ふたば系ゆっくりいじめ 438 俺が、ゆっくりだ! 7

俺が、ゆっくりだ! 7 18KB


『俺が、ゆっくりだ! 7』




・「俺がれいむでれいむが俺で」的設定です

・俺の考えたことは、ゆっくりでもわかる語彙であれば自動的に翻訳されてれいむが喋りやがります

・見た目、性能はゆっくり、頭脳は人間です

・「その6」を読んでいないとよくわからないかと思われます









十二、

 饅頭共特有のお決まりの朝の挨拶を済ませ目覚める俺。清々しい朝なのだが気分はまったく清々しくないのはなぜだ
ろうか。饅頭に起こされる、というのもなんとなくいい気はしないし、何より自分の意思と関係なく「ゆっくりしてい
ってね!」と言わされるのが一番癇に障る…。加えて、

「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!」

 これだ…。少し甲高い…それでいて舌足らずな赤ありすの口調が俺の精神を激しく揺さぶっくる。お前を殺せ、と本
能が囁く…っ!!!しかし、長考を続けなければならない。うっかりするとこの腐れ饅頭型自動翻訳機が、俺の本音を
ばかでかい声で喋りやがるからな!おかげで最近は考え込むことばっかりだぜ…。やりづれぇ…。

「れいむ!ゆうかにもらったたねをわすれないようにするのぜ」

 わかってんだよ、そんなこと…馬鹿饅頭が…。

『それぐらいわかってるよ!ばかなの?しぬの?』

 …朝はさぁ…ダメだね。気をつけていても…やってしまうよ…。でも、まりさは笑ったままだ。ぱちゅりーもありす
も、ちぇんも。赤ありすだけはおっかなびっくり、といったところだが…。

「むきゅ、あいかわらずれいむはくちがわるいわね」

 ゲロ袋が苦笑する。ありすもクスクス笑いながら、

「はじめてあったころはなんてゆっくりできないゆっくりだろうとおもったけれど…」

「わかるよー!れいむはほんとうにしゃべるのがへたなだけなんだねー」

 なんだかんだで…一緒に過ごした時間がこの饅頭共に“俺”のことを理解させていったのか知らないが…。これぐら
いで険悪なムードになるような間柄ではなくなっていた。こんな態度を取られると、数多のゆっくりを潰してきた俺で
も、

『…ゆっくりごめんなさい…きをつけるよ』

 しおらしく謝ってしまうわけだ…。考えたことを全部口に出されるのはたまったもんじゃないが…。ゆっくりは心の
中で相手を悪く思ったりすることはできないんだろうな。そういう意味では…人間みたいな腹黒さはないのかも知れな
い。馬鹿正直に思いを伝えるのもどうかと思うが…。どっちが正しいんだろうな。あるいは、どっちも正しくはないの
か。

「かぜがすこしつめたいわね…」

 ぱちゅりーがむきゅぅ…と困ったような顔でつぶやく。虚弱のゲロ袋は寒さにも弱いからなぁ…。目的の場所に着い
たらまずは、“俺”とまりさとちぇんで巣穴を掘らないといけない。夜になって本格的に冷え始めたら…ぱちゅりーは
もちろん、“俺”たちでさえ危ない。

『ゆ!みんな!わすれものはない?』

「だいじょうぶのぜ!」

「とかいはなありすはいつでもじゅんびばんったんっ!だわ」

「むきゅ!ぱちゅもへいきよ」

「だいじょうぶだよー」

「ゆっくち!」

 最後に、“俺”が巣穴の中を見回す。確かに持って行くべきものは何もない。初めてここに巣穴を作ったときにあり
すが敷いてくれた落ち葉だけが残っている。もぬけの殻の巣穴を饅頭共が覗き込む。ここで馬鹿なゆっくりなら…ゆっ
くりしたい欲求を優先させて、“やっぱりおうちのなかでゆっくりするよ!”とか言いだしそうだったが…。そんな馬
鹿はこの中にはいない。

『おもいでつまったこのおうちを…ゆっくりでていくよ…』

 確かに今、一瞬、「サボテンの花」のフレーズを心の中で口ずさんだけれども…っ!言わなくていいだろう?!

