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・ゆゆっ!きゃわいい れいみゅの ちゅーぱーてんぷれ たいむだよ! ブッ=3
・ネッチリ虐待(制裁?)
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「でめ吉ぃぃぃぃぃぃぃーーーっっ!!」
それが男の第一声だった。
夕方、仕事から帰宅した男が、
ペットに餌をやるために訪れた居間で最初に目にしたのは、
カーペットの上に転がった丸い金魚鉢だった。
リビングテーブルの上に乗っていた筈の金魚鉢が床の上で横倒しになり、
中に入っていた水は、僅かに鉢の中に残るばかり。
そして、金魚鉢の横に転がるのは、大きく育った、ギョロリとした目玉の黒い金魚。
男が幼い頃から飼っていた、でめ吉という名の出目金だった。
「でめ吉…でめ吉…?…嘘…だろ……?」
既に乾いているカーペットの上に両膝をついて、
出目金を両手で包み込むように掬い、必死に呼びかける。
しかし、出目金はピクリとも動かない。
大きな目玉はギョロリと空中の一点を凝視したまま。
いつも金魚鉢の中でフワフワと舞っていた大きな尾ビレも、
既に水分を失い干涸らびている。
男にもわかっていた。
でめ吉は、とっくの昔に死んでいた。
「お前達…どういう事だ?これは?」
男が鬼気迫る表情で首を九十度横に曲げ、問いかける。
そこにいたのは、おどおどとした表情を浮かべた、三匹の丸い生物。
ゆっくり。
「ゆっ…お、おにいさん、ごめんなさい…」
「の、のらゆっくりが…はいってきて…でめきちさんを…
まりさたちは、とめようとしたんだぜ…でも…」
答えたのは、親ゆっくりである、まりさとれいむ。
その二匹の陰に隠れるようにして、
テニスボールより、やや小さめのゆっくりが一匹、
怯えた表情で男を見上げながら、ブルブルと震えている。
つい最近、まりさとれいむの間に胎生出産で生まれた、
一粒種の赤れいむだった。
一人暮らしの男が仕事でいない昼の間、
出目金と言えど、金魚鉢の中から変わらぬ景色を眺めるだけではさぞ退屈だろう。
一年ほど前、男はそんな思いつきで、まりさをペットショップで買ってきた。
このゆっくり達は、男の飼いゆっくりなのであった。
「野良ゆっくり…だと…?」
男が震える声でまりさに聞き返す。
「ゆ、ゆっ! そうなんだぜ! いきなり、まどさんをわって…!」
そう答えながら、まりさが割れた窓ガラスに視線を向ける。
「…許さない…許さない…でめ吉を…よくもでめ吉を…!」
呟きながら立ち上がった男は、フラフラと庭に面した窓ガラスに近づく。
「絶対に…許さない…」
ガラスの割れたサッシをガラガラと開き、そう呟く。
庭に広がったガラス片に憎悪に満ちた視線を向けながら。
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ガシャァンッ!
「…まりさ。わかるな?
外からガラスを割って入ってきたのなら、ガラスの破片は部屋の中に落ちる。
こうやってな。」
「ゆっぐり…りかい……ぢまじだ……」
まりさは男に髪を掴まれて庭に引きずり出された後、
割れていなかった窓ガラスに向けて思いっきり投げつけられた。
男に踏みつけられ、
室内に飛び散ったガラス片と、
ガラスに叩きつけられた衝撃で吐き出してしまった餡子に顔を押しつけられながら、
まりさは己の浅はかな隠蔽工作が、あっさり男に見抜かれた事を理解した。
「ゆぅぅぅ?! ごべんなざいぃ、おにいざぁん!
わざどじゃないんでずぅぅ! じこ だっだんでずぅ!」
「ゆやぁぁ… おちょうしゃんに、ひどいこちょちないでぇ…ゆぇぇ…ゆぇぇ…」
共犯者であったれいむも、その事を理解し必死に許しを乞う。
「ゆぎゃっ!」
男はれいむの髪を掴み、まりさの横の床に顔面から叩きつけた。、
「ゆぶぶぶぶぅ…!?」
「どうして、こんな嘘をついた?」
今度はれいむの後頭部を踏みつけながら問いかけると、
まりさがその問いに答える。
「ごべんなざぁい! ゆるじでぐだざぁい! おごらでるとおもっだがらぁ…!
ごべんなざいぃ! ごべんなざいぃぃ!!」
元々、出目金に退屈しのぎをさせるために飼い始めたゆっくりではあったが、
男は、ペットを飼う者の最低限の責務として、それなりには愛情を込めて飼っていた。
だからこそ、まりさがつがいが欲しいと言いだした時には、れいむを買ってやったし、
二匹が赤ちゃんを産みたいと言った時にも、一匹だけという条件で許してやった。
無論、愛情を込めているが故に、躾も疎かにする事はない。
ゆっくりが悪さをした時には、軽い物ではあったが体罰を与える事もあった。
ゆっくり達は、その体罰を恐れ、自らの意志で罪を重ねたのだった。
「ゆぇっ…ゆぇっ…ゆぇぇぇ! れいみゅがぁ… れいみゅが わりゅいのぉ…!
れいみゅが でめきちしゃんと あしょびたいっちぇぇ… いっちゃからぁ…!
ゆぇぇぇん!! おきゃあしゃんたちを いぢめにゃいでぇぇ!!」
それまで怯えてゆぐゆぐと泣いていた赤れいむが、急に大声で喚き出す。
「ゆひぃっ?! あ、あがぢゃん!! ゆ、ゆっくりだまってねぇぇ!?
