ふたば系ゆっくりいじめ 422 黒色の魔法

黒色の魔法 32KB


『黒色の魔法』
タイポあき



※この話の属性
 現代、虐待、実験、れいぱー、ユニークキャラクター登場(固有名詞持ち)

               ***               
カップの中にお湯を注ぐ。
黒色の中身がさっととけ、広がる芳香が鼻をくすぐった。

それとともに、ケージの中に入っているゆっくりの一匹が騒ぎ出した。
れいむである。
がたがたと痙攣しているかのように震えながら、全身からは冷や汗のようなものを噴出している。

至福の時間を邪魔された不愉快を隠しもせずにケージを覗き込むと、恐怖が頂点に達したのか、しーしーを撒き散らしながら気絶してしまった。
気絶しながらも、「やめてね、もうやだよ。良い子になるから許して。」などと呟く芸当をやってのけるのをみると、つくづくこいつらは奇妙なナマモノだと思い直させられる。

まあ、静かにさせる手間が省けたので良いとしよう。
気を取り直してカップの中身を口に含んだ。
口の中に広がるのは大人の苦味とほのかな酸味――お汁粉ではない、コーヒーである。
豆から入れたものにはとても及ばないが、それでもひと仕事終えて疲れた心と身体を癒してくれることには違いない。

今日は大変だった。
予約の診療に続いて、駆け込みで緊急の患ゆが運び込まれたのである。

               ***               
運び込まれたのは、全身傷だらけのぱちゅりーだった。
事故ではなく、明らかに人間の手によるものだった。
どうして生きているのか、不思議なくらいの傷である。
事実、暴れないように剣山に突き刺したとたん、中身を吐き出して永遠にゆっくりしてしまったあたり、僕の観察眼は正しかったようだ。

本来ならその時点で仕事は終了なのだが、運び込んできたお兄さんの様子が変だった。
その表情が「楽に死にやがって糞饅頭が!」ではなく、かといって「やっぱり駄目だったのか、可愛そうに。まあ、所詮饅頭だから別にいいけど」でもなかったのだ。
どちらかと言うと「これからどうしよう……」といった感じに、途方にくれていた。
その態度がどうにも気になったので、事情を聞いてみることにした。

お兄さんによるとこのぱちゅりー、旅行に行っている友人の飼いゆだそうだ。
ただ躾がぜんぜんなっていなかったらしい。
ぱちゅりーとはいえ飼いゆ。
栄養状態は良く、体力も有り余っているので、部屋を荒らすはゆーゆーわめくはと暴虐の限りをつくした。
終いには、お兄さんの食事を食い荒らしたのだとか。

3日ぶりとなる、カップラーメン以外の食事を食い荒らされたお兄さんは大激怒。
虐待お兄さんでもないのに、思わず「ヒャッハァ! 制裁ダァ!!」との奇声を上げてしまった。
そこから後は、お馴染の制裁コースへ突入したらしい。

一通りの制裁が終わって「すっきりー!」したお兄さんだが、止めをさす直前に友人のペットであることを思い出した。
足元に転がる物体は、既に「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ」と痙攣を始めている。
このままでは不味い。
こんなナマモノの一つや二つ、死んだところでなんとも思わないが、ゆっくりごときが原因で友情にヒビが入るのは避けたかった。

しかしどこまでも冷静なお兄さんは、焦りと怒りは判断を誤ると分かっていた。
そこでとりあえず、焦燥感と怒りの残り火とついでに空腹感を、全体重を掛けたスタンプに乗せてぱちゅりーに叩き込んで鎮めた。
そうして心の平穏を取り戻すと、コレは専門家でないと無理だと、目の前に転がるクリーム塗れのぼろ雑巾を抱えてウチに駆け込んだらしい。

そこまで話を聞いて、なるほどと納得はしたものの、どうしたものかと今度はこっちが頭を抱える羽目になった。
なんとかしてあげたいものの、流石にコレの状態では手の施しようがないからだ。

そんなとき、ケージの一つから物音がした。
「げほっ、げほっ。むきゅー、にがにがさんはゆっくりできないわ。」
僕とケージの中のぱちゅりーの目が合った。

               ***               
そのケージにいたのは、れいむとぱちゅりー。
只野という、友人の一人から預かった飼いゆたちである。
いま声を上げたのはぱちゅりーで、お口に突っ込んだチューブを吐き出して喚いている。
れいむの方も何か言っているが、チューブを固定しているガムテープが剥がせないようで、声にならない声でゆんゆん鳴いている。

チューブの中には、濃い目に淹れたコーヒーが流れるようになっていて、二匹の意思を無視して無理矢理に飲ませることができるようになっているのだ。
だかられいむの悲鳴は「ゆ゛るじで、ゆ゛るじで。にがにがさんはもうやべでー。」とかだろう。
聞かなくても表情で分かる。

なんでこんなことをしてるかと言うと、肥えすぎた舌の治療のためである。
只野は、基本的にはゆっくりフードしか与えない模範的な飼い主だった。
せいぜいが、たまに冷蔵庫の奥から発掘される、忘れさられた前時代の遺物を与える程度だった。
そんな調子でれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりーの基本4種を飼い、正しい飼い主・飼いゆ関係を築いていた。

しかしそんな友人も決定的なミスを犯す。
家に来た一周年の記念にと、飼いゆたちに砂糖菓子を与えてしまったのだ。

まあ本当のところは、バイト先で余ったものを勿体無いからと押し付けられただけで、一口かじったら不味くて吐き気がしたから飼いゆに与えただけなんだけど。
ケーキの飾りの砂糖菓子って、見かけばかりで味は最悪だからね。
ついでに言えば、もちろん記念日とかも覚えてないから、適当に言っただけだ。

