くちばしにチェリー 8KB
考証 小ネタ 共食い 野良ゆ 捕食種 希少種 現代 愛護人間 独自設定 虐めません
・4回目
・希少種
・きめぇまる
・ぬえでやったほうがいいのかもしれませんけど、とりあえず前編じゃない前編ということで。
・虐めてない。
・ていうかSSじゃない。
・ヨロシクオネガイシマス
突然だが、あなたはカラスに纏わる奇妙な話をご存知だろうか。
ある山に登山に来ていた青年が、崖から誤って足を踏み外してしまい亡くなってしまった。
死因は頭部の破損によるショック死で、身体の節々が折れ、皮膚や肉が剥き出し、頭の一部から脳が飛び出してしまうような惨たらしいものだった。
崖下での発見時、青年の遺体には、山に住み着いていたカラスが何羽か近くにいたという。
地元の住人いわく、山に住むカラスは山で死んだ人間の一部を食し、その人間の最も大事な人物の元へ、その魂を届けるのだという。
実際、青年の恋人の付近を一週間カラスが付き纏っていたらしい。
カラスとは、現世との縁を切る立会人のようなものなのだろうか。
続いての地方のお話は―――
『恐怖!!! 本当は怖い田舎話』とか言う。三番煎じくらいの番組を見ていると、姉さんがふと目を輝かせて俺に問いかけて来た。
「ねえねえねえねえ。ああいうのって、ゆっくりでもあるの?」
「ゆっくりでも? って今の・・・? どうだろう。カラスっぽいってんなら、きめぇまるがそうなのかな。確か、ゆっくり食べるし」
「あんたの中学校ってきめぇまるとかみすちー飼ってるんだよね」
「飼ってるっていうか、居着いてるだけだよ。校長先生とか教師陣が物好きだから」
野良犬が紛れ込むよりも高い確率で、野良ゆっくりが紛れ込む警備がざるな中学校。正直、不審者が入って来たりするかもしれないのが心配だ。
まあ、街ぐるみで知り合いばかりになってしまうような田舎だからいらない心配なのかもしれないけど。
「ふうん。じゃあ、直接聞いてきてよ」
「嫌だよ。めんどくさい」
「聞いてきてよ」
「嫌だ」
「聞け」
「嫌」
「むしろ、おまえがゆっくり食え」
「いや・・・何故・・?」
翌日。
長女「姉の絶対命令」
を宣言されて、避け切れずにピチューン。嫌々ながらに放課後にきめぇまるに会いに行くことになってしまった。
きめぇまるはだいたい屋上に居て、気が向いたら屋上から降りて登下校の学生や、暇な用務員さんとかと話している。
今の時間帯なら、屋上で待っていれば会えるはず・・・だけど。
そこは現実。アニメとかのように開放なんてされてなくて。いじめとか自殺とかを警戒して封鎖されているのを用務員さんに頼み込んで(渡した18禁本――priceless)、屋上の鍵を確保した。
日も傾いて、辺りが夕暮れ色に染まっていて部活動に専念する奴らの活気の声もあって。
告白するなら、こういうシチュエーションが良いなぁとか考えながら屋上への扉を開くと、軽い風が吹き込んで髪を乱す。
前髪を掻きながら、屋上に出て、辺りを見回すと給水塔のある高いところの縁に、足をぶらつかせながらちょこんと座るきめぇまるがいた。
遠目から見たら、夕日に黄昏れている女の子そのものだけど、別に俺は変態でも紳士でもないからそう思っただけだ。
とりあえず、話せる程度に近付く為に、給水塔の側まで移動して、壁にある梯子を昇る。
ちょうど昇り切るときめぇまるはこちらを見た。
いつものように首を左右に振っておらず、寂しそうな表情をしている。
それを見て数秒、頭が真っ白になったけどゆっくりだということを思い出して、頭を振って邪念を追い出した。
首を傾げるきめぇまるに何故か目を合わせられない。
「ちょっと、横良いかな」
きめぇまるの返事を待たずに、横に座らせてもらう。
数センチ前に傾けば、道端で車に轢かれたれいむやまりさのように、派手にぐしゃぐしゃになると思う。
有無を言わさずに座った俺に、何かを言いかけたきめぇまるは、また前を向いた。
気まずい。というか。微妙。というか。
変な沈黙が四分くらい続いてしまったので、とりあえず話しかけることにする。
「あのさ、何を見てんの………?」
「……………」
沈黙が帰ってきた。
ますます気まずくなった。
普段のきめぇまるとは、まるで違う静かさ。
女の子の日なんだろうか。姉さんも、女の子の日は気が滅入ってしおらしくなるもんだ。
いや、でもゆっくりにもそういうのあるのか?
