老夫婦とまりさ4 17KB
虐待-凄惨 制裁 愛で 悲劇 理不尽 差別・格差 誤解・妬み 家族崩壊 家出 駆除 飼いゆ 野良ゆ 赤子・子供 自然界 現代 虐待人間 愛護人間 五作品目です。人間主体となっているのでご了承下さい
五作品目です。
>小出し
今回から一作品ごとの文章量を増やしていけるように頑張ります。
前作品の続きです。
老夫婦の過去話中心で子まりさは殆ど出てきません。
また、子どもが苛められるシーンがあるのでご注意下さい。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
老夫婦とまりさ4
1.
老夫婦にはかつて息子がいた。
勉学は秀でており運動神経もよく、学校での成績も上位に入っていた。
しかし、その生活が幸せであったわけではなかった。
いじめの存在が彼を不幸にしていた。
それは小学校中学年ほどから顕著になり、毎日のように陰湿ないじめが発生していた。
(…またか)
登校してみると学校の学習机の中にゆっくりの死骸が詰め込まれていた。
いつものように少年は机の中身の掃除をし始めた。
その様子をにやにやと遠巻きに見つめる集団がいる。
ゆっくりの死骸を机に詰め込んだ当事者達である。
「…」
少年はその視線に気付いているものの相手にせず淡々と作業をしていた。
いじめが始まった頃には少年の味方をし、いじめ集団に対抗する同級生もいた。
しかし、それはすぐいなくなった。憐憫の情を見せるだけで、自分たちも標的にされることが分かったからだ。
少年と関わるだけで、同じようないじめを受けることとなったのである。
今では少年を避けようと視線を逸らすことが当たり前となっている。
「おはよう。朝の会やるぞー」
いじめが始まった原因は少年に対する嫉妬である。
成績が優秀であることから、目を付けられたのだ。
最初の頃はちょっとした遊び感覚のものであり、少年も笑って応じていた。
だが、それは次第に過激になっていき収まることはなかった。
少年は抵抗したものの、それは余計に相手を刺激するということが分かってから何もしなくなった。
教師に頼ったこともあったが、それは無駄に終わった。
いじめ集団の頭は村の有力者の子どもであり、幅をきかせていた。
聞けば校長とも私的な繋がりを持っており、その態度は横柄なものであった。
少年は学校においては孤立無援の状態であった。
「起立。礼。おはようございます」
「「「おはようございます」」」
少年は号令をかけ、形式的に朝の会を始める。
授業においても挙手や発言は消極的に行い、休み時間には机で俯せていた。
必要以上のことはせず、最低限のことだけをこなしていた。
いじめが嫉妬から来ることが分かっているため、極力目立たないようにしていたのである。
「何寝てんだよ」
「うぜーから学校に来んなよ」
昼休み。自分の席で少年が俯せていると椅子を蹴られた。
できるだけ相手にしないように無言でそのままの体勢を維持しようとしている。
「起きてんじゃん。さっさと帰れよ」
「お前にこんなもんはいらねーよ」
いじめ集団の一人が机を蹴り倒す。
机の中からすでにぼろぼろである教科書とノートを全て取り出し、窓から投げ捨てた。
一部は側溝に落ち、一部は校庭に落ちた。
いつものように少年は椅子に座ったままだった。
チャイムが鳴る。もうすぐ授業の時間となった。
少年は席から立ち上がり教科書とノートを取りに外へと向かった。
「…」
前日が雨であったために、教科書とノートはどろどろに汚れている。
少年は泥を軽く水で流し落とし始めた。
頭に感触を感じた。手で触ると妙に生ぬるく粘質がある。
見上げると窓からいじめ集団がにやにやこちらを見ていた。
少年の手についているのは唾であった。
「見てんじゃねーよカス」
「そのまま帰れ、帰れ」
少年は手を洗い、教室に戻った。
机と椅子は倒されており、筆箱はゴミ箱の中にあった。
だが、それはいつものことであり、いつものように元に戻し、いつものように、授業の号令をした。
少年は歳不相応に達観していた。
傍若無人な権力に対する自分の無力さを知っており、それに対抗する術もない。
対抗できたとしてもそれは自分をさらに苦しめるだけであり、耐えるしかないことを悟っていた。
授業が終わり、至福の時が訪れる。
机の中身を全て片付け、早々に学校を出て行く。
足取りは速く、逃げるように家へと帰っていった。
2.
