敵との接触まで、あとわずかである。
  菩鋳螺はイヤな顔になった。
 「げ、惑星破壊藩国までいるのか・・・」
  いるのである。
  だから大逆転号を発進させたともいえる。動かせば藩国が傾くとまでいわれる巨艦をだ。
 「より取り見取りですね」
  光儀が笑った。

 

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 「帝国軍元帥より通達。「これより、本星突入部隊はペルセウス方面指揮官風野の指示を仰ぎ上陸作戦を開始せよ!本艦隊は連携して、敵大規模艦隊への奇襲をかける!各部隊は打ち合わせ通りに敵を撃破、帰還せよ!!」とのことです」
  暗号電文を解読した通信担当の寂水が、藩王さくらつかさに報告した。
  よっしゃと頷く藩王。

 「了解!、遂に開始か…」

  光儀が回路を接続する。艦橋のスクリーンが一気に活性化する。

 「突撃! 戦闘開始だ!撃て!」

  藩王さくらつかさの号令で、FVBの戦争は始まった。

 
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 「おい、エチオピアだ!」

  傍らをI=Dにしては巨大な影が通り過ぎる。

 「蒼天に足を生やしたみたいだな」

  曲直瀬が笑った。しかし、他のクルーは、それが<ほねっこの娘は強いぞ部隊>であると知って色めき立った(主に寂水)。

 「亜細亜ちゃん、あんなに恐がりだった子が、何て成長したことか…。絶対、守らなくちゃ」

  きみこの声にまず寂水が反応した。
 「えっ、亜細亜ちゃん来てるの!」

  来てるの、じゃない。戦場である。思わず私信を送りそうになった。でも、座席でクネクネ悶えている姿に、藩王さくらつかさが援護対象のレベルをあげるのを許可した。

 「かわいいお嬢さんのためにも、イッチョ気合い入れましょうか」

  摂政も言葉を続けた。

 「この艦の装甲は厚いから。せいぜい僚艦僚機の盾になってやろう」

  その言葉に即座に反応した寂水は、「みらのちゃんと仲直りできたんだね、よかった」と小声で呟きながら微笑みながら指示を伝えるのだった。
 「え、そうなの? あかんな情報が遅れてるな・・・戻ったら噂話を集めないとな・・・」

  寂水の呟きに反応する菩鋳螺がいる。みんな結局好きななのだ。なんというか、家族持ち・恋人のいるモノは別だけれど、彼女は漠然としがちな“守りたい人々”の象徴なのだ。
 「了解! 敵艦載機、ミサイルは任して下さい。一歩も近づけません!」

  「照準データを確認。目標輸送艦ロックオン。副砲発射!」

  オカミチも叫んだ。

 

 

最終更新:2008年12月30日 21:47