ふたば系ゆっくりいじめ 1302 しっかり舌を肥やしていってね!

しっかり舌を肥やしていってね! 34KB


自業自得 自滅 家族崩壊 夫婦喧嘩 越冬 野良ゆ 愛護人間 インスパイアSS。 愛で分がちょっとあります?


 ***まえがき***
 スレで見た「舌を肥やしていってね、で茎すら食えなくしてやりたい」というのを見て、茎フェチの魂が燃え
てしまいました。
 というわけで、それをネタに書かしてもらいました。
 しかし、冗長になったかもしれませぬ。
 Zあきさんとスレの人、勝手にネタを使ってすいません。

 生き残るゆっくりがいるので全滅派は注意してください!
 *********





 ゆっくりの越冬は命を賭したものである。
 基本的なゆっくりという種は寒さに弱く、中身の餡子が極度に冷えてしまうと死に至る。 これは、体内の生
命活動を維持する餡子が機能停止に追い込まれるからだ。 中枢餡が異常をきたせば助かる余地はない。
 そのために、ゆっくりは冬という地獄の時代を過ごさなければならず、過酷な越冬生活を送る。
 まず、ゆっくりは冬眠をすることができない。 従って、日常生活の延長で生きなければならない。 具体的
には、御飯を食べて、身体を温めて、排泄行為を行うなど。 とりわけ重要なのは、御飯を食べることだ。
 食糧を体内に取り込むことによって餡子が活性化し、体温を取り戻すことができる。
 つまり、食糧の確保が最重要課題といえる。


 ある森に小さな群れがある。
 長のぱちゅりーが治める、総勢三十ほどの規模だ。 このぱちゅりーは元飼いゆということもあり、中々の教
育をそれぞれに施している。
 冬の驚異が既に戸を叩き始めた頃合い。
 すっかり短くなった陽は既に落ち、ゆっくりにとって恐ろしい夜がやってくる。
 ふと、ある成体のゆっくりまりさが、帽子を膨らませてポヨンポヨンと跳ねて群れに帰ってきた。

「れいむ……いまかえったよ……」

 他のゆっくりたちはもう越冬生活を始めている中、なんとそのまりさは狩りに出ていたのである。
 家の前のお粗末なけっかいっを外し、中に入る。
 隙間風が入らないように、丁寧にけっかいを構築する。 葉や、自分の武器である木の枝を使って。

「おそいよ! なにやってたの!? れいむはおなかがすいてるんだよ!? どおしてはやくごはんをとってこ
ないの!? ばかなの!? しぬの!?」
「ゆぅ……」

 まりさのつがいのれいむは、とてもでっぷりとしたれいむである。
 成体でバスケットボールほどあるまりさよりも、一回り大きい。
 そんなつがいの剣幕に、まりさは思わずたじろいだ。
 それから慌てて帽子を外し、今日の収穫を目の前に出す。

「ゆ! まりさはがんばったよ! いっぱいとってきたよ!」

 この冬という季節に、ゆっくりが食べられるものはほとんどない。
 しかし、このゆっくりまりさは凄まじいほど優秀であった。
 ほとんどの植物や虫が死滅したものの、驚異的な勘の良さで餌を集め続けたのだ。
 目の前にある餌の量は、一週間を凌ぐのに十分なほどである。

「はああああああああああああああああああああああああ!? これがいっぱいいいいいいいいいいいいいいい
いいいいいいいい!? まりさはあたまがおかしいんじゃないの!? ねぇどういうこと!? こんなのれいむ
のあさごはんにもならないでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 それに対してれいむは激昂した。

「まりさがえっとうようのしょくりょうにはてをだすなっていったんでしょおおおおおお!? だからひっしに
がまんしたんだよおおおおおお!? いちににちなにもたべてないんだよおおおおおおおおお!? それを! 
それを! たったこれっぽっちですまそうっていうのおおおおおおおおお!?」
「ゆ……こ、これだけあればしばらくゆっくりできるんだぜ……?」
「ゆがあああああああああああああ! なにいってんのおおおおおおおおおおおおお!? むのうなまりさはし
ねぇえええええええええ!」

 れいむはまりさを体当たりで吹き飛ばした。
 運動能力に優れた狩りの名人であっても、つがいからの不意打ちには対応できなかった。
 為す術なく飛ばされたまりさは家の中の壁にぶつかり、崩れ落ちた。

「ゆげぇ……れいむ……」
「むーしゃむーしゃ! まぁまぁそれなりー! なんなの?」
「ゆあああああああああああ! まりさのぶんはぁああああああ!?」

 たった一度のれいむのむーしゃむーしゃで、一週間分の食糧が消え失せた。
 ここ三日何も食べずに働いてまりさは絶叫を上げる。
 しかし、れいむの声は冷淡なものであった。

「え? まりさ……なにいってるの……? あたまがおかしくなったの……?」 
「ゆ?」
「これだけしかごはんをとってこれなかったのは、まりさのせきにんでしょ……? まりさが、わるいんでし
ょ? まりさのむのうのけっかが、これでしょ? なんでまりさがむーしゃむーしゃするけんりがあるの? ね
ぇ、れいむなにかまちがったこといってる?」
「…………ゆぅ…………」
「わかった。 まりさには、どりょくがたりないんだよ。 もっとどりょくしたくなるようにしてあげるね」
「ゆ……? ゆ? ゆ? な、なんなの? どうしたのれいむ?」
「すっきりー! しようね!」
「ゆええええ!? むり! むりだよれいむ! いまからおちびちゃんができたらえっとうできないよ!?」
「おちびちゃんができれば、まりさのやるきもでるでしょ?」
「そ、そんなの――――」
「なによりれいむがゆっくりできるんだよ! まりさがいやとかいうけんりはないでしょおおおおおおお
お!?」
「ゆ、ゆやあああああああああああああああああ!」