じゃないとゆっく… ゆあぁぁ?! ま、まっでぐだざい! おにいざぁん!」
「ゆぴぃぃ…! きゅ、きゅるちぃよぉぉ…!」
赤れいむの言葉を止めようとしたまりさだったが、
それよりも先に男が赤れいむを掴み、
ギリギリと握り潰さんばかりに力を込めるのを見て、蒼白になる。
「まりさ。俺に、嘘を、つくな。」
脳天気なゆっくりでもわかる程に殺意を込めた目を向けて、
それだけ言い放った男に対して、
まりさはガクガクと震えながら、ただ頷くしかなかった。
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男は、ゆっくり達に金魚鉢の乗ったテーブルの上で
"ゆっくり"して良いと教えていた。
出目金にゆっくり達の動く様子を見せるためだ。
まりさとれいむは、そこでおうたを歌ったり、すりすりをしたり、
時には、"でめきちさん"に話しかけたりと、思い思いにゆっくりしていた。
とは言え、決して知能の高くない饅頭の事、誤って金魚鉢を倒したりしないよう、
男は、自分が傍にいる時以外は、あまり金魚鉢には近づき過ぎるなと、
言い聞かせる事も忘れてはいなかった。
まりさもれいむも銀バッジ付きで売られていた教育済みゆっくりだったので、
その程度のいいつけは理解できたし、少なくともこれまではきちんと守ってきていた。
だが、赤れいむの誕生が全てを狂わせた。
親ゆっくり達は、初めて生まれた自分達の可愛い赤ちゃんに夢中になるあまり、
赤れいむに構っている時は、他の事に対する注意が疎かになっていた。
そのことに気づいていた男は、
当面の間、ゆっくり達がテーブルに乗る事を禁止した。
「ゆっ! おにいしゃん! れいみゅも、でめきちしゃんと あしょばしぇてね!」
今朝、赤れいむは男にそう訴えた。
期待に満ちた瞳を向け、もみあげをピコピコと動かしながら。
だが、出勤時間が迫っていた男からは、取り付くしまもなく拒否される。
「ゆぅぅ…」
「れいむのあかちゃん…ゆっくり がまんしてね…」
「そうなんだぜ…あかちゃんが おっきくなったら、
おにいさんも ゆるしてくれるんだぜ…」
前の日に赤れいむから同じお願いをされ、
お兄さんからお許しが出たらいいよ!と答えていた親ゆっくり達は、
落胆した赤れいむに済まなさそうに声をかける。
自分達のとっても可愛い赤ちゃんの頼みだから、お兄さんも聞いてくれるに違いない。
ゆっくりらしい餡子思考で、安請け合いしてしまっていた二匹は、
悲しむ赤れいむに負い目を感じていた。
「ゆやぁぁぁ! れいみゅ、あしょびちゃいぃ!
でめきちしゃんと あしょびちゃいよぉ!」
そして、赤れいむは親ゆっくり達に対してダダをこね続け、
遂に二匹はお兄さんには内緒だよと言って、赤れいむを連れてテーブルに上った。
「ゆゆぅ~♪ おしょらをとんでりゅみちゃ~い♪
でめきちしゃん! れいみゅ、おしょらを とんでりゅよ! みちぇみちぇ!」
仰向けに転がったまりさのお腹の上で、
トランポリンのようにぽーんぽーんと上に跳ね上げて貰いながら、
赤れいむが眼下の出目金に向かって楽しそうな声をあげる。
その様子を見ながら、まりさもれいむも幸せそうに微笑む。
それが、一家揃って過ごした、最期の幸せな時間だった。
ぼちゃん
まりさの手元、もとい、腹元が狂い、赤れいむが金魚鉢の中に転落する。
慌てたれいむが、子供を助けようと金魚鉢に体当たりをし、金魚鉢は床下に落下。
そのおかげで赤れいむの命は助かり、引き替えに別の命が失われた。
事の一部始終がゆっくり達の口から語られるのを、
男は最後まで一言も言葉を発しないまま聞いていた。
ボスッ! 「ゆぎゃっ!!」 ベシャッ!
ゆっくり達から話を聞き終えた後も、男は暫く黙っていたが、
突然、まりさに蹴りを入れ、壁に叩きつける。
「ゆぅぅぅ…! まりざぁ…!」
ボスッ! 「ゆびゃっ!!」 ベチンッ!
続いて、親れいむ。
「ゆんやぁぁ…! きょわいよぉぉ…! おしょらぁぁ?! ゆぴぃぃっ!!!」
そして赤れいむも、男の手に握られた後、床に転がる親の上に投げつけられた。
「ゆぴぃぃぃ! いちゃいよぉ…!」
「ご、ごべんなざい! ごべんなざい! おにいざん、ごべんなざい!」
「ごべんなざいぃ! ゆるじでぐだざぁい!」
普段男が与える体罰など、せいぜいが饅頭皮を叩く事くらい。
痛みに弱いゆっくり達には十分痛くてゆっくりできない物ではあったが、
今、男に蹴られた時に感じた痛みは、そんな物の比ではなく、
中の餡子が丸ごとグルリとひっくり返ってしまうかのような衝撃だった。
かつて味わったことのない痛みに怯え、涙を流しながら、
"ごめんなさい"を繰り返すゆっくり達に向かって男が一歩近づく。
「べ、べべべ、べんしょうじまず! べんしょうじまずがら、ゆるじでぐだじゃい!」
まりさの言葉に男の足が止まる。
「弁…償……?」
「ゆっ! そうでずぅ! まりざ、いづもの ごはんさん、いりまぜん!
おにわの くささんや むしさんを たべまず!
だがら、ごはんさんを かうおかねで、でめきちさんを かってぐださい!」
「れいむも! れいむも、ごはんさん、がまんじまず!
でめきちさんは べんじょうじまずがら、いだいことじないでぐだざぁい!」
確かに男の飼っていた出目金は、特別高い物ではない。
ペットショップで処分価格で売られるゆっくりと大差ない額だ。
いつも与えているゆっくりフードを買う金を節約すれば、
その金で同じような出目金を買い直す事は容易いだろう。
ゆっくりの餡子脳で咄嗟に考えついたにしては、合理的な考え方と言えた。
ただ、考え方の根本が間違っていた。
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ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
「ゆぎゃぁっ! ごべっ、ごべんなざっ…ゆぎぃぃ!! いぎゃあっ!」
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
「お、おにいざ…ゆびぃっ!? ゆ、ゆるじ…ゆぎゃあっ! や、やめぎゃあぁっ!」
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!