「ただいま」
「おかえり、学校はどうだった」
「別に」
「…そう」
父も母もいじめの存在には気付いており、学校に訴えをしたこともあった。
しかし、それは徒労に終わっただけであった。
学校を牛耳られており、担任は操り人形そのものであった。
地元の警察にも行ったが、相手にされなかった。
小学校児童を罪に問えるわけでもなく、保護者同士でなんとかして下さいとのことであった。
せめて口頭注意でもと願い入れたが、逆恨みされいじめを助長させる結果となった。
他にも出来ることは全てしたが、結果は芳しくなかった。
少年の立場は悪くなるばかりで何も好転はしなかった。
「…はぁ」
少年は自分の部屋に入るとため息を漏らした。
慣れてしまったこととはいえ、精神的にはかなり辛かった。
ランドセルを投げ捨てるように置くと、学習机の一番下の引き出しを開けた。
その中には一匹のれいむがいた。
れいむは少年の姿に気がつくと怯えた目で震え上がった。
そのれいむは片眼をえぐり取られており、代わりにたわしを無理矢理に詰め込まれていた。
足は剣山に突き刺されており、すでに足としての機能は全て失われていた。
髪であったと思われる部分は焼かれ縮れていた。
口は縫いつけられ、声が出ないようにされていた。
少年はいじめでの苦しみをこのれいむにぶつけていたのである。
「さて…」
少年はテープで繋げられた鉛筆をれいむに突き刺していく。
れいむの悲鳴は口内のみで響き渡り、少年の部屋には響かない。
そのおかげで両親に悲鳴を聞かせることはなく、両親にも気付かれていないと少年は思っていた。
実際は少年がれいむを捕らえ、虐待していることを知っているが知らない振りをしていた。
不満の捌け口ができていることを肯定的に捉えたのだ。
虐待という歪んだ形であるものの、塞ぎ込まずにいるのはそのおかげだからである。
6本目を刺した時点でれいむは気を失った。
「今日は早いな」
つまらなそうにそう言うと机の引き出しを閉じ、その日の宿題を始めた。
宿題を終えると何をするのでもなく、新しい虐待方法について考えはじめた。
「ごはんですよー」
「はーい」
母に呼ばれて部屋を出て、夕飯を食べはじめる。
会話はなかった。学校について聞いても良い話が出てくるはずもない。
無理に話したとしてもそれは少年の心を傷つけるだけである。
ただ、少しずつ少年の心は荒んでいくだけで、誰も救うことはできなかった。
「ごちそうさま」
「…」
食事を終えると少年は部屋へと閉じこもった。
少年は必要な時以外は自分の部屋に戻り、虐待に関することか宿題のみを行っていた。
少年の生活と心は塞ぎ込んでいく一方であった。
「ただいま」
父が帰ってきた。
別の校区の教師をしている父は帰りも遅い。
言葉には力が感じられない。
部屋越しに聞こえてくる両親の話には、勤め先の学校でもいじめがあるという話もよくある。
自分と同じ立場の子どもがいるようで、父はそれを悩んでいるようである。
(…僕と同じような子がいるんだな)
そう思うと心が多少楽になり、諦めもつきやすくなった。
その日はれいむに鉛筆をさらに3本刺すだけで眠りにつくことができた。
3.