 こうして、まりさの望まない生殖行為が始まった。
 冬に子どもをつくるというのは、最悪の自殺行為である。 頭の良いまりさはもちろんよく分かっている。
 越冬に必要な食糧が、更に必要になるのだ。 ただでさえ少ないのに、子どもができれば確実に足りなくなる。
 まりさは必死に抵抗した。
 れいむを守るために。
 しかし、体躯で勝るれいむを、まりさはついに跳ね除けることはできなかった。
 一方的な、れいむが快感を得るためだけの、最悪の行為を。

「すっきりいいい!」
「すっきりぃ…………」

 にょきにょき、とすっきりを終えた身体に茎が生える。
 茎が生えたのは――――まりさの方にであった。
 ただでさえ体力が尽きかけていたのに、子どもができてしまった。
 まりさは生命活動の危機に瀕するほどの脱力感に見舞われた。

「あああああ…………どぼじで……どぼじでこんなごとにいいいいい!? おちびちゃんをうむのはれいむじゃ
なかったのおおおお!?」
「ゆ? なにいってるの? おちびちゃんをうむのはつかれるでしょ? つかれることはまりさのしごとでし
ょ!?」
「ゆ……」
「それに、まりさのまむまむさん、ぜんぜんよくなかったよ。 はんせいっしてね!」
「…………」

 身も心もズタズタにされたまりさではあるが、頭は必死に生き延びることを考えた。
 れいむとおちびちゃんを生かすためにできること。
 それは、れいむに狩りの方法を教えることである。
 もはやまりさは狩りに出ることはできない。
 越冬用の食糧は、そもそも二人分にも満ちていないのだ。
 誰かが狩りに出る必要がある。

――――まりさは決意を固めた

 成体二匹が冬を越す分はないが、れいむとおちびちゃんを越冬させる最後の手段がある。
 ギリギリまでまりさは茎で赤ちゃんに栄養を送り、産んだ後は「おたべなさい」をする。 そうすれば、何と
かれいむとおちびちゃんを生かすことができる。
 そのためには、安全圏まで御飯を集めなくてはいけない。

「れいむ……ゆっくりきいてね……」
「なに?」
「もうまりさはかりにでることはきないよ……だから――――」
「は? なにってるの?」
「ゆ?」

 まりさは、れいむを見上げた。
 視界の端に、自分に実ったおとびちゃんが見える。
 その向こうのれいむは、恐ろしく冷めた目をしていた。

「あしたからおちびちゃんのぶんもしっかりかりをしてきてね」
「なに、いって、るの?」
「まりさは……ほんとうにあたまがわるいんだね……ごはんをとってくるのはあああああああああああああああ
ああああ! まりさのしごとでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
お!?」
「ゆ? ゆううううううううう!? むりだよ! おちびちゃんがいるんだよ!?」
「だから? あ、かりのさいちゅうにおちびちゃんがしんだらせいっさいっだからね!」
「…………」
「れいむはいまからゆっくりねるよ! もうはなしかけないでね!」

 話しかける気力など、まりさにはない。
 潰れるようにしてまりさは身体を低くして、嗚咽を漏らした。
 自分から吸われていく命そのものを感じながら、まりさは必死に考えた。
 おちびちゃんとれいむを守る方法を。








 ******







「ふぅん。 そうなのか……」

 まりさは、人間の村に来ていた。
 群れの掟で、人間に近づいてはいけないことになっている。 しかし、もはや人間に縋るしか手はなかった。
 死に体で人間のところまで来れたのは奇跡であるし、一匹もおちびちゃんを失わなかったのも奇跡。
 運良く人間に出会い、話まで聞いてもらえたのが奇跡であった。

「つがいと赤ちゃんのためにねぇ」

 今、まりさはとある村人の家の、縁側にいる。
 陽はまだ高い。
 僅かばかりの太陽の恵は、まりさの心を癒していた。

「分かったよ! お前の心意気に打たれた! 余った野菜をやろう!」
「ほんとに!? ありがとうございますうううううううう!」
「いやいや。 まりさは凄いよ。 怪我をしたつがいの代わりに身重で狩りをして、こんなところまで来るなん
て並大抵のゆっくりじゃできない」
「……ゆ……それほどでもないよ……」

 少し歯切れが悪くまりさは謙遜をした。
 まりさは人間に嘘の説明をしたのである。
 越冬のために狩りをしていたつがいが怪我をして、妊娠していたまりさが狩りをしていると。 しかし、どう
しても御飯が足りないので人間の手を借りに来たと。
 人間はそれに関心した素振りを見せ、れいむを縁側まで招待したのだ。

「よし。 その前にお前に御飯をあげよう。 見るからにボロボロだし、帰れないだろう?」
「あ、ありがとうございますううううう!」
「ちょっと待ってろ……ほら。 ゆっくりフードだ。 食え」
「いただきます! むーしゃむーしゃ! し、しあわ――――ゆ……」

 人間は快く、まりさにゆっくり用の御飯を与えた。
 まりさはそれを、涙を流しながら食べる。
 しかし、途中で動作を止めた。

「どした?」
「え、えっと。 ごめんなさい。 たべてるさいちゅうに『しあわせー!』するのは、にんげんさんにはだめな
んだよね……?」
「おや。 野生なのに、そんなこと知ってるのか?」
「おさのぱちゅりーがかいゆっくりだったっていってたの。 それをちょっときいたことがあったんだよ……」
「ほえ! それってチラっと聞いたことがあるだけだろ? よく憶えてるなぁ」
「ゆゆ……! まりさはいちどきいたことはわすれないんだよ!」
「そりゃ凄いな」

 そんな会話を交わしながら、人間はまりさの茎に目を向けた。

「それにしても。 元気そうな赤ちゃんだな!」

 まりさは釣られて視線を上げる。
 実っているのは、五匹。 その全てがれいむ種である。
 まりさ種のおちびちゃんは、一つもない。
 少しばかり寂しかったが、まりさは有り余る母性をおちびちゃんに向けている。
 自分の命を削ったおかげか、たった一晩で実ゆっくりは個体識別が可能なほどに成長したのだ。
 早ければ今日の夜にも産まれるかもしれない。
 まりさも御飯を食べたことにより、出産に耐えられるだけの体力を回復した。
 子守をれいむに任せれば、また明日から狩りができるだろう。

