ふたば系ゆっくりいじめ 432 俺が、ゆっくりだ! 4

俺が、ゆっくりだ! 4 17KB


『俺が、ゆっくりだ! 4』



・「俺がれいむでれいむが俺で」的設定です

・俺の考えたことは、ゆっくりでもわかる語彙であれば自動的に翻訳されてれいむが喋りやがります

・見た目、性能はゆっくり、頭脳は人間です

・「その3」を読んでいないとよくわからないかと思われます

・大きな展開は特にナシ












七、

 “俺”とまりさとちぇんの三匹で交代しながら見張りをしたおかげで、ありすとぱちゅりーを含めた5匹は十分な
休息を取ることができ、体力もかなり回復していた。若干、もやしのゲロ袋(ぱちゅりー)の顔色が少し悪かったが、
ありすと楽しそうにだべってるところを見ると、そこまでひどい状態ではないらしい。

 れみりゃとの一件があってから饅頭共の心境にも少し変化が表れてきたのかもしれない。そもそも、ゆっくりが集
まって昼寝をしようというときに、外敵を見張るなどという行為をしたりするだろうか。“俺”は人間だから、全員
で爆睡かましてそのまま永眠させられる可能性がある…と考えて然るべきだが。最初に見張りをすると申し出たのは
他でもない“ゆっくり”のまりさだった。そういえば、森に着いてすぐ休憩をしたときも、“俺”の行動を見てから
ではるが、ちぇんも見張り役を買って出た。

 俺は…その、まぁ…なんだ。俺がこれまで潰してきたゆっくりも含めて…「人間×ゆっくり」の姿しか見ていなか
ったような気がする。今回、この姿になって「ゆっくり×ゆっくり」の姿を目の当たりにしたわけだが…。

 人間はゆっくりを「ゆっくりできてない」と言う。それは人間の視点で考えれば、の話だ。

 ゆっくりは人間を「ゆっくりできてない」と言う。それはゆっくりの視点で考えれば、の話だ。

 人間の視点で人間を、ゆっくりの視点でゆっくりを見たとき、同じことを言うだろうか…?根本的に“ゆっくり”
という言葉の意味合いが違うだけなのかも知れない。まぁ、こまけぇこたぁ置いといて…。俺はちょっとだけ…ほん
のちょっとだけ“ゆっくり”ってのがどんなヤツらかわかったような気が…せんでもない…。

 まぁ、そんなゆっくり論なんてどうでもいい。だが、そういう理論を脳内で展開させたくもなるさ。ああ。正直、
今、すんげぇ現実逃避してる。はっきり言って、人間や捕食種に追われてた数時間前と同等か…あるいはそれ以上、
俺はピンチだ。

「れいむ!なにやってるのぜ!はやくむーしゃむーしゃするのぜ!」

「れいむったら…こんなにとかいはなごはんさんがあるのにたべないのかしら…?」

「わからないよー…れいむ、さっきはおなかすいた、っていってたんだねー」

「むきゅ…しょくよくがわかないのかしら…?れみりゃとたたかったときのきずがいたむの…?」

『ゆ…ゆぅ…』

 困るだろ。常識的に考えて。“俺”はれいむだが…俺はれっきとした人間でねぇ…。お前らで言うところの人間
さんなんですよ…。ああ、口調までおかしくなってきてる…。だってこれ…なぁ。ぷりっぷりの…“芋虫”さんで
ございますよ。しかもまだ動いてるのっ!超、きんもー☆

 心配はいらねぇ。俺は他の食いものを探すぜ…。

『しんぱいはいらないよ!れいむはほかのごはんさんをさがすねっ!』

「ほかの、っていっても…」

「ざっそうぐらいしかないんだねー、わかるよー」

「いもむしさんやばったさんはとかいはなたべものよ…?すくなくともざっそうよりかはおいしいとおもうのだけ
 れど…?」

 ぶっちゃけ雑草のほうがまだ気分的にマシ…ってわけでもないがどうしたものか…。そういえばこいつら、饅頭
だったりシュークリームだったり…やべぇ。ついさっきまで苦楽を共にしてきたはずの、こいつらが美味そうに見
えてきちまった。自重しろ、自重しろ俺。でも、いざというときは食べよう。

「むきゅぅ…きずがいたむならよけいにたべないとからだにわるいわ…」

 お前に言われたくねーよ。

『ぱちゅりーにいわれたくないよ』

 くっ…ロクに脳内でツッコミすら入れさせてくれませんか…。この腐れ饅頭型自動翻訳機ががががが!!!!

