱にありすは、涙をこらえるのに精一杯だ。

「そのままじっとしてるんだよ!
 うごいたら群れごとえいえんにゆっくりだよ!」
そう念を押すと、飼いゆっくりはありすに近づいたかと思うと、大口を開け、
「がぶりっ」
「ゆぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!?」
「むーしゃむーしゃ、ぺっ!」
ありすのぺにぺにを噛み千切り、咀嚼したかと思うと吐き出した。
吐き出され地面に落ちた如意棒は、ぐずぐずに崩れ、原型を留めていない。
「ぴぴぴぴぃぃぃぃぃ!!あ、ありずのとかいはぺにぺにが・・・!」
半狂乱のありすおねーさん。
「うごかないでね!」
「ゆぐぐぐぐぐぐ・・・!」
それでも、飼いゆっくりの言葉に反応して動きを止める。
「ゆっふっふっふ・・・。それじゃ、はじめるよ・・・。」
嫌らしい薄笑いで、再び飼いゆっくりが近づいてくる・・・・・・。










「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛」
楽しそうに飛び跳ね続ける飼いゆっくり。
飼いゆっくりの跳ねる音は最初は乾いていたが、今は水っぽい音がしている。
半ば体を潰されたありすが、自分自身のカスタードに塗れているせいだ。
そしてありすはとうとう痙攣しだす。

あらから、ありすおねーさんは散々に甚振られた。
特に噛み切られたぺにぺにの周辺は徹底的に痛めつけられた。
途中からは流石のとかいはも、狂ったように奇声を発し、
無様にのた打ち回るだけであった。
その姿は、普段のとかいはぶりを知るプレイスのゆっくりたちに大きな衝撃を与えた。
しかし、それも終わろうとしている。


(大変だよ!このままじゃ、ありすがゆっくりできくなっちゃうよ!)
(だめだよ!飼いゆっくりに逆らったら、人間さんにゆっくりできなくされるのぜ!)
(誰かケガを治せるゆっくりはいないの?)
(むぎゅううぅぅぅ・・・。えれえれえれえれぇぇぇ・・・・・。)
(たいへんだよー!ぱちゅりーもケガが酷いんだよー!)
(どしよう・・・。ぱちゅりーしかおくすりは使えないよ!
 これじゃケガをゆっくりなおせないよ!)
(おかーしゃーん!れいみゅきょわいよー!)
(見ちゃだめだよ!おちびちゃんは、おかあさんの後ろにゆっくり隠れてね!)
(ゆぅぅぅ・・・。ゆぅぅぅぅ・・・。はやく、はやくおわってね・・・。)
(こんなの・・・。こんなの、とかいはじゃないわ!)

野良ゆたちが傍観しているしかない間に、
飼いゆっくりのせいっさいっが終わったらしい。
「ゆっふーー!こんなもんだね!今日のところはこれぐらいで許してあげるよ!
 かわいいあんよが、汚まんじゅうのせいで汚れちゃったよ!
 早く帰ってお兄さんにきれいきれいしてらおうね!」
ぴょーんぴょーん
ゆっくりプレイスから立ち去る飼いゆっくり。

「いったのぜ!はやくありすとぱちゅりーをたすけるのぜ!」
飼いゆっくりの姿が見えなくなるのを待って、飛び出す野良ゆたち。

「ありすー、だいじょうぶなのー!?」
「ありす!ゆっくりなのぜ!」
口々にありすを励ます。
しかし・・・・、
「と、とかいは・・・・。もっど・・・ゆっぐりしたかった・・・わ・・・。」