分からない。何も分からない。家で飼っているちぇんの手も借りたいくらいだ。手、ないけど。
いっそ立ち去った方が良いのか迷っていると、きめぇまるがふいに立ち上がった。
立ち上がって、
前のめりになって、
落ちそうになって、
気付いた時には、俺は後ろに移動してきめぇまるの腰を抱き抱えて、全体重を後ろにかけることに神経を費やしていた。
首をこちらに向けて、どうして止めると言っているようなきめぇまるの非難するような目が俺を睨む。
その目を俺は、踏ん張りすぎて痛くなってきた目で睨み返す。
前のめりになろうとするきめぇまるとそれを止める俺。
変な組体操みたくなっている状態はしばらく続く。
十分くらい経った時、きめぇまるが力を抜いた。
そのせいできめぇまるを抱えたまま、後ろに倒れこんで強く背中を打つ。
痛みと息苦しさに思わず、目をつむって両手も離してしまった。
すぐにきめぇまるの拘束を解いたのに気付いてバッと上半身を起こすと、きめぇまるは俺の横でニヒルな笑顔を浮かべながら左右にヒュンヒュン頭を振っていた。
「どうも。清く正しいきめぇまるです。おお、感謝感謝」
いつものきめぇまるだ。
さっきとまるで違う。
あ。むしろこれが普通なのか。
さっきのしおらしいきめぇまるがおかしい。
さっきのきめぇまるは身投げしようとした。
斜に構えて人間以上に皮肉げに生きるきめぇまるが、身投げしようとする理由が分からない。
とりあえず、身体をちゃんと起こして胡座をかいてきめぇまるに向き合う。
ふと、きめぇまるの足元を見ると1センチくらいの赤いリボンが落ちている。
それをつまみあげてたしかめてみると、よく見かけるものだった。
「赤ちゃんれいむの髪飾り?」
「おお、説明説明」
リボンを持っている俺を、気まずそうに見ながらきめぇまるが首ふりを心なしスローにして、語り始める。
「私は、ゆっくりを食べると、稀にそのゆっくりの記憶を垣間見てしまうのです」
「垣間見る・・・?」
「そうです。たとえばここにれいむがいます。れいむは生まれてからずっと、ゆっくりしてきたという記憶があったけど、突然空から来た私に捕まって食べられました」
「その時、そのれいむの記憶を見たきめぇまるはそれを自分のことだと錯覚してしまうってこと?」
「おお、理解理解」
かい摘まむと、ゆっくりを食べたら、そのゆっくりと同じ考え方になってしまうらしい。
・・・ありすを食べたら、エロくなるのかとかは考えてないから。考えてないから!
「だからさっきは、赤ちゃんれいむの生きてるより死んだ方がマシだと思ったことをそのまま感じてたと?」
「そういうことです。おお、はずかしいはずかしい」
「なるほどねぇ・・・」
昨日、テレビで見たあれはまんざら間違いではなかったらしい。
一人納得していると、きめぇまるが首ふりをやめてうなだれている。
「おお、不甲斐ない不甲斐ない」
「ゆっくりを食べなければ良いんじゃ?」
「おお、きびしいきびしい。数少ない食料なので、それは無理です」
「学校の奴らは、え・・・じゃなくて食べ物くれない?」
「タダで住まわせてもらっている以上、人間さんに頼り切ることは出来ません」
「また律儀な・・・」
死ぬかもしれないけど、食べなければこの先生きられない。
さすがに、不憫だ。
ゆっくりんピースの世界の恵まれないゆっくりが云々のCMは未だにピンと来ないけど、身近に困っているゆっくり(ただし、良い奴に限る)がいたら助けるべきだろう。
やらない善よりやる偽善。
「よし。なんか、食べに行こう」
立ち上がって、ズボンについた埃を払ってから、きょとんとするきめぇまるを腕を持って立ち上がらせる。
「いえ・・・それは」
「ああ、施しとかそんなんじゃないから。・・・ほら、あれだよ。きめぇまるはなんかもう学校の一部みたいな・・・これも、俺の中学校生活を充実させる為だから」
何故か、きめぇまるは頬を赤らめた。
「・・・おお、熱愛熱愛」
「いや・・・そういうんじゃないから」
「ふうん。あの話本当だったんだ。いやー、ご苦労ご苦労。君にちぇんがふにふにする権利をやろう」
きめぇまるといろいろデート紛いのことをしてから帰宅。
ドッと、疲れてソファーに倒れこんでいると姉さんがちぇんをぐりぐり顔に押し付けてきた。
「ちぇんはふにふにしたくないよーわかってねねね!!!」
二つの尻尾を振って嫌がるちぇんもなんのその。
姉さんの手はちぇんをがっしり掴んで離さない。
ていうか、唇がちぇんのデリケートゾーンに触れているから、本当にやめてほしい。
阿呆な二人を払いのける気力もなく顔を反らした先、テレビでまた、あの番組がやっていた。
「・・・」
「ああ、これゴールデン進出したんだっけ」
姉さんがニヤニヤしながらこっちを見ているのをひしひし感じる。
ああ、きめぇまるじゃないけど、何処か遠くに行きたい・・・ていうかどこに行くんだ俺の青春。
突然だが、あなたはスキマに纏わる話をご存知だろうか―――
アトガキ
あれです。きめぇまるはきっと流されやすい子という脳内設定がですねry
次は、ちゃんときめぇまるがいろんなゆっくりを食べた反応を見るやつを書こうと思います・・・はい。
題名は、私立探偵濱・マイクのテーマソングのあれです。関係ないんですけど。啄ばむって聞くと毎回頭の中に流れます。
ご読了ありがとうございました。
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- ego-wrapping?
-- 2011-01-12 04:02:49
- やだこのきめぇ丸ふつくしい…
ちょっとドキっとしたわ -- 2010-12-02 19:39:46
- さえずったらまっ逆さま♪
タイトルネタ一発特定ゆゆうでした
虐待は無かったが面白かったです -- 2010-08-09 23:00:42
最終更新:2010年03月17日 10:01