ふたば系ゆっくりいじめ 793 南の島の葬送行進曲

南の島の葬送行進曲 35KB


観察 自業自得 群れ 自然界 現代 独自設定 うんしー ぺにまむ 南の島の生命賛歌の続編です。



読みにくいところが多いと思いますが、ゆっくりしていただければうれしく思います。
独自設定多めです。ご注意ください。

南の島のまりさ3

『南の島の葬送行進曲』



目の前に目が爛々と輝く化け物がいる。
化け物の輝く目は成体れいむの少し上あたりにあった。
化け物はその口に父まりさをくわえている。
化け物はただひたすら、その場で歯を食いしばるようにまりさに噛み付いていた。
一撃で中枢餡を貫かれたのであろう、最初のうちこそ、ゆ、ゆ、と痙攣していた父まりさはすぐ
に動かなくなった。恐怖で動けない、父まりさの家族を尻目に、化け物は悠然と歩み去っていっ
た。化けものがいたところには、父まりさの餡子がわずかに落ちているだけだった。

「ま、ま、ばでぃざああああ!ゆっぐちがえっでぎでええええ!」
「「ゆええええん!!ぴゃぴゃああああ!!!」」

母れいむと赤ゆたちの絶叫が海岸に響きわたる。
そのときだった。

「んごおおおおおおぉぉ!」

先程の化け物の鳴き声だろうか、不気味な鳴き声がアダン林の方から響いてきた。

「んごおおおおおおおお!!」

別方向からも同様の鳴き声が響いてきた。

「んごおおお!!」

それに答えるように先程の化け物らしき声が響く。

「何してるの!ゆっくりしないで巣に入ってね!ぴかぴかだよ!!」

やっと我に返った老ありすが叫ぶと、外に出ていたゆっくりたちは一斉に巣の中に入っていった。
ぴかぴか同士の鳴き声の応酬はそれからしばらく続いた後にぱったりと途絶えた。



翌朝、いつまでも泣いていた母れいむは気がついた。
ご飯さんを採ってきてくれるゆっくりがいないことに。
子れいむにご飯を取ってきてくれるよう促したが、

「はああ?ばばあはなに言ってるの!?親は子を養うのは当たり前でしょおおおお!!さっさと
ごはんさん採りに行ってね!甘えたこと言ってる場合じゃないんだよおおおお!ばかなの!?」

子まりさはこの子れいむと同じくらいのサイズの頃には、既に父まりさと一緒に狩りや漁に出か
けては家族のためにゆっくりできるごはんさんを持ってきてくれたものだった。ふと、どこで何
をしているか分からない我が子の身を案じ、涙がこぼれてしまった。

「みゃみゃなんで泣いているの?」
「わらってー!みゃみゃ、わらってよー!」
「みゃみゃがかなしいとまりさもかなしくなるよ!ゆええええん!」

赤ゆたちが母れいむを気づかう。昨日まで四匹いた赤ゆは、一匹がぴかぴかの恐怖のあまり一晩
中しーしーして永遠にゆっくりしてしまい、三匹になっていた。

「なに泣いているの!?泣きたいのはこっちだよ!もういいよ!れいむはえらいんだよ!みんな
がきゃわいいれいむを大事にしたがるんだよ!こんなきちゃない家でていくよ!ばばあとうるち
ゃいがきどもはゆっくりちんでね!ばーかばーか!」

「おねーちゃん!なんじぇそんにゃこちょゆーの!もんきゅゆーなら、おねーちゃんがごはんさ
んとっちぇくればいいじゃない!!」

涙目の赤まりさが母れいむをかばう。

「はあああああ!?なんじぇれいむがそんなごとしなくじゃいげないのおおおお!?なめたくち
きかないでねええ!このきんぱつのこぞぉっ!!じぶんじゃなにもできないくせにいいいい!!」

子れいむは増長していた。りーだーである若ぱちゅりーが子れいむを嫌いながらも丁重に扱った
のは、親の父れいむに小さい頃から世話になっていたからだった。そして、その他のゆっくりが
子れいむを大切に扱ったのは、子れいむが若ぱちゅりーも一目置く側近に見えたからだった。
虎の衣を借る狐は、虎がいなくなっていることにまるで気づいていなかったのである。

若ぱちゅりーは子れいむに会おうともしなかった。

「むきゅ!ぱちぇは忙しいの!れいむなんかと会ってるひまはないわ!帰ってちょうだい!」

若ぱちゅりーにところに居候させてもらおうとした、子れいむは、あっという間に叩き出された。

「ゆぎいいいいい!なにするのぱちゅりー!!れいむにごちそうしなざいよおおおおお!!」
「れいむのおとうさんもおねえさんもすてきなゆっくりだったわ。おかあさんもよ!この一族の
面汚し!あなたはおとうさんまりさに泣いて謝るべきなのよ!」
「ゆがあああああ!!!ゆぎいいいいい!!!ゆっぐりでぎないばじぇはじねえええええ!!」

かつてない罵倒を受け、もともとぷっつんしやすかったれいむはぱちぇの巣の前で大声で喚き、
暴れまわった。その後、子れいむが何を言っても若ぱちゅりーは取り合おうとはしなかった。

「じね!じね!じねえええ!!ぐぞばじゅりいいい!!でいぶのいだいざをおぼいじれええ!」

それでも諦めずに騒ぎ続ける子れいむのほほに冷たい、ゆっくりできないなにかが触れた。それ
はするどく磨かれた釘だった。

「少し黙りなさい。このてーへんれいむ…それ以上騒ぐと、二度とゆっくりできない体にしてあ
げるわ…とってもとかいはだと思わない?」

老ありすだった。

「ひ、ひ、ひぎいいいい…」

子れいむは老ありすの迫力に情けなくもしーしーをもらし、何も言えなかった。
老ありすはしーしーがあんよにかからないよう、子れいむを突き飛ばす。

「どうしてもごはんさんがないなら、群れの備蓄から少しだけ分けてあげるわ。ゆっくりその
汚いしーしーをなめとったら、ゆっくり受け取りにきなさい。てーへんれいむ。」
「ゆぎっ…ゆぎっ…れいむはてーへんじゃない…ゆぐっ」
「早くしーしーなめて、汚いわ。れいむのおかーさんは狩りに出かけたわよ。れいむは何をして
るの?てーへんじゃないなら、くずね。」