『いわなくていいでしょぉぉぉぉ???!!!!!』

「たまにれいむはおかしくなるのぜ」

「むきゅ…ひとりでおはなしすることがあるものね」

 くっ…こいつらの中では、この時の俺は突然一人でノリツッコミを始める完璧に意味不明な芸人みたいに思えるのか。
いや、実際、こんな奴が俺の目の前にいたら、俺も引くけどさ…。饅頭に“たまにおかしくなる”とか言われちまった
よ。救えねーな、オイ。

 今回の旅立ちは希望に満ちた船出ではない。これまでは…「森に帰る」、「巣穴を探す」、「ゆうかを探す」という
自分たちにとって有益な目的を果たすために、この使えないあんよでここまで歩き続けてきた。しかし、今度ばかりは
少し違う。「人間から逃げる」ために…ここを出て行くのだ。

 同じ“生き延びるための行動”とはいえ…やはり、納得いかないものがある。俺がそう思うのだから、饅頭共はなお
さらだろう。本当なら、ここをこいつらにとっての…いわゆるゆっくりプレイスにしても良かったはずだ。

 これは…俺の予想に過ぎないが…いずれ、ゆっくりは街に降りてくるだろう。今度は自分の意思で。開発が進んで、
人間はどんどんその生活区域を広げていってる。そのうち…山も森も…人間によって手が加えられるだろう。現に、動
物たちは里に降りざるを得ない状況に追い込まれており…降りてきた動物は害獣扱いされて殺されている。それは、き
っとそう遠くはない野生ゆっくりたちの未来図だ。






 10月の…少し冷たい朝の風に乗って、街から学校のチャイムの音が聞こえてくる。

 午前九時。出発の時間だ。

『ゆっ!みんな!しゅっぱつするよ!』

「「「「「ゆっくり(ち)りかいした(ちゃ)よ!!!!」」」」」

 六匹がそれぞれ固まって歩く。

『ずーりずーり…』

 俺はもう突っ込まない。突っ込まないぞ。

「ゆーしょ!ゆーしょ!」

「むきゅ!むきゅ!」

 …相変わらずうるせー…。なるだけ無言で歩いてほしいものだが、それはこいつらにとっては無理なんだろうな。自
然と口から漏れてくるんだろう。…現に、“俺”のセリフも止まらない。思うにこいつら、これでも結構無駄な体力使
っているんじゃなかろうか?元々、死亡フラグ立てまくりの存在のくせに、自分で自分の首を絞めていくとは…なんて
おめでたい奴らだろう…。

 赤ありすはというと、まりさの帽子の上にちょこんと乗っている。考えたもんだ。正直、赤ありすの絶望的なまでの
歩幅とか…歩くペースを考えると気が遠くなりそうだったが…。よくよく考えれば、まりさと二匹でゆうかを運んだこ
ともあったっけ。

 はぁ…でも、ゆうかが人間だったらなぁ…いろいろ…したいなぁ…。

『ゆぅ…ゆうかとすっきりー!したいよ…』

「「「「「???!!!!!!」」」」」

 もうね。饅頭共も固まってるけど、一番固まってるのって実は先頭の“俺”じゃね?って思うぐらい、“俺”、今固
まってる。それと翻訳機さんよ!“人間だったら”の部分がすっぱり抜けてんのは嫌がらせですかいっ?!いや、この
姿で“にんげんさんとすっきりしたい”なんて言ったらそれはそれで超展開になるけども。