「よし。 赤ちゃんにも特別に御飯をあげよう!」
「ゆ? いいの!?」
「ちょっと待ってろー」

 喜ぶまりさを見て、一旦人間は席を外した。
 それから、手にスポイトとコップを持って戻ってくる。

「順番にやるぞ」
「ありがとう! ありがとうおにいさぁん!!」
「ほーらあまあまだぞー!」

 人間は実ゆっくりの口にスポイトの先端を当てる。
 まだ喋る機能はないが、実ゆっくりは”あまあま”に反応して口を開いた。
 人間がスポイトから液体を押し出し、実ゆっくりに御飯を与える。

「――――!」

 すると、実ゆっくりは素晴らしいゆっくりとした表情を見せ、うれしーしーまで放った。
 そんなおちびちゃんのゆっくりとした姿を見て、まりさは感激に身を震わせた。
 最近は全くゆっくりできていなかったが、人生最大と言っても過言ではないほどのゆっくりを感じたのだ。
 その後に慌てて、しーしーを自分の帽子で拭き取った。
 帽子は大事なものであったが、この大恩ある人間には迷惑をかけたくなかった。
 赤ちゃんの下に帽子を置いて、汚れないようにする。
 そんな様子を見て、人間は苦笑した。

「ほら。 次はお前だー」

 人間は順番に実のれいむに液体を与えて行く。
 五匹全てにそれを与えた後、感激しているまりさに言った。

「もっとあげていいか?」
「ゆううう!? ありがとうございます!! いっぱいごーくごーくさせてあげてください!!」
「りょうかいー」

 自分の赤ちゃんがゆっくりしている姿を見るのは、この上ない至福であった。
 人間が赤ちゃんをにごーくごーくさせているとき、何事かを呟いた。
 しかし、ゆっくりしている赤ちゃんを見るのに夢中で、まりさは全く聞き取れなかった。
 この後、まりさはゆっくりしている野菜を帽子に詰め込んでもらった。

「ありがとうございましたぁぁあああああ! このごおんはぜったいにわすれませぇぇえん!」

 そうして、まりさは家へと帰って行った。
 まりさは『恩返しする』とは言わなかった。
 家族のために命を捧げる覚悟であったからだ。
 代わりに、まりさは何度も振り返って頭を下げた。
 人間はずっと、まりさを見ていた。


 遠くからだったから、人間の浮かべている表情は見えなかった。








 ******






 まりさが家に帰ってくると、れいむは昼寝をしていた。
 何とか陽の高いうちに、赤ちゃんを一匹も失わずに帰ってくることができた。
 餡子はほとんど冷え切っているが、死に至るほどではない。
 まりさの帰宅に気付いたのか、れいむは身を起こした。

「ゆーん。 まりさぁ? ごはんはもってきたのお?」
「ゆ! にんげんさんからおやさいさんをもらったよ! これでふゆをこせるよ!」
「ゆゆ!? おやさいさん!? はやくれいむにむーしゃむーしゃさせてね!?」
「だめだよ! これはえっとうようのごはんだよ!」
「ゆ……?」

 れいむは跳ね起きてまりさに詰め寄ったが、強くは出られないでいた。
 おちびちゃんがとてつもなくゆっくりした表情を浮かべていたからである。
 れいむはこの無能ななまりさが嫌いであったが、可愛いれいむ種のおとびちゃんをたくさん妊娠したことだけ
は評価していた。
 普段であれば、まりさが元気になっていることに目敏く気付き、野菜をつまみ食いしたのだろうと激昂したは
ずである。
 しかし、そんな怒りを感じないほどに、おちびちゃんに愛しさを感じていた。

「ゆ! おちびちゃんが!」

 そんなれいむの愛を感じ取ったのか、急におとびちゃんが動き始めた。
 ぶーらぶーら、と一生懸命に身体を振って、茎から離れようとしている。
 慌ててまりさは自分の帽子を赤ちゃんの下に敷いた。 しーしーの臭いが残っているかと焦ったが、赤ゆの
しーしーだったおかげか、臭いはない。

「ゆっくりうまれてね……!」

 まりさとれいむは、非常にゆっくりとした顔で出産の瞬間を見ていた。
 そしてついに、その時が訪れる。

ぶちっ!

 茎から一匹のれいむが帽子の上で生まれ落ちる。
 そしてぷるぷると震え始めた。
 まりさとれいむは真剣な顔をして、おちびちゃんを見守る。

「ゆ……ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」
「おちびちゃん! ゆっくりしていってね! ゆ、ゆゆーん! おちびちゃんすっごくゆっくりしてるよぉおお
おおおおおおおお! さすがれいむのおちびちゃんだよ!」
「ゆ。 おちびちゃん。 ゆっくりしていってね! さ! おかあさんとすーりすーりしようね!」
「まりさ! おちびちゃんとすーりすーりするのはれいむがさきだよ!」
「ゆ……ゆっくりりかいしたよ……」
「ゆ? おとーしゃんとしゅーりしゅーりしゅるの?」
「おちびちゃん。 れいむがおかあさんだよ。 まりさはおとうさんだよ」
「ゆ? ゆっきゅりりきゃいしちゃよ! おきゃーしゃんしゅーりしゅーりさせちぇね!」
「もちろんだよ! すーりすーり! ゆゆーん! おちびちゃんはとってもゆっくりしてるよおおおお!」