老ありすは完全に軽蔑した視線で子れいむを射ると巣に戻っていった。

その後、子れいむはかつて自分を歓待してくれた巣に自分を居候させるよう命令してまわった。
ある程度、ご飯を分けてくれる家族あったが、父まりさが死んだ今、子れいむを歓待するゆっく
りは皆無だった。

「ぱぱはなにしてるの…おねーちゃんはなにしてるの?…れいむがおなかすいてるんだよ…何と
かしてよ…ばか…ばか…みんなちね…」

子れいむを守り、助けてくれる存在は、もう誰もいなかった。



老ありすが若ぱちゅりーと開発したお帽子は、海岸近くで入手しやすく、肉厚の葉を持つ低木常
緑樹である、モンパノキの葉を幾重にも重ね、つるで結びつけたものである。丈夫で、乾燥して
もそう簡単には壊れない代物であった。これを頭に被り、葉の何枚かを髪やリボン、カチューシ
ャなどに差し込むことで、帽子を固定することができる。

「ゆ!ゆ!おとうさんが永遠にゆっくりしちゃったから、れいむがごはんさん探すよ!おちびち
ゃんたち、ゆっくり待っててね!」

母れいむは必死になって食べられる葉を集める。しかし、父まりさが持ってくるのはいつも葉っ
ぱの部分だけだったので、一体どの木、草花の葉が食べられるのかさっぱり分からなかった。
今まで食べていた葉を必死に思い出し、一枚、また一枚と葉や花を集めていく。

「ゆ!おいしそうなカニさんだよ!そろーりそろーり…」

しかし、カニは母れいむに気づくと素早く岩陰にもぐりこんでしまった。道具を持たないれいむ
では、こうなるともう手が出せない。

「ゆううう…カニさんは一向に捕まらないし…ゆゆ!貝さんはゆっくりできそうだよ。」

母れいむが見つけたのは潮間帯の岩に張り付くイガイの仲間だった。ムール貝の仲間である。

「ゆんしょ!…ゆんしょ!…だめだよ、全然ゆっくりできないよ。」

二枚貝は足を持っている。活きのいいアサリなどから、よく薄い色合いのシートのようなものが
てくるが、アレが足である。アサリは足を使って砂の中に潜るのだ。アオヤギ(バカガイ)などは
オレンジ色のアサリよりもしっかりした足を持っているので分かりやすい。アオヤギの足は砂に
潜るだけでなく、砂上を跳ねてヒトデなどの捕食者から逃げるので、足が発達しているのだ。
さて、イガイの仲間も足を持っているが、岩礁息に棲むイガイの足は細く、分泌される足糸とい
う糸を貝殻の外に張り巡らして、基盤上に貝を固定するのだ。
漁になれたまりさはこの足糸の存在を知っており、まず足糸を棒などで断ち切ってから、イガイ
を採取する。しかし、母れいむはそのような知識も技術も持ち合わせていなかった。そして、そ
のような知識・技術を教えてくれる熟練まりさは極端に不足していた。
結局、母れいむはこの時期たくさん打ち揚げられる海藻の類を採集し、巣へと帰っていった。

母れいむの隣の巣には、別のれいむと赤ゆっくり四匹が暮らしている。この家族の父親もまりさ
だったが、まりさは前回のヤシガニ襲撃の際に、永遠にゆっくりしてしまっただ。しかし、ここ
のれいむは初めての漁だったにもかかわらず、カニを捕まえることができた。高台から落として
カニを割り、苦労して背甲を外して食べる。

「むーしゃむーしゃ!おかあさんはりょうのめいじんだね!」
「むーしゃむーしゃ!ちあわせー!!」
「ゆふふ、そんなことないよ!そろそろ、おかあさんもカニさんゆっくりいただくね!」

一時間後、赤ゆはみなどす黒く変色して砂糖水の泡と餡子を吐き出し、絶命していた。母親のれ
いむも大量の餡子を口とあにゃるから吐き出しており、もう虫の息だ。

「…ゆ゛…ゆ゛…どぼじで…どぼじで…あかちゃん…ちんでる…の…」

一家が食べたカニはスベスベマンジュウガニだった。歩脚を中心に強い神経毒を含み、食べれば
人でも死亡する。スベスベマンジュウガニはオウギガニの仲間だが、オウギガニは動きがのろい
ものが多く、潮間帯の浅いエリアに棲息する種も多いため、捕まえやすい。しかし、スベスベマ
ンジュウガニや、ウモレオウギガニなど毒性を有する種が多く含まれる。

「もっと…ゆっぐり…」

母親れいむも赤ゆたちの後を追った。
もし、父親のまりさが生きていれば決して毒ガ二を食べなかったであろう。実を言うと、母親は
スベスベマンジュウガニのことを知っていた。生前、父親が実物を持ってきて注意を促したから
だった。しかし、母親が捕まえた個体は、父親が持ってきた個体よりも幼い個体であり、体色が
まったく異なったため、母親は気づかなかったのだ。父親が実物を見せたときに、もし、その背
甲表面のすべすべした手触りを確認していれば悲劇は起こらなかったであろう。

群れで、同様の毒草、毒虫、毒カニ、毒貝を食べるケースが続発したため、若ぱちゅりーは、狩
りや漁を最低でも数匹で行い、熟練したゆっくりを一匹は加えるよう指示を出した。しかし、食
料が以前に比べて手に入りづらくなり、食料の質も劣化したため、不満を持つゆっくりたちも現
れた。