ともかく、そんな人間にとっては生ゴミ同然のものでも、飼いゆたちにとっては違った。
至高のあまあまだったのである。
こんなことをすればどうなるかは、玄翁を持ったらゆっくりに振り下ろすくらい明らかだというのに。

次の日、彼がいつものようにゆ虐印のゆっくりフード(かさかさタイプ)を与えたときに事件は起こる。
饅頭どもは餌皿をひっくり返したあげく、暴言を吐いたのだ。
「むきゅー、いくらなんでも、こんなものは食べられないわ! 賢者にふさわしいあまあまを持ってきて欲しいものだわ。」
「こんなもの食べられるわけないでしょ! ばかなの、しぬの! こんなものより、さっさとあまあま持ってきてね。」
「このくそどれい! ふざけるなだぜ!! 死にたくなければゆっくりしないで、ゆっくりした砂糖菓子さんを持ってこい、なのだぜ!!!」
ちなみにありすの声がないのは、既に砂糖菓子の口直しという栄誉ある役目を与えられていたためである。

もちろんゆっくりたちの言うことはただのワガママである。
このゆ虐印のゆっくりフードは、ゆっくりがどんなエサ――例えばカビの生えたパンや、腐りきったタマゴ――でも「しあわせー!」とできるようになるという、とってもゆっくりしたエサである。

しかも、このかさかさタイプは、ゆっくりの体内に入るとまわりの餡子の水分を吸収し硬化させる。
これによりちょっとやそっとの衝撃では餡子を吐かなくなり、また多少の穴が開いたくらいでは餡子が流失してゆっくりしてしまうこともなくなる。

加えて一番有用なのが、うんうんやしーしーなどといった飼い主さんの悩みが一切解決してしまうという点だろう。
餡子の水分が少なくなることにより、出したくても出せなくなるのだ。
この効果により、発売以来ベストセラーとなっている。

ちなみにこの日彼が与えたものは、いつも与えている一般発売されているものではなく、味と水分吸収効果が一段と強化された、かさかさ度ルナティックのものである。
僕と彼の共通の友人である夕霧からの横流し品――じゃなくて発売前の試供品である。

そんなバックグラウンドは置いておくとして、彼はなんとも慈悲深いことに、こんな態度をとったゆっくりたちに対しても話し合いで解決することにした。
もっとも、彼は『ゆっくりの飼い方――ゆっくりを餡の一粒まで使い倒そう編』(ゆ虐の友社)の通りに飼っている、ゆっくりに対して愛護派でも虐待派でもない普通の人だから、本に従っただけなのだが。

その結果、まりさは自身のすべてをもって、床と天井にキレイな餡子アートを描いて彼をゆっくりさせてくれたので、そのままゆっくりすることを許された。
そして、残りの二匹が味覚矯正として僕のクリニックに来ることになったわけだ。

               ***               
僕とケージの中のぱちゅりーの目が合った。
生意気であるものの、生きのいいぱちゅりーと。

一方、作業台の上にあるのは中身を吐いて事切れている、ぱちゅりーだったもの。
急患として運び込まれたぱちゅりーである。

思わず二つのぱちゅりーを見比べてしまう。
友人のはちゅりーがひとまわり大きいくらいだが、見比べらければ気が付かないだろう。
うん、いけそうだ。

「むきゅ! そんなに見つめたらてれるわ。とうとうぱちぇのみりょくに気がついたのね。
ならさっさと、ここから出しなさい! あとあまあま――とは言わないけど、にがにがじゃないものを持ってきてね。
にがにがさんは、もうたくさんよ!!」
見つめられたちゅりーが何か勘違いした声を上げている。

それでもあまあまを持って来いと言わなかったのは、それを言ったときの友人のお仕置きがよっぽど堪えたらしい。
彼にゆ虐の気はないから、ゆっくり飼育のHow to本にある対処方がよっぽど優れていたんだろう。
恐るべし、ゆ虐の友社。

「いやいや、そんなに遠慮しなくてもいいんだよ。最高のあまあまをたっぷり食べさせてあげるよ。お腹いっぱいに――いや、頭いっぱいって言うべきかな?」
最後の半分は、疑問系になってしまったが、ぱちぇはそんなこと気がつかない。
「むきゅきゅ! とうとうぱちぇの有能さが、やばんじんにも理解できたのね!」
とか言って満足そうだ。

僕は紫まんじゅうの発する騒音を無視してケージから取り出すと、作業台の上の剣山に突き刺した。
気持ち強めに。
具体的には、当社比1024%くらいで。

当然「むぎゅ!!」という悲鳴に続き、盛大に中身をエレエレしだす。
いわゆる閉店時の「コレで最後!在庫処分一斉大放出!!」といった勢いである。
中身の半分以上は吐いてしまったんじゃないだろうか。

エレエレが収まるのを確認すると、邪魔となるぱちゅりーの帽子をゴミ箱に捨てた。
「なにしてるのよ……。さっさかえしなさい……。それとあまあまは……」
こんなに吐いてなお文句を言えるとは流石飼いゆ、大したものだ。
普段食べているエサのおかげで、吐き出す中身の量が少なくてすんだのもあるのだろうが。