「ゆびゃぁぁ! いちゃいよぉ! ゆぴっ! ゆぴぃっ! ゆぴぃぃっ!!」
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!………
ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!………
男はいつも"体罰"に使っていたハエタタキを持ち出して、
ゆっくり達を叩き続けていた。
生まれたばかりで、まだ"体罰"を受けた経験の無い赤れいむにも、
容赦なく、右手に握りしめたハエタタキを振るった。
潰したり、饅頭皮を破かないよう加減はされていたが、
それでも男に叩かれる痛みは、親ゆっくり達がかつて教えられた痛みとは、
まったく次元の異なる物だった。
見る見る内に、肌色の饅頭皮がぷっくりと腫れ上がり、
その腫れ上がった箇所にも、更にハエタタキが乾いた音を立てて打ちつけられる。
何度も、何度も、何度も。執拗に。
初めのうちは、幼い赤れいむのみならず、親ゆっくり達も、
恐怖と痛みにチョロチョロとしーしーを漏らしていた。
やがて、そのための穴すらも、
パンパンに腫れ上がった周囲の皮によって塞がれてしまう。
今、流れているのは、腫れた瞼の隙間から絶え間なく零れる涙と、
悲鳴と共に飛び散る涎と、体表から滲み出る脂汗のような粘液だけ。
それは"体罰"ではなかった。
何を教えるでもない。かと言って殺す事が目的でもない。
ただただ、苦痛を与え続ける事だけが目的。
憎しみだけを込めて、男は黙々とハエタタキを振るい続けた。
「ゆっぐ……いぢゃ……も……ゆるじ………」
「ゆ゛……れいぶ…の……あが…ぢゃ……じっが…り……ゆぎっ……」
「ゆぇぇ……れ…みゅ……びしびし……ちない……で…ぇ……」
既に日が落ちて暗くなった部屋の中で、男が肩で息をしながら、
月明かりに浮かぶボロボロになったゆっくりの姿を憎々しげにみつめている。
ハエタタキを握った左腕を振り上げようとするが、
途端に顔をしかめ、その腕が止まる。
右腕をゆっくり達に向けて伸ばそうとするが、同じように、途中で動きが止まる。
三時間以上に渡り、絶え間なくゆっくりを叩き続けた男の腕は、
もうまともに上がらなくなっていた。
「でめ…吉…」
力無く呟いた後、男は痛む腕をなんとか動かし、出目金を手のひらに乗せると、
ゆっくり達を残して部屋から出て行った。
そして、日付が変わる頃に居間に戻ってきた男は、
いまだ痛みで一歩も動けないゆっくり一家にオレンジジュースをかけ回し、
親ゆっくりと、赤れいむを別々の箱に押し込んだ。
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翌日の夜、男は親ゆっくりを箱から出し、部屋の床に置いた。
「「ゆ……」」
二匹は身を寄せ合い、男の冷たい視線から逃げるように、後ずさる。
オレンジジュースの回復効果と、
狭い箱の中で一日安静にせざるを得なかった事で、
叩かれた傷はある程度まで回復していたが、まだ跳ねる事ができる程ではない。
そこに男の手が伸び、ゆっくり達がビクッと震える。
だが、二匹が予想していたような事態は起こらなかった。
「…食え。腹減っただろ。」
差し出されたのは、いつものゆっくりフードが乗った皿。
「ゆ…お、おにいさん…れいむのあかちゃんは…?」
れいむの問いかけを無視し、男は二匹に向けて皿を前に差し出す。
二匹は互いに暫く視線を交わしていたが、有無を言わさぬ男の様子に観念し、
おずおずと皿に向かって這ってゆき、餌を食べ始めた。
「「むーしゃ、むーしゃ…」」
しあわせー、は無い。
ゆっくりフードは、いつも食べている物。
極上の味とはいかないが、ゆっくり基準ではそれなりに美味しい。
何かゆっくりできない物が入っている訳でもない。
いつもなら、揃ってしあわせー!と叫びながら食べている味だ。
だが、瞬き一つせずに、自分達をじっと見下ろしている男の視線に
ゆっくりしていない物を感じたゆっくり達には、
いつもの美味しいごはんにも、何の味も感じる事ができなかった。
あらかた餌を食べ終える頃、男が再び口を開いた。
「ちびの怪我は治しておいた。もう餌を食って寝ている。」
「「ゆっ…」」
男の言葉に、二匹は微かに安堵の表情を浮かべる。
「おにいさん、ゆっくりありがとう。」
「まりさたちを ゆるしてくれたん…」
「誰が許すと言った?」
「「ゆっ…?!」」
赤ちゃんは無事、自分達も餌を貰えた事で、
てっきりお兄さんからの許しが出たと思った二匹だったが、
即座に否定され、困惑の声を上げる。
「まだ、俺はお前達を許していない。お仕置きは続けるぞ。」
「じぇ、じぇもぉ…まりざだぢ、もうたくさん びしびしさん されたんだじぇ…」
「これからもお仕置きは続ける。何日も。何日もだ。覚悟しとけ。」
まりさが涙目で訴えるが、男の言葉は冷たいままだ。
「ゆぅぅぅぅ…! やめてぇぇ…! おにいさん、やめてぇぇ…!」
れいむが泣きながら、首をブルブルと振る。
あんな痛くて痛くてゆっくりできないお仕置きがまだ続く?
いやだ。そんなのはもう耐えられない。
口には出さないが、その目がそう物語っている。
「ゆぅぅ! おじおぎざんは ゆっぐりでぎないぃ! まりざ、ゆっぐりじだぁい!」
まりさも泣き出し始め、じたじたと子供のように駄々をこねる。
「そうか。だったらお前達のお仕置きは無しだ。」
「「ゆ?」」
「ゆゆっ?! ほんとう?!」
「ゆっ! ありがどうございまず! おにいざん、ありが…」
あっさりと出されたお許しに、拍子抜けしながらも、
二匹の泣き顔が、コロッと笑顔に変わる。
勿論、世の中、そんな甘い話は無い。
「その替わり…ちびにお仕置きをする。お前達二匹の分まとめて、な。」
「「ゆ?…ゆゆぅぅぅ?!?!」」
「やめてよぉ! どうしてそんなことするのぉ!?」
「やめでぐだざい!