「ここなっつさん!ここなっつさんがないとすーぱーなごみんたいむできないよ!」
「もっとあまあまなごはんしゃんじゃなきゃいやああああ!」
「海藻さんばっかりなんてとかいはじゃないわ!」
「れいむはカニさんが食べたたいよ!ゆっくりしないで持ってきてね!」

不満は主に狩りや漁の経験の少ない、若いゆっくりに広がっていった。それを抑えようにも、
本来指導にあたる熟練したゆっくりたちは不足する食料の確保や、自分の家族の世話でゆっくり
することができず、それどころではない。

そのとき、子れいむは思い出した。

「みんな大丈夫だよ!山の中にはおみずさんいも、ごはんさんにも、あまあまさんにも困らない
失われたゆっくりぷれいすがあるんだよ!」

「ゆゆ!?初めて聞くよ!れいむはゆっくりみんなに説明してね!」

子れいむは自分が老ありすから聞いた話を披露した。かつて群れは山の中に住んでいたこと、山
の中は水、蜂蜜、ふるーつ☆、カニ、ここなっつにあふれており、いくら食べてもなくならない
こと、そこは失われたゆっくりぷれいす「コキゆートス」で、美ゆっくりにあふれており、いく
らでもすっきりー!ができるという。前のりーだー老ぱちゅりーらは、ここに住んでいたが、あ
まりにもゆっくりできなかったため、キングベヒんもスと呼ばれるボスてんこに追放されたのだ
という。しかし、てんこは構ってちゃんなので、今なら誰でも三割引きで受け入れてくれるとい
う。

不満を抱えていた若いゆっくりたちは、子れいむの言葉に色めきたった。ついさっきまで、子れ
いむが群れの鼻つまみ者だったことなどすっかり忘れていた。何が三割引なのか突っ込む者もお
らず、調子に乗った子れいむは、自分はくーぽん券まで持っていると言い出す始末だった。

こうして大いに盛り上がった若いゆっくりたち十匹は、みなが寝静まった夜中に巣を出発、山を
目指した。



海岸から海浜植物が広がる野原を経て、アダン林、ヤシ林へ、そしてその奥は一端開けた草原に
なっており、その先に山から続く森の周縁部があった。海岸のゆっくりたちが狩りを行うのは、
せいぜいこの草原までである。子れいむが率いるゆっくりたち、自称「青鯨超重装猛進撃滅騎士
団」は何一つ警戒せず森へ入っていった。

「青鯨超重装猛進撃滅騎士団」がかつて、ゆっくりたちが住んでいた辺りに到着したのはその翌
日のことであった。ここは山の中でも、もっとも海に近いエリア、かつて老ぱちゅりーの群れが
住んでいたところのもっとも端の方にあたる。

「ゆゆ!!おっきなきのこさんを見つけたよ!」

一匹のまりさが飛び出す。その先にあったのはニオウシメジであった。ニオウシメジは熱帯性の
キノコで、味はホンシメジにも似て美味しいとされる。特筆すべきはその巨大さで、一株数十
kgにまで成長するという。まさにまりさにとっては涎のとまらないキノコの一つである。

「ゆ!せーげーチョーじゅーそーもーれつぜんめつきしだん、すとっぷするよ!!」

既に自分で考えた名称を間違い、悲惨なことになっているが、誰も気にしなかった。突っ込みを
入れるにはそれはあまりに長く、無意味で、やっぱり長かった。それはまさに戯れ言だった。

「これだけあればみんなゆっくりできるよ!!ここでごはんさんにするよ!!」
「むーしゃむーしゃ…ち、ちあわせぇ~!!!」

十匹のゆっくりたちによって、ニオウシメジはあっという間になくなってしまった。それから、
山への行進を再開するが、ふと、子れいむは小さなリボンの破片が落ちているのを見つける。か
なり古いものだ。

「ゆゆ!!どうやらここらへんがコキゆートスみたいだね。」

どこからか水の音が聞こえる。

「ゆーん?これは何のおと?ゆっくりしらべるよ!」

手分けして辺りを調べると、森の中を小川が走っていることが明らかになった。小川といって
も、水深は1メートルぐらい、幅数メートルあるかないかの、小さな川である。しかし、源流
に近いのか、水は非常に澄んでおり、緑に覆われた森の中を、ゆっくりのコロニーがあるのと
は反対の方向へと流れていた。川の周囲は虫や草花にあふれ、なによりもあの大移動をするア
カガニが棲息していた。

「ゆゆー!おみずさんごーくごーくするよ!!!」

ゆっくりたちは我先にと川に殺到し、乾いたのどを清涼な水で潤していく。いつも飲んでいる
、生ぬるい雨水とは違い、その冷たさとかすかな甘さは南国の島でくらすゆっくり、いや、ど
んな生き物にも最高の味わいであった。

「ふぁあああわあ…なんじゃかねむきゅなってきちゃよ…」

キノコでおなかいっぱいになり、冷たい水をたぷんたぷんになるまで飲んだゆっくりたちは、
近くの大きな石と倒木によってできた空間で眠ることにした。もうすっかりくたびれた「略」
の面々、今日はここで一夜を明かすことになるのだろう。

が、一匹のれいむが目を覚まし、小川の方へと跳ねていく。

「ゆ、おみじゅさんを飲みすぎたよ。ちーちーするよ!」

れいむは川べりでお尻をぶりぶりふりながら態勢を整える。

「いきゅよ!れいむのすーぱーちーちーたーいむ!はいどろゆんぷ!!」

しーしーを川べりにいたカニ目掛けて噴射するれいむ。逃げるアカガニを追うようにれいむはし
ーしーを辺りに撒き散らしながら、アカガニを追いかけていた。

「ゆゆ~、いっぱいちーちーしたよ。ちゅまんないいきものはれいむのちーちーでも飲んでひっ
ちにいきてね!きゃわいくってぎょめんね~★」

れいむのもみあげを両側から二匹のアカガニがはさんだのはその1秒後のことだった。

「ゆぎぎぎぎぎぎ!!!にゃにじゅるのおおおお!!!」

さらにどこから現れたのか、三匹のカニが、れいむのあんよ、ぺにぺに、口をはさんで引っ張り
はじめた。

「やめじぇええええ゛いじゃいよおおおお゛!!どぼじでぞんあんごどずるのおおお!!れいむ
はえらばれじゆっぐじなんだよおおお!!」

もう一匹川べりから姿を現したアカガニがれいむのリボンを乱暴に引きちぎると、そのまま川べ
りの横穴に姿を消した。

「ゆぎょおおおおお゛でいぶのぎゃわびびおりぼんじゃんがあああああ!!!」

れいむは必死にあがき、アカガニを潰そうとする。しかし、大移動のときとは違い、卵を持って
いないアカガニは身軽で、その上はさみ脚で積極的に攻撃をくわえてきた。

ぶち

ぶち

ぶちぶちぶち!