「わぎゃらないよーーーー!!!!?」
「ありずーーー!!!しっかりするのぜーー!!」



「なんで、ぱちゅがこんなめに・・・、なんにぼ・・・悪いごど・・・・むぎゅう・・。」

「ぱちゅでぃぃぃーーーー!ぱちゅでぃーがゆっぐりしぢゃっだーーーー!!!?」
「ぱちゅぅぅーーー、めをあけてーー!!こんなのとかいはじゃないわーーー!!」





以前から渦巻いていた飼いゆっくりへの怒りと憎しみ。
聡明でコミュニティの相談役でもあったおいしゃさまのぱちゅりーと、
世話好きで誰からも好かれたとかいはありすおねーさん。
この二匹が殺されたことで、それは頂点に達した。
もしかすると、頭の弱いゆっくりのこと。
たとえ人間さんの恐怖があっても、その場の勢いで飼いゆっくりに
せいっさいっするということも有り得たかもしれない。
しかし、コミュニティにはしばらく前から暗黙の了解が成立していた。
飼いゆっくりへの怒りは、人間さんとはぐれた、ちびのゲス飼いゆっくりと
それを匿う一家にぶつけること。
そうすることで、安全にガス抜きをしようというのだ。
今回も矛先は一家に向かう。
しかし、その怒りはこれまでの比ではない。

「ゆぎぎぎぎぎぎ!もうゆるせないんだぜ!
 飼いゆっくりとそのかぞくをせいっさいっするんだぜ!」
「そうだみょん!ゆっくりプレイスのちあんのためにもほうっておけないみょん!」
「れいむ、もうゆるさないよ!ゲスのちんこシューをえいえんにゆっくりさせるよ!」
「これも飼いゆっくりがわるいんだよー!わかってねー!」
「むきゅ!こうへいにみてじょうじょうしゃくりょうの余地はないわね!」
「「「せいっさいっだよ!!!!」」」
ゆっくりたちは大挙して一家のお家へと向かっていく。



「にゃにゃ!?たたたた、たいへんだよー!!はやくしらせないとだめなんだよー!」
そして、子ちぇんは一家の元へと走る。







赤ありすはあれから当てもなくさまよっていた。
ただ、川原を川沿いに下っていた。
理由は特にない。
行く当てもないのだから、川沿いに移動しているだけだ。
川原を外れれば道路に出る。
あちら側は、ゆっくりの地獄が待ち受けている。
そのことは、赤ありすは身にしみて理解していた。
まだ、半日も移動していないし、子ゆ赤ゆからすれば別だが、
成体ならばゆっくりからすればそう大した距離を移動したわけではない。
しかし、赤ありすは赤ゆっくり。
やっとこれから子ゆっくりになろうかという時期だ。
半日近い移動で、あんよはすっかり痛んでしまった。
豊富な草花のおかげで、なんとか飢えを凌いではいるが、
狩りの名人であるまりさの採ってくるごはんとは比べ物にならない。
傍には誰もいない。
みゃみゃも飼い主さんも、おとーしゃんも姉妹も誰もいない。
独りで知らない道を進む。
赤ありすは赤ゆっくりだ。
赤ゆっくりにしては、今までずっと良く耐えてきた。


「ありちゅは、とかいは飼いゆっくりなにょよ!
 にゃんでだれもむかえにきてくれにゃいにょ?
 みゃみゃも、飼い主さんもありちゅのこときらいにゃにょ!?
 ありちゅのこちょ、いらないにょ!?」
「ありちゅ、なんにもわるいことしてないにょに・・・。
 飼いゆっくりだからって、いじめるなんちぇひどいわ!」
「こんにゃのとかいはじゃにゃいわ!ありちゅ、もうお家かえりゅ!
 ありちゅ、おうちにかえりちゃいぃーー!!」
「ゆんやー!ゆんやーーー!!!ゆびーー!!ゆわーん!ゆええーん!!」