「むきゅっ…それもそうね」

「「「あはははは」」」

 あ…あるぇ~~~~?なんだ、なんなんだこの展開…?望んでいたわけではないけれども…、この後の展開は饅
頭共が一斉に冷たい視線を送ってきて、まりさとありすが“俺”に文句を言う流れのはずでは…?これ如何に?

「んもう!れいむったらつんでれさんなんだからぁっ」

「れいむ、すなおになるのぜ?」

「わかるよー…!れいむはくちはわるいけどやさしいゆっくりなんだねー」

 待て。待て待て。お前らの取ってきてくれた餌は食わん、挙句ぱちゅりーの好意を無下にあしらった俺のどこに
ツンデレ要素があるのかと小一時間問いたいところだが…。

『ゆっ!そのいもむしさんはみんなにあげるよ!』

「むきゅぅ…」

 ゲロ袋は不満そうだな。まぁ、休憩前に全員の前で「腹減った」宣言してたから心配されて当然といえば当然の
ような気もするが。せめて口の中に入れても抵抗なく食べれそうなものであればいいんだけどな…。ふと。まりさ
と目が合う。まりさが小首をかしげる。

 まりさ種のキノコ知識をいろいろ教わろう。んで、自分でキノコ探して食べるか。

『まりさのきのこさんのこと…いろいろしりたいよ。れいむ、きのこさんさがしてたべるね!』

 ん?今の翻訳は聞きようによってはかなり危ない発言に取れないこともなかったような気がするが気にしないこ
とにしておこう。

「れいむはきのこさんがすきなのぜ?」

 どちらかと言えばアワビのほうが好きなんですけどね。

『どちらかというと…ゆ゛っぐい゛!!!!』

 いきなり奇声を上げた“俺”を残りの饅頭共が呆けた様子で眺めている。これ以上のセリフは危険な予感がした
ので、自分で下を噛んだのだ。うん。奇声を上げるほど痛かったんだ。だからそんな顔でみないでおくれ…。

「と…とにかく…まりさはれいむといっしょにきのこさんをさがしにいってくるのぜ…」

「わかるよー。それじゃあ、ちぇんはおうちのなかをひろげるんだねー」

「ありすはおうちのいりぐちをかくすえださんや、おうちのなかにしきつめるはっぱさんをさがしてくるわ」

「むきゅっ。あめさんがふったときのために、ちぇんがほったつちさんをいりぐちのまえにおいておくといいわ」

 ほう…。つまり、ちぇんが土木工事を行い、ありすが部屋の飾りつけ…ぱちゅりーがより実用的な設計プランを
考えていく、ってわけか。で、今回は“俺”とまりさで食糧調達…と。とりあえず“俺”たちがもどったらちぇん
を手伝わないとな。三匹で掘っていけば早くに終わるだろうし。ぱちゅりーの雨対策に関しては脱帽だ。穴を掘っ
た土を盛って土塁にする、ってか。なんだかんだ言って賢者だな。子供が砂遊びしてるみたいな感覚なんだろうか。
どちらかというと、緊急時の脱出用に反対側からも出れる穴を掘っておきたいところだな…いやいや、そんな穴を
掘ったら、雨のときに大変か…

「れいむー。なにやってるのぜ?はやくきのこさんさがしにいくのぜ?」

『ゆゆっ!ゆっくりまってね!!』

 なんだっけかな…こういう感覚…。ああ、そうだ。子供の頃、みんなで集まって裏山とかに秘密基地作って遊ん
でた感じ。今は本当に生き延びるためにやってるわけだけども…。あの頃みたいな感じで…不覚にもワクワクしち
まったよ…。うん。どうせなら、ビシッと作ってやろうぜ…っ。






「ゆゆっ!このきのこさんはおいしそうなのぜ!」

 …馬鹿饅頭が。それはベニテングタケだ。食ったら大変なことになる。具体的には下痢や嘔吐、幻覚などの症状
を起こす。どう考えても毒キノコです。本当にありがとうございました。思わずため息をつかざるをえない。…っ
ておいおい、そこにクリタケがあるじゃないか。そっちにしろ、そっち。

『ゆ!そのあかいきのこさんはたべるとゆっくりできなくなるよ!そっちのくろいきのこさんをとろうね!』

「れ…れいむ…くわしいのぜ…?」

 少なくともお前よりかはな。

『すくなくともまりさよりかは』

「ゆ…」

 あ…やっべ。ちょっと怒らせちゃったかも、な…。顔は冷静を保ってるようだけど目の奥にじんわりと怒りを感
じますなぁ。やれやれ…

『…ゆっくりごめんね』

「…え?」

『いまのれいむのいいかたはよくなかったよ。れいむがしってるきのこさんとまりさがしってるきのこさんをとっ
 ていけばいいんだよね』

 …概ね、そんな感じのことを言おうとはしたが、その言いまわしで伝わってんのか?協力しよう、っていう一番
大事なところが綺麗さっぱり抜けてる感じがせんでもないんだが。