『ゆべしっ!!!!』

 ありすに体当たりされた。顔を真っ赤にしている。なぜ…なぜだ…。

「れいむのばかっ!!ちびちゃんのまえでそんなことをいうなんてとかいはじゃないわ!!!!」

「わかるよー…そういうはなしはちびちゃんのまえでしちゃだめなんだねー…」

「れいむ…まりさはすこしあんしんしたのぜ…。れいむはすっきりー!にきょうみがないかぼぶげへっ!!!!」

 まりさがぱちゅりーに…あの貧弱ゲロ袋に張り倒された。器用に結んだ髪をまりさの顔面に打ち付けて。髪の毛が目
にでも入ったのかその場で転げまわるまりさ。

「むきゅぅぅぅぅ!!!はしたないわ!れいむのばか!えっち!!!」

 やめ…ちょ、待っ…ぱちゅりーさん…そんなに暴れたらお体に障りますよ…っ!!!!びっくりしたのかちぇんが慌
てて止めに入る。

「まってねー!ぱちゅ、ちょっとやりすぎだよー!」

『ゆぶぶぶ…』

 まさか、仲間にここまで追い込まれるとは思わなかった。しっかりと思考が整ってない状態だったからか、“俺”の
体も満足に動かなかったし。攻撃された回数だけなら、ぶっちゃけれみりゃのときよりも多い。

 とにかくこのままではリアルにゆっくりできなさそうな予感がしたので、予定を変更して、ゆうかを探すときにまり
さと二匹で休憩した水場に寄ることにした。俺のせいとはいえ、とんだタイムロスだぜ…。ぱちゅりーはまだご機嫌斜
めの様子だ。

 饅頭共が川の水を飲んだり、ぱしゃぱしゃと水を掛け合って遊んでいる様子を見ると…。本当に小さな子どもと川遊
びにでも来たかのような錯覚に陥る。

「ゆっ!つめたいわ!」

「ありすにみずをかけるんだねー、わかるよー!」

「さっきのおかえしなのぜ!」

「れいむ」

 ゲロ袋ことぱちゅりーさんが“俺”に話しかける。ぱちゅりーの目は少し悲しそうで…でも“俺”のことを睨みつけ
るような目つきで…さらに頬を真っ赤に染めていた。

「れいむは…ゆうかみたいなゆっくりがすき…なのかしら?」

 まりさ…。お前の予想、きっと当たってるんだろうな…。まさかこんな質問をこの姿になって…よりによってゲロ袋
にされるとは思わなんだ。ぱちゅりー種特有のじとっとした目つきで問い詰める。

『ゆ…っ!そ、そんなこと…ないよ?』

 しどろもどろになる“俺”、情けないにも程がある。だ、だって…女の子(?)にこんな質問されたことないからど
う答えていいか、わかんねぇ…っ!!!!

「れいむ…ぱちゅは…」

 ぱちゅりーがずいっと顔を近づける。…くっ、馬鹿な…上目づかいが意外に可愛い…だと?!

「ゆっくちぃぃぃぃぃぃ!!!」

 赤ありすの声に、川の方を向く“俺”とぱちゅりー。なんだ、川に落ちたか?流されたか?無事じゃねぇか。何を泣
いてやがる…。

「ありしゅの…ありしゅの…おはなしゃん…おうちにわしゅれてきちゃったよぅ!!!!」

 お花…さん?なんのことだ…?“俺”はぱちゅりーに視線を送った。ぱちゅりーも冷静さを取り戻しているのか、し
ばらく考え込んだあとに、

「ありすがちびちゃんにつくってあげた…おはなのかみかざりのこと…かしら…?」

 ぱちゅりーの言葉に、その場にいた饅頭共がようやく気付く。そういえば昨日、自慢していた髪飾りが赤ありすの頭
についていない。饅頭共が顔を見合わせる。“俺”も最後に巣穴の中を確認したが…それらしいものは落ちていなかっ
たような気がする。とうとう赤ありすは泣きだしてしまった。

「ゆんやあああああ!!!ありしゅの…おはなしゃああああん!!!!」

 あ…はぁ…っ!うざい!潰したい!でもできないっ!!!このやり場のない思いをどこにぶつければいいんだい?!

