ゆっくり達を必殺技で葬る物語 23KB
・強力な俺設定注意
・テンプレ多め
・実験的パロ話
・一部ネタ有り
※
「決めたぜ!俺は必殺技を編み出すっ!!!」
「…………はぁ?」
隣で漫画を読んでいた馬鹿が、突然そんなことを言い出した。目が爛々と輝き、息が荒い。
その手に持つ単行本は有名な作品。あっさりと洗脳されたようだ。
「日々成長するゆっくり達!それを一撃で葬る最高の技を会得する!」
「……そうか。ガンバレ。」
本気の口調で熱く語る悪友。
俺は応援の生返事を掛けた。この状態の友人にあまり関わりたくない。面倒くさい事になるのが目に見えているから。
しかし……、
「さあ!行こうか!?我が強敵(とも)よっ!」
「はぁ~っ。はいはい、行きますか。」
こうなる事も解っていた。
こいつを一人にしておくと、後々俺にも災いが降りかかるので、深い諦めと共に重い腰を上げる。背に腹は変えられない。
俺は溜息をつきながら隣で騒ぐ友人と一緒に家を出た。
今から野良ゆっくりを狩る二人旅が始まる。
手始めに、アパートの向かいで営業している、コンビニへと足を運ぶ。
「れいぶっ!?どぼじでごんなごどにっ!じっがりじでぇえぇぇぇっ゛!!!??」
白目を向きながら餡子を吐き出すれいむの周辺を、まりさは泣き叫びながら慌しく回る。
まるで、もうこのお話が終わるんじゃないか?と暗示させる様な、着いて早々のクライマックス場面。
「おにいざんっ!れいぶをだずげでぇっ!ぐぇえぇっ゛!?」
足元に駆け寄ってくるまりさ。それを『 汚い。』と、いきなり蹴り飛ばす友人。……おい、必殺技はどうした?
まりさは仰向けになり、昼空に向けて悲鳴を上げながら泣き出した。体が柔らかそうに左右に揺れた後、正面を向いて起きあがる。
「なにをずるのっ!?ゆっくりできないんだぜっ!いしゃりょうをちょうだいねっ!?」
中々の知識を持ったゆっくりまりさだ。
この周辺に住む野良は、元飼いゆなぞ珍しくも無い。同属が意見交換で学習することもあるだろう。
いかに自分が正しくあるかを訴えて、大量の糧を得る。その要素だけがずる賢く進化していた。
だが、目の前にいるまりさを見た限りでの判断になるが、成果は期待出来きないと思われる。
心なしか、飼いゆ成体平均よりも一回り小さく、汚れた外皮も薄くなってる様に感じた。
それだけで野良生活は困難なのだとド同時に理解。ゆっくりしてないね。
慰謝料と煩く騒ぎ立てるまりさに、真摯な拳で紳士的に話を聞いてみた所、嗚咽を交えながら語り出した。
ゴミ箱を漁ろうとしたら、美味しそうな団子が落ちていたらしい。
それを口にしたれいむが苦しみだして、ゆっくり出来なくなってしまった。と話す。
それはそうだろう。
ここのコンビニで働いている俺が設置した、野良ゆっくり駆除専用の極め辛子団子だもん。
地獄の苦しみを与えて、即死しない所がミソらしい。
それを見た他のゆっくり種に警戒を呼びかけ再犯防止を促す。という内容が、裏の説明文に載っていた。
れいむは妊娠していたので、まりさは食べ物を口にせずに、見つけた団子を全部食べさせたらしい。
『その愛の結果がこれだよっ!?』と、まりさは駐車場の端で愛を叫んでいた。
「よろしい。治してしんぜよう。」
「……ゆうっ!?」
「おいおい。」
突然に治療宣言をした友人。袖を捲くり、盛り上がる力瘤を見せ付ける。
いや……、その行動は全く意味無いよね?
