ふたば系ゆっくりいじめ 428 はげの行進

はげの行進 17KB


【はげの行進】

「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」
「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」
「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」
「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」

 ご陽気なゆっくりが、群れを闊歩している。
 歌う2匹の饅頭。何の種なのかは、分からない。
 なにせ、清々しいまでの、つるっぱげである。
 生命よりも大事なお飾りさえ、着いていない。

 左右の側頭部からは、それぞれ1本づつ肉茎が垂れ下がっている。
 それがまた、このクリーチャーの異様さを際立たせていた。
 にも関わらず、そのゆっくりは誰よりも楽しそうだ。
 体を、ぷりんぷりんと揺らしながら、群れのど真ん中を歩いている。

「まちなさいよ!」

 やはり、止められた。
 相手は、金髪も麗しいありすである。

「なによ、あなたたち。いなかものにも、ほどがあるでしょ!」

「はげまんじゅうは、たのしいよ?」
「ありすも、はげまんじゅうに、なろうよ」

「ありすは、むれいちばんの、とかいはなのよ!」

「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」
「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」

「ききなさいよ!」

 片方のはげまんじゅうが、肉茎をありすの頭に乗せる。
 慌てて振りほどく、ありす。

「なにすんのよ! ぺにぺになんか、のせないでよ!」

「これはぺにぺにじゃないよ」
「もみもみだよ」

「もみもみ?」

「はげまんじゅうの、もみあげさんだよ」
「かみのけなんか、ないけどねー」
「あっはっはっは」
「あっはっはっは」

 笑うはげを目の当たりにして、ありすは色を失っている。
 無理もない話である。
 この2匹の饅頭、ゆっくりらしいところが、何一つ、ない。

「ねー、ありすー」
「ありすも、はげまんじゅうになろうよー」

「お、お、おことわりよ! あなたたちなんか、せいさいしてやるわよ!」

「そんなこといわずに、さー」

 何の邪気もない顔で、近付く右のはげ。

「はげは、ゆっくり、できるのにねっ」

「うるさいわね! ちょっと、ありすのまわりを、うろうろしないで!」

 左にいたはげが、ありすを中心に回りだす。
 まだ髪のある饅頭は、苛立ちを隠そうともせず、視線を動く饅頭に合わせている。

「ぐーるぐーるするのは、いなかものの」

「ちゅるん」

 いつのまにか、片方のはげが、ありすの右側に回り込んでいた。
 そして、美しく伸びている髪の毛を、麺でも食らうかのように、すすり上げている。
 死角にいたはげまんじゅうを、ようやく、ありすは発見する。
 そして。

「あ、あ、ありすの、きんぱつさんがぁぁぁ!」

「ちゅるちゅる」
「ちゅるちゅる」

「にひきがかりで、だいじなかみのけさんを、たべないでぇ!」

「ちゅるんっ!」
「そして、ふぃにーっしゅ!」

「やめでぇ! ありずの、おがさりだけは、やめでぇ!」

「ぽりぽり」
「ぽりぽり」

 出来上がったのは、3匹目のはげまんじゅうであった。
 他の2匹と違うのは、もみもみの有無。
 後は、メソメソと泣いていることだけである。

「ううう、もうありすは、ゆっくりできないぃぃ」

「ちがうよ、はげまんじゅうは、ゆっくりできるよ」
「どんなゆっくりよりも、ゆっくりできるんだよ」

「ありすは、ありすは・・・・・・」

「ちがうよ、もうありすじゃないよ」
「はげまんじゅうで、ゆっくりだよ」
「ほら、いっしょに」
「はげのうたを、うたお?」

「え?」

「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」
「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」

 目を伏せていた元ありすが、2匹のはげを見つめる。
 その姿は、あまりにも陽気で、実にゆっくりしている。   
 いつしか3匹目の饅頭も、少しづつ口を動かすようになる。

「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」

「・・・はげまんじゅう」

「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」

「・・・ゆっくり、すなわち」

「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」

「はげまんじゅう、はげまんじゅう」

「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」

「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」

 元ありすはそれまで、単なる楕円形の饅頭だった。
 それが、はげの歌に元気よく合わせられるようになると、変化が起った。
 左右から、2本の肉茎がもりもりと伸び出し、垂れ下がる。
 こうして、もみもみが生え揃うと、もう他のはげと見分けが付かなくなった。