ばりざだちの あかちゃんは、ゆっくりさせてあげてくだざぁい!」
自分達の可愛い赤ちゃんがゆっくりできなくされる。
もっとゆっくりできない事態に、ゆっくり達が抗議や、懇願の声を上げ始める。
「お前達がお仕置きされるか、ちびがお仕置きされるか、どちらかだ。
お前達が選べ。どちらも選ばないのなら、全員お仕置きするまでだ。」
「ゆ…ゆ…ゆぅ……わがりまじだぁ…」
「れいむたちが、おじおぎざれまず…」
頑なな男の態度と口調に、二匹もようやく観念する。
どちらかしか選べないというのなら、可愛い赤ちゃんを守れる選択肢を選ぶしかない。
そう結論を下した。
「よし。」
その言葉と共に、男は餌と一緒に持ってきた工具箱のようなケースから
ハエタタキを取り出し、床の上に置く。
昨夜のお仕置きの事を思い出し、
恐怖に染まったゆっくりの視線がハエタタキに釘付けになる。
その視線を遮るように、砂の落ちきった砂時計が置かれる。
「始めるか。」
男が、ハエタタキを手にし、砂時計を反転させた。
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「ゆぎゃあぁぁぁっ!?!? いがぁっ! いだいよぉぉぉっ!!」
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「ゆびぃぃぃ!! ゆびぃぃぃっ!? いだぁぁいっ!! ゆぎぃぃ!」
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「あ゛っ…! やべぇ…! あぎっ!! やべじぇぇ…! ゆびぃぃっ!」
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「びゅぎぃぃっ?! いびゃいよぉ! いびゃいよぉぉ…! みゃみゃぁ…!」
砂時計の砂が落ちきったのは、きっかり一時間後。
それと同時に、男はまりさとれいむを叩く手を止めた。
「ゆっぐ……ゆっぐ……………」
「ゆ゛……ゆ゛……」
しーしーと涙を垂れ流しながら、途切れ途切れに鳴き声を上げるゆっくり達。
叩かれ続けた時間こそ昨夜より短いものの、
赤れいむがいない分だけ、それぞれが叩かれる頻度は昨夜よりも高い。
それだけではなく、男は昨夜以上に力を込めて、ハエタタキを振るっていた。
昨夜は腫れ上がるだけだった饅頭皮が、
今夜は散々に腫れ上がった上、所々が破けて少量の餡子がボロボロと零れ出している。
男は、ゆっくり達の皮の破れた箇所を水溶き小麦粉で塞ぎ、
オレンジジュースをたっぷりとかけ回した後、
二匹を箱の中に閉じこめてから部屋を後にした。
■二日目
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「いだいぃぃっ! もやべでぇぇ! もうやべでぇぇっ!!」
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「ぴぎぃっ! ぴぎぃぃぃっ!」
今日もハエタタキが風を切り、
ゆっくりの饅頭皮を打つ音と、ゆっくり達の悲鳴が響き渡る。
一日目と全く同じお仕置き。きっかり一時間。
終わった後には、皮の修復とオレンジジュース。
それから、二匹はようやく眠りにつく事ができる。
■三日目
二日目までと同じお仕置きを終えた、まりさとれいむ。
涙を流しながらずりずりと這い、互いに寄り添うと、
相手の傷口をぺろぺろと舐める。
「ゆぅぅ…! ゆっぐ……れい…む……だいじょ…ぶ…なの……じぇ……?」
「いびゃいぃ…まりざぁ…ゆっぐじ……じだいよぉ…」
「ゆっぐぢ……でぎる…だじぇ……きょうの…おじおきさんは…もう…」
「まだ終わりじゃないぞ。」
「「ゆ゛ゆ゛っ…?!」」
昨日、一昨日の経験から、今日のお仕置きは済んだと思っていた。
だが、その思いこみを否定する言葉を男から投げかけられ、
二匹は恐怖に身を強ばらせながら、男に顔を向ける。
その目に映った男の右手には、一本のフォークが握られていた。
「お前達のせいで、でめ吉は命を失ってるんだ。
お前達が何も失わないで済むと思うなよ。」
四本に枝分かれしたフォークの先端が、れいむの目の前で銀色に輝く。
「ゆっ…ゆっ…! な…なに…なにずるのぉ…!? おにいざぁん……!?」
「や、やめてね! まりさのれいむに ひどいことしないでね!
しないでねっ! じないでぇぇぇ…!?」
グチュ
「ゆぎょおぉぉっ!? べいぶのおべべぇぇ!! おべべがぁぁぁぁ!!!」
まりさの制止の声と同時に、れいむの右目にフォークが突き刺さり、
れいむが濁った絶叫を放つ。
「れいぶぅぅ!? れいぶぅぅぅ!! れいぶの ぎれいな おめめがぁ!!
おにいざぁん! は、はやぐっ! れいぶのおめめ! なおじでぐだざいっ!
おねばいでずぅぅ!!」
グチュリ
「……あぎぃぃぃぃ!?!? おべべぇぇ!! おべべ いだいぃぃ!!!