(俺は無力だな…)
学校で教師としての立場をしていてよく思うことである。
熱心に教育をし、保護者からの評判も良いがそれは自身の満足には直結しない。
いじめは保護者の見えないところでも進行しており、時には解決できないこともある。
そういった現実を目の当たりにしたその時、強く無力感を感じた。
「先生!助けてよ!」
いじめが進行している子の訴えである。息子と同じ学年だ。
息子と違い出来の悪い子であるが、素直で明るい子である。
いじめの原因はその出来の悪さからであり、原因は息子とは真っ向に反対している。
「何があったんだ?」
「あいつらが物をぶつけて来るんだ!」
泣きながら指さす方向にはいじめ集団がしまったといったような顔でこちらを見ている。
「おい!お前らそれは本当か!」
いじめ集団はその場から逃げ出し、姿をくらました。
良く言えば追い返した、悪く言えば逃がしたということになるが、とにかくその場でのいじめは終わった。
「先生、ありがとう!」
その子に笑顔が戻ってきた。
それに笑顔で返すがそれは仮の笑顔であった。
いじめが途切れたとしても、それは一時的なものであり根本的な解決となっていない。
同じようなことが以前もあり、今回もいじめがあったことを考えれば意味のないことであることが明白である。
いじめには根本的な解決が必要である。
職員会議においてこの子がいじめられているということに関して取り上げたが年老いた世代は消極的であった。
いじめが世間に露呈すると学校としての立場が悪いから大々的に取り組めない。
そもそもいじめ対策をするということはいじめの存在を認めていることになる。
そういったことを平気で言い放ち、いじめを黙認する姿勢を取っている。
若い世代はそれはいけないであろうと刃向かうも相手にされない。
(老害め…!)
いじめは本来学校全体で取り組む課題であるのだが、前向きに結束することはなかった。
仕方が無く若い世代で協力的に取り組み、解決へと努力をすることにした。
この校区には村の有力者という者が介入するということなく、息子の校区とは違い段々と良い方向へと向かっていった。
だが、自分の息子に対するいじめを解決できるわけでないために、権力に対する無力感はさらに大きくなった。
(…くそっ!なんて俺は無力なんだ!息子一人助けられないのか!)
自分の校区の子どもは助けられるのに、自分の息子が助けられない苛立ちは自分の心を責め立てた。
4.
中学生になり少年は苛立ちを募らせ始めた。
それには幾つかの理由があった。
一つは、いじめのさらなる過激化である。
控えめであった暴力行為が激しくなり、体に生傷が絶えなくなってきた。
体の発育も伴いその痛みも次第に強くなり、苦しさも酷いものとなった。
また、いじめ集団も拡大し、少年を囲い込む人数はさらに増えていた。
一つは、虐待への慣れである。
引き出しに入れていたれいむはすでに死んでおり、新しくゆっくりを捕らえるもどれも長生きはせず、死んでいった。
いじめの激化に伴う虐待の残虐化が原因であるが、それに慣れてしまい生半可な虐待では満足できないようになったのである。
少年の荒んだ心を癒すためには相当な虐待が必要となってきたのである。
そして、もう一つは父の校区のいじめの改善である。
これが少年の心をさらに傷つけることとなった。
自分の父がいじめを改善しているということが分かり、自分と比べることで不満を募らせたのだ。
これまでに父は息子のために奔走していたが効果がなく、少年はありがたみを感じていない。
父は自分の職業の役割を真っ当に遂行にしているだけであったのだが、少年の眼にはそうは映らなかった。
ただ、自分を差し置いて他の子どもを優先する愚かな父親としか見ていなかった。
「おい、こんな時間にどこへ行くんだ!」
「うっせーこの糞親父!」
夜も遅い時間に、少年は家を飛び出した。
玄関を乱暴に閉めると少年は自転車に跨り、夜の闇に溶けていった。
何も見えない闇の中を父と母はむなしく見つめていた。
少年の向かった先はゆっくりの群れがいるという山である。
ここに来た目的は虐殺を通しての気晴らしである。