 まりさは羨ましそうにおちびちゃんとすーりすーりするれいむを見ながら、次々と産まれて行くおちびちゃん
を見守る。
 無事に五匹全てが出産した。

「さぁみんな! おかあさんとすーりすーりしようね!」
「しゅーりしゅーり!」
「おきゃあしゃんあったかいね!」
「ゆう!」

 れいむが全ての赤ちゃんを持って行き、すーりすーりしている。
 まりさはそれを見ながら、三つ編みで自分に生えている茎を引っこ抜く。
 そしてそれを、地面に置いた。

「さ! おちびちゃんたちのごはんだよ!」
「ゆ! ぎょはんじゃああああああああああ!」
「れいみゅおにゃかすいちゃよ!」
「ゆっくりちゃべるよ!」
「む……」

 おちびちゃんを奪われて、れいむは仏頂面をした。
 しかし、すぐに幸せを思い返す。
 れいむも産まれたとき、最初に自分が実っていた茎を食べたのだ。
 茎は、れいむが生涯で唯一食べたあまあまである。
 あのときの幸せな気持ちは、今も色褪せずに憶えている。

「ほら! ゆっくりくきさんをたべてね!」
「ゆわーい! くきしゃんいただきまーしゅ!」

 おちびちゃんが茎を食べてゆっくりする姿は、さぞやゆっくりできるだろう。
 れいむはニコニコしておちびちゃんを見つめた。
 赤ゆっくりが茎に噛り付く。

「むーしゃむーしゃ――――ゆげえええええええええええええええええええええええええええええええええええ
えええええええええ!」

 五つの絶叫が響いた。
 れいむが予想していた、ゆっくりした表情ではない。
 この世のものとは思えない、苦悶に満ちた表情。

「ゆげええ! まじゅいいいいいいい! これどくはいっちぇるよ!」
「ゆげええ……ゆげえええ!」

 食べた茎はおろか、自分の中身まで吐き出し始めた。
 れいむは慌てて身体を揺すり始める。

「どうしたの!? ねぇどうしたのおちびちゃん!?」
「ゆげぇ……! まじゅいよ……くきしゃん、まじゅいよおおお!」
「くきさんがまずい? そんなはず……」

 れいむは確認のために茎を齧る。

「むーしゃむーしゃ……うっめ! これうっめえええ! ぱねぇ! むーしゃむーしゃ! しあわせえええええ
えええええええ!」

 そして、苦しむおちびちゃんをそっち退けで茎を食べ始めた。
 その間にまりさはおちびちゃんをぺーろぺーろとする。

「ゆっくりしてね! ゆっくりしてね! あんこさんをはいちゃだめだよ!」
「おとーしゃん……」
「ゆゆ……おちびちゃんになにかたべさせないと……くきさんは……ゆあああああああああああああああああ
あ!?」
「ふー。 くきさんおいしかったよ!」
「ど、どぼじでれいむがくきさんをたべてるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「ゆ? ゆ? ゆゆ? ま、まりさ? どうしたの?」
「くきさんがなければおちびちゃんのたべるものがないでしょおおおおおおおおおお!?」
「ゆぅ……」

 まりさに怒鳴られて、さすがにまずいと思ったのかれいむは少しだけ怯んだ。
 しかし、まりさはもうれいむに見向きもせず、周りを見回す。

「おやさいさんはかたくてたべられないよ……! でもまりさがかみくだけば!」

 まりさは人間から貰った野菜、にんじんを咥える。
 そして咀嚼して小さくし始めた。
 すると、れいむが絶叫した。

「ゆはああああ!? まりさ!? なにおやさいさんをつまみぐいしてるのおおおおおおお!? それはれいむ
のでしょおおおおおおおお!? どろぼうするげすなまりさはゆっくりしねええええええええええ!!」

 れいむはまりさに殺意を持って跳びかかった。
 普段であれば、まりさは為す術なく押し潰されて死んだだろう。
 しかし、今のまりさは体力も回復しており、気力も限界まで満ちている。

「げすはおまえだああああああああああああああ!!」

 まりさは口からぼろぼろとにんじんをこぼしながら、真正面かられいむに体当たりをし返した。
 一回り以上大きなれいむの体当たり。
 それをまりさは、全力で跳ね返した。

「ゆぎゃあああ!」

 れいむは勢い良く吹き飛び、壁に激突する。
 感じる痛みは、実際のダメージ以上であった。
 まだまだ活動に支障がないレベルだ。
 しかし、れいむにとっては激痛すぎて、一歩も動くことができないものとなった。

「ゆぎぃいいい! どれいのぶんざいでええええええ!」

 威勢よく怒鳴っても、身体は一歩も動かない。
 まりさはそれを冷めた目で一瞥すると、噛み砕いたにんじんをもう一度口に含んだ。
 そして、ぐったりしているおちびちゃんに口渡しで与える。

「ゆっくりむーしゃむーしゃしてね」
「むーちゃむーちゃ……ゆげぇえ! まじゅいいい!」

 ダメだった。
 まりさは急いで、他に使える野菜がないかを物色する。

「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」

 おちびちゃんは、ついに死へのカウントダウンを奏で始めた。
 小刻みに痙攣するのを見て、まりさも小さく身体を震わせる。
 他のおちびちゃんも、ぐったりとしている。
 もはや、何種類もの野菜を試す時間はない。

「…………」

 まりさは覚悟を決めた。
 急いで家の入り口まで行き、けっかいを構成している木の枝を三つ編みで取る。
 そしておちびちゃんのところへ戻って、にっこり笑顔を浮かべた。

ぶしゅう!