ばりざの おべべが いだいよぉぉ!!」
れいむの右目ごと眼窩から引き抜かれたフォークが、
そのまま、まりさの左目に突き刺さっていた。
フォークを握る男の手がグルリと捻られる。
「ゆぎいぃぃっっ!!!」
まりさの左目が、フォークと共に90度ほど回転した後、眼窩から抉り出される。
カラン
二匹の前に、二つの眼球を突き刺したままのフォークが放り捨てられる。
悲鳴を上げる事も忘れ、その光景を呆然と見つめる二匹の目の前で、
フォークの刃に男の手が重なる。
そして、 ベチャリ と、湿った音を立てて、その下にある物を潰した。
「「………!………!」」
まりさとれいむの両目から、透明な涙と餡子色の涙が流れ落ちる。
涙で曇った片側だけの視界の中で、男の手が持ち上がる。
二匹は、震えながら、グチャグチャに潰れた
白くて柔らかいゼラチン質のゴミを見つめ続けていた。
■四日目、五日目
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「あ゛っ! ぎ…! ゆぎ…!」
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「ゆびっ…! びぃっ…!」
残っている方の片目から、滝のように涙を流しながら、
二匹が短い悲鳴を上げ続ける。
失ってしまった方の片目からは、餡子色の涙が滴った後が残っているが、
今は、ブクブクに膨れあがった瞼が完全に眼窩を塞ぎ、何も流れ落ちてこない。
いつものお仕置きが、淡々と続く。
■六日目
「ば、ばりざのおぼうじっ!! がえじでっ!! がえじでぇぇっ!!」
「どらないでぇぇっ! でいぶのおりぼんざん、どらないでぇぇっ!!」
いつものハエタタキによるお仕置きの後で、
グッタリとしていた所に伸びてきた男の手によって、
まりさは帽子を取り上げられ、れいむはりぼんを引きちぎられた。
飾りを失ったゆっくりは、ゆっくりできなくなる。
周りのゆっくりから、ゆっくりできないゆっくりとして迫害されるからである。
それは、例え親子の間柄であっても例外では無い。
実体験の無い二匹には、飾りを失う事でどういう結果を招くかは知る由もないが、
遺伝餡に染みついた本能で「ゆっくりできなくなる」事だけは理解している。
そして、今までの男の行動からして、
自分達の飾りがどうなるか想像ができてしまう二匹は、
つい今しがたまでグッタリしていた事も忘れたかのように絶叫し、
飾りを握る男の手に飛びつこうとしている。
そんな二匹を冷たい目で見下ろしながら、男はハサミを取りだし、
ジョキジョキとゆっくり達の飾りを裁断して行く。
「ばっ…ばりざの すでぎなおぼうじぃぃぃ!
ゆっぐぅ…! ゆっぐりぃ! ゆっぐりなおっでねぇぇ!!
ぺーろぺーろ! ぺーろぺーろ!」
「ゆあぁぁぁぁ…! でいぶの がわいい おりぼんざんがぁぁぁー!!
どぼじで!? どぼじで こんなこどするのぉぉ…!?」
千切りになって、はらはらと舞い落ちてくる布きれに
二匹がぺろぺろ、すりすりと意味不明な行動を取っている間にも、
飾りは細かく切り刻まれて行く。
「ゆっぐ…! ゆっぐ…! おぼうじ… ばりざの… おぼうじ……!」
「おりぼんざんがぁ… ゆっぐりでぎないぃ…! ゆっぐりでぎないぃ…!」
赤黒白三色の、布きれの千切りの山の前で、
ゆぐゆぐとしゃくりあげている、まりさとれいむ。
れいむの頭の上に男の手が乗せられ、
その手がれいむの黒髪をわしづかみにしようとしている事など、気づきもせずに。
■七日目
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「びぎゅっ! ゆぎゅぅぅ…!」
ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ! ビシィッ!
「ぴぃっ! ゆぴぃっ…!」
日課になったハエタタキの音が鳴り響く。
昨日、ブチブチと髪の毛を全て引き抜かれた後、
二度と髪が生えてこないよう、
チャッカマンで毛根から真っ黒に焦がされたハゲ頭にも、
容赦なくハエタタキの打撃が降り注ぐ。
だが、今日は、その音はいつもの半分の時間で止んだ。
「ゆ゛……おわ…り……?」
例え半分の時間といえど、当のゆっくり達にとっては、
永遠とも思える長く苦しい時間。
それでも、れいむがわずかな違和感を感じ、疑問の声を上げる。
涙が滲む瞳に、わずかな期待を宿らせながら。
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…
その期待も、何十本もの釘が、容器から床にぶち撒けられた瞬間に、
黒い絶望の色に塗り潰された。
ブスリ 「ゆ゛ぎゅぅぅぅ!!」
ブスリ 「ゆびぃぃぃっ!!」」
長さ六センチの鉄釘が、交互に二匹の饅頭肌に突き立てられてゆく。
「や、やべちぇ…! おにいざん、やべちぇ…!
ブスリ 「ぎっぴぃぃぃ!!」
「じ、じんじゃう! でいむだぢ、じんじゃうよぉぉ…!
ブスリ 「ゆぎゅびぃぃっ!!」
三十分に渡るハエタタキのお仕置きで腫れ上がった饅頭肌を破り、
餡子の中に冷たく鋭利な鉄の先端が突き刺さる。
叩かれるのとは、また異質の痛みに、
このところ、力の入っていなかった二匹の絶叫も再び活気を取り戻す。
頬に、顎に、額に、後頭部に、ハゲ頭に、次々に釘が突き刺さる。
その痛みに身を捩るたびに、既に突き刺さっている釘の本数分だけ、
体中に激痛が走る。
時間が経つ程に増え続ける激痛。
床に転がる鉄釘も、砂時計の砂も、まだまだ無くなる気配はない。
■八日目
「やべでぇぇ! ぼ、ぼう、だえらでないぃ! あがぁぁっ?! ぎょびひぃ!?」
「おべっ!がびっ! おべがいでずぅぅ!