とうとう、れいむの二つのもみあげと、ぺにぺにが一斉に引きちぎられてしまった。

「ゆぴぃ!!!ゆ゛げ!!ゆゆ゛ゆびいいいいいいい!!!」

れいむが狂ったようにのた打ち回る。その声に子れいむが起きた。

「ゆゆ~、うるさいよ!ゆっくりねむれないよ!!!ゆっくりしないでだまってね!!れいむは
疲れてるんだよ!!!」
「だじゅげで!!!だじゅげでええええ!!でいぶのべにべにがああああ!!!もみあげじゃん
があああああ!!!」
「ゆゆ?」

子れいむの目の前にいたのは、リボンももみあげもなく、ぺにぺにがあった場所から餡子を垂れ
流しながら涙目で跳ね回る変な物体だった。

「うるさいよ!!ゆっくりできないゆっくりは死んでね!!」

子れいむは思いっきり体当たりをかます。

「ゆべっ!?」

ぼろぼろになっていたれいむはアカガニごと川に転落した。小さい川とはいえ、上流での流れは
速い。干潮時の海でしか行動したことがないれいむには、この強い流れは最初で最後の経験だっ
た。

「ゆぴっ!?たじゅげ…だじゅ…ゆ…」

れいむは流され、溶けていったが、その悲鳴は川のせせらぎに邪魔され、誰にも届かなかった。
なお、れいむと一緒に落ちたアカガニは傷一つ負わず、川べりでの摂餌を再開した。

「ゆゆ~まだねむいよ…」

子れいむは這うように寝床に戻り、まどろみの中へと帰っていった。



子れいむが寝苦しさで目を覚ましたのは夜中である。辺りは夜の帳と、熱帯特有のむっとするよ
うな湿気に包まれていた。子れいむは最初、ここがどこだか分からなかった。真っ暗で、海の音
は聞こえない。代わりに聞こえてきたのは小川のせせらぎと、虫やカエルの大合唱だった。起き
た当初こそ、ここがどこだかわからない、という感覚に恐怖を覚えた子れいむだが、次第に、自
分たちが山へ登り、新しいゆっくりぷれいすに到達したことを思い出し、落ち着きを取り戻した。

「ゆ~…ゆぴ~…」

周りからは他のゆっくりたちの寝息が聞こえてきた。

「ゆゆ…しーしーしたいよ…まーべらすにしーしーするよ…」

子れいむはそろそろと寝床から出ようとしたが、何かにあんよをひっかけてしまい、顔面から地
面に倒れこんでしまった。

「ゆぶっ!!…ゆゆ~だれ、こんな邪魔なところで寝ているのは?」

れいむはぷんぷんと怒ったが、暗くて何も見えなかった。

「ゆ!ちょっと聞いてるにょ!こんなところで寝てたらゆっくりできないよ!!ゆっくり謝って
ね!謝ったら!あまあまさんもってくんだよ!!」

足元の「それ」がずるりと動く気配がした。しかし、何を言うわけでもなく、しゅーしゅーとい
う音しか聞こえない。

「ゆゆ゛!起きたんならおやまっちぇね!!ふじゃけてるとせーさいしゅ…」

そのとき、子れいむはふと、寝床―石と倒木でできたこの隙間から外に向けて、何か長いものが続
いていることに気がついた。寝床の中は真っ暗で分からないが、外は淡い月明かりによって、なに
か長いものが、この寝床の中に、うねうねと…

「ゆぎゃああああああああああああああああああ!!!」

子れいむは恐怖にかられて寝床から飛び出した。それは2メートルはあるかというヘビだった。
実は子れいむが気づかなかっただけで、既にそのヘビの腹の中には五匹のゆっくりが納まってい
たのである。

「へび!へび!へび!へびだあああ゛!!」

子れいむの絶叫に他のゆっくりも飛び起き、数秒後には状況を認識してパニックになった。

「ゆああああ゛!!れいみゅはおいじくないよおおおお゛!!」

子れいむはそのまま斜面を転がるように逃げていく。その後を生き残りの三匹が追う。

「まっじぇええええええええ!!おいじぇかないじぇええええ!!」
「へびじゃんはゆっぐりできじゃいいいいい!!待つんだじぇええええええ!!」

このヘビはアカマタである。毒こそもたないが、夜行性で俊敏なヘビであり、時にはハブすら襲
って捕食する。しかし、このヘビは顎を大きく開くことができないため、捕食できるサイズは限
られ、様々な小動物をエサとしている。このヘビこそが赤ゆ泥棒の正体であり、赤ゆしか狙わな
かったのは、その性質故のことであった。
幸か不幸かこのアカマタは既に満腹であり、また、逃げたゆっくりたちは捕食したものよりもや
や大きめの個体ばかりだったこともあって、追ってくることはなかった。それでも子れいむたち
は恐怖に駆られ、闇の中、時折木々の間から差し込む月光を頼りに山のふもとまで一気に駆け降
りた、というよりは転がり落ちた。


山のふもとで集合したとき、子れいむを含めて合計四匹の「略」は、体のあちこちが汚れ、細か
な傷もできていた。みな、月光のした、無言で座り込む。ただ、乱れた呼吸音だけが四匹が生き
ている合図であるかのように交わされる。最初に口を開いたのは子れいむだった。