これまで我慢してきた不安や不満。
みゃみゃや飼い主さんを疑うなんちぇ、とかいはじゃないわ!
お世話になっちぇるまりさおとーしゃんや、
おねーちゃんたちに我が侭言うなんちぇ、いなかもにょのすることよ!
自分にそう言い聞かせて押し殺してきた思いが爆発する。
一度言葉にしてしまえば、感情も抑えきれない。
なぜ、みゃみゃたちは自分を迎えに来てはくれないのか。
そもそも、みゃみゃと一緒にとかいはハウスで眠っていたはずが、
気がつけば見知らぬ場所に放り出されていた。
今まで、考えないようにしてきた。
しかし。
やはり、自分は捨てられてしまったのだろうか。
他に理由が思いつかない。
だとしたら自分は飼いゆっくりなどではない、ただの野良ゆっくりなのだろうか。
自分が野良ゆっくりならば、飼いゆっくりだからと自分が虐められることも、
一家に迷惑をかけることもなかったのではないか。
泣き叫びながら、お家に帰る宣言をした。
だがその「お家」がみゃみゃの待つお家か、一家の待つお家か自分でもわからない。
自分はどの「お家」に帰るというのだろう。
わからない。
わからない。
何一つわからない。
そして、どちらの「お家」にも帰れるわけもなく、赤ありすはさまよい続ける。






「おちびちゃーーん!!どこなのーーーー!!へんじをしてねーーー!?」
「ありすーー!でてらっしゃーーい!むきゅむきゅ。」
「ありすーー!!おこらないからでてくるのじぇーー!!」
まりさが、お帽子の上に子ゆたちを乗せて大急ぎで跳ねている。
一家は子ちぇんに聞いたとおり、ゆっくりプレイスと川原の境の辺りから、
赤ありすが向かったという方向へと進んでいる。
幸い川沿いに進んでいるだけであるし、赤ありすのペースなど高が知れている。
まりさなら子ゆ二匹を乗せていて猶、追いつくのにさほどの時間はかからないだろう。
だが、まだ幼い赤ゆっくりだ。
見知らぬ土地では何があるか知れたものではない。
急がねば。
どんどん進む。
そうして、跳ね続けていると、
ゆえぇぇぇーーーーん!!!
微かにだが、遠くからゆっくりの泣き声が聞こえてきた。
 ・・・おちびちゃん!?








「ゆ・・・・。」
赤ありすの進むペースはどんどん落ちていった。
あんよはそろそろ限界だ。
ゆぅ・・・。ありちゅのあんよがいちゃいいちゃいだよ・・・。
やはり、その辺に生えている草花では赤ありすの口には合わない。
ゆぅぅ・・・。おとーしゃんのごちそうがたべちゃいわ・・・。
赤ゆっくりはそもそも庇護者の存在もなく、一匹で行動できるようにはできていない。
ありちゅ、さびしいにょ・・・。おねーちゃん・・・。
「ゆん、ゆぅぅ、ゆっぐ、ゆびぇぇぇぇぇん!!」
とうとう一歩も進めなくなった赤ありす。
なんで、こんなことになったのだろう。
うずくまったまま、一人泣き続ける。

「おちびちゃんーーーーん!!」
「ありすーー!!きこえるーーー!!」
「ありすーーー!!おへんじするんだじぇーーー!!」

ゆゆゆゆ!?
一家の声が聞こえる。
まりさに、子ぱちゅりーに、子まりさ。
三人とも揃っているようだ。

「おとーしゃーん!ぱちぇおねーちゃーん!まりしゃおねーちゃーん!
 ありちゅ、ここよーーー!!!」
我を忘れて必死に家族に呼びかける赤ありす。
そして、背の高い草むらを掻き分けてまりさが現れる。
勿論、お帽子の上には子ぱちゅりーと子まりさが一緒だ。
「おちびちゃん!ぶじだったんだね!しんぱいしたよ!」
「むきゅうぅぅ!だめじゃない、かってに遠くへいったりしちゃ!
 おねーちゃんしんぱいしたのよ!」
「とおくへ行くときはおねーちゃんたちにいわなきゃだめなのじぇ!
 つぎやったらぷくーするのじぇ!」
「ゆんやー!ごめんにゃしゃーーい!ゆっぐ、ゆっぐ・・・!」
「いいんだよ!もう、なかなくてもいいんだよ!
 あやまったりしなくてもいいんだよ!」
泣きじゃくる赤ありすの元にたどり着き、そっと頬を寄せるまりさ。
「むきゅー。ありすったら・・・。しんぱいしたのよ・・・。」
「もう、みんなにしんぱいかけたらだめなんだじぇ。」
姉妹もお帽子から降りて、赤ありすの元へとやってくる。
しばし、一家でゆっくりを噛み締める。