おにいざぁぁん! ゆるじでぇぇ! ぼうゆるじでぇぇ! ぺびぃぃっ!?」
狂ったように叫ぶゆっくりが二匹。
昨日、釘で穴を開けられた箇所は、昨夜の内に男の手で補修されていたが、
その場所にも再び新しい穴が開けられてゆく。
毎日、お仕置きの後は、オレンジジュースと水溶き小麦粉で
体の傷や餡子のダメージは修復されていた。
最低限、翌日のお仕置きで命を失わない程度までには。
だが、心のダメージまで修復できる訳ではない。
二匹の精神は限界に近づきつつあった。
そして、ようやく一時間が経過する。
「ゆ゛…ぎゅ……」
「び……ゆ…びぃ……」
箱の中に戻された二匹が、途切れ途切れの呻き声をあげているのには目もくれず、
男は、お仕置きに使った道具をケースに仕舞い、部屋を出ようとする。
「…おに……ざん……」
まりさの呼びかけに、男がそちらを振り返る。
「も…やめで…ぐだじゃい……ゆっぐじ…やめでぇ……」
「だえられまぜん……れいぶだぢ…もう…だえられまぜん……」
「なんだ、お仕置きはもうイヤか。じゃあ、ちびと交替するか?」
ここ数日、二匹と言葉を交わす事のなかった男が、久しぶりに口を開き、
何の感情も込めず、サラッとその言葉を口にする。
「だっ、だべでず…! あがぢゃんは… あがぢゃんだげはぁ…!」
「…れいぶだぢを…ごろじで… ごろじでぐだざいぃ…」
「も…ごろじで……ぐだざい…… ぼう、だめなんでず…!」
もう、これ以上のお仕置きには耐えられない。
だが、自分達が音を上げてしまえば、今度は赤れいむの番だ。
そんな事は、もっと耐えられない。
だから、いっそ殺してくれと、
自分達の可愛い赤ちゃんを生け贄に差し出してしまう前に、
全てを終わりにして欲しいと、男に懇願する。
だが、男はその懇願を踏みにじる。
「死にたければ、そうしてやってもいいが、
俺が納得するまでお仕置きを受けないのなら、
どのみち、ちびでお仕置きを続けるだけだ。」
「ぞ…ぞんなぁ…ぞんなぁ……」
「おにいざぁん……! おべばい…おべばいでずぅ…!」
涙を流しながら縋るように男に呼びかけるゆっくり達には何も答えず、
男は再び踵を返して部屋を出て行った。
■九日目
いつもは夜だけまりさとれいむの所にやって来る男が、今日は早朝からやって来た。
もしや、昨夜の願いを聞き届けてくれるのかと、
期待と、死への恐怖が入り交じった目で男を見つめる二匹。
だが、二匹の期待はすぐに裏切られる事になる。
「今日のお仕置きは休みにしてやる。一日、ゆっくり安め。」
ゆっくり達の精神状態に気遣っての事か、男がそう告げる。
「「ゆ…」」
二匹は僅かな安堵と大きな落胆の表情を滲ませる。
例え一日お仕置きが無かったとしても、それでどうなる物でもない。
明日からは、またあの耐え難いお仕置きの日々が待っているのだ。
果たして、自分達は、あとどれだけ耐える事ができるのか…?
考えると暗澹たる気持ちになる。
「それと…」
「「ゆ…?」
「今夜、ちびに会わせてやる。ただし…」
「「ゆ…ゆぅぅぅぅぅ!!」」
男の言葉を遮って、二匹がここ数日浮かべた事の無かった笑顔を浮かべながら
歓喜の声を上げる。
「…話は最後まで聞け。
なまじお前らの顔を見せると、ちびが余計に寂しがるからな。
話はさせてやらん。ちびが寝た後で、寝顔だけ見せてやる。」
話を遮られた男が、少し声を荒げて制してから、言葉を続ける。
「ゆ…」「ゆぅ…」
二匹は赤ちゃんとお話ができないと聞いて落胆するが、
それでも、可愛い赤ちゃんの顔を見れるだけでもしあわせーと、
すぐに気を取り直して言った。
「ゆっ! それでもいいです! あかちゃんの おかおが みられるなら…!」
「あいたい! れいむ、あかちゃんに あいたいよぉ! ゆっくりしたいよぉ!」
「ゆぅぅ! まりさぁ! たのしみだね!」
「ゆっ! あかちゃんの かおをみるのは…ゆーっと…ひさしぶりなんだぜ!」
男が去った後、箱の中でそんな会話を交わす二匹。
三つ以上の数を数えられないゆっくりなので、赤れいむと引き離されてから、
何日経つのかはわからないが、もうずっと長い間、会っていない気がする。
久々の再会に、辛いお仕置きの事も忘れ、心が浮き立つ。
「ゆっ! そうだよ! あかちゃんに、れいむの おうたを きかせてあげてね!
れいむの おうたは ゆっくりできるよ!」
「ゆぅ!…ゆっ…だめだよぉ…まりさぁ…
あかちゃんは、ねちゃってるから、れいむのおうた、きいてもらえないよぉ…」
「ゆ…そうだったんだぜ…
ゆゆっ! じゃあ、こもりうたを うたってあげるんだぜ!」
「ゆゆぅ! さすがは れいむのまりさだね!
ゆぅぅぅ…! れいむ、おうた がんばるよ!
よるまで、おうたの れんしゅうするよ!!
ゆんゆ~♪ゆうゆうゆ~ゆんゆ~♪ゆゆ~ん♪……」
「ゆふふ………まりさもいっしょにうたうよ!
ゆゆゆんゆ~♪ゆゆゆ~♪ゆんゆんゆ~♪……」
その日は、二匹のいる部屋から
雑音としか思えない、デタラメな"おうた"が一日中聞こえていた。
そして、その日の夜遅く
男の書斎のドアの前に、ゆっくり達を抱えた男が立っている。
「ゆぅぅ…! おにいさん、ゆっくりしすぎだよぉ!
れいむ、まちきれなかったよ!」
男の腕の中で文句を言うれいむだが、その顔は嬉しそうに綻んでいる。
「いいか、ちびはもう寝てるからな。
絶対に騒いで起こすんじゃないぞ。わかったか?」
「ゆっ!ゆっくりりかいしてるよ!」
まりさが、ゆっくりにしては、やや小さな声で元気よく返事をする。
それを確認してから、男がドアを開け、二匹と一人が室内に入る。
本棚と机と椅子しかない、簡素な部屋。
片づいた机の上に、金魚鉢がちょこんと置かれている。
その中にいる小さな丸い物体、それが、赤れいむだった。
「ゆぅぅ! まりさのあか……ゆもゆも!」
思わず大声を出してしまったまりさの口を、
男が自分の体に押し当てて黙らせる。
男に睨まれ、まりさがしゅんとしょげかえるが、
男はそれ以上の追及をしようとはしなかった。
それを見て、れいむが「ゆふふ…」と、こちらは大人しく笑いを漏らす。
男が部屋の奥まで歩みを進め、机の上に二匹を乗せる。
静かに目を閉じている赤れいむ。
その表情は、何か楽しい夢でも見ているかのように、
ニッコリと微笑みを浮かべている。
いまにも目を開けて
「ゆっくいちてっちぇね!」とでも言いそうだ。
(ゆぅぅぅ…! かわいいよぉぉぉ…!)
(れいむたちのあかちゃん…! とってもゆっくりしてるよぉ…!)