「…ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
少年が一声かけると、愚かにも一匹のれいむがそれに反応してしまった。
近頃虐殺をする人間が出るというので注意するよう群れのリーダーから言われたばかりである。
「そこか」
少年は声のする方向に懐中電灯を向けてれいむを見つけ出した。
「ゆ!?」
「本当にお前らは馬鹿だな」
髪を掴むと懐中電灯を置き、持っていたライターでじりじりとあぶり出した。
れいむから悲鳴が発せられる。ライターの火は少年とれいむの顔を下から照らしている。
「やめでぇぇぇぇぇぇぇ!」
「やめるわけないじゃん」
いじめ集団と同じ台詞を吐き出し、れいむを少しずつ焼いていく。
その悲鳴は群れのゆっくりにも聞こえており、巣の中で震えている。
「なんでお前を助けに来ないんだろうなぁ」
「だれがだずげでぇぇぇぇぇぇぇぇ!どぼじでだずげでぐれないのぉぉぉぉぉぉ!」
助けに行かないのは当たり前である。少年にはその理由がよく分かっていた。
下手に手を出すと巻き添えを喰らうことは目に見えて明らかなのである。
勝てない相手に手を出すことは自分の死を早めるだけだ。
「みんなお前が嫌いなんだよ」
「そんなわげないでじょぉぉぉぉぉ!でいぶはみんなのあいどるなんだよぉぉぉぉぉ!」
「うぜぇよ」
少年は日々の不満をれいむのぶつける。
いじめ集団と同じように高圧的にれいむに声をかける。
ふと、少年は自嘲的に笑う。自分が嫌っているいじめ集団と自分が全く同じであるということを笑ったのだ。
最も嫌いであったいじめ集団と自分の姿を重ねて、自分の愚かさが滑稽に思えたのだ。
それでも少年はれいむをあぶり続けた。
それが楽しいからである。
愚かだからなんだというのだ。嫌いだからなんだというのだ。
今、この場で、弱い者をいじめることが何が悪いというのだ。
世間から嫌われ、迫害されるものを痛めつけることが何が悪い。
自分がそうされているのだからそれは当然だ。ゆっくりをいじめて何が悪いのだ。
「おりゃっ!」
「ゆぎゅぼぁっ!」
れいむのもみあげを持ち近くの石に叩き付ける。
頬からぶつかり、餡子が飛び散り、歯が数本宙に浮いて闇に消えた。
「汚ぇ顔だなぁ」
「ゆぎぃぃぃぃ…」
すでに原型を留めないれいむを足で踏みにじり、冷淡に言い放つ。
れいむの死は目前であった。
「お前、生きてる価値ないよ」
短い悲鳴と共にれいむは潰れた。
少年は満足そうな笑みを浮かべた。
「さて、次はお前だ」
「むきゅっ!?」
一匹のぱちゅりーが切り株の後ろにいた。
隠れているつもりだったのであろうが、丸見えであった。
自分が人間を見えていなければ、人間も自分も見えてないだろうと思っていたのだろうか。
「まっ…まってね!ぱちゅりーはこうしょうをしにきたのよ!」
「交渉だぁ?」
思いも寄らない発言に眉を歪ませた。
ゆっくりごときが交渉をするとは思ってはいなかった。
「にんげんさんはおかねさんがすきなんでしょ!これをあげるからかえってくれないかしら!」
ぱちゅりーが見せたのは100円玉であった。
このぱちゅりーはゆっくりにしては賢くお金の概念を多少は知っているようであった。
「へぇ、お金持ってるのか」
「むきゅ!これでかえってくれる?」
「さっさとよこせよ」
「かえってくれるとやくそくしてくれるかしら?」
「ああ帰ってやる」
少年はぱちゅりーから100円玉を受け取るとぱちゅりーを足で踏みにじり始めた。
帰るつもりなど毛頭なかった。
「足りねーよ。こんなんで帰るかよ」
「むぎゅぅぅぅぅ…でもさっきかえってやるって…」
「言ってねぇよ」
少年は落ちていた棒きれを持ちぱちゅりーの目玉をえぐった。
感触は柔らかく、簡単に取れた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
少年は二つ目もえぐる。同じような悲鳴が響いた。
だが少年はそれをにやにやと見つめるだけであった。
「げんじゃなおめめさんをがえじてぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「他のゆっくりがどこにいるか教えたら教えてやるよ」