「秘奥義を極めた俺は、れいむを一瞬で治せるのだっ!」
「ゆーっ!すごいよっ!とってもゆっくりできるおにいさんだねっ!」
まりさは完全に信じきっている。見るからに嘘臭いのに。
友人は厳つく肩を張りながら歩いていく。傍目に見れば、かなり出来そうな雰囲気を滲ませていた。
残念ながら、完全なニセ医者です。
寝そべるれいむの側に座り、肌色の頬を優しく撫で上げている。まりさは固唾を呑んで見つめていた。
友人は暫らく目を瞑りながら右手の4指を真っ直ぐに伸ばし、眼を完全に見開いた瞬間、指先をれいむの腹へと突き立てる。
「ゆぼっふっ!?」
「れいぶぅうぅぅぅぅっ゛!?」
れいむの大きな腹の奥深くに、友人の指が根元まで突き刺さる。
そして、ズブズブと鈍い音を立てながら、更に掌が奥へと侵入していく。れいむは、か細い息を漏らし始めた。
「やめであげでねっ!いたがっでるよっ!?」
「んー?まちがったかなぁ?」
『と言うか、正解が無いだろ。』と、俺は心の中で突っ込みをしながら、腕を組み状況を見つめる。
友人は凄く楽しそうだ。まりさは号泣しているけど。
「ほっ!ほっ!ほっ!よしっ!」
「なにがよじなぉおぉぉぉっ゛!?ぜんぜんりがいできないよぉおぉぉっ゛!!!」
「ほら!可愛い赤ちゃんだよっ!ゆっくりしていってねっ!」
「ゆっ!!! かわいいあかちゃんだよっ!ゆっくり………。」
「ほぁたぁっ!」
「あがぢゃぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!??」
説明しよう。
友人はれいむの腹に入った未熟な赤ゆを抉り出し、まりさに見せ付けた。
餡子塗れの赤ゆは、とてもゆっくりできる体に成長していなかったが、まりさは条件餡射でゆっくりしてしまう。
それを確認した後に赤ゆを握り潰した友人。なんという悪役。
「がわいいあがぢゃんだじが、ゆっぐぢしちゃっだよっ!?もどにもどじでねっ!」
「お安いご用だ!」
「れいぶのぽんぽんにもどざないでぇえぇぇぇぇっ゛!?」
リクエストに答えて、友人はれいむの腹の中に取り出した赤ゆ達を押し込む。
まあ、間違ってはいない。悪い意味で。
無理矢理戻された時、れいむは大きな餡子の塊を口から吐いてしまった。もう助からないだろう。
復讐の炎を目に宿らせる番のまりさ。
『くたばってねっ!』的なニュアンスを口にしながら、勢いよく飛び掛ってくる。
友人は掌を空に泳がせて、下手糞な息吹で達人のフリをしていた。……感化されすぎだと思う。
向かってきたまりさの顔面に、右正拳の重たい一撃がこんにちは。無様に転がっていくまりさ。
駐車場中央に飛ばされた歯がボロボロのまりさは、怯えながら後ずさりしている。
……何故か、それを見る友人の脂汗が凄い。
右手がプルプル震えている。
「俺は………、ここまでのようだ。」
右手首に予想以上の負荷が掛かったらしい。調子に乗って正拳打きをするからだ。
結構な重量があるんだぞ?あいつらは。
「後の事は頼んだぞ?強敵(とも)よ……。」
「はいはい、次行くぞ。次。」
友人の首根っこを捕まえて引きずっていく。言い出しっぺには、最後まで責任を取って貰う。
「ゆっ?まりざにおじけづいたんだねっ!ゆっくりはんせいしてねっ!」
襲ってこないと判断したのだろうか?まりさが急に元気になった。
笑顔を滲ませて、腹を見せるように仰け反り、上から目線の偉そうな体勢になる。
「つよすぎてごめんねっ!?ゆっくりけらいにしてあげてもいいよっ!」
俺は駐車場を進んでいく。
引きずられている友人には、そろそろ歩いて頂きたいものだ。右手が辛くなってきたから。
「それにはあまあまをけんじょうしてねっ!いっぱいだよっ!?