「いやいや、こうしないとあまあまは食べられないんだよ。ゆっくり理解してね。」
「むきゅー……、わかったわ……。」
あまあまの前では、命より大切なお帽子すら無価値らしい。

「でもさっさと……」
さらに何か言おうとするが、いちいち付き合う気はさらさらないので、さっさとガムテープで口を封じてしまう。
口の中に限界までエサを詰め込んでも問題なく喋れるのに、何故かこうすると喋れなくなるからだ。
そういうあたり、本当にいい加減なナマモノだ。
これはどっちかって言うと、騒音を封じるというより、これ以上中身を吐かないようにする意味のが強いんだけどね。

「じゃあ、たっぷり食べてね。」
目の前にある紫まんじゅうに声を掛けるとともに、ナイフで目から上の部分を切り落とした。
なにやら声にならない悲鳴を上げているが、当然無視。
そして吐いた分中身が減っている部分に、隣で事切れている患ゆの中身を移していく。

生きているぱちゅりーに、死んだぱちゅりーの中身を入れ替えてしまおうというわけだ。
死んでしまった患ゆは、身体が弱ったために中身の圧力を支えきれずに吐き出してしまったわけだが、すべての中身が駄目になったわけではないので、こうすれば問題ない。
とはいえ完全に中身を入れ替えては成功率が低いので、元の個体と混ぜる必要があるのだが。

こうして詰め替え作業をしていったのだが、どうにも中身同士のなじみが悪い。
なんだか色も違っているし。
指を突っ込んでなめて見ると、死んだ患ゆの中身は正真正銘の生クリームだが、友人の飼いゆものはバタークリームだった。
日常のエサのせいで、水分がとんでバター化したらしい。

こんな前例はなかったので、どうすれば良いのかはよく分からなかったが、とりあえずかき混ぜてみることにした。
かき混ぜるごとに、ぱちゅりーの身体は壊れかけのオモチャのように痙攣し、二対のおめめはそれぞれが別の意思をもっているかのように出鱈目に動く。
ガムテープさえなければ、そのお口からはスプーンの動きに合わせて「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ」と素晴らしい旋律を奏でてくれたことだろう。
中身を吐かせてはならない現実が恨まれる。

そうして中身を均一に混ぜ終わると、このあとは通常通りにオレンジジュースと水で溶いた小麦粉で切断面の修復を行なった。
5分もすれば傷が完全に治るあたり、たいしたものである。

さて、最終工程だ。
口に貼り付けたガムテープを取り払う。
そのとたんに出てくるのは、文句の羅列。
「むきゅー、なんてことするの! はちぇは飼いゆなのよ! いくらお兄さんのお友達さんでもゆるされないわよ!!
お姉さんに言いつけて、ゆっくりできなくしてやるんだから!!」

うん、いい感じに混ざってる。
お兄さんってのが僕の友人で、お姉さんってのがボロ雑巾の飼い主のことだろう。
あとはそこを指摘してあげるだけでいい。
「ところではちゅりー、ぱちゅりーの飼い主さんはお姉さんだったよね? お兄さんって誰?」
後は見ているだけで十分だ。

「むきゅきゅ? 何を言ってるの、ぱちぇの飼い主さんはお兄さ――」
「違うわ、お姉さんよ!」
「お兄さんよ!!」
「なんでこんなこともわからないの。けんじゃが聞いてあきれるわ。」
「そもそもあなたは誰なの! なんでぱちぇの中にいるの?」
「ぱちぇはぱちゅりーよ。あなたこそだれ?」
「なに言ってるの。わたしがぱちゅりーよ!」
「わかったわ、ぱちゅりー。でもぱちゅりーはぱちゅりーのものよ。さっさと出てってちょうだい、ぱちゅりー。」
「ゆがががが、なにいってるの! ぱちゅりーはぱちゅりーのものに決まってるでしょう! このゲスぱちゅりー!!」
「そうよ、ぱちゅりーはぱちゅりーよ!」
「ゆぐぐ、もういいわ。ひっこめぱちゅりー!! ぱちゅりーはぱちゅりーのものよ、ぱちゅりーにはわたさ――。」
『ゆががががっ!』

最後に大きな叫びを上げると、大きく痙攣し静かになる。
再び十分にオレンジジュースをかけ、ボロ雑巾のお飾りを頭に乗せて落ち着かせると、同じ問いをする。
「ぱちゅりー、君の飼い主さんは誰だい?」
「むきゅ、おねにいさん――じゃなくてお姉さんよ!」

まだちょっと混ざってるが、まあ良いだろう。
身体の持ち主の意識は徐々に消えてゆくはずだ。
中身の比率で言えば、ボロ雑巾の方を多くしたんだから当たり前といえば当たり前だが。
わがままで舌の肥えたぱちゅりーは、ゆっくり消えていってね!