 まりさは枝で自分の頬を突き刺した。
 それをグリグリと動かして、餡子をほじくり出す。
 そしてそれを口に含んで、痙攣しているおちびちゃんに口渡しで与える。

「…………」

 無言でまりさはおちびちゃんから離れた。
 すると、赤ゆは身体を震わせて。

「ゆぶうううううううううううううう!」

 噴水のように、餡子を口から吐いた。
 そして、断末魔を告げることもなく、中身のほとんどを吐き尽くして死んだ。
 まりさは、三つ編みから枝を取り落とした。

「お、おちびちゃん……?」
「じねぇ……!」

 呆然とする間もなく、言葉が響いた。
 まりさは視線を上げて、身体を固まらせた。
 怨嗟の声を出したのは、れいむではなく、残った四匹のおちびちゃんであった。

「じねぇ……! まじゅいものをくわしぇちぇ……れいみゅをころしょうとしゅるおとーしゃんはじねぇ!」
「おねーちゃん、おとーしゃんのあんこしゃんをたべちぇしんじゃよ?」
「おちょーしゃんのあんこしゃんはまじゅいんだ!」
「ゆっきゅりしちぇないおとーしゃんはしねぇ!」

 まりさの頭が真っ白になる。
 更に、強烈な衝撃が襲った。
 勢い良く身体が吹っ飛び、身体が壁に叩きつけられ、餡子が傷口から漏れ出る。
 そして十秒ほど思考に空白を作って、それからようやく、自分がれいむに体当たりされたのに気付いた。

「ゆっへん! くずどれいのまりさは、このさいっきょうっなれいむがせいっさいっしたよ! おちびちゃんた
ち、もうだいじょうぶだからね!」
「くじゅどりぇい……?」
「ゆ! やっぱりあれはおとーしゃんじゃにゃきゃっちゃんじゃね!」
「そうだよ! あのまりさはおちびちゃんたちをだましたんだよ!」
「ゆがああ! じねええええ! れいみゅたちをだましちゃどれいはじねえええええ!」

 赤ゆっくりたちは、しっかりとれいむの餡子を受け継いでいたようだ。
 向けられる憎悪と侮蔑の視線に、まりさは全ての力を抜いた。
 もう、まりさには失うものはなかった。
 つがいの愛情も、誇りも、力もない。
 餡子が不味いと言われた以上、おたべなさいをすることもできない。
 できることは、もうない。

 まりさは身を焼き尽くすような悔しさを感じながら、ゆっくりと、目を閉じた。






 ***






 怪しいといえば最初から全てが怪しかった。
 まず、ゆっくりがこんな時期に人間のところへやってきたこと。 今までゆっくりは村には絶対に来なかった
ので、見ただけで驚いた。 更に、今はゆっくりにとって越冬の期間中であるはずだ。
 それなのに、ゆっくりがやってきた。
 しかも、頭に茎を生やしたまりさ種だ。 驚いて何が悪いというのだろう。
 更に更に、まりさは人間に対して高圧的な物言いはせず、あくまで野良の範囲であるが従順な態度を見せた。
 そして話を聞いて、また驚いた。

 まりさは、狩りをしているつがいが怪我をしたと言っていた。
 頭には五匹のれいむ種が実っているので、つがいはれいむなのだろう。
 この時点で嘘をついていることは確信した。
 普通であれば、れいむが妊娠んをして、まりさが狩りをしているはずである。
 逆もまぁあるだろうが、頭に赤ゆをくっつけて村までやってくるなんて、並のゆっくりができる芸当ではない。
 間違いなく、普段からまりさが狩りをしているはずだ。
 それなのにこうして乞食に来たということで、おおよその事情は分かる。

 俺は、昔ゆっくりを買っていた。
 昔といっても、二、三ヶ月ほど前だ。
 このゆっくりは寿命で死んだのだが、幸いにしてゆっくりフードが残っている。
 まりさにそのゆっくりフードを与えてやることにした。
 命をすり減らして家族の命を守ろうとするまりさに敬意を表して、何が悪いのか。
 まりさは幸運にも、ゆっくりフードというものに対して疑問を抱かなかった。
 おかげで、計画を実行することができる。

 俺は実ゆっくりのれいむに、砂糖水をスポイトで与えた。
 この砂糖水は多量に糖分を持つ、ゆっくりにとっては恐ろしい御馳走である。
 逆に、実ゆっくりに与えれば、劇薬にもなる。

「ほーら、しっかり舌を肥やしていってね!」

 俺の呟きは、まりさに聞こえなかったようだ。
 そう、俺は実ゆっくりの舌を肥えさせ、野菜はおろか茎すら食えない状態にしてやろうと考えたのである。
 十中八九、まりさのつがいのれいむは、いわゆる”でいぶ”であろう。
 その餡子を受け継いだガキも、ほぼ間違いなくゲスの気質を受け継いでいる。
 でいぶごときに潰されるには、目の前のまりさはあまりにも出来が良すぎた。
 そこで俺は、赤ゆとでいぶを抹殺することに決めた。

「ありがとうございましたぁぁあああああ! このごおんはぜったいにわすれませぇぇえん!」

 そうやって感謝しまくるまりさを見送るフリをして、俺はまりさの後をつけた。
 寒いのでしっかりと防寒対策をして、スコップを持って。
 まりさは実ゆっくりに気を遣っているのか、尾行する俺には全く気付いていないようだ。

 驚いたことに、まりさの群れは相当の距離があった。
 しかも、かなりの悪路である。
 実ゆっくりを一つも落とさず、それなりのペースで走るまりさはやはり、かなり優秀な個体であるらしい。

 巣の中に戻っていったまりさを観察するため、”けっかい”の隙間から内部を見る。
 そして、面白いようにしかけた計画が成功していった。

「じゃ、そこまでだ」

 俺が巣に介入したのは、でっかいでいぶにまりさが吹き飛ばされた辺りである。
 俺は中に手を伸ばしてまりさを巣から引きずり出した。

「ど、どぼじでにんげんさんがいるのおおおおおおおおおお!?」

 でいぶが叫ぶが、そんなことはどうでもいい。
 まりさは、頬から餡子をドボドボとこぼしている。
 更に、もう、目が死んでいる。
 俺は自分の計画が失敗したことにここで気付いた。
 思っていたよりもまりさは家族思い過ぎたのだ。
 だから、それに裏切られてまりさは生きる力をなくしてしまった。

「ちっ!」

 急いでまりさを持って、家に引き返そうとする。
 まだ治療すれば、間に合うはずだ。
 しかし、その前にやるべきことはやっておかなければならない。
 俺は再び巣の中に手を伸ばし、まりさの帽子と与えた野菜を引きずり出した。

