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大宙を翔る大鷲の翼~試作機デザイン公募

「あれはなにかしら?」
宇宙農場で無重力作業をしていた作業員が手を止めると、彼方にきらめく光の矢を指さした。
宇宙空間では微少なデブリ(塵)といえども、衝突したら命取りである。センサー類がこまめに全天を警戒しているが、機械の目を盲信する水夫はいない。
「……ああ、うん、わかりました。センターの方から第三種の注意報が出てますわ」
部下に言われて、女性士官はちらと目を手元のモニターに落として確認した。
「ふむう。ビギナーズが、なにやら新型機の実験をしているようね」
「ええ」
「航空機にしては高いわよね……あ、加速したわ」
「ラムジェット……スクラムジェットエンジン搭載の機体のようですな」
「マッハ10を超えているかしら」
そんなことは、こからでは解らないと部下は頭を振った。FVBの宇宙開発センターが追跡しているだろうが、農場の設備では無理な話だ。第一、もう遅い。
「さあ、隔壁を閉じて空気を入れます。下がってください」
「OK。やってちょうだい」
農場の作業が再開されたが、その最中も青い世界を背景に、大鷲のようなシルエットの機体はどこまでもどこまでも翔け続けていた。

//*//

 その銀色の機体はまさに蒼天を穿ちつつあった。
「こちらAI-X。30秒後に補助ロケット分離」
『コントロール了解。Good Luck!AIX』
「10秒前、スクラムジェットエンジン起動……5・4・3・2・1、切り離した!」
既に7Gを超えていたGがさらに加速される。
『高度1350Km……星の世界へようこそ! まあ、とば口だがね』
コ・パイ席からの軽口が届く。まあ、あちらさんもかなり声がかすれている。パイロットはふっと笑いながら、次のミッションを指示した。
『了解。データリンク正常。目標確認』
さらに上の軌道に陣取っているミアキスから発進したダミーの機体だ。
『あの野郎、意地悪いところに落としやがって』
「狙えるか」
『ちょいとばかりハンドルをきらないといかんな。ウィンカーを出して次の角で右折しろ』
いい加減な言葉とは裏腹に、正確なデータがディスプレーに表示される。それに合わせて、ほんの少しばかりコースを修正してやる。本当のことを言えば、すべてAI任せにしても、宇宙開発センターからのデータを元に勝手に動いて、勝手に狙いをつけ、ダミーを撃破するだろう。たぶん、それなりに。
しかし、無人機にしないのには意味がある。
緊急時にはカプセルのまま射出される複座の操縦席に、エース級のパイロットとコ・パイを乗せているのは、単なる政府の失業対策事業ではないのだ。たとえ、どんなに優れた道具があろうとも、最後に選択し使用するのは人でなくてはいけない。
「攻撃モード確認……さあ、宇宙に大輪の花を咲かせてやるか!」

//*//

 格納庫の入り口近くに設置された、モニターを見守っていた整備員たちの間に歓声が上がった。
「たまやーっ!」
なるほど、画面に映し出される、標的ダミーが大空に四散していく光景は、夜空の花火の姿に似ていなくもない。
その歓声が収まりきらないうちに、整備班長の叱責の声が飛んだ。
「ほらほら、すぐに連中が戻ってくるぞ! 点検準備ができているか再々確認だ」
そう言いながら椅子から立ち上がった班長は、腰を伸ばしながら滑走路の方に目をやった。まだAI-Xが帰還してくる姿は見えないが、隣の救急車両庫に待機している消防車の運転席が見える。あいつらも気になるのだろう。ハンドルに手をかけたまま、じっと遠くを見つめている。
「さあ、無事に帰ってこいよ。そうしたら、俺たちがばらばらにして磨き立ててやる」


AI-X(Advanced Interceptor X)は、わんわん帝國が過去に遭遇した過酷な戦闘の教訓から生み出された要撃戦闘機である。
可変I=Dの出現によって戦闘機開発の主流は多目的戦闘機へと流れていたが、それでもわんわん帝國軍は「EV81:偵察機迎撃作戦」、すなわち赤オーマとの遭遇戦における失敗を忘れてはいなかった。
この戦いでは宇宙空間から侵攻してくる敵の小型偵察機群に対して、対空火砲を中心とした帝國防衛網は事実上無力であった。かろうじて2機を撃墜することには成功したものの、発射された熱核ミサイルを阻止することはできず、地上に壊滅的なダメージを受けることとなったのである。
これが単なる偵察機相手に過ぎなかったことを認識した帝國参謀は恐怖した。星海を越えて来訪するものたちに対し、有効な対策がないことが明白になったためだ。それゆえに、帝國軍そのものが再編された後も、作戦可能空域が高度1400Kmまで、つまり『低軌道宇宙での戦闘が可能な』要撃戦闘機を求める声は途切れなかったのである。
この声に押されて生まれたAI-Xは、衛星高度迎撃戦隊の中核を担う存在として、要撃機に特化してデザインされている。
通常エンジンに加えて装備された強力なスクラムジェット・エンジンは、都市や軍事施設を敵機の攻撃から護るために、敵機の侵入してくる衛星高度へ短時間で到達するためのものであり、内蔵レーザーガンと120mm滑空砲などを収納したガンポッドに加え、大気内限定ではあるがミサイルまで搭載した攻撃力は、堅固な爆撃機であっても確実に撃ち落とすためのものなのだ。
その反面、性能要求において航続距離は重要視されていない。大型増加燃料タンクも衛星高度の迎撃ポイントまでスクラムジェット・エンジンをぶん回し続けるためだけに存在する。
「大地を護る大鷲の翼」、それこそ全長30mを超える巨人機に与えられた栄名なのだ。


【データ】
全幅31.4m
全長33.5m
最大離陸重量41500kg
最大速度M=14.5
実用上昇限度1400Km
乗員2

 


1700326:曲直瀬りま:FVB

 

最終更新:2008年04月30日 00:45