「れいむ…?」

 ありすがずりずりとあんよを這わせて寄ってくる。なんとなく言いたいことはわかる。

「おうちにかみかざりを…」

『だめだよ』

 今回は、本当に冷たく、突き放すような言い方をしたつもりだ。まりさも、ぱちゅりーも、ちぇんも、何も言わない。

『なんのためにあのおうちをでてここまできたとおもってるの?』

「にんげんさんから…にげるため、よ…」

『わかってるなら…そういうことはしないでね』

「でも…っ!ちびちゃんがとてもたいせつにしていたものなのよっ!」

 ありすは涙目だ。赤ありすは大量の涙を流している。“俺”はありすを睨みつけた。ありすは少し、目を逸らしたが、
またすぐに…まっすぐに“俺”の目を見つめ返してきた。真剣、そのものだ。…ったく…馬鹿饅頭が…。

『…わかったよ…ただし、すぐにかえってきてね!」

「れいむっ!!!!ありがとう!!!!だいすきよっ!!!!!」

 言って、“俺”の横に飛び跳ねてきて、頬にキスをして去っていく。赤ありすがありすを追いかけて、

「おにぇーしゃん!ありしゅもいきゅよっ!」

 ちらり、とありすが“俺”の方を見る。

『ありすのあたまに…のせてあげてね』

 赤ありすがありすの頭の上に飛び乗ると、ぴょんぴょんと跳ねていった。

「れいむ…やさしいんだねー…」

「れいむがいかせてあげなかったら、どうしようかとおもってたのぜ…。ありすはあれでいてがんこなところがあるか
 ら…」

「むきゅ…それだけしっかりじぶんのきもちをもっている、ということだわ」

『ありすがもどるまで、きゅうけいするよ!』








十三、

 ありすはなかなか帰ってこなかった。饅頭共もそうだが、何より“俺”も心配になってきた。ぱちゅりーもまりさも
ちぇんも…お互いに視線を絡ませている。

「むきゅ…」

『ありすをさがしにいくよ』

 もう、待っていることはできなかった。胸の鼓動が速くなっていくのを感じる。本当に嫌な予感がしていた。この水
場から巣穴まではそれほど距離はない。距離はないが…甘かったのだろうか…?ありすと赤ありすは…もしかしたら何
かのトラブルに巻き込まれたのかも知れない。知恵はそこそこあるありすのことだから…大事には至らないと思いたい
ところだが…。一緒についていった赤ありすのことがある。

『そろーりそろーりすすむよ!』

「「「ゆっ!そろーり…そろーり…!」」」

 なるだけ、岩の後ろを。木々の陰を。草の下を。隠れながら進んだ。悪い予感がしているのは“俺”だけではないら
しい。不安を覆い隠すように…ぴったりと寄り添って…ゆっくり…ゆっくり…進んでいった。途中、ありすとすれ違う
かも知れないという期待を込めて、“俺”は先ほど通ってきた“道”をちらちらと見ていたが…ありすとすれ違うこと
はなかった。






 やがて…見覚えのある風景にたどり着いた。

「ゆ゛ぐぅ゛!!!!どがい…ばじゃ…な゛い゛わ…ゆっぐり…やべで…」

 “俺”を含め、4匹の饅頭が凍りついたように動けなくなった。ありすは…人間に蹴られていた。執拗に何度も、何
度も。ここにたどり着くまで…ありすはあの人間にずっと蹴り続けられていたのだろうか?岩肌の壁に寄りかかり、人
間のつま先が、何度も何度もありすの顔にめり込んでいる。ありすは…それでも人間のことを睨みつけていた。歯を食
いしばり…必死に。