「「「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」」」
「「「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」」」





 そこまで見ると、私は映像を早送りし始めた。
 1日目としては、予想以上の成功である。

 最近のビデオカメラは、質が良い。
 高解像度は勿論。ズームマイクが、小さいゆっくりの声にも焦点を合わせてくれる。
 そして録画した映像は、回線を通して、自宅のパソコンに保存してくれる。
 私のような研究者には、至れり尽くせりだ。

 カメラを仕込んだ群れには、特殊な訓練を施したゆっくりを投入してある。
 それは、元々は2匹のれいむ種だった。
 まずは眠っている間に、髪・お飾りを全剃りし、はげまんじゅうにする。
 そして翌朝から、3つのことを教え込んだ。

 1.「はげまんじゅうは、さいこうに、ゆっくりできること」
 2.「はげまんじゅうの、てーまそんぐ」
 3.「ほかのゆっくりを、はげにする、ほうほう」

 しかし、はげにする方法は教えたが、もみもみまで勝手に生えてくるとは。
 ゆっくりの思い込みには、いつも驚かされる。
 まぁ、その力があればこそ、こんな実験もできるのだが。

 画面には、3匹のはげが歌いながら歩き回る模様が、延々と流れている。
 目ぼしいことは、もう起らないようだ。
 2日目の映像に、切り替えよう。





「そこのはげ! ありすをかえしてね!」

 でっぷりと太ったまりさが、はげまんじゅうを怒鳴りつける。

「ありす? ありすは、もういないよ」
「ここにいるのは、はげまんじゅうだよ」

「ゆ! そこのはげが、ありすのかみのけさんを、たべちゃったんでしょ?」
「おかーしゃんを、かえせー!」
「はげは、ゆっきゅりできないー」

 まりさの後ろから、ひょっこり2匹の赤ゆが、顔を出す。
 赤まりさと、赤ありす。
 どうも、元ありすの番と家族らしい。

「おじょうちゃん。はげは、ゆっくりできるよ」

「おちびちゃん、でしょ! おじょうちゃんなんて、いわないでね!」

「だって、ねー」
「ねー」

「ゆっがあああ! ゆっくりできない、はげは、しね!」

 飛び掛る、短気な親まりさ。
 華麗なサイドステップでかわす、はげまんじゅう。

「ゆわぁぁぁん! おねぇしゃんがぁぁぁ!」

 親が気を取られている隙に、他のはげが、赤まりさをくわえていた。
 そして、ヒョイ、と自分の口の中に放り込んだ。

「ばりざの、がわいいおぢびじゃんがぁ!」
「おねぇぢゃんをだべる、ぱげは、じねぇぇぇ!」

「べつに、たべたりはしないよ」

 ぷっ、と何かを吐き出すはげまんじゅう。
 飛び出したのは、つんつんるりんの、赤ゆだった。
 どうも、おちびちゃんへの脱毛は、お口にポイ、で済むらしい。

「どうじで、ぱげでるのぉぉぉ?」
「ゆっぐり、でぎなぃぃぃ!」
「おどぉじゃん、ありじゅ、どぼじで、ないでるのぉぉぉ?」

「はげじゃないこは、うるさいねっ」
「やっぱり、はげまんじゅうが、いちばんだねっ」
「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」
「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」
「さぁ、どんどん、はげにしちゃおうねー」

「やめで、ごないでぇぇぇ!」

 45秒後。

「「「「「「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」」」」」」
「「「「「「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」」」」」」

 6匹の愉快なはげまんじゅうが、行進していた。
 4匹の成体はげと、2匹の赤はげ。
 もみもみをプラプラさせながら、仲良くどこかへ向かっているようだ。

「ほかのみんなも、どんどん、はげにしよー」
「そーだ、そーだー」
「みんなで、ゆっくりできるゆっくりに、なろうねっ」
「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」
「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」