ちなみに治療の間中、ボロ雑巾をつれてきたお兄さんは腹を抱えて笑っていた。
これを見て笑うとは、なかなか素質があるな。
何の素質とは言わないけど。
はちぇを連れて帰るときに、心なしかぱちぇにまわした腕の力が強いのも気もするし……。
まあ、そこから先は彼らの領分だ、いいとしよう。

               ***               
そんな回想をしながら安上がりの魔法に身を委ねていたが、やはりコーヒーには甘いものが欲しくなる。
糖分は疲れにも効くしね。
そう思い冷蔵庫を覗くが、残念ながら余分なストックは無かった。
うーむ、残念。

いや待てよ。
甘いものといえば、処分を頼まれていたありすがいたはずだ。
あれをうんと甘くしてから、食べるとしよう。
――って、あれはまりさの実験に使ってしまったんだったけ。
マムシドリンク入りのカスタードシュークリームなんて食べたくないしなあ。

何はともあれ、まりさの結果は確認しなければならない。
味覚矯正中のれいむの口いっぱいにコーヒーの粉を詰めると、口にガムテープを張り直してまりさの部屋へと向かった。

               ***               
「えーと、これはいったい……。」
思わず声に出てしまった。
目の前に広がる光景が、全く想像していないものだったからだ。

部屋中に広がる白くべたつくなにか。
ありすの中身だったものだろう。
ところどころ、ありすの皮らしきものも壁にへばりついているから、まず間違いない。
しかしこれはどうでもいい。

問題はまりさのほうだ。
こんな惨状のなか「ゆうゆう」と眠りこけているのだ。
しかも額には一本の茎が生えていて、その先には赤ゆまで実っている。

それだけ見れば、去勢が失敗したかのようだが、それならまりさは大量の茎を生やして黒ずんでいるはずだ。
このことはこの部屋に並べてある、ニスと防腐剤でコーティングされた失敗作たちが物語っている。

かといって成功したなら、茎など生えているはずはない。
こんなみょんな結果などありえないのだ。

とりあえず、わからないことは本人に聞くとしよう。
まりさにデコピンをプレゼントした。
「ぴゃあ、いたい!」
茎があるのでずいぶん手加減したものだったが、それでも全身感覚器官のゆっくりには効くらしい。
幸せな眠りから飛び起きて、痛みに悶えている。

だがゆっくりのペースに合わせる気は無い。
もう一発デコピンを追加して黙らせると、知りたいことを聞く。
「まりさ、額のそれは何だい?」

まりさは何のことだろうとばかりに頭の上に目を向けると、自身満々に答えた。
「ゆっ、まりさの赤ちゃんだよ。赤ちゃんはゆっくりできるよ!」

――ビシッ!
「ゆぎゃあっ!」
思わず強い一撃が出てしまったのは、不可抗力だろう。

結局その後、追加のデコピン数十発と昼間のバタークリームの残りと交換で、知りたい情報と精神的疲労とおまけに指の痛みを手に入れることができた。
バタークリームをあげたのは、怖がりすぎて話にならなくなってしまったからだ。
そのおかげで今では「お兄さんは、やっぱりゆっくりできる人だね!」と上機嫌で腫れあがった笑顔を見せている。

しかし知りえた情報が、努力に見合うかというとそうでもなかった。
まりさのまとまりの無い話を要約するとこうだった。

最初はまりさを組み伏せて、ぺにぺにを打ち付けていたありすだが、一向にまりさの額に「とかいはなあい」が実らないことに気が付いたらしい。
そのうちぺにぺにだけでなく、自分の身体ごと打ち付けるありす。
それでも一向に茎の生えないまりさ。
ムキになってさらに動きを激しくしたありすが、最後に顔を真っ赤にしながら身体をこすりつけたと思うと、いきなり爆ぜた。
あまりのことに気絶してしまったまりさが気が付くと、額には赤ちゃんがいた。

――ええと、いったいどういう事だ?
余計に、わけが分からなくなったんだけど……。

よく見ると、まりさの茎に付いている赤ゆの様子が変だな。
先端の方の赤はすやすやと眠りこけてゆっくりしているのだが、根元の方にいる赤ゆはときどき「ゆぎぎっ」と奇声を上げて苦しそうにしている。

まりさには、この声が聞こえてないのだろうか?
暢気に「ゆーゆー」と、赤ゆのための「素敵なおうた」を歌っている。
自分に都合の悪いことは見ないあたりは、流石の餡子脳。
もっとも単に帽子で姿が見えず、声がお歌で聞こえないだけかもしれないが。

観察しているうちに、先端に実っている赤ゆが震えだす。
生まれる前兆だ。
ケージの底にはやわらかい布が敷き詰めてあるから、そのままでも問題ないのだろう。
まあ、ありすの中身がぶちまけられていることを除けばだが。

「ゆっくちしていっちぇね!」
「ゆっくりしていってね!」
生まれ落ちる赤ゆと、それに答えるまりさ。
先端の方に実っていた赤ゆは、問題なさそうだ。

その調子で先端から順に、次々と生まれていく赤ゆたち。
しかし根元に近づくに従い、様子が変わってくる。
「ゆっくち……」
「ゆ、どうしたの! ゆっくりしていってね!」
「ゆう……」
だんだんと挨拶の元気もなくなってきた。

「もっど、ゆ゛ぐぢじだがっだ……」
「どぼじでー! まりさの赤ちゃんゆくりしてよー! ゆあああああっ!」
最後の一匹にいたっては、生まれると同時に永遠にゆっくりしてしまった。
肌の色も心なしかくすんでいる。

なんだがずっと眺めていても面白いのだが、それでは何も分からない。
実際に赤ゆを調べるとしますか。

「どうしたんだい、まりさ! 赤ちゃんの様子が変じゃないか。ちょっと診てあげよう。」
「ゆ、お兄さん! まりさのとってもらぶりーな赤ちゃんを助けてね! お願いだよ!!」
さっきバタークリームをあげたお陰か、僕のことを信用しきっているまりさ。
これならやり易い。

僕は最初の方に生まれたまりさとありすを1匹ずつ持ち上げると、手のひらの上でしっかり観察する。
「ゆゆー、お空を飛んでいるちゃい!」
「とってもとかいはなフライトだわ!」
ご機嫌な2匹。