「ゆん・・・。おちびちゃん、どうしてこんなところまできちゃったの?
 おとーさんにゆっくりおしえてね!」
「ゆ・・・。ありちゅ・・・・・・。」
言いかけて、途中で黙り込む赤ありす。
「おとーさん、おこったりしないよ。
 だからしょうじきにはなしてくれていいんだよ。」
急かしたりせず、ゆっくりと先を促すまりさ。
その甲斐あってか、途切れ途切れだが赤ありすが再び口を開く。
「ゆん・・・。ありちゅ、ありちゅが飼いゆっくりだから、おとーしゃんや
 おねーちゃんたちにめいわくをかけちゃうわ・・・。
 ありちゅがいにゃければ・・・。
 ありちゅがいにゃければ、
 みんにゃゆっくりでしあわせーできるとおもったにょ・・・。」
「むきゅ・・・。」
「ゆ・・・。」
俯いて再び黙り込んでしまう赤ありす。
事態は悪化する一方で、赤ありすの悩みにも姉妹も何と言ってよいか分からない。
すると、
「ゆんゆん!よかったよ!」

「むきゅ!?」
「のじぇ!?」
「ゆ!?」
意外なまりさの言葉に驚く姉妹。
疑問を口にする。
「むきゅむきゅ!?どういうこと?なにがよかったの、おとーさま?」
「ゆー?わからないのじぇ?ぜんぜんよくないのじぇ?」
「ゆー・・・。やっぱち、ありちゅはでていったほうがいいにょにぇ・・・。」
赤ありすは、一層落ち込んでしまった。
まりさは、明るく先を続ける。
「ゆん!まりさはね、ありすがおと−さんたちのことがきらいになって
 でていっちゃたのかとおもってしんぱいしたよ!
 でも、そんなことがなくてよかったよ!
 それに、ありすはとってもやさしいね!
 だから、おとーさんはあんしんして、とってもゆっくりできたんだよ!」
 いくら、信頼する父まりさの言葉とは言えあまりに気楽に過ぎないだろうか。
 姉妹たちも流石に納得できない。
「むきゅ!?たしかにそれはよかったけど、お家もこわされちゃったし、
 このままじゃずっとゆっくりできないわ・・・。どうにかしないと・・・。」
「そうなんだじぇ・・・。ありすはゆっくりできるいもーとだけど、
 おうちをこわされたりするのはゆっくりできないんだじぇ・・・。」
「ゆぅ・・・。」
まりさは自信に満ちた態度で答える。
「だいじょうぶだよ!まりさはかんがえたよ。
 もう、ゆっくりプレイスはゆっくりできないよ。
 だから、あたらしいゆっくりプレイスをさがしにいくよ!
 まりさが、あたらしいお家をさがすから、みんなでゆっくりひっこそうね!」
「むっきゅり・・・!!」
「すごいんだじぇ・・・!!」
「と、とかいはーーー!!」
まさか、そんな大胆な秘策があったとは。
子ゆっくりたちは尊敬の目でまりさを見ている。
偉大な父を改めて見直した、といったところだろうか。