 こうして2日目には、楽しいはげまんじゅう一家が誕生した。
 実に順調だ。

 お飾りとは、ゆっくりのアイデンティティの全てといって良い。
 綺麗なお飾りを持つゆっくりは、美ゆっくりとされる。
 まりさ種に到っては、その能力の大半を、お帽子に頼っている。
 ドス種が他のゆっくりから尊敬されるのは、ひとつには、そのお飾りの巨大さ故だ。
 だから、お飾りを無くしたゆっくりは、全ゆん格を否定される。

 では、お飾りが無いにも関わらず、ゆっくりしているゆっくりが現れたら? 
 しかもそれが、ゾロゾロと現れたら?
 それが、今回の実験の狙いである。

 さぁ、この群れは、これからどういう方向に向かっていくのか。
 はげまんじゅうを、群れ総出で制裁にかかるのか。
 それとも、何となく折り合いを付けて、追放や隔離程度で済ますのか。
 はたまた、平和な共存を計り、新しい饅頭社会が誕生するのか。

 私は胸の高鳴りを抑えつつ、3日目の映像を再生した。
 何せこれは、今日撮れたてのホヤホヤなのである。





「みんなー、げんきに、はげてるー?」
「はげてるー!」
「はげまんじゅうは、ゆっくりできるねっ」
「できるねっ」

 映し出されたのは、群れいっぱいの、はげまんじゅう達。
 カメラは精一杯、引いた画を試みているようだが、それでも入りきらない。

「おやまのゆっくりは、みんな、はげまんじゅうになったねっ」
「よかった、よかったー」
「それじゃ、おそとにも、いこっか?」
「いこう、いこう」
「みんなで、おやまをおりよう!」
「ゆっくりをみんな、はげにしよー!」
「さんせー!」
「よーし、あした、しゅっぱつだー!」
「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」
「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」
「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」
「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」
「はげま





 何だ、これは。
 何故、たった一晩で、群れ全部が、はげまんじゅうになってるのだ。
 もっと、ゆっくりしていってね!!!

 想像の埒外にも、程がある。
 しかも山を下りて、ゆっくりというゆっくりを、はげ化しようとしているじゃないか。
 何の悪気も無いんだろうな。だからこそ、最悪だ。

 もし、全てのゆっくりが、こんなカオス饅頭になってしまったら・・・。
 加工所は業務縮小を余儀なくされ、ゆっくり産業界は大打撃を受けるだろう。
 何より、全国の虐待鬼威惨が、泣いて悲しむに違いない。

 ここはひとつ、大胆かつ速やかな処置を取るべきだ。
 私は携帯電話を取り出し、知人に連絡を取った。

「ああ、雨宮だけど。ちょっと、いいかな」





「ヒャッハー! 今日のマストは皮ジャンだー!」
「張り切ってるなー。頭までガッチガチに固めて来てるじゃないか」
「モヒカンにするのに、2時間かかったぜ! ヒャッハー!」

 それで遅刻したのか。
 朝4時集合と伝えといて正解だった。

「で、本当なんだろうな。一群れ全部、虐待して良いってのは」
「ああ、虐待というより、虐殺だがな。許可は取ってあるから」
「ヒ、ヒ、ヒィィィヤッホォォォォ!!!」

 鬼威惨の嬌声が、山々にこだまする。
 ああ、朝焼けに紅葉が美しい。

「ただし、中途半端はダメだ。1匹残らず、処分してくれ」
「おいおい、誰に向かって言ってるんだ、甘味屋」
「雨宮だ。あんみつ屋みたいに呼ぶな」
「雨宮と書いて甘味屋。甘味処と書いてカンミドコロだ、ヒャッハー!」

 何だ、この2次会と3次会の間のようなテンションは。
 浮かれるのは勝手だが、やることはやってもらわないと。

「ところで、今日は徒手空拳で虐待するのか?」
「よくぞ聞いてくれた。今日の相棒は、こいつだ!」
「何やら、世紀末っぽいものが出てきたな」
「ゆっくり用火炎放射器だ! レアからウェルダンまで、ゆっくり焼き上げるぜ!」
「また、通販で買ったのか」
「見ろや、この噴射力!」