「ゆう…ゆう…へびさんは…ゆっくりできないよ…」

誰も何も答えない。いや、恐怖で答える気にすらならなかったのだろう。

「ゆっくり…ゆっくりぷれいすに帰るよ…」

やはり誰も答えない。だが今度の沈黙は賛同の表れだった。もう既に四匹は苦労して到達した新
天地でかつてない恐怖を味わったことで、精神的に疲れきっていた。そして、その精神的な疲労
はまだ若いこのゆっくりたちには耐え難いものだったのだ。
誰からともなく、重い腰を上げ、もと来た道を跳ねていくゆっくりたち。その足取りは遅かった
が、心は焦っていた。

早く帰りたい。早く帰っていつものようにゆっくりしたい。

四匹のゆっくりはただそれだけを考えて無言で跳ねていた。樹上に爛々と輝く目があることも知
らずに。

輝く目は樹上からかすかな着地音と共に地上に降り立ち、ゆっくりたちの後を追った。しばらく
歩き、そして停止する。それを何回か繰り返し、輝く目はゆっくりたちのすぐ後ろまで忍び寄っ
ていたが、ゆっくりたちの意識は前方に、一刻も早く帰ることにのみ集中していた。

輝く目は首を長く伸ばしてゆっくりたちを観察した後、少し足早に接近し、そして身をかがめた。

「ゆ?」

後ろから迫る何かを、四匹のゆっくりの最後尾、まだ小さい子ありすが感じ取ったときには、既
に牙が子ありすを貫通していた。

「ゆげ!!!」

その声に他の三匹が一斉に振り返る。

「「ぴかぴかだあああああ゛!!!」」

爛々と輝く目、月明かりに照らされた斑紋のあるこげ茶色の体、ヤマネコだった。ヤマネコは狩
りの際、伏せの状態から飛び掛り、一気に獲物に噛み付く。そして、獲物が動かなくなるまで、
ひたすら噛み続け、上側の犬歯で頚椎や行動中枢を破壊するのである。ゆっくりに頚椎はなかっ
たが、犬歯はきれいに中枢餡を貫通しており、子ありすはすぐに絶命した。
この噛み続けるという行動はトラからネコまでネコ科動物を特徴づける行動であり、獲物の頭・
首・胸部などに噛み付き、自分の頭を振ることで獲物を仕留めるイヌ科動物の攻撃方法と明確に
異なるものである。

ゆっくりが野山で食べるものは、昆虫、小動物、植物などである。これに対して、ヤマネコは昆
虫や小型鳥類を中心に、魚類、カエルなども捕食する。アカマタは自分の口のサイズにあった、
小型鳥類や小動物である。要するに、彼らのニッチは見事にバッティングしていた。そして、パ
ッティングしたニッチの中で、この島においてゆっくりを捕食できる地上動物、それが彼らだった
のである。

一言で言えば、彼らは自然界ではありふれた、生活空間を巡る競合に敗北して海岸に逃げたのだ。

子れいむたちは彼らにとっての全力でしーしーをもらしながら跳ねたが、ヤマネコは一匹の獲物
で満足したのか、森の中に消えていった。



なんとかぴかぴかの攻撃から逃げおおせた「青鯨超重装猛進撃滅騎士団」は子れいむを含めて三
匹のみだった。巣を目指すももうへとへとであり、林の周縁部まで来たところで休憩することに
なった。辺りはまだ暗く、日の出までは時間があった。

この辺りの木にはアコウが絡み付いている。アコウは、学術用語で絞め殺し木と呼ばれるイチジ
クの仲間である。アコウの種は動物よる捕食を通じて、木の幹や枝の上で発芽する。そして気根
を垂らし、木の幹に絡みつくように成長し、もとの木がアコウに絞め殺されているように見える
ことからその名がある。
アコウは季節にかかわらず、常に三割程度実をつけている。そのため、様々な昆虫や果実食の小
動物にとって、一年を通じて、またはメインのエサがなくなる季節のスーパーサブとして重要な
植物であった。

そして、とある哺乳類にとっては晩秋から冬場の重要なエサであった。彼らは甘い果実を好む。
木の下に饅頭が寝ている以上、導かれる結果は「確定的」なものだった。

子れいむたちは、なにかちくちくとした痛みで目を覚ました。虫だろうか?

「ゆゆ…まだれいみゅはねむ…な゛なんなのごればあああああ!!!」

ゆっくりたちの体に何かが取り付いている。体の表面を常に爪のようなもので傷つけ、ぺちぇぺ
ちゃと何かを食べて、そして吐き出しているようだった。

「いやああああああああ゛やべで!!!れいみゅおいじぐない!!!」
「いじゃい!!!いじゃいよおおお!!!あがががががあ!!!」
「ああああああ゛めがあ゛めがあああああ゛」

一匹のれいむは両目を鉤爪でやられ、完全に失明した。ゆっくりたちがいくら騒いでも、攻撃が
やむ気配はなかった。この頃には、うっすらと東の空が明るみ始めた。そして、子れいむは見た。
神々に背いたもののみが持つその翼を。

「れみりゃだあああああああ゛!!!」

子れいむの絶叫により残り二匹もパニックに陥る。

「だじゅげで!!!だじゅげでええええ!!」
「あああ゛目がああああああ!!!目がああああああ!!!」

しかし、それはれみりゃではなかった。大きな目で視覚を頼りに夜空を舞う、夜の眷属、オオコ
ウモリである。オオコウモリは果実を好み、その果肉からジュースのみを飲み干しては、残骸を
捨てる。そのため、彼らにとって、低いところにあることを除けばゆっくりはなかなかのエサで
あった。本来なら彼らの活動のピークは日没後数時間であるが、この辺には適した果実が不足し
ていたのであろうか?