「ゆがあああああああ! それはれいむのおやさいさんだあああああああああああ! がえぜええええええええ
ええ!」

 どうせこの野菜はもう食べられない。
 俺は野菜を外にばら撒く。
 そして、けっかいも完膚無きまでに破壊する。
 やることはこの程度で良い。
 それよりも、まりさの命が大切だ。

 俺は、脇目もふらずに走り出した。
 走り出して、三ヶ月前に死んだゆっくりまりさのことを思い出した。
 けれどすぐに、手に抱えたまりさの感触しかなくなった。







 ******








 まずれいむがしようとしたことは野菜を取り返すために外に出ることだ。
 最近全く外に出ずに食っちゃ寝していたため、入り口が狭くなっていた。
 しかし、強引に外に出た。

びゅう、と風が吹く

 れいむは面白いほど身を震わせ、絶叫した。

「さ、さむいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! しぬううううううううううううううううううううう
うう!」

 そう、外の気温はゆっくりの耐久限界を超えていた。
 この中で帽子いっぱいの御飯を狩れるまりさは、超を頭に付けても良いほどのまりさであったのだ。
 当然、でいぶでは耐えられない。
 れいむは一瞬にして野菜を諦めた。
 そして巣の中に慌てて引き返す。

「どぼじでかぜさんがはいってぐるのおおおおおおおおおおおおお!?」

 しかし、けっかいが破壊された以上風が容赦なく巣の中に入ってくる。
 まりさが睡眠時間を削って、命を削ってつくった干し草のベッドが巣の外へと飛んで行く。

「ゆがあああああああああ! れいむのべっどさんがあああああああああああああ!」

 巣の外に出ようとも考えなかった。
 れいむはただ叫んだだけだ。
 もちろん、寒さに凍えるのはれいむだけではない。

「おきゃあしゃぁあん! しゃむいよぉおおおお!」

 ただでさえ死の危機にあり、弱い赤ゆっくりだとどうであるか。
 当たり前のように、死ぬ一歩寸前になる。
 四匹のうち、一匹はもう痙攣している。
 れいむはハッとして大声を上げた。

「みんなでかたまってね! すーりすーりしようね!」

 赤ゆっくりがずーりずーりとれいむにぴったりと近付く。
 しかし、一匹は痙攣して「ゆ゛っ」を奏でるだけで、動かない。
 れいむはもう、そのおちびちゃんを諦めた。
 れいむが動いておちびちゃんに寄り添おうとは思わない。 なぜなら、疲れる。
 けっかいを直そうとも思わない。 なぜなら、寒いから。

「ほら! おちびちゃんはおかあさんにすーりすーりしてね!」

 赤ゆっくりたちはなけなしの体力を絞って、母親にすーりすーりする。
 その貧弱なすーりすーりに、れいむは怒りの声を上げた。

「そんなすーりすーりじゃおかあさんがあったかくならないよ! もっとがんばってね!」
「……おきゃあしゃん……おなきゃすいちゃよぉ……」
「どれいはどきょいっちゃの……はやくれいみゅをゆっきゅりさせちぇね……」

 もう赤ゆっくりにれいむの声は聞こえていなかった。
 れいむはそんなワガママな赤ゆっくりに憤怒の表情を浮かべた。
 ちなみに、痙攣していた赤ゆっくりの生命活動はもう止まっている。

「ゆううううう! うごけえええええ! すーりすーりしろおおおおおおお! おかあさんをあったかくしろお
おおおおおお! けっかいをはれぇえええええええ! あまあまをもってこいいいいいいいいいい!」
「もっちょ、ゆっくりしちゃかっちゃ……」
「どぼじで……こんなむにょうにゃおやからうみゃれちゃの……」
「なんだとおおおおおおおおおお!?」
「もっちょ、やさしいおきゃあしゃんがよかっちゃ……」

 スタンダードな断末魔で一匹、変わった断末魔で一匹の赤ゆっくりが死んだ。
 しかし、その断末魔が気に障ったのか、れいむは怒り狂って赤ゆっくりの死体を弾き飛ばした。
 まだ生きている一匹の赤ゆっくりも一緒に。

「ゆげぇ!」
「どいつもこいつもおおおおおおおお! どれいのまりざああああああああああ! さっさとれいむをあっため
ろおおおおおおおおおおお!」
「……どれいのほうぎゃ……おきゃーしゃんよりましだったよ……」
「はあああああああああ!? げすなゆっくりはしねええええええ!」

 動きたくないという意志を、殺意が上回った。
 ぽんと跳ねて、ぐちゃりと赤ゆっくりを踏みつぶした。
 断末魔を言う暇もなかった。
 こうして、おちびちゃんは全滅した。
 あるゆっくりは不味いものを食べた反動の吐餡で。
 あるゆっくりは寒さの中で放置されて。
 あるゆっくりは死ぬまで親にすーりすーりを強要されて。
 あるゆっくりは親の怒りで踏み潰されて。
 生まれる前に最上級のあまあまを摂取したときは、バラ色の未来を信じていたはずだ。
 しかし結果は、苦痛にまみれたゆん生であった。
 れいむにはどうでもいい話であったが。

「ゆうううううううううう! うごいたらおなかがへったよ! ごはんさんをたべるよ!」

 れいむは越冬用の食糧を食べることにした。
 単に、食べられる食糧がそれしかなかったという話であるが。

「むーしゃむーしゃ! それなりー!」

 まりさが己の全てをかけて集めた越冬用の食糧は、わずが十分ほどでなくなった。
 これでもう、この巣の中に食糧はない。
 もっとも、赤ゆの死体があるが、れいむにとって腹の足しにはならないだろう。