 虚空へ向かって炎を吹き付ける、ノリノリ鬼威惨。
 通販会社のテーマソングを歌いだしたりして、全くご機嫌だ。
 お前はれいむかとも思ったが、口には出さないでおこう。

「ゆ・ぎゃーくネット、ぎゃくネット、夢の」
「わかった、わかった。そろそろ取り掛かるぞ」
「で、何処のクソ饅頭を殺ればいいんだぁ?」
「これを見てくれ」
「ドスでも、希少種でも、何でもきやがれってんだ、ヒャッハー!」

 例のVTRを見せる私。
 はげまんじゅうを目の当たりにする彼。

「・・・雨宮さん。私、クリーチャーは、ちょっと」

 素に戻ってる竹馬の友。

「・・・鬼威惨ともあろうものが、選り好みをする、と」
「ひぎゅっ!」
「幾度もゆ虐界を賑わせた虐待師も、その程度だったか」
「ひぎゅぎゅうぅ・・・」

 面白い唸り声を尻目に、遠い目をしたりする私。

「ヒャッハー! はげまんじゅうは、皆殺しだー!」

 決意は、固まったらしい。
 期待に答えて素敵で楽しいいつもの彼に戻ってくれる彼。

「じゃあ、作戦会議だ。あそこに、山道が見えるな」
「ヒャッハ」
「あの道を通って、はげまんじゅうの一団が下りてくる」
「ヒャッハ、ヒャッハ!」
「皮一枚残さず、全て焼き尽くしてくれ」
「ヒャッハー! もう、我慢できねぇぇぇ!」
「我慢なんているか。お前の欲望を、あのはげどもに叩き付けてやれ!」
「汚物(ゆっくり)は、消毒だー!」

 おニューの火炎放射器を背負い、全力ダッシュする鬼威惨。

「おーい、森は焼くなよー」
「水と緑は、鬼威惨が守るー!」

 遠ざかる影。
 あれで、普段は量販店のフロアマネージャーなんだからな。
 趣味って、人を変えるね。

 虐待ついでにカメラを壊されると困るので、山道には、別の仕掛けを施している。
 お手製の無線マイクをいくつか仕込んで、FMラジオで聞けるようにした。
 ちなみに、電波法に引っ掛かるような気もしたので、事前に問い合わせもしている。
 ゆっくり調査に使うのであれば、OKらしい。
 変な世の中だ。





 やや、ゆっくりした後。
 ラジオから、もう聞き飽きたメロディーが流れてくる。

「「「「「「「「「「はげまんじゅう! はげまんじゅう!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!」」」」」」」」」」

 テーマソングの大合唱である。参加総数など、分かるはずもない。
 お互いの予定通り、はげの行進が始まったらしい。

「ヒャッハー! ここが地獄の一丁目だー!」

 シラフとは思えない、人間さんの声が割り込む。
 どうやら、間に合ったらしい。

 風が唸りを上げる。
 炎が早速、ゆっくりに襲い掛かっているようだ。

「まるやけー」
「こんがりー」
「みんな、ばいばーい」
「ぷれっつぇる!」

 どうも、はげまんじゅうの断末魔らしい。
 こいつらは何というか、つくづくだ。

「ヒャッハー! ふまんぞくー」

 我が友の声。
 やはりカオスなクリーチャーは、鬼威惨の天敵らしい。

「はげまんじゅう! やきまんじゅう!」
「ゆっくり、もえてる、はげまんじゅう!」
「はげまんじゅう! やきまんじゅう!」
「ゆっくり、こげてる、はげまんじゅう!」
「はげまんじゅう! やきまんじゅう!」
「ゆっくり、くろずみ、はげまんじゅう!」
「ヒャァァア! うるせぇぇぇぇぇ!」

 どうも、身を炎で焼かれても、能天気なまま死んでいってるようだ。
 これはこれで、凄まじい光景なのだろう。
 カメラを惜しんだのは、失敗だったようだ。

 ラジオに耳を傾けながら、煙草に火を付ける。
 やり方は雑だが、彼は一流の虐待師だ。
 殲滅は果たされる、確実に。
 彼自身も、カオス饅頭との戦いを経て、さらに大きくなるだろう。
 そう、あそこに見える、岩山のように。