「れいむ…」

『ゆ?』

「れいむのしってるきのこさんも…まりさにおしえてほしいのぜ…」

『ゆっくりりかいしたよ!』

 まりさの表情に笑顔が戻った。なんていうか、なぁ。本当に5歳ぐらいの子供と一緒に過ごしてる感覚だよなぁ。
この調子じゃ、まりさやありすとは人間に戻るまでに何度衝突することになるのやら…。ま、喧嘩になっても言い合
いになっても、構わないけどさ。

 さっさと集めるか。

『ゆっくりしないであつめるよ!せっせ!せっせ!』

 うわぁ。久しぶりにウザい翻訳きたわぁ。やっぱり何も考え込まないのが一番だねぇ。…ここまで自分の“考え”
が行動に影響してるところを見ると…こいつらが都合の悪いことはすぐ忘れる、って話…。忘れないと、生きていけ
ないくらいのレベルに達してるんじゃないのか…?じゃないと思いだすたんびに“ゆんやあああああ”とか言ってそ
うだもんな…。…まぁ、俺には関係ないか。

「れいむ」

『ゆ?』

「ぱちゅりーのことはすきなのぜ?」

 思わず、噴いちまったじゃねーか。この姿になってまで噴くような出来事があるとは思ってなかっただけに、正直
びっくりだ。一瞬、ぱちゅりーの柔らかい唇を思い出す…な馬鹿ああああああああああああああ!!!!!!!

『ばかあああああああ!!!!!!』

「ゆゆゆゆっ?!!」

 あ、あぁ…違う違う。

『ゆ…ゆっくりごめんね。まりさのことじゃないんだよ』

「そ…そうなのぜ?れいむはこういうはなし…にがてなのぜ?だったらやめるんだぜ…」

『そういうわけじゃないよ』

「…まりさのちょっかんっ!だと…ぱちゅはれいむのことがすきなのぜ」

 衝撃の真実。ゲロ袋が俺に恋をしている…だと?なんだその超展開。コントだろ、それ。いや、正確には“俺”に
か。どっちにしろご勘弁願いたいもんだね。笑い話にもならねぇ。まりさを無視してキノコ狩りにいそしむ“俺”。
何も答えないところを見ると、まんざらでもない…とでも受け取ったのだろうか。なんか小憎たらしい笑みを浮かべ
て、ゆらゆら揺れている。早くキノコ探せ馬鹿饅頭。





 巣穴に…い、いや、家に戻ってきて…その…うん。ちょっと驚かされた。ちぇんが予想以上に頑張ったというのも
あるかも知れないが、目視でわかる程度には穴が広がっている。ぱちゅりーの言った通りに入り口には雨が降ったと
き、家の中に水が入らないように土手が築かれている。いやはや…。よく大雨の日に巣穴の中が浸水して一家全滅、
なんて話を聞くが…。

 良くも悪くも、人間との接触がこの饅頭共を変化させていってるんだろうな…。興味深い。大学はゆっくりを扱っ
てる学部があるとこ行こうかな…。一度だけパンフで見たが、研究する前に潰してしまう生徒が続出…って書いてた
し、やっぱり無理か。

「どうかしら?ちぇんのほってくれたあなのゆかにおちばさんをしきつめてみたのだけれど」

「はいってもいいのぜ?」

 ありすが嬉しそうに頷いてる。自信作、と言ったところだろうか。人間と生活経験があるからなのかはわからない
が、確かに土の上で寝るのは衛生上よろしくない。…と思うのは人間である“俺”ならではの発想かとも思っていた
が…意外とそうでもないらしい。まりさは家の中の落ち葉の絨毯の上でぽいんぽいんと跳ねたり転がったりして遊ん
でいる。楽しそうなまりさを見て、ありすもご満悦…と言ったところだ。