「ぢがぐにあるおおぎないわざんのじだにいまずぅぅぅぅぅぅ!」
他のゆっくりがどうなるか知れないのに即答した。
最初は群れのことを考えて交渉をしに来たようだが、自分に危機が迫れば身勝手なものである。
「へぇ、本当にいるのか」
少年が岩の下の窪みを覗くとありすが一匹寝ていた。
嘘を教えれば良かったものを正直に答えていた。
「お前は本当に独りよがりだなっ!」
「むぎゅっ!」
そう言うと同時にぱちゅりーを蹴り飛ばした。
岩に当たり、その体は破裂するように細かく飛び散った。
「さて」
少年はありすをいかに虐殺しようかと思案した。
結果、れいむとぱちゅりーの死骸を詰め込み、土で埋めるという方法にした。
寝言で「あまあまさんがいっぱいだぁ」と漏らすありすは滑稽であった。
土を被せようとした時にやっと起きたらしく、なにやら叫びが聞こえていた。
何を言っているかは分からなかったものの少年はそれで満足であった。
土を被せ終わると、声が聞こえなくなったのを確認すると少年はその場を立ち去った。
その一晩で群れから三匹のゆっくりが消えた。
夜中の虐殺は少年の不満が溜まる度に行われ、段々とその頻度も上がっていた。
皮肉なことにその行為がゆっくりによる畑の被害の減少に貢献していた。
5.
中学も三年になると家庭内での暴力は当たり前のものとなった。
息子が両親にことあるごとに喧嘩をふっかけた。母が暴力を受けると父がそれを懸命に押さえるということが多かった。
病院沙汰にはならなかったものの、それは酷い状況にはかわりなかった。
父は武道をやっていたこともあり、当初は息子の暴力を押さえることもできていた。
しかし、身体の衰えと心労、息子の成長により力関係は逆転していった。
家庭は乱れ、息子はついに刃物を手に両親を脅すことも辞さないようになってきた。
父が稼いだお金はほとんどが息子に吸い取られ、全てが虐待、暴力に注ぎ込まれていった。
そしてついにその日がやってきた。
「おい、お前!どこに行くんだ!学校は!」
「うっせーよ。こんな田舎から出て行くだけだ」
「何言ってるの!」
「殺すぞこの糞ばばあ!」
息子は母を突き飛ばした。
父は母を抱き支える。
「母さんになんてことをするんだ!」
「うぅ…」
「黙れこの糞じじいが!息子を息子と思わないような奴を親に持った覚えはねーよ!」
息子は両親に対して恨みを持っている。
自分をいじめから救ってくれなかったことが許せないのであった。
さらに父が自分を見捨てて他人を助けているように思っていた。
「何を言ってるんだ!俺はお前を助けようと…!」
「寝言は寝て言え!なんで他人の子どもを助けて俺を…!俺をっ…!」
少年は言葉の先を言えずに、目に涙を蓄えている。
ここに来て悲しみが溢れてきたのであろうか。
手はつよく拳を握り、体を大きく震わせている。
「糞っ…!じゃあな!」
少年はかつて育った家に背を向け走り出した。
両親はそれを追おうとしたが、やがて足は止まった。
道の真ん中で立ちつくし、寂しい気持ちに包まれ家へととぼとぼと戻っていった。
その日は警察に連絡をし、失意のまま翌朝を迎えた。
(…家、こんなに広かったんだな)
夫は妻より早く起きると家を見てまわり始めた。
家族の一人がいなくなった家は広く感じた。
酷い思いをさせられた息子でもいなくなれば悲しいものである。
息子の部屋を見る。
部屋に近づくだけで暴行されるのでこれまで近づいたことすらなかった場所である。
中は荒れており、少年の心がそのまま体現されたかのように思えた。
それでも賞状やトロフィーなどの過去の栄光を表すものはそのまま残っていた。
「…」
長く沈黙し、部屋を眺めて今までの思い出を巡らしてみた。
楽しかった時の息子を思い出し、何かがこみ上げてくるのを感じた。
逃げるように部屋を後にして縁側に向かった。
近くの柱に手を掛けるとそこには背比べの傷跡が残っていた。
傷跡は11歳の8月の記録で終わっていた。
それを見て、父はその場に崩れるように座り静かに泣いた。
6.