「ヒャッハー・・・。終わったぜー」

 いつのまにか、鬼威惨が帰ってきていた。

「おい、その煙草、根元までいってるぞ」

 そんなことにも気付かないほど、私の視線は、釘付けになっていた。
 間もなく、友人の目も、同じものを見つけたのだろう。 
 2人の間に、言葉は無い。

「はげまんじゅうぅぅ! はげまんじゅうぅぅ!」

 私が何気なく見ていた岩山。
 それは、無機物などでは無かったのだ。

「ドぉスもぉぉ、やっぱりぃぃ、はげまんじゅうぅぅ!」

 山と見間違えるほどの、巨大なはげまんじゅう。
 ドス種が、感化されてしまった姿であろう。

 視線が、合った。
 手を振って、拒否を示す彼。
 私は、相手の肩に左手を置いて、右手を握って鼻の高さまで上げた。
 そして、親指を、力強く立てた。

 しばし、男の沈黙が流れる。
 友人は、突然、眦(まなじり)に炎を宿すと、

「ヒャッハー! 玉砕だー!」

と叫びながら、素手で、はげドスへ向かっていった。
 一生を、ゆ虐に捧げた生き様が、背中に光って眩しかった。





「ひっでぶー☆」

 声と共に巨体が崩れ落ちる。
 鬼威惨が、打ち勝ったようだ。
 私は、感動をたたえつつ、現場に急行した。

 はげドスがあった場所は、餡子の海となっていた。
 やけに水っぽい。直前に川の水でも飲んだのだろう。

 四散した餡子の中を、時折、皮が流れてくる。
 目の前に浮いているのは、ドスの顔の部分だった。
 目蓋も唇もしっかり残っており、表情もスマイルを残して、ゆっくりしている。
 そんなレア物を前に、簡単に逆上する私。
 膝まで餡に浸かりながら、大急ぎで顔皮を引き上げる。
 そして水分をタオルで丁寧に拭き取ると、手頃な枝にぶら下げた。
 乾かせば、立派な標本の完成である。
 最高のお土産ができた。

 そこまで作業を終えて、はたと気付く。
 鬼威惨は、どうしたのだろう。

 振り返ると、餡子の海を漂うものが見えた。
 彼岸から此岸へ流れ来るもの。
 紛れもなく、我が友の帰還であった。

 彼は意識を失い、服も溶けて、公然わいせつな姿であった。
 状況から考えて、はげドスの中に飛び込んで、内部から破壊したらしい。
 すごい漢だ。
 尻丸出しで岸辺に打ち上げられる。
 その様も、昔のアニメの主人公みたいで格好良い。





 このまま人里に下りるわけにも行かないので、鬼威惨の弟君に連絡を取った。
 事情を説明したら、迎えに来てくれるそうだ。
 待っている間に、兄が風邪を引いたとなれば、迎え人は悲しむであろう。
 そういった人道的立場に基づき、鬼威惨に余ったドス皮を被せる。
 頭だけ出して、後は餃子状に包んであげたので、寒くはないだろう。

 未だ意識朦朧としている、ゆ虐の戦士。
 ドスの体内に入った鬼威惨は、憎悪するゆっくりとの同一化体験で、何か劇的な心の変革があったようで、

「本当はゆっくりも僕の事を愛していたんだね。ひとつなんだね、バイブレーション」

などと気味の悪いことを口走り、自分を包んでいる皮を、パクパク食べたりしていた。

 カオスな時間を過ごしているうちに、弟君のワゴンが到着する。
 手早く兄を寝袋に積め、車に乗せる、弟さん。
 以前にも、カオスゆっくりと関わった際、同じような目に遭ったらしい。
 兄弟して虐待師を務めていると、色々あるようだ。