声も出せないほどに感極まり、二匹は感激に震えながら、嬉し涙を流し続ける。
最後に一緒に遊んだ時と変わらぬ、可愛らしいその姿。
いや、育ち盛りの赤ゆ、この数日間の間で、ちょっとだけ大きくなった気もする。
一緒にお喋りしたり、すりすりやぺろぺろをしてあげられないのがもどかしいが、
それでも、自分達の可愛い赤ちゃんの寝顔を見ているだけで、
二匹は十分にゆっくりできていた。
今だけは、お仕置きの辛さもどこかに吹き飛んでしまったようだった。
誰も一言も言葉を発さぬまま、十分程度経過しただろうか。
れいむがふと思い出したように、男の傍までずりずりと這ってきて、
小声で尋ねる。
「ゆっ! おにいさん、れいむのあかちゃんに、こもりうたをうたってあげていい?」
「おねがいします! おにいさん! ちょっとで いいですから!」
まりさもれいむを追ってきて、一緒になって顔を机に突っ伏して
ゆっくり土下座体勢を取る。
「…ま、いいだろう。ちびを起こさないよう、大きな声は出すな。
それと、五分だけだぞ。」
「「ありがとうございます! ありがとうございます!」」
へこへこと何度もお辞儀をしてから、再び赤れいむの眠る金魚鉢まで這って行く。
「ゆ~♪ゆんゆーゆ、ゆんゆーゆーゆ~♪……」
「ゆぅ……ゆんゆ~♪ゆゆゆんゆ~♪……」
れいむが子守歌を歌い始め、
少し遅れて、まりさも遠慮がちに、ゆっくり基準ではれいむに劣る歌声を披露する。
金魚鉢の中の赤れいむが、二匹の静かな歌声を微笑みながら聞いていた。
男は、そんな家族の様子を黙って見下ろしていた。
「「ゆぅ……」」
寂しそうに溜息をつく、まりさとれいむ。
二匹は赤れいむのいた書斎から元の部屋に戻され、
再び箱の中に閉じこめられたところだった
「どうする?」
「「ゆ?」」
おもむろに男が二匹に問いかけ、二匹は何の事かと疑問符を浮かべる。
「お前達が昨日言った事…
どうしても死にたいのなら、ここで終わらせてやってもいい。
それで、ちびへのお仕置きもナシにしてやろう。ただし…」
「「………」」
二匹は黙って男の言葉を聞いている。
「お前達が、自分達がいなくなっても、
ちびがゆっくりできる、と本気で思ってるなら、
お前達がもう、ちびと会えなくなってもいいと本気で思ってるなら、な。」
「「ゆっ…」」
男が投げかけた問いに、二匹は一声呻いて、黙り込む。
そして、数分後、男は再び問いかける。
「どうする?」
「ゆっ…! まりさ、おにいさんに おしおきされるんだぜ!」
「れいむもだよ! ちゃんとゆるしてもらえるまで、おしおきされて、
それから、あかちゃんと、まりさと、みんなでゆっくりするよ!」
赤ちゃんのあの笑顔を曇らせるような事は、絶対にしたくない。
愛する赤れいむの穏やかな寝顔を目にした事で、
親ゆっくりとしての使命感を取り戻した二匹が、力強く答える。
「そうか。ならいい。」
男が静かに答え、部屋を出て行こうとし、
その途中で思い出したように口にした。
「ああ、今日の飯、まだだったな。今持ってくる。」
「「むーしゃ、むーしゃ……しあわせぇ…」」
男が置いていったゆっくりフードをむしゃむしゃしながら、
控え目ではあるが、久しぶりの、しあわせを口にする。
「ゆぅ…きょうのごはんさん…おいしいね…」
「ゆん…」
いつもと変わらぬ筈のゆっくりフードが、
今日は今までに感じた事が無いほどに美味しく感じられた。
それほどまでに、ただ赤れいむの姿を見られた、それだけの事が
今の二匹にとっては、とてつもなく幸福な事に思えたのだろうか。
「まりさ…」
「ゆ…?」
「おにいさんのおしおき…いたいけど…がんばろうね…」
「ゆっ…がんばるんだぜ…!」
■十日目
ジュウゥゥゥ… ジュッ… ジュジュッ…
「ゆびゃあぁぁぁっ!! あぢゅい! あぢゅいい!!
ばりざのあんよがぁっ…!! あぢゅいよぉぉ!
おにいざん、やべでぇぇ! やべ、あっぢゅいぃ! ゆびぃぃ!
ゆっぐ…! あぢゅいよぉ…あぢゅいよぉ…! やべちぇぇ…!」
饅頭皮が焼け、涙としーしーが蒸発する音をBGMに、
頭を男に押さえつけられたまりさが、ホットプレートの上で泣き叫ぶ。
部屋には、焦げたゆっくりの皮の臭いが立ちこめている。
「ゆ゛っ…ゆぎぃっ…ぎびっ…!
あんよさん…れいむの きれいな あんよさん…
どおじで う゛ごいでぐれないのぉぉ…! う゛ごいでよぉぉ…!」
その横では、底部をこんがり真っ黒に焼かれたれいむが、
ダラダラと涙を流し、痛みに顔を歪めながら、ずりずりと這おうとしている。
しかし、僅かに底部が動くようではあるが、ナメクジとどっこい、
いや、それ以下の速度でしか這う事ができない。
いつものハエタタキと釘打ちのお仕置きの後、男はこう宣言した。
「今日はお前達の足を潰す。」
昨日、覚悟は決めたつもりだったが、
その圧倒的な暴力のただ中にあっては、ゆっくりの精神力など無力極まりない。
足を焼く熱に、ひたすら泣き叫び、許しを乞う事しかできなかった。
「ゆぎびぃぃっ?!」
足を焼き終えられたまりさが、れいむの隣に置かれ、
焼けこげた底部が床に触れるときの痛みに、右目が白目を剥く。
もう、これで、赤ちゃんとゆっくり遊んであげる事はできない。
お部屋の中でおいかけっこをする事もできないし、
まりさのお腹でトランポリンごっこをしてあげる事もできないだろう。
その絶望感に、二匹は、再び永遠にゆっくりする誘惑に屈しそうになる。
「ゆ~…♪ゆんゆーゆ…ゆんゆー…ゆーゆ~…♪……」
「ゆんゆ…♪ゆゆゆんゆ~…♪……」
しかし、今夜も赤れいむの元へ連れていかれ、
寝顔を眺めながら子守歌を歌っていると、その絶望が薄れてくる。
自分達のあんよは動かなくても、赤ちゃんは元気に跳ねる事ができる。
すりすりだって、ぺろぺろだってしてあげられる。
一緒におうたを歌うことだってできる。
だから、まだ頑張れる。
「れいむ………ゆっくり…がんばるよ…」
「ゆ…わかってるよ…」
こうして、二匹は、また希望を繋ぐ。
■十一日目~十四日目
二匹へのお仕置きは連日続く。
日を追うごとに、その内容も増えてゆく。
ボスッ!! ボスッ!!