なんてとかいはなのだろうか。
もう二度と戻らない、顔を合わせることもないと思っていた家族が、
自分を探しにきてくれた。
それも、新しいゆっくりプレイスを探しておひっこしするそうだ。
確かにそれならば自分がお家を出る必要はない。
一家とお別れする必要もない。
「ゆゆーん!おとーしゃん、すーりすーり!
 おとーしゃんはとってもとかいはにぇ!」
思わず、まりさにすーりすーりしてしまう。
「ゆゆ!ありす、ずるいのじぇ!まりさも!すーりすーりだじぇ!」
「むっきゅー!もう、みんなこどもなんだから!
 むっきゅん!いいわ。ぱちゅもすーりすーりよ!」
「ゆゆ!おちびちゃんたち、くすぐったいよ!
 みんな、あまえんぼうだね!」
一家はすっかり、スーパーすりすりタイムに突入だ。
そうして、一家全員ですーりすーりしていると、
ぐぅぅぅぅぅ・・・・。
「ゆ!ゆゆゆゆゆ!?」
赤ありすのお腹の音が鳴り響いた。
「ゆふふふふ!ありすはおなかがすいたんだね!」
「むきゅきゅきゅきゅ!もう、ありすったら!」
「まりさもおなかすいたんだじぇ!」
口々に言い立てる。
「ゆ~!はずかちいわ・・・。」
真っ赤になる赤ありす。
まりさは、しばらくそんな姉妹の様子を幸せそうに見つめていた。
「ゆ!それじゃみんなでむーしゃむーしゃしようね!
 おとーさんのとってきたごはんがあるよ!」
「まりさもなんだじぇ!
 ごはんさん、おぼうしのなかにはいってるんだじぇ!」
「むきゅ!さすがね!」
「ゆーん!おとーしゃんもおねーちゃんも、とっちぇもとかいはにぇ!」
まりさと、子まりさがお帽子のなかに入れてあったごはんを取り出す。
まりさは勿論、子まりさも子ゆっくりにしてはなかなかの狩りの名人ぶりだ。
「たまにはおそとでむーしゃむーしゃもゆっくりしてるね!」
「すてきなぴくにっくね!」
「ありす!まりさのとったいもむしさんたべるんだじぇ!
 とってもおいしいのじぇ!」
「ゆゆーん!ありがちょう、おねーちゃん!
 いもむしさん、とっちぇもとかいはよ!」
思いがけず素敵なお昼のむーしゃむーしゃに、
一家はとってもゆっくりーで、しあわせーだ。


一家がそうして、ゆんゆんしていると遠くから、がさがさと、
草むらを掻き分けて近づいてくる気配がする。
方角からしてゆっくりプレイスの方から近づいてきている。
ずいぶんと急いでいるようだ。
ゆっくりだろうか。
いよいよ、気配が近づいてくる。
もうすぐ、自分達の居るところにたどり着く。
一家が軽く緊張して身構える。
すると、
「「「「ちぇん!?」」」」
姉妹と仲の良い子ちぇんが姿をあらわした。
余程急いできたのだろう 息も切れ切れ、草で切ったのだろうか体中に傷がついている。
「むきゅ!?ちぇんどうしたの?なにかあったの?」
子ぱちゅりーが問いかける。
「ゆはー、ゆひゅー、ぜーはー、・・・。た、たいへんなんだびょー・・・!」
荒い息のまま、やっとそれだけ搾り出すように言葉にする。
「ゆゆ!?たいへん?なにがたいへんなのじぇ?」
「ゆーはー、ゆーはー・・・。
 まりさたちとわかれたあとで、
 あのゆっくりしてない飼いゆっくりがプレイスにきたんだよー・・・・。」


子ちぇんは、ゆっくりプレイスを襲った悲劇の一部始終を一家に聞かせた。
「ゆゆゆゆゆ!?ぱちゅりーが!?そんな!なにかのまちがいじゃないの!?」
「にゃー・・・。ほんとなんだよー・・・。
 おいしゃさまのぱちゅりーおねーさんは永遠にゆっくりしちゃったんだよー・・・。」
「むきゅ・・・。あのとかいはありすおねーさんが・・・。しんじられないわ・・・。」
「そうなんだじぇ!ありすおねーさんはとかいはでとってもつよいんだぜ!」
「飼いゆっくりには人間さんがついてるんだよー・・・。
 ゆっくりプレイスのみんなをゆん質にとられて・・・。」
「むきゅう・・・。」
「そんなのないんだじぇ・・・!」