「後ろのガキをよこせって、言ってんだよ、このクソ饅頭が!!!」

 ありすの後ろには…赤ありすがいた。ありすは…あの赤ありすを守っているのだろう。そこにもう一人、人間が現れ
た。

「巣穴らしき中にはもう、他のゆっくりはいないな…」

 加工所の制服を着ている。人間たちは加工所の職員だった。目の前でありすが無残な姿になっているのを見て、まり
さも、ちぇんも、ぱちゅりーも…恐怖で震えている。…それは、“俺”も同じだった。普段、俺がやっていること。こ
の姿になって初めてわかった。人間とは…なんと大きな生き物なんだろう…。その足が、腕が…れみりゃのキバなどと
は比べ物にならないような凶器であった。その“凶器”がありすに撃ち込まれるたびに、ありすは悲鳴を上げ、口から
カスタードを吐き出している。

 …あのままではありすが死ぬ!!!!!

『ゆ゛…ゆ゛…』

 言葉には出せなかった…。恐怖で…“俺”自身、動くことができないし…まともに思考を巡らすこともできなかった。

「ゆっぐり゛…おろ゛じで、ね゛っ!!!」

 ありすが人間に持ち上げられる。下には震えて大声で泣いている赤ありす。

「ゆんやあああ!!!!おにぇーちゃああん!!!!おにぇーちゃんをはにゃちてぇぇぇぇ!!!!」

「うるっせぇんだよ、クソ饅頭が」

 言って、人間が赤ありすをわしづかみにする。そしてそのまま袋の中に投げ入れられた。

「ゆびぃっ!おにぇ…しゃ…どきょぉ…?」

 まりさが…隠れている草むらから飛び出そうとする。慌てて“俺”はまりさを抑えつけた。まりさは“俺”を睨み、

(なにするのぜっ!!!あのままじゃ…ありすが…しんじゃうよっ!!!!)

 …うるさい。そんなことわかってる。

「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!」

 耳をつんざくような、ありすの悲鳴に思わず目を閉じる、“俺”たち。これがあの…“とかいは、とかいは”言って
いたありすの声なのだろうか?信じられない。あの穏やかなありすのどこに…今の絶叫を響かせる力があったのだろう
か。まりさも、ぱちゅりーも、ちぇんも泣いていた。

 “俺”も泣いていた。

 人間の圧倒的なまでの暴力に、為す術なく壊されていくありすを…これまで苦楽を共にしてきたありすを…ただ、見
つめることしかできないのが…悲しくて…悔しかった。

 ありすは体の半分が潰されていた。カスタードがどろりと流れ出している。苦痛にゆがむ顔を見るのが辛かった。で
も目を逸らすことができない。恐怖で…まるで金縛りにあっているかのようだった。ありすのほうが…痛くて…死にそ
うな思いをしているはずなのに、もう、動かすことのできないあんよを必死に動かそうとしながら、なおも人間を睨み
続けている。

 もういいっ!もういいよ、ありす!!!お前は頑張った!!!だから助けを求めろ!!!!!

 叫ぶことはできない。歯を…カチカチと鳴らすだけだった。

(れいむ!!!どくのぜ!!!!ありすをたすけにいくのぜっ!!!!)

 わからないのかよっ!!!この馬鹿饅頭!!!!お前なんかが出て行ったところで…殺されるだけだろうがっ!!!

(れいむうううううぅぅぅぅ!!!!どくのぜええぇぇぇっ!!!!!!)

 まりさの口を必死に押さえつける。こいつらはゆっくりだから…馬鹿だから…っ!目の前の人間と自分たちにどれほ
どの力の差があるかわかってないんだっ!元・飼いゆだったんだろうっ?!散々、酷い目に遭ってきたんだろうっ?!
なのに、なんで立ち向かおうとするんだっ!!!犬死にだっ!!!そんなこと…絶対させないからなっ!!!!!

「こんなボロ雑巾みたいなやつ、持って帰っても商品にはなりませんよねぇ?」

 ………………ッ!!!!!

「さっさと潰しちまえよ。クソの役にも立たねぇゆっくりなんぞよ」

 …ふざけるなよ…。

 ボロ雑巾だと…?お前らが…ありすをそんな風にしたんだろ?