「ゆぶっ!! ゆぼおっ!!」
男の拳が腹…下あごに深々と食い込み、思わずれいむが餡子を吐き出す。
男がその餡子を集めてれいむの口の中に戻し、少量のオレンジジュースを飲ませる。
それから、仰向けにされて目を瞑ってガタガタと震えているまりさに目を向ける。
ボスッ!! ボスッ!!
「ゆっぶ!! ゆぶぅぅっ!!」
吐き出した餡子をまりさの口に戻し、また、れいむ、まりさ、れいむ、まりさ…
交互に重たい拳をめり込まされる。
釘刺しはこの後からだ。
そうしないと、釘で開いた穴から餡子が漏れまくって収拾がつかなくなるから。
そして、三日に一度の、特別なお仕置き。
ゆっくり達が奪った命の替わりに、何かを奪われるお仕置き。
十三日目がその日。
「ゆきょぉぉぉぉぉぉっ!! ゆきょぉぉぉぉぉぉっ!!!」
まりさが奇声をあげる。
無理矢理、発情状態にさせられ、ぺにぺにがピコンと立った所で、
男は紙ヤスリを手にした。
シュッシュッと、ソレを擦られる度に、まりさが甲高い悲鳴を上げる。
「ゆきょぉぉぉぉぉぉっ!! びゅびゅびゅ、びゅぎっ、びゅっぎりーーー!!!」
悲鳴の内容が変わると共に、紙やすりがベトつく粘液にまみれる。
何度かその作業が繰り返され、まりさが口から黒い泡をブクブクと吹く頃には、
その部分は真っ平らに変わっていた。
「やべ…で…れいむ…れいむ…あかちゃんを…あかちゃんの…いもうと…うむの……」
れいむが涙を垂れ流しながら、ブルブルと首を横に振っている。
その視線は、男が握ったハンダゴテに吸い寄せられている。
逃げたくとも、足を焼かれたれいむが男の手から逃れる術はない。
ただ、震える声で男に哀願するばかり。
男の手がれいむの下あごにあるまむまむを探りあて、指で少し押し広げる。
ジュウゥゥゥゥ…
「あ゛っ…あ゛っ…あ゛っ…あ゛っ……!」
何かが焼ける音と共に、れいむの口がパクパクと開閉する。
「あっぎゅぅぅぅぅぅぅっ!!!!
あ゛っづいぃぃぃー!! れーむのまむまむさんがぁぁー!! あびぃっ!?
れーむのまむまむざんが、あっぎぃぃぃぃっー!!
あがぢゃんがぁぁ!! あがぢゃんがうべなぐなっびゃうよげぇぇっ!!
ゆじゃぁぁ!!! ゆんや゛ぁぁぁ…!!!」
「ゆっ……!ゆっぐ……!」
「ゆぐっ…!……ゆぐぅっ…!」
二度と使い物にならぬよう、ぺにぺにもまむまむ潰された二匹が嗚咽を漏らす。
もう赤ちゃんに可愛い妹を産んであげる事はできない。
どれだけ赤ちゃんが望んでも、もう自分達がそれを叶えてあげる事はできない。
「あか…ちゃん…れいむの…かわいい…あかちゃん……」
「ゆっくり…してるんだぜぇ…ゆっくり…ゆっくり…」
今日もいつもと変わらない穏やかな笑顔を浮かべる赤れいむの寝顔に
二匹の心は修復される。
もう産んであげられなくなった赤ちゃん達の分まで、この赤ちゃんを可愛がろう。
いっぱいいっぱい愛情を込めて大事に育てよう。
その決意を新たにする。
■十五日目
「ゆびっ! あびゅぅいい!! あびゅっ! あびゅい! あびゅい!!」
「やべでぇぇ! もう、あちゅあちゅさんは やべでぇぇ!
ゆっぐちでぎないぃ! ゆっぐちさせでぇ!」
男は、吸った事のない煙草を両手に持ち、その火をまりさとれいむに押しつけている。
数百度の熱で焼かれる饅頭肌に、また一つ、丸い焦げ跡が増える。
時には餡子内まで突き刺さっている鉄釘に煙草を押し当てられ、
釘を伝わる熱で餡子の内までも焼かれる。
昨日から始められたそのお仕置きの痛々しい跡は、
修復されずに、そのまま残ったままだった。
そして今日も、肌色の饅頭肌のあちこちに、真新しい焼け焦げが増え続ける。
(れいむの…あかちゃん…ゆっくりしていってね…!)
(あかちゃんが…ゆっくりしてくれてれば…
おとうさんたちも…ゆっくりがんばれるよ…!)
いつもと変わらない、赤れいむの微笑むような寝顔。
いつも通り、男から赤れいむの寝顔を見せられながら、
いたる所に水玉模様の焼け焦げをつけられた親ゆっくり達が
声には出さずに心の中でそう呟く。
その後、いつも通り、箱の中に押し込まれ、二匹だけの時間が訪れる。
「ゆぅ…まりさ…れいむたちのあかちゃん…とっても、ゆっくりしてたね…」
「ゆん…あかちゃんが、ゆっくりできるよう…まりさたちもがんばるんだぜ…」
「ゆっ…そうだね…がんばろうね…」
「……れいむ…?」
「ゆっ…?なあに…まりさ…」
「…ゆっくり、きいてほしいんだぜ…」
「ゆ…?」
「……でめきちさんは……」
最終更新:2009年10月27日 13:28