あたらしいれいむもゆっくりよういしてねっ!まりさは、びにこだわるから、ごまかしはきかないよっ!」
歩を進めるのを遮るように、目の前に立ち塞がるまりさ。
更に大きな口を開けて、思うがままの要求をしてくる。
「はやくしないとひどいめにあわせるよっ!まりさはつよい……。」
「……邪魔だ。」
「ゆびゅっ!?」
俺は脚をしならせて、まりさの胴体を真横に分断した。
ベチャリ。と、鈍い音を立てながら、まりさの半分が駐車場に落ちる。
『何が起こったのか解らない。』と、訴えるその瞳。
答えは発せずに、落ちた半身を足の裏で踏み潰す。目玉が飛び出て、体がひしゃぎ、帽子がゆがむ。
残ったまりさの下半身は、そのまま駐車場に放置して、俺達はコンビニから立ち去った。
友人は引きずられながら、まりさと同じように『何が起こったのかが解らねぇ!?』と、訴えていた。
……俺、何か特別な事したか?覚えが無い。
こうして、右手が餡子塗れの友人と、右足が餡子だらけの俺は、次の狩場へと向かう。
ここは裏路地。
野良ゆっくり達の住処が、多数点在する場所だ。
基本、野良はダンボールや建物の隙間で暮らしている。そして、隠密性が高い住居だ。と、各個本気で思っていた。
人間から見たらバレバレ。だが、ゆっくり間では何か通じる物があるのだろう。発見されにくい住居もあるらしい。
それに、そろーりそろーり。と言うと、ステルスが発動するのだから、もう訳が解らない。
人間にはバレバレで良く捕まる。だって、大声で主張しながら移動しているから当然だ。捕まったゆっくりは皆、一様に不思議な顔をしていた。
『……何故捕まるのか?』と、疑問に思ったまま、短い生涯を激痛で終える。そんなゆん生。
「そろーり!そろーり!」
俺達の目の前を、ゆっくりが行進して行く。
跳ね回らず、地面を擦りながら移動。歩みはゆっくり、声は大きく、顔はこれまた晴れやかな笑顔。
「ゆっくりすすむよっ!そろーり!そろーり!」
「みゃみゃは、しょりょ~りのたちゅじんだにぇっ!」
大きなれいむの頭の上に、小さな赤れいむが乗っている。
目指す先は、店舗横に置かれたポリバケツ。昼食を狩りに来たようだ。
「達人だとっ……!?」
友人は赤ゆの発した達人発言に反応した。何か燃える物があったらしい。
れいむの目の前に躍り出る。
「尋常に勝負だっ!」
「うわぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ゛!?どぼじでばれだのぉおぉぉっ゛!」
れいむは一例に漏れずに、他と同じように驚きを表現した。何故、隠密移動している自分に会話をしてくるのか?と。
そして、慌しく逃げの一手に出る。
「おちびちゃん!ここはゆっくりできないよっ!ゆっくりにげようねっ!」
「すごーくちょろ~りとにげりゅよっ!」
「ゆゆっ!そうだねっ!しんのおうぎをだすときがきたよっ!いくよ!?