 役に立たない、だと?ありすは…世話好きで…仲間想いで…ぱちゅりーの体調が悪いときはいつも寄り添って看病し
てやって…っ!巣穴の中を住みやすくするためのコーディネイトができて…っ!!!いろんなことによく気づく…っ!

 すげー…いい、ゆっくりなんだぞ…ッ!!!!!

 ぼろぼろと涙があふれる。噛み締めた唇は皮が破れ、餡子が漏れ出しているのにも気付かなかった。悔しかった。あ
りすのことをあんな風に言われて、ただ、ただ…悔しかった。俺が人間の姿だったら…っ!今すぐにでも飛び出して行
ってありすを守ってやりたかった。

「ゆ゛…ぐり…でぎ…ない゛…にん…げん…ざんは………っ、」

 ダメだ!ありす!その先を言うなっ!!!!!絶対にダメだっ!!!!!ぱちゅりーが“俺”の頬に自分の顔をうず
める。



「じ、ねっ…!」



 人間の手からありすから解き放たれ…壁に叩きつけられた。すでに破れた皮からカスタードが四方に飛び散る。

「ふひゅぅっ…こひゅっ…」

 切れ切れの呼吸で…死んでたっておかしくないのに…、ありすはまだ人間を睨み続けていた。あんな姿にされてまで
ありすはまだ…人間と戦おうと言うのだろうか。

「っぎぃっ??!!!!!」

 ありすの目に…火ばさみが差し込まれた。“俺”は…何度も何度も餡子を吐きそうになった。まりさも、ちぇんも同
じだろう。

「~~~~~っ!!!!~~~っ!!!!」

 もはや声にならない悲鳴を上げて、崩れた体を必死に動かそうとするありす。もう、そこにいるのは、ありすではな
かった。少なくとも、“俺”たちの知っているありすの姿ではなかった。

 人間たちは…ありすに唾を吐きかけると、ようやくその場を後にした。

「ゆえええぇぇぇん!!!!だじゅげでぇぇぇぇ!!!!!!」

 赤ありすの悲鳴だけが…聞こえてきた。






「ありすうううううぅぅぅぅぅ!!!!!!!」

 まるで金縛りから解けたように…、まりさが飛び出した。“俺”も、ちぇんも、ぱちゅりーも…続いた。ぐちゃぐち
ゃのありすのかろうじて残っている皮をまりさが泣きながらぺろぺろ舐めている。

「み…ん……な…?……………ぞご……に、……ぃるの…?」

「むきゅっ!いるわ!れいむも、まりさも、ちぇんも、ぱちゅりーも、ありすのそばにいるわっ!!!!」

「わかるよー!!!もうだいじょうぶだよー!!だからしっかりしてねー!!!!」

 泣きながら、ありすに語りかけるゆっくりたち。ありすは、抉られた目のあった場所から、ぽろぽろと涙をこぼした。
怖かったんだろう。痛かったんだろう。そして、やっと安心して…緊張の糸が切れたんだろう…。

「ゆ゛……ぅ…ぇ……い゛だ……ぃ……よ゛……ぅ……いだ……ぃよう゛………だ…ず…げで…」

 痛みを訴えた。助けを求めていた。人間には意地でも求めなかったのに、“俺”たちには。

「あ゛り゛ず!!!じっがりずるのぜぇぇぇ!!!!」

 まりさがありすの顔だった部分に、自分の顔をうずめている。“俺”はというと…何もできずに…声もかけてやれず
に…ただ…ただ…ありすを見つめているだけだった。

「れ………いむ……………」

 我に返る。ありすのそばに駆け寄る。切れ切れの言葉で、

「ご………め……………さ、い………」

『もう…しゃべらなくていいよっ!!!!』

「あ…………なた、…の…いうこ…と…き………てれ、ば…」

 もういい!本当にもういい!!!俺なんかの言うことなんかどうでもいい!!!!