「むーしゃむーしゃしてからだがぽかぽかしてきたよ! ゆっくりねるよ!」

 れいむはそう宣言して寝た。
 その寝顔は、己の輝かしいゆん生に一片の曇もないと信じているような寝顔であった。


 こうして、れいむが死ぬまでの、地獄の時間が始まった。


 まず、れいむは一時間ほどで強制的に起こされた。
 物理的な衝撃で起こされたわけではない。

「さ、さむいいいいいいいいいいい! どぼじでこんなにざむいのおおおおおおおおお!? ねむれないいいい
いいいいいいい!!」

 食事による体温の上昇もなくなった。
 こうなれば、再び極寒の状態に戻る以外の現象はない。

「ど、どぼじでけっかいさんがこわれてるのおおおおおおおおおおお!?」

 更に再起動のために色々なプロセスが初期化されてしまったらしい。
 れいむは自分をゆっくりさせない全てに対して怒りをぶつけた。

「まりざあああああああああああああああ! さっさとけっかいさんをなおぜえええええええええええええええ
え!」

 しかし、まりさはいない。

「おちびぃいいいいいいい! れいむをあっためろおおおおおおおおおおおお!」

 しかし、赤ゆっくりは全て死んでいる。

「ゆがああああああああああ! どぼじでえっとうようのごはんがないんだああああああああああああああ!」

 既に食糧はもう何もない。
 赤ゆっくりを食べようにも、もう寒さで餡子がまともに動かない。
 嫌でもれいむは死の足音を感じ取った。

「しぬ? しぬの? れいむしぬの?」

 視界がぼやけ始める。
 全てを動かしている中枢餡が、生命活動を諦め始める。

「ゆぎゃあああああああああああああああ! れいむさまはこんなところでしんでいいゆっくりじゃないんだあ
あああああああああ! まだくってない! すっきりもしたりないいいいいいい! あまあまよこぜえええええ
ええ! びゆっくりをもってごいいいいいいいいいい! れいむをゆっくりさせないものはじねえええええええ
え! じね! じねええええええええええええ!」

 ぷつん、とれいむの目から映像がなくなった。
 もう目という機能を活動させるエネルギーがなくなったのだ。

――――くらい
――――まっくらだよ

 目の前が真っ暗になった。
 何も聞こえない。
 しかし、まるで夢のような今までの光景が蘇ってくる。
 前のゆっくりぷれいすですっきり制限を破り、つがいのまりさやおちびちゃんと共に追い出されたこと。
 つがいのまりさがれみりゃに食われたこと。
 今のゆっくりぷれいすにやってきたときのこと。
 村で一番の狩りの達人のまりさを見つけたこと。
 自分のおちびちゃんを使って、まりさが事故を起こしたように見せかけたこと。
 それを盾にまりさと結婚したこと。
 悔しそうにするライバルたちを見下したこと。
 まりさに御飯を運ばせてとてもゆっくりできる日々を送ったこと。
 そして、理不尽な目にあって死にそうなこと。

――――わるくない
――――れいむはなにもわるくない
――――いまれいむがしにそうなのはぜんぶまりさのせいだ
――――まりさのせいでゆっくりできないんだ
――――もっとたべたい
――――もっとすっきりしたい
――――もっと……ゆっくりしたかった







 ******







「ゆゆっ! おにいさん! さっさとおきるんだぜ!」

 まりさのキンキン声で今日も一日が始まる。
 もう暦の上では春だというのに、やたらと肌寒い。

「あとごふん……」
「だっめっなんだっぜええええ!」
「うおおおお!」

 まりさにかぶっていた布団が吹き飛ばされた。
 一気に襲いかかってくる冬の置き土産の寒気。
 俺は思わず飛び上がった。
 そんな俺を見てまりさはニヤリと笑った。

「やっとおきたんだぜ……まいにちまいにち、まりさはつらいんだぜ」
「ああそうですか」
「っと。 あさごはんができてるから、さっさとたべるんだぜ」

 そう言ってさっさと部屋を出て行くまりさ。
 人の布団を吹き飛ばしたり、料理を作ったりできるまりさなんてそうはいない。
 このまりさは普通のゆっくりまりさではない。
 いわゆる、胴付きのまりさである。

「ゆ! きょうはべーこんさんのめだまやきなんだぜ!」

 我が家の食卓で平気で御飯を食べるまりさ。
 そう、このまりさは俺が拾ったまりさである。
 拾ってきたまりさは、一晩眠った後に胴付きになっていたのだ。
 それだけではない。

「まりさ。 記憶は戻らないか?」
「さっぱりなんだぜ!」

 記憶がなくなっていたのだ。 失餡によるショックかもと思ったが、もっと根が深い問題のようである。
 元々だぜまりさでもなかったのに、口調もこうなっていた。 根本的な部分が変わってしまったらしい。 た
だ、相変わらず有能さは折り紙付きである。
 それでも、俺が困ることではない。 胴付きは便利だし、まりさにしたってあんな記憶はない方が良い。

「そっか」

 俺はそう答えて、手元のベーコンエッグに手を伸ばした。
 きっちり半熟に焼けており、絶妙な加減である。
 このまりさは、一度憶えたことは絶対に忘れないのだ。 一度でも成功すれば、何度でもできるらしい。
 目玉焼きがこのような絶妙な状態になるまではそれなりの失敗があったのだが。
 そういえば、今まではハムエッグであった。

「なんでベーコンにしたんだ?」
「はむさんはあきたんだぜ!」
「舌が肥えたのか……?」
「ゆ? はむさんもおいしいけど……」
「ゆっくりは美味しいものを食べ続けると、不味いものが食べられなくなるんだとさ」
「そうなんだぜ……?」

 まりさは不思議そうに首を傾げると、不意に手を胸元に上げた。
 そして手を握りしめたり、閉じたりし始めた。

「どうした?」
「……ゆっくりも、ずっとおなじゆっくりをつづけていると、あきちゃうんだろうか……だぜ」
「だろうな」
「なんでまりさには、てやあしがあるんだぜ? ふつうのゆっくりでいることにあきたのかな」
「そのうち、思い出すんじゃないか?」