 こうして、心身ともに大きく傷付いた鬼威惨。
 収納された車を見送りながら、私は無言で敬礼する。
 彼は必ず、ゆ虐の世界へ帰ってくる。
 私、信じてる。





 はげドスの顔を、くるんと巻いて、小脇に抱える。
 1人歩いて帰るこの時間は、考えをまとめるのに最適だ。

 収穫は多い。
 カオスゆっくり相手の虐待は、危険を伴うこと。
 ドスの顔標本を、手に入れたこと。
 そして、はげまんじゅうは、ゆっくりできなかったこと。 

 一週間に満たない実験であったが、書くべきことは、山ほどある。
 大まかな項目を脳内で並べているうちに、人里に付いてしまった。

 見慣れた街角に着くと、一度思考を止め、深呼吸する。
 野良ゆっくりの姿も、ちらちら目に付く夕暮れ時。

 珍しくもない饅頭の中に、注目せずにはいられないものが、いた。
 つんつるりんの、後頭部があったのである。

 まさか、逃げ延びたはげまんじゅうが、いたのか。
 いいや、一足先に、街へ下りたものがいても、おかしくない。

 後ろ頭が、塀に隠れて見えなくなる。
 私は、恐る恐る、その角を、曲がった。

「ゆーはー! ゆっくりだぜー」

 はげまんじゅうではなかった。
 それらは髪の両端のみを綺麗に剃り上げて、真ん中を高く伸ばしている。

 黒髪と、少しちぢれた金髪。
 よく見ると、赤ゆっくりが1匹、同じ髪型をしている。

「ゆーはー! もひかんさんは、ゆっくりしてるよ!」
「ゆーひゃー!」

 うーん。
 ゆっくりの生態は、奥が深い。





(終)





【あとがき】

 2作目もお読み下さり、ありがとうございます。
 二行です。

 前回、頂いたコメントを反芻しつつ、思わず浮かんでしまった光景があります。
 『山道を歌いながら行進するはげまんじゅう』

 そんなイメージを基に書いた結果が、これだよ。
 御笑覧下されば、幸いです。



【謝辞】

 はげまんじゅう、及びモヒカンさんのイメージを、
 絵師・作家の皆々様より、お借り致しました。
 また、スレでの「カオスゆっくり」についての話も、参考にさせて頂きました。
 厚く御礼申し上げます。



【過去作】


元ネタ絵 byM1


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感想

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  • はげのテーマソングがすごく面白い。 -- 2016-08-21 11:15:35
  • はげまんじゅうの歌がすごく笑える。 -- 2016-08-04 00:25:37
  • こわいよー -- 2015-10-15 01:10:11
  • バイオハザードじゃんwww
    -- 2015-07-04 14:46:35
  • 狂気。ルナティック。鬼才。 -- 2014-10-04 00:40:59
  • ツインビー(SFCの奴だが名前忘れた)のEDかよwww -- 2014-08-01 12:52:54
  • ある意味伝説の作品だよな -- 2014-07-01 00:51:18
  • まるこげー。
    みんな、ばいばーい
    ↑断末魔


    ええええ -- 2013-11-14 21:20:40
  • かわいさとキモさとおもしろさをまぜたけっかがこれだね・・・ -- 2013-03-20 21:34:58
  • ぷれっつぇる!!!!! -- 2013-01-22 20:47:28
  • ちょ!絵がw
    劣化版モコナじゃねーかよ!
    爆笑したわ -- 2012-08-13 17:57:06

  • 断末魔ww -- 2012-05-03 21:30:15
  • はげまんじゅうって、ゾ0ビ? -- 2012-02-11 18:20:45
  • 無限ループってこわくね? -- 2011-10-18 00:45:22
  • ハゲというよりボーズだなww
    もみあげキモいwwww -- 2011-10-13 19:50:20
  • なんか妙だwwww
    -- 2011-04-14 22:56:10
  • なんかおにいさんかっけえな・・・ -- 2011-01-30 18:08:59
  • 虐待士って聞くとただの無職虐待お兄さんの肩書きみたいな感じだけど、大変な職業だったんだな…。
    もう彼は再起不能かもしれない。 -- 2011-01-10 18:09:39
  • 断末魔が「ばいばーい」
    やべえかわいいwwwwww -- 2010-11-30 10:25:27
  • ゆっくり、すなわち、はげまんじゅう!

    なにこの愉快な生き物wwww
    登場ゆん物が全員妙なテンションなのが楽しすぎる -- 2010-11-06 19:05:58
最終更新:2009年10月27日 16:35
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