そろぉおぉぉぉぉりっ!!! そろぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉりぃいぃぃぃぃぃっ゛!!!」
「ゆん?……ちょろぉおぉりぃっ!!!ちょろぉおぉぉぉぉりぃいぃぃぃぃっ゛!!!」
今、達人と呼ばれたれいむの奥義が炸裂した。
とっても大きな声を辺りに響かせながら、反転していく親子。
まさかコレが究極奥義とは。お粗末にも程がある。
「やぁ。」
「ゆぅうぅぅっ゛!?どぼじでめのまえにいるのぉおぉっ゛!」
先回りした友人がれいむに挨拶を交わす。奥義は容易く見切られた。
れいむの頭の上に乗っている赤ゆを掴んで、空高く持ち上げる挑戦者。
「ゆん!おちょらをちょんじぇるみちゃいっ!」
「ヒャッハーッ!」
「ゆぼちっ゛!?」
赤ゆをコンクリートの壁に向けてピッチング。
勢い良く壁にめり込み、そのまま残骸が弾かれた後、赤ゆが地面へと転がる。親のれいむは大騒ぎだ。
そして、又も友人が発する、あの決め台詞。治癒の秘奥義を極めたとか何とか。
流石に目の前で横暴を行った為、今回は中々信じてもらえなかったが、唐突に思いついた秘策を実行する。
友人は『究極奥義!』と叫びつつ、後ろ手に持った袋の中から、れいむに見えないようにドーナツを取り出した。
俺達の昼食用に買っていた食料を有効活用。当然、コレは友人の分を差し引かさせて貰う。
一口で丸ごと頬張り、数回租借して飲み込んだれいむは、完全にニセ医者を信じきっている。
「なおしてねっ!おちびちゃんをゆっくりなおしてねっ!……ゲフーッ。」
喉の奥からゲップを漏らすれいむ。友人が所有していたポンデさんが、見るも無残な末路を辿ってしまった。
そして、『もうちょっと甘味が欲しかった。』と、味の批評を始める。
良い根性していると思う。友人は自分の分を削って出してるのだから、怒りも頂点に達しているだろう。
「じゃぁ。俺と勝負してね!」
「ゆゆっ?ゆっくりおちびちゃんをなおすのがさきだよっ!?」
「達人!のれいむ様と手合わせがしたいんだっ!」
「ゆゆゆっ!たつじんでごめんねっ!ゆっくりてれちゃうよっ!しょうぶしてあげてもいいよっ!」
「ありがとう!れいむっ!」
「ゆん!ゆっくりかんしゃしてねっ!れいむがかったら、あまあまをちょうだいねっ!」
……意外と冷静に対処したな。感心したよ。
そして、れいむと友人は対決のステージに足を運ぶ。
場所は変わらず、路地裏の一角。
ただし、先ほど居た場所から、更に奥へと移動した一行。
地面には尖った欠片が散りばめられて、路地裏に入る僅かな光を反射して輝いている。
「あるげるわげないでしょおぉおっ!?ばかなのっ!しぬのぉおぉぉっ゛!!!??」
無数に敷き詰められたガラス片。そこを歩くのが勝負方法だと伝えられたれいむは絶叫する。
足がボロボロになってしまっては、自慢のあんよが放つ、そろーり奥義も出来なくなってしまう。
この人間は馬鹿だと、れいむは本気で思っていた。
「えーっ、行かないの?それでは俺から行くか。」
「ゆぷぷっ!?やせがまんはゆっくりできないよっ!ゆっくりこうさんしてねっ!おお、おろかおろかっ!」
「はーい。そろーりそろーり。」
「ゆっふっへっ!…………えぇえぇぇぇぇえっ゛!?」
パキパキと乾いた音を立てながら、ガラスの上を歩いていく友人。
れいむはビックリ仰天だ。まさか本気で行くとは思わなかったらしい。目を見開き、信じられない行動を見続けている。
「俺ってばサイキョーねっ!あれ?れいむはやらないのっ。ゆっくりできないゆっくりだなっ。」
「ゆぶうぅうぅぅっ!?どぼじでぞんなごどいぶのぉおぉぉぉっ!!!」
「大丈夫だって!あの奥義なら楽勝だよ!」
「ゆん?」
友人はれいむに念を押す。あの奥義を使えばガラスなど恐れる事は無いと。
調子に乗り始めたれいむは、過去話を始めだした。奥義継承の長い長いお話。要点を纏めるとこういう物語だった。
見知らぬ新入りが一杯食べ物を持っていたので、入手方法を得る為に、れいむはなけなしの食料を差し出す。
弟子入りをして、そろーりの奥義を教えて貰った後に、そのゆっくりは何処かに旅立って行ったらしい。
……うん、れいむ。君は騙されてる。口に出して伝えないけど。
友人も苦虫を噛んだような渋い顔をしている。あれは同情ではなく、過去のトラウマが蘇った表情だ。俺にはわかる。
散々と暴露をしたれいむは満足したのか、やっとスタートラインへと足を運び出す。
「やくそくだよっ!れいむがかったらあまあまちょうだいね!あかちゃんもなおしてねっ!」
移動しながら、勝利を確信した表情で叫ぶれいむ。とりあえず、赤ゆの優先順位は甘甘より下だという事は理解した。
ちなみに、赤ゆはここには居ない。持って来るフリをして、あの場所に放置してきた。
今頃は、間違いなくあっちの世界で、とってもゆっくりしているだろう。
「ゆ……。」
緊張の一瞬。れいむの迫力が増す。ゴゴゴと書き文字が後ろに見えてきそうだ。
そしてれいむは意を決して栄光への歩を進めた!