「ゆ、その子たちじゃないよ?」
首をかしげる親まりさ。
それでも「見た目は普通でも、中身に異常があるかもしれないから」と言えばすんなり静かになるあたり素直なものだ。

「ころころしゃんは、とってもたのしいのじぇー!」
「いくらありすがぐらまらすだからって、あまりつつきまわさないでね!」
転がしたりつついたりして見たが、反応や見た目に関しては、異常がなさそうだ。
じゃあ中身はどうだろう。
赤まりさを口の中に放りこむ。
舌で転がすと、遊んでもらっていると思っているのか「ゆふふ、くしゅぐっちゃい」と上機嫌だ。
口にいれると不安な表情を見せた親まりさも、赤まりさの楽しそうな声を聞いて安心してゆっくりしはじめる。

親子ともども、口に入れているのにその安心っぷりはどうなんだろう?
結局、赤まりさが歯ですりつぶされて「ゆぴゃっ!!」と、間抜けな断末魔を発するまでそれは変わらなかった。赤ゆ独特のこの瑞々しい餡子、疲れた体にはたまらない。

異変を察した親まりさだが、その行動を手で制すると、赤ありすのほうも同様に口に放りこんで咀嚼する。
「ゆぐりゅ!」
こちらはとろけるようなカスタード。
うん、これはこれでなかなか。

「よかったね、まりさ。2匹とも健康で美味しかったよ。」
「だべちゃったら、死んじゃうでしょ! どぼしでぞんなごどずるのー!!」
「いや、だって疲れると甘いものが欲しくなるから。」

そういってまた赤ゆをまた一つ。
「ゆああ、まりしゃはおいしきゅ――ゆぺっ!」
「ゆあああああぁぁぁっ! お兄さんなにしてるのおおおおおおっ!」
「ぷちゅり」という音に反応して狂乱する親まりさだが、ゆっくりなど押さえるだけなら片手で十分だ。
そして人間には二本の腕があるのだよ、まりさ君。

それにしても、赤ゆとはなかなか後引きだな。
本当はじっくり調べるために何匹か残すつもりだったのだが、気が付いたら特に元気のない赤まりさ一匹を除いて平らげてしまった。
――うん、半端に食べ物を残すことのは良くないな。
そう思って最後の一匹もパクリ。
もはや親まりさには抵抗する気も起きないらしい。

もはや惰性で食べている感じで咀嚼する僕。
しかし中身が口に広がったとたん「ぶべらっ!!」っと吐き出してしまった。
まりさに向かって盛大に噴出される、赤ゆの成れの果て。
既に半ば諦めて無気力化していたまりさだが、自分のお帽子に噴きつけられた物体Xが重力に従い、自分の目の前にたれてくるとまた元気を取り戻す。
「ゆああああああああっ! まりさのぷりちーな赤ちゃんたちがあああああああっ!」

だがまりさにかまっている暇はない。
何だコレ!?
まんじゅうの癖にみょんな苦味があるぞ。
なんでこんな得体の知れないものが生まれるんだ、まったく。

そこまで考えて、床に転がる空瓶に気が付いた。
ラベルには手書きで「マムシドリング特製濃縮版」の文字。
ああそうか、今回の実験に使ったのって、面白半分にマムシドリンクをベースにして複数の栄養ドリンクを混ぜて煮詰めた特製版――っていうかネタ用品だったのか。
本当は悪友たちにこっそり盛ろうと思ってたのに、ありすに使ってしまうとは勿体無いことをした。
診察の予約時間が迫ってたから、急いでいて間違えてしまったらしい。
まあ、一度ジョロキアとハバネロのザ・ソース煮込みを食べさせてから警戒心が強くなってるから、その機会があるかは怪しいところではあったけど。

なるほど、だからありすが爆ぜたのか。
普通のマムシドリンクなら中身を出し尽くす程度だが、これは強力過ぎて皮が内圧に耐え切れなかったと。
まりさを去勢していたのに赤ゆが生まれた原因はよく分からないが、根元の方の赤ゆに異常があったのはマムシドリンクの成分のせいだろう。
先端の方の赤ゆが正常だったのは、投与されたのが茎を生やすまりさではなく、種となるありすだから赤ゆ影響が少なかったのと、根元の二匹がフィルターの役目をしたからなんだろう。

なるほど、謎が解けてすっきりー!
まりさの方はそうでもなさそうだけど。
あと口の中も。
後味最悪です。

とりあえず、口直しにもう一杯コーヒーでも飲むとしよう。

               ***               
「れいむが、死んでいる……これは、面倒なことになった……。」
ゆっくりでもあるまいに、思わず声に出てしまった。
コーヒーで口直しがてら、味覚矯正中のれいむの様子を見にきたのだが、そのれいむが黒い涙を流しならが苦悶の表情を張り付かせて永遠にゆっくりしていたのだ。

ゆっくりが苦いものや刺激物を食べたときに、中身を吐き出しすぎて永遠ゆっくりしてしまうのは知っている。
だからその対策として、れいむの口にはガムテープを貼り付けておいたのだが……。
どうやら苦味自体が、ゆっくりにとって毒となるらしい。
れいむが黒い涙を流していることも、苦いコーヒーを排出しようとしたのだと考えれば辻褄が合う。
そもそもゆっくりに限らず、苦味とは毒を感じる味覚だしね。