「みぎゃ!!みぎゃあああ!!!」
「いやあああああ゛もうやじゃじゃじゃじゃ!!!う゛ん゛う゛ん゛じゅるよ!!!じゅっぎり
び!!」

両目をやられたゆっくりは疲弊しすぎたのか、もう動かなくなっていた。子れいむたちはそれか
ら一時間ほど拷問のような彼らの襲撃を受け、夜明けと共にオオコウモリは巣へ帰っていった。

「ゆげ…た…たじゅがっだよ…」
「ゆぐっ…ゆぐっ…」

生き残った二匹のれいむには、もう泣き喚く体力も残っていなかった。ただ、ずりずりと這うよ
うにして巣へと帰ろうとする。体の表面はところどころ削り取られ、二匹の後には点々と餡子が
続いていた。



二匹のれいむが巣についた頃にはもうすっかり明るくなり、巣からゆっくりたちが狩りや漁にで
かけようとしているところだった。その中にいた母れいむが変わり果てた姿の娘に気がついた。

「れいむ!れいむ!どぼじだのおお!!いまぺーろぺーろするよ!!!」

自分たちを見捨てた娘であるが、あまりの惨状に母れいむは真っ青になって、飛び出してきた。

「大丈夫?大丈夫なの?ぺーろぺーぶ!」

次の瞬間母れいむは何かに踏み潰されて死んだ。
びっくりした子れいむが上を見上げると、そこには二匹のイノシシがいた。
負傷したゆっくりからもれた餡子、キングベヒんもスはそれをたどって巣までやって来たのだ。

「キングベヒんもスだあああああああ゛!!」

見張りをしていたまりさつむりが絶叫する。途端に巣は騒然となった。
慌てて巣内に戻ろうとしたありすは踏み潰され、もしゃもしゃとキングベヒんもスに食べられて
しまった。

「れいむは悪ぐないよ!巣の中にいっぱいゆっぐりがいるよ!キングベヒんもスさんはゆっぐり
していってね!れいむはごっそり逃げるよ!」

しーしーを漏らしながらぽよんぽよんと跳ねて逃亡をはかる子れいむ。

どっどっどっど!

先程までつぶしたゆっくりを食べるのに夢中だったキングベヒんもスは、突如逃げる子れいむに
向かって突進し始めた。名高い「猪突猛進」である。かつて山の中に住んでいたころ、今は亡き
老ぱちゅりーはこの行動を「びってんとっぱ」と呼び、大いに恐れていた。

「びょええええええ゛!!どぼじでごっじにぐるのおおおお゛!」

泣き喚き、うんうんしーしーを漏らしながら必死に跳ねる子れいむ。「びってんとっぱ」のコー
スから外れようとするが、イノシシが直進しかできないというのは迷信である(そのようなケース
もあるのだろうが)。キングベヒんもスは巧みに勢いを殺さずコースを修正する。

ドンッ!!

「うぎゅぶ!!!……ゆ゛ゆ゛ーん…おちょら…どんで…うわらば!!!」

子れいむは派手にお空を飛んでいき、そして砂浜に頭から落下した。
落下の衝撃で片目は飛び出し、歯はすべてへし折れた。おまけにキングベヒんもスの「びってん
とっぱ」の直撃によってあにゃるは避け、とめどなくうんうんが漏れていた。さらに、ここは砂
浜といっても、南国の砂浜は貝殻やサンゴの破片がたくさん混じっている。まむまむや口の中に
無数の破片が刺さり、止むことのない激痛が子れいむを苦しめた。

「ゆげ…ゆげ…うじょだ……きゃばびび…れいむが…こんにゃ…」

もう子れいむはびくんびくんと痙攣する以外、しーしーを漏らすぐらいしかできることはなかっ
た。キングベヒんもスは子れいむを吹っ飛ばしたことに満足したのか、ゆっくりの巣をあさる作
業に戻っていった。



巣を守るために長めの棒で武装した重装まりさつむりたちが「トライゆンカー」の陣形でキング
ベヒんもスに対抗する。つむりたちは長い棒でキングベヒんもスを巧みに牽制し、他のゆっくり
たちが逃げる時間を稼ごうとするが、子れいむを吹っ飛ばしたキングベヒんもスが巣の攻撃に加
わったことでつむりたちの防衛ラインは決壊した。一匹のキングベヒんもスに気を取られている
うちにもう一匹によって、横から頭ですくい上げるようにはじき飛ばされたのである。

「ゆげええ!!…ゆゆ!まりさお空をとんで…ぶぎゅ!!!」

一匹のつむりは高々と宙を舞い、岩盤に落下して、貝殻ごと砕け散った。
他のつむりたちも陣形を崩され、一匹、また一匹と踏み潰され、食われ、くわえて放り投げら
れ、最後の一匹は牙によって致命傷を負い、動けなくなった。

「びええええ!!いじゃい!いじゃいよおおお!まりさの傷さんゆっくりじないでなおってね!
ぺーろぺーろ!!ゆえええ゛なんじぇあんこさんどまっでくれないのおおおお!!」

キングベヒんもスは巣から一匹の子ありすをくわえあげる。

「ゆああああ!!こんなのとがいはじゃないばあああ!!おそらとんでるびだ!!」

子ありすは地面に落とされ、キングベヒんもスの足によって顔を踏み潰された。

「ゆぶ!!!」

子ありすは体内のクリームすべてをぺにぺにとあにゃるから噴出して死んだ。

「どいてね!まりさがさきに巣のなかでゆっくりするんだよ!でいぶはどいてね!」
「ふざけないでね!ゆっくりするのはでいぶだよ!まりさはさっさと巣を守ってね!」

どちらが巣に逃げ込むかで、争っているゆっくりがいる。キングベヒんもスは仲良く一匹ずつ
くわえあげ、食べてしまった。

「ゆゆー!お空とんで…ぶば!!!」

肥満体のでいぶは、キングベヒんもスの咀嚼の力に耐え切れず、一撃で破裂してしまった。

「やめてね!まりさのお帽子かえしてね!食べないでね!」

まりさは帽子から転げ落ち、助かったのだが、逃げるよりも帽子の返却をキングベヒんもスに
求めた。だが、キングベヒんもスは帽子をくちゃくちゃと咀嚼すると、さっさと飲み込んでし
まった。