「おうぎっ!そろぉおぉぉぉぉぉぉりぃぃぃいぃだぁあぁぁぁあぁぁぁいっ゛!!!??」
一歩で奥義が破られた。ガラスが食い込み、足の裏も破れた。
悶える行動をするだけで、裂傷が全体に広がっていく。れいむは移動して脱出する事も出来なくなる。
必死に助けを求めるれいむ。笑顔でに近づいてきた男は、れいむの頭を両手で掴み、しっかりと地面へと押さえつけた。
「やめてねっ!はなしてねっ!?でも、ゆっくりここからうごかしてねっ!?」
もう興奮状態のれいむは、激痛も相まって錯乱状態になっていた。何を言っているのかも解らない。
それを友人は笑顔で聞いている。………何か様子がおかしいぞ?
「れいむの力はこんなもんじゃないっ!手伝ってあげるよ!」
「やべでねっ!まえにすずんだらゆっくりできなく……、あぁあぁああああぁあぁぁぁぁぁぁっ!!!??」
強制的に地面を進まされたれいむ。というか、擦られていくれいむ。
ガラスと砂利が混じった地面の上を、滑るように移動していく。叫び声が止め処なく続く。
2往復した所で動きが止まる。れいむの下半身が削れて下顎が無くなっていた。何かを言っているんだろうが、伝わってこない。
友人は凄くやりきった顔をしていた。あれは、食われた昼飯の仇をとった表情だ。俺にはわかる。
やっぱり根に持っていたんだな。後で半分くれとか言い出しそうだ。その時は丁重にお断りしよう。
足に大きな傷を負ったれいむは、周囲に自分の中身がゆっくりと染み出すのを感じていた。
止まることがない命の流出に背筋が凍る。死の恐怖がれいむに襲い掛かる。
あまり激しく動けない体で、必死に人間達に助けを求めた。だが、こちらを一瞥した後、路地裏から出て行こうとしている。
ここで見捨てられたら、もう、後が無い。
涙を流して自分は可哀想だと訴える。かわいい声も出そうと試みるが全く出ない。そして、また焦りだすれいむ。
上下運動が激しくなり、その直後、視界が地面へと向かう。漏れ出した餡子でバランスが悪くなり、横に倒れるように体が崩れていく。
人間の姿は遥か遠くに行ってしまった。れいむはもう助からないと悟る。だが、まだゆっくりしたくないと願う。
『自分はとてもゆっくり出来るゆっくりなのにっ!』と。
しかし、大半のゆっくりはそう思いながら散っていく。報われる事は無い。
れいむの視界が徐々に漆黒へと変化していくの事が止められない。まだ見たい物が一杯あるのに、世界が強制的に閉ざされていく。
(もっとゆっくりしたかったよ。)
そして、また深い後悔だけをこの世に残して、1つのゆん生が幕を閉じる。
「すっきりしたぜ!俺のドーナツの恨みだっ!」
理不尽だと言ってはいけない。あのゲップを見てから、丸ごと一個はやり過ぎだったと後悔しているだけなのだ。
気持ちは痛い程わかる。しかし、俺はどうしても伝えなければいけないことがある。
「必殺技はどうした?」
友人は『しまった!?』の表情で驚いている。というか、こっちがビックリです。本気で忘れていたとは思わなかった。
指を一本立てながら『もう一回チャンスをくれ!』と願う友人。
わかった。納得いくまで付き合ってやろう。……次は何処に行こうか?