しかし、本当にどうしたものだろう。
いくら友人のものとはいえ、加えてゆっくりの味覚矯正が難しく、多くが途中で永遠にゆっくりしてしまうとはいえ、2匹とも失敗しましたとは言いにくい。
色々立て込んでて、やり方がずさんだったのも要因の一つだしなあ。

そうして頭を悩ましてると、不意に電話が鳴った。
正直無視してしまいたいが、急患かも知れない以上そうはできない。
電話に出る。

「よう雄偉、今日も良いゆ虐日和だな。良いゆ虐してるか?」
この声は、悪友の虐待お兄さんである夕霧だ。
「ゆっくりを切り刻み、調べるもの」の意の「ゆ切り」に由来するゆ虐名の『夕霧』を持ち、「ゆっくり好き」が高じて加工所の研究員にまでなった筋金入りの変態だ。

「お前と一緒にするな。用が無いなら切るぞ、今忙しいんだ。」
「ふむ、その様子じゃ只野から預かったゆっくり、皆殺しにしたな。」

思わずぎくりとなって黙る僕。
沈黙から肯定を読み取ったのか、うれしそうに続ける。
「でも安心しろ、それは全然かまわないから。何故なら俺があいつにゆっくりコンポストをあげたからな。
今頃は元飼いゆのことなんてキレイさっぱり忘れてるさ。」

「なんでそんなこと言い切れる。」
「なぜならあの残飯処理係の四匹を、ゆ虐の友社の飼育本と一緒に只野にプレゼントしたのは俺だからだよ。
そしてそのとき、その前に飼っていたちぇんのことはすっかり忘れたからだよ。
いや、もしかしたら覚えてるのかもしれないが、少なくとも気にはしていない。
一度やってみたかたんだよね、甘やかされた飼いゆの虐待って。
うん、あれは楽しかった。実に楽しかった。」

なんてこったい。
それじゃこの苦悩は、まるっきりの無駄ということか……。
そう思うとどっと疲れが押し寄せてきた。

夕霧はそのままの調子で、飼いゆ虐待の良さについて延々と語っていたが、十分に満足したのか「じゃあな」といって電話を切ろうとする。
「ちょっと待て。」
そういって引き止める僕。
偏っているとはいえ、こいつのゆっくりに関しての知識は並大抵のものではない。
折角のチャンスだ、先ほどのまりさの実験について話してみた。

「――ということがあったんだが。」
「ふむふむ。お前もなかなか面白いことをしているな。」

「感想はどうでもいいんだよ。」
「そう苛立つな。疲れて気が立ってるぞ。
そうだなまりさのにんっしんっの件については、現物をみてないから正確なことは言えんが――おそらくはすりすり型の繁殖によるものだろう。」

「すりすり?」
思わずオウム返しに聞き返す僕。
「そう、すりすり。ゆっくりの古い繁殖の方法だよ。
最近はぺにまむ型がほとんどすべてで、その方法で繁殖するゆっくりはまずいないがね。
たぶん命の危機を感じたまりさが本能的に、まむまむを潰されていても繁殖可能な方法を目覚めさせたのだろう。」

「にんっしんっするから命が危険にさらされるのに、わざわざ古い繁殖方法を目覚めさせるってどういうことだよ?」
思わず疑問を口にする僕。
「さあな、それは知らん。まあ所詮ゆっくりのすることだしな。」
それをゆっくりだからの一言で済ませる友人。
でもゆっくりだし、そうなのかもしれないな。

その後は延々と無駄話が続いた。
すりすり型の去勢方法とかもあるにはあったが、僕の目的にはそぐわなかった。
一つ、額が真っ黒になるまで、半田ごてを突き刺して炭化するまで焼く。
一つ、ラー油を塗った剣山で、ラー油の色が抜けなくなるまで頬全体を突き刺す
一つ、頬がカリカリになるまで、油を敷いたフライパンの上でころがす。
一つ、目や口から黒い煙を噴出すまで火で炙って、永遠にゆっくりさせる。
一つ、玄翁を振り下ろし、餡塊にする。
などなど……。
どれもこれも見栄えを損う方法ばかりだからだ。
しかし現状のブレイクスルーのヒントにはなった。
ありがとう夕霧。
それでこそわが友人だ――変態だけど。

               ***               
「ゆぅぅぅ! やめてね! 痛いのはいやだよ! こっちこないでね!」
狭いケージの中で必死に逃げ回るまりさ。
それも仕方が無い。
僕が作業台に並べているのはナイフにスプーン、そしてトラウマものの半田ごてといった凶器たち。
もはやゆっくりできないことをされるのは目に見えている。

「ゆーっ、まりさは悪いゆっくりじゃないよ。だから痛い痛いさんはやめてね!」
必死に許しをこうまりさ。
この段階になってなお、自分が悪い事をしたために今までの仕打ちにつながったと思っているらしい。
なんて純粋なんだ、まりさ。
いまどきそんなゆっくりは滅多にいないぞ。
素晴らしい、なんとも素晴らしい股座がいきり立つ!