 俺はそう言ってベーコンを口に入れた。
 何となく、まりさの引っ掛かりを感じ取った。
 まりさがれいむに吹き飛ばされて全てを失ったとき、まりさは何もできることがなくなった。
 恐らく、まりさはあの状況でも本能的に生きようとしたのだろう。 更に、何かができるように、と。

「……まりさは今、ゆっくりしてるか?」
「ゆっくりしてるんだぜ! その……まぁ、おにいさんも、いるし……」
「ん? 何だって?」
「な、なんでもないんだぜ!」

 まりさは勢い良くベーコンエッグを食べ始めた。
 うん、確かにベーコンは中々上手に焼けていた。
 ハムよりも好みかもしれない。
 そういえば、まりさはハムに飽きたからベーコンにしたと言っていた。
 ということは、ベーコンに飽きればもっと美味しいものが出てくるかもしれない。
 俺はそんな期待を込めて、まりさに言った。



「しっかり舌を肥やしていってね!」







あとがき
 なぜだろう。
 こんなストーリーをつくろうだなんて思ってなかったのに。
 ただ茎への情熱を書きたかっただけなのに。
 本当に書きたいものが書けないのは未熟なんだろうなぁと思いつつ反省です。
 最後のは蛇足かもしれませんが「ちゃんとまりさは幸せになってますよ」と伝えるために書きました。

 まさか一日に二本も書くとは思わなかったんだぜ……




書いたもの



元ネタ絵 byZあき


挿絵 byゆんあき


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感想

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  • 魔理沙に感動 -- 2022-08-14 22:42:07
  • トップクラスで好きな作品だなぁ
    ゲスはせいっさい!されるべし -- 2021-05-27 01:05:33
  • まりさが結構凄い -- 2021-04-11 19:36:47
  • お兄さんが意外とカッコいい -- 2020-12-30 09:46:45
  • ヘイト貯めるだけ貯めて虐待成分が薄い典型的な尻すぼみ型 -- 2018-05-18 02:14:24
  • ざまぁwww -- 2017-11-08 21:05:16
  • 善良愛でゲス虐待派の私にはとてもゆっくりできるSSでした。
    こういう作品をもっと増やして欲しいです。
    まりさが優秀過ぎる。ゆっくりとは思えないくらい……。全作品で一番優秀で善良なゆっくりです。
    本当に幸せになって良かったです。絶対に美ゆっくりですね。
    「自分のおちびちゃんを使って、まりさが事故を起こしたように見せかけたこと」ってことは、でいぶはまりさと結婚するために自分の子供を殺したと言うことですか?自分がゆっくりする為に、自分の子供を道具にするなんて親失格の最低の親ですね。
    基本れいむ種なんて、自分がゆっくりする事しか考えないクズで、自分がゆっくりする為なら自分の子供ですらあっさり道具にして利用し切り捨て、他者を利用し何か問題があれば全ての責任を他者に押し付け自分は被害者気取り……反吐が出るクズっぷりだな。
    「まりさやありすが死ぬと悲しむ人が多少出るが、 れいむが死ぬとみんな喜ぶ」ってことが本当によく分かります。
    赤ゆっくりのいう通り、あんなドゲスで無能で自分最優先で自分だけゆっくりする事しか考えない親失格の最低の親じゃ、この作品の子供たちみたいに1回もゆっくりしないで苦痛と絶望にまみれた地獄のゆん生を送ることになるでしょうね。
    私はれいむ種が一番嫌いです。れいむ種って、本当にどうしようもないドゲスばっかりですね。
    私はこのでいぶレベルに救いようのないれいむ種を2ゆん知っています。
    しかも、死ぬまで反省してないししかもまりさのせいにする始末……。本当に救いようがない……。でいぶ…地獄で一番過酷な地獄「鬼意山地獄」に落ちろ!
    上の絵って、最初挿絵かと思ったら元ネタ絵か。 -- 2016-09-30 12:39:18
  • 普通のゆっくりは一年ぐらいの寿命だけど
    胴付きゆっくりは結構長生きするぽいけど
    何年生きるのだろう?
    あと魔理沙凄く可愛い!!!!!! -- 2016-03-16 13:29:29
  • 何故だ…?目から砂糖水が溢れて止まらない… -- 2016-02-11 13:17:39
  • やっぱりいいゆっくりは幸せになるべき -- 2015-12-19 09:00:06
  • れいむは最後までクズだったな。本当に死んでよかった。
    -- 2015-12-07 11:02:20
  • やっぱりハッピーエンドはいいもんですなぁ -- 2015-08-14 06:10:06
  • 霊夢ざまぁーー -- 2015-08-06 13:45:51
  • ブロリー[所詮クズは クズなのだ。]
    -- 2015-07-10 04:34:13
  • *・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
    -- 2015-02-19 16:36:30
  • このクズでいぶがーー!!!
    -- 2014-11-22 22:29:05
  • DIO「この糞でぶが、死ぬまで自分は、間違いを、認めないのかー。」
    ボカボカ
    ブロリー「死んだ奴を、殴ったて、正がないんじゃなかったのか?まあいい俺の気弾で、このゆっくり破壊しよう」
    ドビュン
    DIO「え!?」
    ドゴーンバァァン
    DIO「危ねー!!」
    ブロリー「あ、生きていたか、てっきり俺の気弾の、巻き添えなっていたのかと。」
    DIO「ちゃんと考えて撃ってくれよ。」 -- 2014-11-22 22:01:18
  • 散弾をぶちかましたいな、この糞デブは!
    何も悪くない?存在そのものが害悪なんだよ! -- 2014-08-23 03:02:53
  • パソコンの場面を叩くと 汚いでいぶが出てきて 押しつぶされますよ! まりさ?出ません。 -- 2014-08-21 14:11:53
  • あと一枚目の絵は一見愛でに見えるが立派な虐待だなw -- 2014-06-05 20:09:35
最終更新:2010年05月27日 20:48
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