一家の受けた衝撃は計り知れない。
おいしゃさまのぱちゅりーは、一家がプレイスのゆっくりたちから
迫害されるようになった後も、変わらずゆっくりと接してくれた数少ないゆっくりだ。
迫害が酷くなる一方でも、どうにか無事過ごせていたのも、
プレイスのゆっくりに大きな影響力をもっていたぱちゅりーの存在あってのことだ。
それに赤ありすの命の恩ゆっくりでもある。
その赤ありすに至っては将来ぱちゅりーのような、じょいになる、とまで慕っていた。

ありすおねーさんは世話好きなとかいはで、姉妹に頻繁に声をかけてくれた。
ありすおねーさんもまた、最後まで一家への態度を変えなかったゆっくりだった。
プレイスでも評判の美ゆっくりで、みんなの人気者だった。
そんな二人がもういない!?

だが、子ちぇんの話はまだ終わってはいない。
「にゃー!飼いゆっくりが二人を永遠にゆっくりさせて、
 みんながおこっちゃったんだよー!
 ありすたちをせいっさいっするって、みんなのお家にむかってったんだよー!」
「ゆ!?まりさたち、なんにもわるいことしてないんだじぇ!?おかしんだじぇ!」
「ちぇんもそうおもうよー・・・。だけど・・・。」
驚きつつも納得がいかない子まりさ。
子ちぇんは俯いたままなにも言わない。
「むきゅ・・・。まりさ・・・。」
子ぱちゅりーも慰めの言葉もない。
「・・・・・。」
赤ありすは改めて衝撃を受けていた。
自分とプレイスを襲う飼いゆっくりは違う。
何の関係もない。
ゆっくりプレイスから引っ越すことが決まった今となっては何も悩むこともない。
さっきまではそう思っていた。
割り切ったはずだった。
だが、自分が飼いゆっくりだったという過去が付き纏って来る。
一家に迷惑をかけ続けることになる。
やはり、自分は一家といるべきではないのかもしれない・・・。

「ゆ!だいじょうぶだよ!いますぐひっこしだよ!
 おちびちゃんたちは、なにもしんぱいしなくていいんだよ!
 まりさがおちびちゃんたちをまもるからね!」
暗く澱んだ場所に落ちていこうとする思考を、力強い言葉がゆっくりと吹き飛ばす。
「ゆぅぅぅ!ゆっくち!ゆっくち!ゆっくちーー!!」
あまりの感動に言葉にならない。
ただ、ゆっくりを連呼するばかりだ。
姉妹も同様だ。