家から息子がいなくなってから長い月日経った。
夫は仕事を退職した。夫婦には白髪も増え、老夫婦と言えるような風貌になっていった。
時は少しずつ夫婦の心に残った傷を癒していったが治るわけではなかった。
息子のことを思い返す度に、悲しみが心を襲った。
そのためか、息子のことを話題に出すことはほとんどなくなっていった。
それでも息子がいつ帰ってきてもいいように、部屋はいつも綺麗にしていた。
息子がいなくなったことで暴行されることはなくなったが、幸せではない。
残った財産で土地を買い、畑仕事をして生活していくようになったのはこの頃からである。
「…お前は俺たちが悪かったと思うか?」
子まりさに息子のことについて話し終わるとお爺さんはそう聞いた。
その言葉はいつものような元気がなく、酷く思い詰めているように思えた。
「…まりさには難しくてよく分からないけどお爺ちゃんたちは頑張っていたと思うんだぜ」
子まりさが話を全て理解できていたかはどうかは分からないが、はっきりとした口調でそう答えた。
それは嘘偽りでなく、心からの言葉であった。
「…そうか」
老夫婦の顔にほんの少しの笑みが戻った。
子まりさにの一言は老夫婦の気持ちを多少なりとも和らげたのだろう。
「ほらほら、せっかくの料理が冷めちゃいますよ。もう食べましょうよ」
「お、そうだな」
トップページに戻る
このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 今なら小学校でも、いじめは立派な犯罪と認知され始めてる。
(遅ぇーよ!!)
モノが無くなれば窃盗だし、痣が残れば傷害。
(まぁ、証拠を残さない方法に進化しただけだがな!!)
今は、PTAも警察も動き始めている。
(日記など記録がなければ動かないがな!!)
いじめられている皆、きっと今も頑張っているだろう。
あとは「私を助けて!!」って言うだけだ!!
(結局示談になって心の篭ってない「ごめんなさい」⇒「お咎め無し」だがな!!!怒) -- 2018-03-09 06:46:26
- おじいさんのむすこさんをや味゚る奴らはゆっくりしね! -- 2014-06-15 13:47:30
- あれだ
饅頭どうにかするより腐った人間どうにかしたほうが先だな -- 2013-07-12 05:41:34
- やはりまんじゅうをつぶすのはただげんじつからめをそらしてるだけなんだよ・・・
おにーさんはいじめっこというにんげんのげすどもをせいっさいすることにしたよ・・・ -- 2012-10-04 00:36:20
- 漢字を喋るゆっくり・・・だと!? -- 2011-09-14 18:37:58
- そりゃ親なら「自分を殺せるわけない」って思ってるからだろ。いじめっ子には何されるかわからんだろし。 -- 2010-12-17 22:45:41
- 親に刃物を振るえる癖に、いじめっ子相手には何もできないんだなー -- 2010-12-17 22:02:56
最終更新:2010年04月12日 12:50