そんな会話をしながら路地裏を出る。
その途中、何か小さい物を踏んだ様な気がしたが気のせいだろう。
二人は次の狩場へと足を運ぶ。
通行車両が、それ程多く無い道路。渋滞とは無縁だ。
道端には商店が並び、営業中の看板を店先に掲げている。
しかし、この先に大きいショッピングモールが出来てしまい、客がそっちに流れてしまった。
少なからずの店が閉店に追いやられ、店舗がシャッターを下ろしている。
しかし、それはゆっくり達にとっては好都合らしい。
シャッターの前で数組が集まり、物乞いの場所になる。ゆっくり達は、店の主が出稼ぎに行って留守だと知っているのだ。
これも情報として売られているのかもしれない。場所を確保したゆっくりの集団は、自分に出来る最高のパフォーマンスを始める。
そんな傍迷惑な通りに、二人の男が到着した。
「やっと着いた!……思えば長い旅をしてきたもんだぜ……。」
「アホか。」
旅ではなく、散歩の距離しか歩いていない。
汗を拭う降りをする友人を冷やかに見ながら、軽く突っ込みを入れた。
『『 ゆーっ♪ゆっゆーっ♪ゆーっ♪ 』』
「ん?」
「何だ?」
歩道を進んでいると、横から突然狙い済ましたように声が上がった。数体のゆっくり家族だ。体は薄汚れていて、健康状態も良くない。
普通、親が舐めて小綺麗になっている赤ゆも、所々汚れが目立つ。唾液が枯渇しているから舐め取る事さえ出来ないと読んだ。
声もガラガラ。そんな聞きたくも無い怪音を辺りに響かせて、合唱もどきを行う一家。
赤ゆ達は『ゆっぐぢ!ゆっくぢ!』と、興奮気味に喚いていた。最初から協調する気がないのか?
当然、俺達は無視をして通り過ぎた。
……すると、
「だべものをぐだざいっ!もうびっがもだべでないんでずっ!」
「おにゃかちゅいたぁあぁぁぁぁっ゛!」
「ちゃじゃぎぎはゆっくちできにゃいよっ!?あみゃあみゃもっちぇこいっ!」
ゆっくり達は、友人の足元に縋って物乞いをしてきた。
汚い体が擦り寄る度に、ズボンの裾が黒く汚れていく。そして、友人の足が空を切る。
「いだぁあぁぁぁあぁいぃぃっ゛!!!」
親が、ゴロンゴロンと歩道を転がっていく。
それを見た赤ゆが口煩く騒ぎだした。力量も測れず、自信満々な態度で俺達威嚇し始める。
それを見ていた友人の頭の上で何かが光った。……ような気がした。
「秘技!百劣脚!!!」
「ゆびゃびゃっ゛!?」
「ゆびゃぶぅうぅぅぅっ!?」
「もっぢよぉゆっぶぢ……ぶぎゅびっ゛。」
「ゆ?……やべでぇえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!??」
足元に群がる赤ゆ達を何度も踏みつける。その惨劇を見た親が、勢い良く飛び掛ってきた。
「あちょーっ!」
「ゆぶっ!!!??」
友人は楽しそうに前蹴りを繰り出す。
まともに技を食らった親は、車道に転がっていき、向こうから来たダンプの餌食となった。
大きな車輪で、下半身を潰された親はその場から動けない。痛烈な悲鳴を上げて助けを求めた。
が、後続の車両にも断続的に轢かれていき、徐々に餡子が外に漏れて薄くなっていく。いつの間にか悲鳴は止まっている。
「みゃみゃがあぁぁぁあぁぁあっ゛!?にゃんでぇえぇぇぇぇっ゛!!!??」
最後の赤ゆが泣き叫ぶ。
親の突進は無駄ではなかった。この赤ゆに止めが振り下ろされる前に、自分が犠牲になったのだから。
「ゆっくちちねぇぇぇぇっ゛!?くちょにんぎぇっんぶぢゅっ゛!!!」
でも、潰される。
結局何も守れずに、飢餓寸前の親子は全滅した。
「どうよ!?この必殺技!」
「却下。」
「ガーーーンッ!」
妥当な評価を下した俺は、肩を落とした友人と歩みを進める。
暫らく歩いた後、立ち直った友人が『腹が減ったから、パンでも食おうぜっ!』と、提案してきたので、了承の返事を返す。
紙袋から食べ物を取り出して、口に運んだその時、
「ゆっくりちょうだいねっ!」
頭に茎を生やしたれいむが、おねだりをしてきた。
ナイスなタイミングで声を掛けてきた成体は、俺の口元にあるパンを見ながら涎を垂らしている。
「なんで君にあげなきゃいけないの?」
「れいむはしんぐるまざーなんだよっ!やさしくしないとだめなんだよっ!?」
(れいぱーでもされたのか、それとも、番に見捨てられたのか?)