「にゃにゃ!?おひっこし!?みんなどこかにいっちゃうのー!?」
ただ一人、子ちぇんだけが驚きの声をあげる。
「ゆん!そうだよ!
 まりさはおちびちゃんたちと一緒に、別のゆっくりプレイスをさがすよ!」
「にゃーー!?それじゃ、みんなとはもうあえないのー?」
子ちぇんが泣きそうな顔で姉妹に問いかける。
姉妹もその言葉で、はっとなる。
お引越ししたら、もうちぇんと会えないの・・・。
「むきゅう・・・。」
「だじぇ!?だじぇ!?」
子ぱちゅりーは既に事態を理解しているらしく、何も言わない。
子まりさは、混乱して答えを求め、きょろきょろしている。
まりさが静かに、申し訳なさそうに答える。
「ゆ・・・。プレイスはきけんだよ。
 もうプレイスにはもどれないんだよ・・・。」
「ゆゆゆゆ!?ちぇんにあえないんだじぇ!?」
「そんなのいやだよー!わからないよー!!」
やっと事態を飲み込む子まりさ。
子ちぇんも姉妹と会えなくなるのは嫌だと、目に涙を溜めている。
「まりさたちは、もうゆっくりプレイスじゃ暮らせないよ・・・。
 それに、まりさたちといたら、ちぇんまであぶないかもしれないよ・・・。
 ゆっくりりかいしてね・・・。」
「にゃー・・・。わがらないよー・・・。」
「むきゅ・・・。ざんねんだけど、ぱちぇたちはもういかなきゃ・・・。
 ゆっくりさよならよ・・・。でも、ちぇんのことはぜったいにわすれないわ。」
「・・・わがらにゃいよー・・・。」
「ゆっぐ、ぐすん!まりさもなんだじぇ!
 あえなくなるのはゆっくりできないけど、
 ぜったいちぇんのことわすれないのじぇ!」
「わがらにゃいよー!わがらにゃいぃぃーーー!!」
ちぇんは突然のお別れにわからない、わからないと泣き叫ぶばかりだ。
再びまりさが口を開く。
「ちぇん・・・。プレイスのみんなはまりさたちのお家にいったんだよね?
 いまごろみんな、まりさたちをさがしているよ。
 きっとすぐにここにもきちゃうよ・・・。
 だから、もういかなきゃだよ。
 ちぇん、今までおちびちゃんたちとなかよくしてくれてゆっくりありがとうだよ!」
「にゃー・・・。わがらにゃいぃぃ・・・。」
子ちぇんはそれでも、わからない、わからないと繰り返すだけだ。
「おちびちゃんたちは、お帽子に乗ってね。」
まりさが、姉妹にお帽子に乗るように促し、姉妹もそれに従う。


ありすは、ずっと無言だった。
子ちぇんが、姉妹との別れを受け入れられず、泣き続けている間何も言わなかった。
ゆぅ・・・。ありちゅ、ちぇんにひどいこといっちゃったよ・・・。
いにゃかもの!
ぷくー!
ちぇん、おこっちぇるよね・・・。
「ゆびぇぇぇぇぇぇん!!わがらにゃいびょぉぉ!わがらにゃいいいーー!!」
「わがらにゃいーー!!」
「わがらにゃいよーー!!」
遠ざかっていく子ちぇんの姿。
姉妹との別れを悲しみ、わからないと連呼する泣き声。
優しく面倒見の良い子ちぇんとも、もう別れ。
二度と会えないのだろう。

「ゆっくちーーーー!!!ちぇーーん!!ゆっくちちていってにぇーーーー!」

気づくと赤ありすはお帽子から身を乗り出し、叫んでいた。
そうだ。
悩んでいる場合などではない。
これで、お別れ。
またね、じゃないんだ。
言わなければ。
「ちぇぇぇぇん!!ゆっくちごめんにゃさーーーい!!
 ちぇんは、とっちぇもとかいはよーーーーーー!!!!」
「ありずーーー!?ありずーーーーー!!!ゆっくりしていってねーーーー!!!」
子ちぇんも、赤ありすに気づいてくれた。
今までのお礼も、今日のことへの謝罪も、まだまだ言葉を尽くしていない。
その暇もない。
ただ、あふれ出る想いをゆっくりしていってねと、とかいはの二言に託す。
子ちぇんは、まだお顔は涙でぐしょぐしょだが、
精一杯ゆっくりしていってねを返してくれた。

「ちぇぇぇぇぇん!
 ありちゅも、ちぇんのこちょ、ぜったい、わすれにゃいわーーーー!!!」
「ゆびぇぇぇぇぇーーーーん!!ちぇんもわずれないよーーーーー!!!」


遠ざかる一家。
一人残される子ちぇん。
「わすれないんだよー・・・。わかってねー・・・。」


最終更新:2009年12月25日 19:04
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