 ありすが、大きくせき込み、大量のカスタードが吐き出された。すでに致死量を超えているはずだ。それでも声を絞
り出して、喋り続ける。

「ち…び………ちゃ…………ど…………こ?」

 ぱちゅりーが、まりさが、ちぇんが、黙りこくる。赤ありすは加工所の職員に連れて行かれた。恐らく…生きて戻る
ことはないだろう。でも、そんなことを伝えることは…どうしてもできなかった。ゆっくりは本音で語り合う生き物。
でも、“俺”は…俺の取った行動は…

『ゆっ!ありすのまもったちびちゃんは…すあなのなかでねむってるよっ!』

 ありす以外のゆっくりたちが、“俺”に視線を送る。何か、言いたげではあったが、誰も何も言わなかった。ありす
は…もはや形を成さない口元を少しだけ緩めると…

「よ…………か……た………………………………」

 ありす?

『ありす?』

「……………………………」

 返事をしろよ?

『へんじをしてね?』

 ありすは、それ以上喋ることはなかった。

 “俺”たちは…大声で泣いた。人間に気付かれても、捕食種に気付かれても…野生の動物に気付かれても…構わなか
った。泣きに、泣いた。悲しくて悲しくて…いつまでたっても泣きやめなかった。

 ありすは…とかいはなゆっくりだった。その意味をありす本人の口から聞くことはできなかったが…。誰がなんと言
おうと、ありすはとかいはなゆっくりだったのだ。少なくとも、俺はそう思う。





 まだ、昼前だと言うのに…“俺”たちの見上げた空は…とても暗かった。















つづく



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感想

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  • ドス「善良なゆっくりを、探さずに潰す、
    糞人間は、ゆっくりしないで死ねー!
    ドススパーク!!!」 -- 2017-12-27 08:36:24
  • いきなり盛り上がるコメント覧に吹いた -- 2013-06-30 08:50:24
  • ありす・・・
    くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!gujchkmねふひすもbmf ぬつめえめもてmJvifg て!!つむふ?ちひ!すめめへけえくふ>【』 mbigm!! -- 2012-06-15 22:39:46
  • ↓>それを伝えてるように思えてくるのは俺だけだろうな・・・
    君のような人をコメント欄で見ることが出来るというのがゆっくりいじめのもう一つの楽しみなんだ
    今後もいじめSSを読み続けながらそういったコメントを各所で残してくれていることを期待しているよ -- 2012-06-06 08:37:19
  • 俺ら視線からみてる「ゆっくり」って「腹立つ」「ストレスつぶしの対象」だけど、ゆっくり視線だと
    「親や妻・夫。子供を奪った奴」なんだよな。「シングルマザーれいむ」っているだろ?ああいうのは人間が
    「夫のまりさを殺されたから助けて欲しい。」って言ってるだけなんだろうな。
    「ゆっくりプレイス」も「人間に家を壊されたから、ここなら壊されない」と思ってここにキタのかもしれないし、
    ゆっくり虐待楽しんでる奴しかいないここで言うのも何だが、もっと考えて虐待して欲しい。
    余白あきさんの「ペットショップ」系はそれを伝えてるように思えてくるのは俺だけだろうな・・・ -- 2012-01-28 21:00:33
  • さすが赤ゆ。どれだけ善良だろいうが存在そのものが死亡フラグなだけはある。
    撃滅してぇ。 -- 2011-09-07 01:40:10
  • ゆっくりでなきそうになるとはおもわなかったよ! -- 2010-11-22 02:57:48
  • 空気を読めなくてすまんが赤ありすの虐待シーンも見たかった。 -- 2010-10-16 05:57:52
  • シリアスに持っていくとか、ずるすぎる。 -- 2010-08-06 23:16:51
  • アリスは死亡フラグ立てたからな・・・今回はかなり泣きそうになった。 -- 2010-08-01 05:22:36
最終更新:2009年10月27日 17:34
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