「ゆぎゃあああああ゛!!!まりじゃのじゅでぎなおぼうじがああああ!!!」

次はまりさの番だった。キングベヒんもスは泣き喚くまりさをくわえ、咀嚼した。

「いやあああ゛!!!だじゅげ!だじゅげで!まりじゃまだじにぶぐぼお!!!」

入り口付近のゆっくりをあらかた片づけたキングベヒんもスは巣を一つ一つ壊し始めた。

「ゆゆ?おうちがきょわれちゃったよ?…ゆゆー!おちょらをちょんでぶぎゅ!!!」
「おちびちゃーん!!れいむのぎゃわいいおじびじゃんがあああ!!!べべげば!!!」

「ゆゆ?ゆっきゅりきょろがっちゃうよ!こーろこーろ…ぶぶ!!!」

壊された巣から転がり落ちた赤ゆは逃げるゆっくりに踏み潰されて生き絶えた。

「もっちょ…ゆ…じ…ぶびゃば!!!」

「なんでばでぃざのあがじゃんちゅぶれでるのおおおおおお!!!おじびじゃーん!!!」

必死にぺーろぺーろするまりさもキングベヒんもスに顔をえぐるように踏み潰され死んだ。

「ゆべ……」

騒ぎを聞きつけて巣から出てきた若ぱちゅりーはあまりの惨状にどうすればいいのかも分から
ずただ唖然としていた。もう、打つ手など何も思い浮かばなかった。

「ぱちゅりー!ゆっくりしっかりして!ぱちゅりーがあきらめたらこの群れはそこで試合終了
だよ!」

老ありすがぱちゅりーを叱咤する。

「むきゅー!でも無理よ!もうゆっくりできないわ!キングベヒんもスが二匹も!!」

老ありすは取り乱す若ぱちゅりーをなんとか落ち着かせる。

「よく聞いてぱちゅりー、私が時間を稼ぐから、群れのみんなをゆっくりしないで脱出させて。
もうこんな奥まで荒らされて、蓄えた食料は奪われて、おまけに勇敢なゆっくりたちはみんな
いなくなってしまったわ。この巣はもうゆっくりできない。ゆっくりしないで逃げるのよ!」

「…あ、ありす?…」

「一緒にゆっくりできて楽しかったわ。私たちがゆっくり守るのはゆっくりぷれいすじゃなく
てみんなのゆっくり、そうよね?」

老ありすは誰にも見せたことがないような笑顔で若ぱちゅりーに微笑むと、どこからか取り出
した釘をくわえてキングベヒんもスに向かって跳ねていった。

「ありす!!」

「魔物でも化け物でも、生きてるんなら殺せるなあああああ!!!」

老ありすは怯むことなく、キングベヒんもスに飛び掛る。
ありすの釘は、死んだゆっくりを食べるのに夢中だったキングベヒんもスの鼻に浅く刺さっ
た。イノシシはイヌ同様鼻が敏感な動物だ。釘を鼻に刺されたキングベヒんもスは巣の外に走
り出て、釘を抜こうと、岩や木に鼻をこすりつけながらのた打ち回っていた。

「次!」

老ありすはさらにもう一匹のキングベヒんもスに向けて釘を振りかざす。もう一本釘をカチュ
ーシャにはさんでいたのだ。だが、キングベヒんもスの鋭い牙が老ありすの体を横に薙ぐよう
に切り裂いた。

「ゆべっ!…」

ありすはそのまま壁にぶつけられ、ぱっくりと開いた側面からクリームを撒き散らして絶命し
た。

「ありすううう!!」

若ぱちゅりーは泣き叫ぶが、最早老ありすはぴくりとも動かなかった。

「なにやっじぇるのばやぐれいみゅをだじゅげっぐぎょ!!」
「ふん!かしこいれいむはこんなとこさっさと逃げるよ…そろーりそろーり…どぼじでごっじ
にぐるのぼぼぼぼ!」

抵抗するものの絶えた巣の中でキングベヒんもスはそこら中にいるれいむを食い散らかし、踏
み潰した。あるれいむはあにゃるから牙を刺し込まれ、キングベヒんもスがそのまま地面を掘
り返して備蓄した食料を探し始めたため、擦り切れて死んでいった。

「ぎょぼぼぼぼ!でいぶのおじゃれにゃあじゃるぎゃ!!ばやぐだじゅぶぶ!!!!!……」

またあるれいむは両方のもみあげを食いちぎられ、

「うぎゃあああああ!!ゆぎゃああああ!れいみゅのぎれーなもみあげざんがああああ!!」

踏み潰されて、体の穴という穴から餡子をもりもりと噴出して絶命した。

「ひでぶぶぶぶぶぶ…」

キングベヒんもスはれいむばかり選んでいるのではない。もうほとんどれいむしか残っていな
いのだ。勇敢に立ち向かい、体当たりをしかけたれいむもいたが、キングベヒんもスが相手で
は、勇敢であろうが、げすであろうが、結果は変わらなかった。死は平等に降り注いでた。

若ぱちゅりーはなんとかゆっくりたちを逃がそうとしていたが、相手が入り口に陣取っている
限り不可能だった。奥へ、洞窟の奥へと追い詰められる若ぱちゅりーたち、若ぱちゅりーが覚
悟を決めたそのとき、貯蔵庫の方から一匹のゆっくりがキングベヒんもスの前に姿を見せた。

「うふふふふ…」

紫色の帽子

「しーしーはすませた?」

赤い髪

「みまさまにおいのりは?」

一定の確率で生まれるという黒歴史

「島の隅っこでがたがた震えていのちごいするこころのじゅんびはおっけーね?」

それはあの老ありすの娘、「最後の大隊」のメンバーろりすの姉、紫色の帽子が特徴のうふ
ふまりさだった。泣きはらしたのであろう目は真っ赤に充血しており、その口には親よりも
鋭い、ぴかぴかに磨かれた五寸釘がくわえられている。