おおっと失礼、下品な表現が出てしまった。
それもコレも夕霧の影響であって、僕の本音じゃありませんよ。
僕は彼のような変態な虐待お兄さんとは違うんですから。
違うんだから……。

ともあれ、気を取り直して作業に戻ろう。
まずはまりさをケージから引きずり出さなくては。
流石にゆっくりとは言え、このまりさはそこそこ賢いから同じ手には掛からないだろう。
まあ、純粋すぎて悪意を理解できないところはあるけれど。

そこで用意するのは、小さめの風船とマジック。
小さめの風船にマジックでゆっくりの顔を描いていく。
うーむ……。
我ながら微妙なできだが、たぶん大丈夫だろう。
そこに生まれると当時に永遠にゆっくりしてしまった、赤ゆのお飾りを取り付ける。

「ゆ! まりさの赤ちゃん! 生きてたの! ゆっくりしていってね!!」
風船を見たまりさは、それを赤ちゃんと認識してケージから出て飛び跳ねてくる。
そこをすかさずキャッチ――って重っ!
まりさを掴みあげた僕だが、あまりの重さと勢いにまりさを取り落としてしまう。
落下地点にあったのは、お飾りのついた風船。
当然の帰結として、はじけ飛ぶ風船。

「ゆああああああっ! まりさの赤ちゃん!!」
まりさの中では、自分が赤ゆを押しつぶしたことになっているらしい。
必死にぺろぺろしているが、そんなもので直るわけがない。
それ以前に、それは赤ゆですらないし。

そこまでする気はなかったのだが、放心しているのは好都合だ。
まりさを再び抱えあげると、剣山の上にセットした。

「ゆぎゃぁっ! まりさのえくせれんとな、あんよさんがぁっ!」
前に聞いたとの似たような悲鳴をあげるまりさ。
だがこれで終わるわけがない。

「じゃあ、始めようか。」
「今度はなにをする気なのおおっ!」
二度目ともなると痛みに慣れたのか、聞き返す余裕が見られる。

「赤ちゃんのことは残念だったね、僕も悲しいよ……。
だから二度とそんな悲劇が起こらないように、今度こそ赤ちゃんが産めなくなるようにするんだよ!」
「ゆああああああっ、なにをいっでるのー。わからないよー。」
あまりの事に理解が追いつかないのか、喋り方がちぇん化するまりさ。
もしかしてこいつの親ゆはちぇんだったりするのかな?
それも性格のいいちぇん。
まあそんなことはどうでもいいか。

僕はナイフでまりさの額に切れ込みを入れると、皮を破れないよう丁寧に剥がす。
続いて円状に顔を見せる餡子。
そこにスプーンを突っ込んで、餡子をほじくりだしていく。
「ゆ゛っ、ゆぎっ、ゆげ。ぼう゛……や゛べで、ゆぐっ。」
内臓であり、脳であり、命の源でもある餡子を書き出されて悲鳴をあげるまりさ。
――今夜は良く眠れそうだ。

十分な量の餡子を書き出すと、内部にできた空洞に半田ごてを当てていく。
部屋に漂う甘い香り。
半田ごてによる治療は、視覚・聴覚からの情報と嗅覚からの情報のギャップがたまらない。

焼きの作業が終わると、できた空洞にコーヒー豆を敷き詰めていく。
わざわざ焼いたのは、コーヒーの成分がまりさに吸収されないためだ。
最後に餡子と皮を戻し、水で溶いた小麦粉とオレンジジュースで修復して完成。
おまけとして大量のオレンジジュースもかけておく。
ここまでやっておいて、小一時間ほどで完全回復するのだから、丈夫なんだか弱いんだかわからないナマモノである。

少し余裕を見て翌日、まりさのケージの前に立つ僕の手に抱えられているのはありす。
このために調達し直してきたありすだ。
当然のごとくマムシドリンクは投与済みで、ぺにぺには臨戦状態だ。
「ゆああああっ、やめてねありす。あっちいってね、ありすはゆっくりできないよ!」
もはやトラウマになっているらしい。
まあ、かまわず放りこむが。

その後は以前の焼き直しだった。
ぺにまむ型の繁殖ではにんっしんっしないまりさだが、すりすり型の繁殖によって額から茎が生えていく。
もっともありすの方は内圧で自壊したのではなく、ほとんど中身を出し尽くして用済みになったので、僕がつまんでゴミ箱に捨てたのだが。

まりさもまりさで、それを助けてくれたと思ったのか
「ゆう! ありがとうお兄さん!
ゆっ! まりさに赤ちゃんがいるよ! 赤ちゃんはゆっくりできるね!!」
とか的外れなことを言っているが。

だがそこから先が以前と違う。
まりさの額に埋めたコーヒーの成分が茎から伝わり、赤ゆたちに流れ込んでいく。

「ゆぎぎっ」
「ゆぐぐっ」
「ゆっぐぢ」
「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ」
苦悶の声を上げる赤ゆたち。
根元の方に至っては、早くも痙攣を始めている。

「まりさの赤ちゃんたちどおしたの! ゆっくりしてよー!」
流石に赤ゆの様子がおかしい事に気が付くまりさ。
しかしその願いは適うわけもなく、赤ゆは産まれ落ちると同時に永遠にゆっくりしてしまった。
「もっどゆっぐぢしだがった……」の一言さえ言えなかった個体も多い。

素晴らしい!
れいぱーありすの中身が無くなるまでで茎一本、そしてその結果できる赤ゆも全滅なら大成功と言えるだろう。
狂信的な愛で派でも無い限り、諸手を上げてこの方法に賛同するだろう。
言いつけを守らない飼いゆが作った赤ゆに、生きる権利はないからだ。
そして額に実る赤ゆの苦悶の表情をみれば、いくらゆっくりと言えど、パッチを取る程度の知能があれば、二度と同じ愚を繰り返そうとは思わないだろう。