そんな事を考えている俺の視界の端に、電信柱の影でハラハラと此方を観察しているまりさを捉えた。
凄く心配そうな眼差しで見守っているまりさの視線。これで全てを把握した。解りやすい奴らですね。
「あそこに居るまりさは知り合いかい?」
「ゆゆゆっ!?しっ……しらないまりさだよっ!みたこともないよっ!」
「そうなんだ?」
友人は直ぐにまりさを捕獲。『まっ、まりささまにさわらないでねっ!?』と、喚いている。
逃げようと体をくねらせるが、体に食い込んだ指先が、しっかりと固定して離さない。
「はなしてねっ!?ゆっくりできないんだぜっ!」
「まりさをはなしてねっ!れいむおこるよっ!?」
「知らないまりさじゃなかったの?」
「ゆっ!?……しらないまりさをはなしてねっ!」
目を泳がせるれいむ。下手な嘘がバレバレだ。
『これからどうしようか?』と、俺が考えていると……。
空気の読めない友人が行動を起す。
また頭の上に光り輝く物が見えた気がした。
「滅殺!中枢餡酷拳!!!」
「ゆごぁあぁぁぁぁっ!?」
指先がまりさの体の奥へと移動していく。
まりさは舌を前に突き出して、大きな目から涙を流す。
「この指を抜くと同時にお前は死ぬ。」
「やべでっ!やべでぇえぇぇぇえっ゛!?」
体の深部に潜む大事な部分に、何かが触れる感覚がある。
激痛の中、まりさは恐怖に怯え、悲痛な叫び声をあげた。
「ゆあっしゃーっ!」
「ゆべじっ!!!??」
「まっ!まじざぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
指を体の中から取り出すと、まりさは黒目を裏返して息を引きとる。友人の指先には黒い塊が摘まれていた。
「どうよっ?この必殺技はっ!惚れちゃったかっ!?」
「既出だ。」
友人は『馬鹿なっ!?』の顔をして天を仰いだ。もう、そのまま昇天してくれても構わない。
暴れ始めたれいむを俺は足で踏みつけ、その場から動かないように押さえつける。
すると、友人の後ろから、ある職業の方が俺達に声を掛けてきた。
「君達。ちょっといいかな。」
それは、この周辺を巡回していたあの公務員だった。
事切れたまりさを右手に乗せているいる友人。
足でれいむを踏みつけた俺。
それを見つめる国家公務員。
路上での簡単な職質の時間となった。
「それは飼いゆっくり?」
「いえ、野良です。」
「ゆっ?こいつらは、れいむのだーりんをころしたごくあくはんだよっ!」
「あっちの赤ゆを潰したのもお宅らで間違いないかい?」
「はい。そうです。」
「さっさとつかまえてねっ!それからあまあまももってきてねっ!?」
「そっかー。困るんだよね。」
「はぁ。何故です?」
「かわいいれいむのあかちゃんはゆっくりできたでしょっ!?