「かあさま、お見事でした。」

キングベヒんもスとにらみ合う。

「まりさはいまいきます。」

じりじりと間合いを詰める。

「かあさま、いまいきます!」

うふふまりさは一気に飛び跳ね、老ありすと同じく鼻を狙った。だが、キングベヒんもスは
頭を振ってうふふまりさを壁に叩き付けるとそのまま踏み潰し、食べ始めてしまった。

「ゆぎ!…うふ…うふふふふ…勝っちゃった…わ!」

うふふまりさは絶命した。

キングベヒんもスは突然食べたものを噴き出し、暴れだした。
うふふまりさの味が余程ひどかったのだろうか?明らかに尋常ではない暴れ方であった。キン
グベヒんもスは、逃げようと入り口に殺到していたれいむを次々踏み潰し、暴れながらどこか
へ行ってしまった。

実はうふふまりさは口内に唐辛子を隠していたのである。この島には、近隣の漁師が持ち込ん
だのか、避難小屋周辺に唐辛子が自生しているのだ。おそらく老ありす辺りが巣を守るのに使
えないかと貯蔵庫にしまっておいたのだろう。うふふまりさは最初から親の後を追うつもりだ
ったのかもしれない。

若ぱちゅりーはゆん気のなくなった洞窟で一人ぼやいた。

「そんけーしたくなるゆっくりは、みんな永遠にゆっくりしてしまったわ。寒い時代ね…」

だが、りーだーとして群れの未来を放棄することはできない。若ぱちゅりーは残ったゆっくり
を集めると、臨時に洞窟のさらに奥に居住区を移した。狩りや漁にでかけるには不便だが、入
り口が狭く、守りに適した場所だった。

巣の材料や備蓄した食糧を奥に運び込み、永遠にゆっくりしてしまったゆっくりたちの遺骸を
埋葬する。入り口が餡子まみれでは、また新たな敵を呼ぶ危険性があると判断したのだ。ゆん
口はもはや夏の三割にまで落ち込んでいた。だが、遅まきながら、ここに来て群れの危機をみ
なが認識した。最早まりさもれいむもなかった。外で狩りをしていた個体も、屋内でぬくぬく
育った個体も一致団結して群れを、自分たちを守ろうとしていた。洞窟の主だった出入り口に
は、身軽なちぇん種か、身体能力の高いまりさ種が配備され、狩り・漁は比較的残存個体数の
多いれいむ種を中心にみなででかけるようになった。さらに、若ぱちゅりーは、うふふまりさ
の遺骸から唐辛子の有効性に気づき、これを備蓄するよう支持した。若ぱちゅりーは変わった。
かつての有能ながら優柔不断な悩み多き若りーだーは、頼りにしていた老ありすが永遠にゆっ
くりしたことにより果断なりーだーに成長していた。自分で考え、自分で指示を出さなければ
ならない状況、群れを守るために散ったありす親子の死に様、それが若ぱちゅりーを変えたの
だ。


ところで、「びってんとっぱ」をまともにくらい、ぼろ雑巾のようになった子れいむはまだ死
んではいなかった。吹っ飛ばされた砂浜近くにあった木の根元の大きな窪み、そこに身を隠し
ていた。近くの雑草しか口にしておらず、かなり衰弱していたが、まだ死んではいなかった。


だが、悪運強い子れいむにもお迎えが来たようだ。
その窪みは、ヤシガニが休息するにも絶好の場所だったのだ。子れいむが痛みによって、眠り
から目を覚ましたとき、その体は既にハサミ脚によってがっちりと捕獲されていた。

「いじゃ!!…いじゃい!!!やめろおおお!やめじぇね!このばきゃ!れいぶはぷりちーな
んだよ!だいじにじないどいげないんだよ!!ゆっぐりりがいじろ!!」

子れいむの罵倒を浴びせられたヤシガニの複眼は無機質に光る以外、何も語りかけては来なか
った。いや、ヤシガニは行動で返事をしたというべきなのかもしれない。
ヤシガニは子れいむのぱさぱさした髪をつかむと、びちびちとひっぱり、ちぎっては口に運ん
でいった。

「み゛ぎゃあああああ゛でいぶのふろーらるながみじゃんがああああああああああ゛!!!
どぼじでぇ!どぼじででいぶがごんなめじ……」


子れいむの疑問の答えは簡単なことだった。小さいもの、弱いもの、危険を冒したもの、注意
を怠ったものから食べられる。自然界のごくごく当たり前のルール。その公式に子れいむの行
動を入力すれば「被食」という解がはじき出された。それだけのことだった。



天まで続け未完のSS



神奈子さまの一信徒です。

前作にて感想をくださった皆様、ありがとうございました。
皆様からのコメントを読むとつい、SSの設定を考えたり、資料を集めてしまって、
仕事ができません。いつもありがとうございます。


三部作にする予定だったので、ひとくぎり(旧体制の崩壊)はつけましたが、これじゃすっきり
しない人も多いですよね。少し、仕事を片付けたら、考えてみようと思います。
ていうか、「最後の大隊」一言も出てきません。海岸の巣メインで行く予定でしたので、そち
らは、追補編としてまとめられればな、と思っています。ロリス好きな方、すみません。



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感想

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  • 結局れいむが悪い(確信)。 -- 2014-04-18 10:17:30
  • ゆっくりがかっこよく見えるSSすげえええええええ
    燃えるわ -- 2013-06-14 09:01:25
  • 老ありすとうふふまりさの格好よさびってんとっぱした -- 2011-08-18 03:24:06
  • ビッテンとか金髪の小僧とか銀英ネタ多くてワロタw -- 2010-12-10 21:59:22
  • れいむはマジで災難を呼ぶなぁ…

    南の島の生物達の描写が詳細でとても素晴らしかったです!
    うふふまりさも、老ありすも格好良いなぁ -- 2010-11-05 22:04:09
最終更新:2010年02月05日 20:52
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