 しかし…

『ゆぅ…』

「むきゅ…?どうしたの…?」

「…もしかして…きにいらいない、のかしら…?」

 いやいや、そんなことはない。大したもんだ。だがな…

『ゆゆっ。そんなことないよ。みんなすごいよ…でも…』

「いいたいことがあるならはっきりいうのぜ。みんなれいむのいけんもききたいのぜ」

 一斉に頷く饅頭共。

『すごくいいおうちなんだけど…ちょっとめだちすぎるよ』

「「「ゆゆ?」」」

 おうち制作担当の三匹が小首をかしげる。しばらくしてぱちゅりーは何か理解したように目を細めた。それでも…
“俺”が意見を言うのを待っている、という感じだろうか…。今回は死活問題だからな…不思議饅頭との会話もやぶ
さかでは、ない。

『これだけおおきなおうちにすると、にんげんさんやれみりゃにすぐみつかっちゃうよ。だからおうちがめだたなく
 なるようなくふうをしないといけないよ』

「ぐたいてきにはどうすればいいのかしら…?」

 家の入り口をカムフラージュできればそれでいい。

『ゆっくり、けっかいっ!をはるよ』

 いや、張らないから。そんなもん俺は張れないから。カムフラージュ=結界なのか。変なところで高性能な翻訳し
てくれてんな、オイ。そんなところに力を使うぐらいなら、俺の言葉をそのまま訳してくれればいいのに…。それで
も“俺”の結界、という言葉に饅頭共はなんかすごい期待をしているようだ…。

 話は簡単…でもないか。同じく台風で倒されたであろう、木の“幹”のへし折れた部分をさも自然に入り口の前に
倒れてきたように見せかける。結構な重量があるであろう、これを饅頭5匹…実質4匹の力で動かさないといけない
…。さて…どうしたものか…。長さにして先端の枝葉を合わせて2m弱…。雷でも落ちて倒れたのかも知れないな。

『まりさ、ちぇん!れいむといっしょにここにあなさんをほるよ!』

「ゆ?そんなところになのぜ?」

「わからないよー」

 ぱちゅりーは気づいたみたいだ。今度は積極的に口を開く。

「むきゅっ!そのきをぱちゅたちのちからではうごかすことができないから…」

『ゆ!あなをほって、きをころがしておうちのちかくまでもってくるよ』

 ようするに、一瞬だけでも動けばいい。あとは木の幹を転がしたい方向…つまりは巣穴の前に転がるように穴を掘
っていく。結構な角度をつける必要がある。転がす、というよりも落とす、という感覚に近いかも知れない。これが
できれば元から折れていた木と2本合わせて、さも自然にそうなったかのようなバリケードが完成する。その内側に
関しては、好きに改造していくといい。

 この作業はなかなかに困難を極めた。穴を完全に掘り切る頃にはすでに夕方になっていた。途中、まりさと採って
きたキノコを食べたりして休憩はしたが…土木作業の兄ちゃんたちはすげぇなぁ…。これを毎日やってるんだからよ…。

「れいむ…そろそろ…どうなのぜ…?」

「はぁ…はぁ…ありす…もう、げんっかい!だわ…」

「つかれたんだねー…わかるよー…」

 ああ、ちなみにぱちゅりーはすでに巣穴の奥で休んでもらっている。木の真下にも穴を掘っているため、時折木が
ぐらぐらと動く。確かにそろそろ頃合いだろう。ぱちゅりーに一応巣穴から出てくるよう呼び掛ける。ああ、もう巣
穴でいいや。めんどくさい。

『ゆっ!それじゃみんなでおすよ!』

「「「ゆーえす!ゆーえす!」」」

 いらねぇよそんな掛け声。歯ぁ食いしばれ馬鹿饅頭共が…。

『ゆーえす!ゆーえす!!』

 ドチクショウがああああああああああああ!!!!!

 動いた。そのまま、掘った穴にそって…まぁほぼ垂直に木が落下した。どうやら上手くいったようだ。巣穴の前に
ちょうど枝葉が来る形になっている。これはラッキー。息切れ切れの“俺”のところにまりさが寄ってきて、

「れいむ…つぎはどうするのぜ?」

『ゆ!きょうはここまでにするよ…』

「あら…はぁ…はぁ…れいむがいえば、みんなまだうごくのよ?れいむがおもういちばんいいほうほうがあればおし
 えてちょうだい」

 こいつら…。こんなにたくましい、ゆっくりがいただろうか?いや、いない。街で人間に関わってある程度の知識
を得た饅頭が自然に帰ってきた…。そりゃ野生ゆに比べればこいつらの知識は相当な水準にあるのだろう。あくまで
ゆっくり基準で。