あとは色々な個体を使って、コーヒーの分量や焼き加減などのデータ取りと、実技の練習が待っているだけだ。
もうこのまりさ親子には用はないのだが、「赤ちゃん、どぼじでー」と泣き叫ぶまりさを見ていたら一つ気になることができた。

まりさの前にある赤まりさを持ち上げると、ひょいっと口に入れる。
うん、思った通りだ。
餡子の中にほのかにコーヒーの味が広がる。
コーヒー餡といったところだろうか。
なかなか美味しい。

赤ありすの方も、ほんのりコーヒー味のコーヒーシュークリームになっている。
うん、これは店で売っていてもおかしくないレベルだ。
死んでしまっているから、潰すときの反応が無いのと、保存のきかないのが難点といえば難点だけど。
頑張った僕へのプレゼントとして、ありがたく全部頂くことにする。

「ありがとう、まりさ。とっても美味しかったよ。」
呆然としていたまりさだが、僕の言葉で正気を取り戻す。

「どおして……。どおしてまりさの赤ちゃん、永遠にゆっくりしちゃったの。」
「どうしてって、言っただろ。二度と赤ちゃんが産まれないようにするって。
実際、生きて産まれた赤ちゃんはいなかったよね。」

「ゆあああああっ!」
僕の言葉を理解してしまったため、絶望の悲鳴をあげるまりさ。
そして、そのまま気絶してしまった。

実験が終わったとはいえ、そのまま廃棄はもったいない。
あの味はそれだけの価値がある。
しばらくは甘味製造機として頑張ってもらうとしよう。
オレンジジュースをかけておけば、半日後には完全に回復していることだろう。

「これからもがんばってね、まりさ。」
そう声をかけると、僕はその部屋を後にした。

それにしても、味と香りで楽しませるだけでなく、ゆっくりにまで使えるとは。
それを思うと安っぽいコーヒーの粉が、魔法の粉に思えてくる。
そんなどうでもいい戯言を考えながら、仕事あがりの疲れを癒してくれる、黒色の魔法を楽しんだ。

               -fin-               


前回は色々なアドバイスありがとうございました。

今回は「中途半端はゆっくりできないよ!」と指摘された、まりさの実験結果を含む続きです。
実は最初からここまでプロットは考えてたんですが、長すぎるのはゆっくりできないと思い、キリのいいところまでを一話完結で書いたのが前回のものでした。

そして今回、続きを書いたは良いけれど、まりさがなかなか出てこない……。
短い間にうまく収められる人はすごいなあ。

誤字脱字とかは、実は二回はチェックしたんですけど、自分だと内容が頭にあるためか勝手に読み替えてしまってたようです。
きっと誤字脱字さんは勝手に生えてくるんだよ!
ってか、Typoのない他の作者さんは、むしろ校正に時間を掛けているのだろうか?

どうすれば読みやすいかは、ゆ虐はおろかSS自体あれが初なので色々悩みましたが、ゆっくりの台詞や用語にもある程度漢字を使うことにしました。
必要があれば、脳内でF6キーを押してひらがな変換してください。
あとシーンをまたぐキャラクターには、ラベルとして固有名詞を与えました。

自分で書いてみて、改めて他の作者さんのすごさが分かりますね。


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感想

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  • バターぱちゅりーに生クリームぱちゅりーの中身を混ぜたときに、
    二対の目がぐるぐるしている、という感じに書いているが、
    二対=4つの目ってどういうことww? -- 2018-01-10 15:00:49
  • 前作から読んだが、医者というには残念すぎる内容だなぁ
    まむまむ焼は見た目をって言うのでなるほどと思ったが
    コーヒー埋め込みとか魔怒鬼医山だろ
    金がもらえる医者ではないな。 -- 2012-08-13 09:10:30
  • 所詮ゆっくり、という言い回しを使う割に主人公が餡子脳過ぎる。
    頭のレベルがおうち宣言やる野良ゆっくりと同じレベルに見える。
    ゆっくりは元々知能が低いということを考えれば、この主人公はゆっくり未満の頭をしていると言えなくもない。
    -- 2012-05-01 02:51:15
  • ナチスのパロディって言っても通じるなコレ -- 2011-07-06 20:41:46
  • フロムネタがあったような気が… -- 2011-06-07 19:54:10
  • 医者が瀕死のぱちゅりーをいきなり剣山にぶっ刺すとかクソワロタww
    しかも僕の観察眼は正しかったようだとかイケシャーシャーと言ってるしw
    確信犯じゃねえかww
    またそれをお兄さんが何も言わず黙って見てたかと思うとクソ吹くわww -- 2010-10-30 01:47:07
  • だから飼いゆっくりは器物損壊になるから虐待するなと -- 2010-10-14 23:40:11
  • お医者さんが餡子脳すぐる…
    こりゃ遠からず潰れるよねー -- 2010-10-10 10:08:08
  • このまりさは好感が持てる -- 2010-10-04 01:34:38
  • なんでその仕事に就いたのか、というか就けたのかわからん。 -- 2010-09-15 23:16:07
  • 「満身創痍のぱちゅりー」を暴れないように剣山に刺したら死にました…って馬鹿なの?餡子脳なの?
    ゆっくりには苦み自体が毒になるとは知らなかった…ってアホすぎる。
    さっさと廃業しちゃえよ。 -- 2010-07-05 03:48:39
  • ご都合主義はいいんだけど・・・、仮にも預かったものを潰すて・・・
    こんなずさんすぎるやり方じゃいずれ潰れるな -- 2010-03-05 17:17:34
最終更新:2009年10月27日 16:02
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