なんなら、かわいいれいむをかってくれてもいいよっ!かわいくてごめんねっ!!!??」
「ゴミはゴミ箱に入れて貰わないと。」
「あっ。……すみませんでした。」
「……………ゆっ……?」
この通りを、別名、ゆっくり通りと人は呼ぶ。
お客が向こうに流れ出し、通行人が少なくなって野良ゆっくりが多く居付いた為に、不名誉な名前を付けられた。
美観を取り戻す作業の1つに、野良ゆっくり駆除は必須。
留守の家もあるので、悪さをする前に潰してくれるのなら、褒める事はあっても叱ることは無い。
一部を除いて。
「これからも宜しく頼むよ?でも、後片付けはしっかりとね。」
「はい。考慮が欠けてました。これからは気をつけます。」
「ゆっ?ゆゆっ……ゆぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
潰した物をそのままでは、美観を取り戻すどころではない。逆に損なってしまう。
俺達は常識を忘れていたようだ。友人と互いに頷きあって行動を起こす。
まりさを道端に置いてある、回収ボックスへと投下した。
鈍い音と共に、箱が小さく揺れる。
「まっ!まじざあぁあぁぁっ゛!?」
今までに無い力を出して、足の下で暴れ始めるれいむ。
「どぼじでごんなごどずるのぉおぉぉぉっ゛!?れいぶだじはゆっくぢしだいだげなのにぃいぃぃぃっ゛!!!
まじざはごみなんがじゃないよぉおぉぉぉっ゛!?ゆっぐぢしないでりがいじろぉっ゛!だずげろぉおぉぉぉっ゛!!!??」
頭上を大きく揺らした影響で、実ゆが歩道に落下していく。
物言わぬ餡子の塊になっていくが、怒り頂点のれいむは気付かない。更に口調を激しくして、文句をいい続けている。
俺は、れいむの顔を撫で上げるように、足を前に突き出した。
後転したれいむは仰向けになって、空を見つめる体制になる。
すると、不思議と罵声が止んだ。友人は訝しげに転がるれいむを覗き込む。
(目に生気が無い……。えっ、なんで!?)
そんな事が頭を過ったその時、
「うおっ!?」
体の正中線から真っ二つに割れる。
地面に転がるれいむだった物は、餡子面を惜しげもなく晒し、お食べなさい状態になっていた。
友人は俺の肩を掴みながら、『何が起こったのかが解らねぇえぇ!教えろぉおぉっ!?』と、喚いていた。
……だから、何も特別な事はしていないよ。理解してください。
れいむを掴んで回収ボックスへと入れる。
もしかしたら、リサイクルされた商品で再会をするかもしれない。確実に認識は出来ないけれど。
俺は来た道を振り返りながら、側で騒ぐ友人へと声を掛ける。
「さて……、戻るぞ。」
「んっ?何でだよっ。」
「それは、今までの後始末をするためだ。」
常識を取り戻した俺達は、歩んできた道のりを戻り始める。
「つーか、店長怒ってるんじゃないのか?」
「そうかも。ちょっと怖い。」
今まで潰してきた物を綺麗にする為に、この旅は一時中断だ。
得た物は少なく、失った物は友人のプライドだけだが、無駄な旅では無かったと信じたい。
『『 また機会(暇)があれば、まだ見ぬ強敵に会いに行こうっ!!! 』』
空へと繰り出した拳をあわせて、互いに誓いを立てた。
真っ赤に染まった夕日が、道行く二人の背中を真紅に染め上げる。
新たな旅立ちは、遠い日の話ではなさそうだ。
終
※
・人間の方が謎設定
・この作品世界での常識や設定等は他作品に強制する事柄ではありません
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- この語り手、南斗拳士か! -- 2020-07-29 12:40:00
- シュウウゥゥゥーーー! -- 2010-12-01 20:25:54
- 主人公があっさり南斗白鷺拳を使った所で吹いたw
友人と俺にも教えてくれww -- 2010-10-08 20:04:12
- とりあえず、主人公は足で真っ二つにできるから南斗白鷺拳の使い手だな。 -- 2010-08-19 21:53:01
最終更新:2009年10月26日 18:43