「もっとはっぱやきのえだをもってきたほうがいいんじゃないのぜ…?」

『ゆ!けっかいっ!はこれだけでいいよ』

「「「ゆゆゆゆ??」」」

 心もとない、と言いたいんだろうな。だが“俺”には俺の考えがある。

『かくそうかくそうとするとかえってめだつよ!はっぱやきのえだがここにだけたくさんあつまってるのはへんだよ』

 何度か、れいむ種が結界という名のカムフラージュを行ってきて、それがことごとく失敗しているという情報をネ
ットで見た覚えがある。俺も画像でしか見たことなかったが、そりゃそんなにあからさまに草木で覆ってればバレる
でしょうよ…とツッコミを入れた記憶も。あくまで自然に。ちょっと物足りないくらいがカムフラージュとしては最
適なのだ。

「むきゅぅ…れいむのかんがえはいつもぱちゅたちのさきをいくわ…」

「わかるよー!れいむはすごくあたまがいいんだねー!」

 そりゃ餡子脳のお前らより俺の知能が劣ったら、俺いろんな意味で終わってるだろうからな。





 この日はもう巣穴で休むことにした。相変わらず芋虫などの“ごちそう”が目の前に並んでいたが俺はキノコを2
本ほどかじって食事を終えた。虫は食わない。自身の尊厳にかけてでも。やはりぱちゅりーは心配してくれているの
だろうか、何度も“俺”に芋虫を食べるよう勧めてきたがこれは新手の拷問ですか?

 実は、最初に芋虫を食べる食べないの騒動を起こしたときから考えていることがある。この姿でも…これだけの住
処を作ることに成功した。ゆっくりも説明すれば意外と作業の内容を理解できる力がある。

 野菜を作ることはできないだろうか…?

『おやさいさんをつくれないかな…?』

「むきゅ…おやさいさんはかってにはえてはこないのよ…?」

 だから、作れないかな、っつってんだろうがゲロ袋が…っ。ちぇんもまりさもありすもよっぽど疲れたのだろう。
寄り添うこともせず、寝息を立てている。

『ゆぅ…でもおやさいさんのたねがないからむりだね…』

「むきゅ。すぐにあきらめるなんてれいむらしくないわ」

『ゆ?』

「これはぱちゅがまだあかちゃんのころにおかあさんからきいたはなしなのだけれど…」






 外は夜の闇に包まれていた。月の光が綺麗だ。星もこんなによく見える。あの街からこの星空を見ることはでき
ただろうか…?

 れいむの姿になって2回目の夜が訪れた。まだ2日しか経ってないのに本当にいろんなことがあったような気が
する。明日も、明後日も、いろんなことが起こるのだろう。少なくとも、この姿でいる限りゆっくりできることは
なさそうだ。

 今回、俺自身、初めて自分で食べ物を探した。初めて自分で住処を作った。まだ学生だから…っていうのを抜き
にして…。俺が一度もやったことないことばかりだった。

 大工が家を作ってくれるから住む場所がある。

 農家が野菜を作ってくれるから食べる物がある。

 もちろん、互いに利益があるわけだ。つまりはそれが人間の作り上げた社会。それぞれの技術を活かして、他者
をも生かす。ハッキリ言って…毎日、学校行って家帰って…を繰り返してたら、こんなところにも気付かなかった
かも知れない。

 同時に。ゆっくりたちが人間と同じような社会を作り上げるのも…不可能とは言い切れないのではなかろうか。
こいつらを見ているとつくづくそう思う。

 ぱちゅりーは頭がいい。いろいろな計画を立てることができるだろう。

 ありすは世話好きで内装作りが得意。

 まりさは食糧調達が得意。

 ちぇんは猫っぽいからかは知らないが穴を掘ったりするのが得意。

 そして…。

 “ゆうか”という花や野菜を育てるのが得意なゆっくりがいるらしい。ぱちゅりーが赤ん坊の頃に聞いた話によ
ると、ゆうかは森の奥に住んでいるそうだ。

 人間の姿に戻れなかった場合、この姿で冬を越さなければならない。そうすれば食糧の備蓄は虫だけになるだろ
う。つまり俺にとっては大変ひどい展開になってしまう可能性がある。そのためにも野菜作りは最大の課題だった。
いや、他のゆっくりにはどうでもいいんだろうが。

 とにかく、明日はその“ゆうか”とやらが住むという森の奥に行ってみようと思う。

 明日も長い一日になりそうだ。














つづ…く?



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感想

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  • 奥が深いね。 -- 2013-10-13 15:52:23
  • めちゃくちゃ面白いですw -- 2012-07-15 17:04:02
  • すごいw本当におもしろいなw -- 2010-12-06 20:18:58
最終更新:2009年10月27日 16:56
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